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プリュム・シャルール 9
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「おやおや、お転婆なお嬢さんがこの学園にも居たものだね」
何かわからないものに押されて尻餅をついてしまったことに驚いて、そのままの状態で座り込んでしまっていたら、背後からやけに明るい声が聞こえて、全体重を受け止めたお尻は痛いしなんだかわからないし、馬鹿にされている事はわかるような声音だったので、イラッとしてそのまま手を後ろについて体を捻って、その勢いのまま無礼な男に声を出した。
「何笑って見てるのよ、淑女が倒れていたら手を差し出すのが紳士ではないの?」
初め目に入ったのはやたら手入れされたピカピカの靴が数人分。奥の方には女の足も見えた。
少し顔を上げると、私を見下ろす男達の顔。陰になってはっきりと見えないけど、シルエットでもイケメン度がわかる。
目が少し暗さに慣れたのか、上から見下ろしている男達の色味が見えてきた。
一番近くで、声をかけてきただろう男は茶金?の髪、その男の真横に立っているのは赤?その後ろに青いのも見える。
もしかしたら……
「こんなに威勢の良いお嬢さんがいたんだね」
良い男はニヤついた笑いも許せるのね。
でも私と目が合っていないのが気になるわ。
彼も、その横の赤い髪の彼も、目線は私の顔よりも下……。
目線を辿ってみると、私のお腹のあたり?
「あっ」
少し上から落ちて勢いもあったのか、尻餅をついて倒れ込んだ時に、いつもはくるぶしまであるスカートが膝上まで捲れ上がっていたみたい。
私は全然恥ずかしくもないけど、この世界ではとってもエロいことらしいのよね。
イケメンでもただの男子。赤髪は顔がおんなじくらい赤くなってる。
『ちょろいわね。確か赤髪は騎士団長の息子で伯爵家だったっけ……』
足を見せつけるようにゆっくりとスカートの裾を直す。
丁度開いた足の方にいたさっき私を止めた使用人みたいなヤツは、真っ赤な顔で鼻の辺りを手で隠している。
ホントこの世界の男って、ちょっと脚を見ただけで真っ赤になっちゃって、チョロいったらありゃしない……
スカートを直して、横座りのような形になったけど、誰も手を貸して立ち上がらせようとはしてはくれない。
茶金はもしかしなくても伯爵王子!
ガタイのいい赤髪は、確か騎士を目指してるんじゃなかったっけ、だったら騎士見習いらしく姫を助けるべきではないの?
その後ろでには青い髪色の頭が2つ。
確か宰相の息子と娘。
兄妹。
妹は王子の婚約者の悪役令嬢!
その2人の様子を伺うと、2人とも私に全く関心がないのかお互いを見合って何かアイコンタクトでも送っているように見える。
誰も口を開かない、フリーズしたような空気の中、結局私に手を差し出してくれたのは、鼻血を出した使用人で、私は拘束されるようにその場からの退場を余儀なくされた。
だって、使用人でも魔法が使えるのかわかんないけど、腕に何か冷たいものがふれたと感じた瞬間、体の自由が効かなくなってしまったんですもの。
勝手に体は動いてしまうし、口は開くこともできなかったのよ!
少し離れたところまで連れて行かれて、そこで解放された、随分と入り口に近いところで、結構時間が経っていたのか、このあたりのテーブルは半分以上埋まっている。
私と目が合いそうになると皆目を背ける。見知った顔もいくつかあるような気がするわ。
「ご令嬢。あの辺りは先ほどご説明させて頂きましたように、認証メダルをお持ちの方、もしくは高位貴族の方専用の場所となっております。それとこれから、生徒会の方々が御使いになりますので、立ち入りが禁止となります。ご了承下さい。では失礼いたします」
言うだけ言うと軽く礼をして、スタスタと持ち場に戻って行ってしまった。
周りからはあからさまな好奇の目と、クスクスと笑い声も聞こえてくる。
笑い声の聞こえた方向に顔を向けると、ぴたりとその笑い声は聞こえなくなる。
面と向かって何も言えない軟弱者ばかり。
周りをひと睨みして、あの使用人が戻った方向に目をやると、その場には青色の頭が二つ。
どんな表情を浮かべているかまではわからないけど、こちらに顔を向けていることはわかった。
結構な距離を持っての睨み合いは、何か囁き合った2人が、踵を返して高級ゾーンに入って行くことで終わった、
まぁ、これまで攻略対象は垣間見る事はできても、言葉を交わしあうところまでできたのは今日が初めてだったし。
ゲームの中で、こんな出会いのイベントはなかったけど、なんていってもチュート殿下との何もかもを全く体験していないから、いきなり2週目かもしれない今どんなことが起きるかわかったもんじゃないのよね。
今からチュート殿下を攻略できたら、私がコンプした2週目になるのかしら?
さっきの生徒会の皆様?のなかに金髪はいなかったわよね……。
チュート殿下はあんなんでもれっきとした王族だから生徒会の役員になっているはず。
さっきの茶金が伯爵王子のヴォーテックスだと思うけど、先頭を歩いていただろうあの感じは、やっぱり年上の方が会長って事なのかしらね。
この私が主人公であるこの世界のチュート殿下は、出来の悪い寄りの不良殿下って事なのかしら?
でもたしかゲームあるあるだけど、この世界でもこの王立学園を卒業?卒園?しないと貴族として認められないとかなんとか?
この乙女ゲーのテンプレが『ドキ恋』にはてんこ盛りだから!
チュート殿下にあえてないという最大級のバグも、このテンプレ踏襲にはかないっこないはず!
さっきのは全然ロマンチックじゃないけど、出会いって言えば出会いイベ。
きっとこれから、私のことをあの生徒会の誰かが呼びにきて、これからある生徒総会で役員の1人として紹介するはずなのよ。
だって、ゲームでは私は生徒会役員の1人で、高位貴族である役員達をみんなメロメロにする。
そういう未来が約束されているんだから!
何かわからないものに押されて尻餅をついてしまったことに驚いて、そのままの状態で座り込んでしまっていたら、背後からやけに明るい声が聞こえて、全体重を受け止めたお尻は痛いしなんだかわからないし、馬鹿にされている事はわかるような声音だったので、イラッとしてそのまま手を後ろについて体を捻って、その勢いのまま無礼な男に声を出した。
「何笑って見てるのよ、淑女が倒れていたら手を差し出すのが紳士ではないの?」
初め目に入ったのはやたら手入れされたピカピカの靴が数人分。奥の方には女の足も見えた。
少し顔を上げると、私を見下ろす男達の顔。陰になってはっきりと見えないけど、シルエットでもイケメン度がわかる。
目が少し暗さに慣れたのか、上から見下ろしている男達の色味が見えてきた。
一番近くで、声をかけてきただろう男は茶金?の髪、その男の真横に立っているのは赤?その後ろに青いのも見える。
もしかしたら……
「こんなに威勢の良いお嬢さんがいたんだね」
良い男はニヤついた笑いも許せるのね。
でも私と目が合っていないのが気になるわ。
彼も、その横の赤い髪の彼も、目線は私の顔よりも下……。
目線を辿ってみると、私のお腹のあたり?
「あっ」
少し上から落ちて勢いもあったのか、尻餅をついて倒れ込んだ時に、いつもはくるぶしまであるスカートが膝上まで捲れ上がっていたみたい。
私は全然恥ずかしくもないけど、この世界ではとってもエロいことらしいのよね。
イケメンでもただの男子。赤髪は顔がおんなじくらい赤くなってる。
『ちょろいわね。確か赤髪は騎士団長の息子で伯爵家だったっけ……』
足を見せつけるようにゆっくりとスカートの裾を直す。
丁度開いた足の方にいたさっき私を止めた使用人みたいなヤツは、真っ赤な顔で鼻の辺りを手で隠している。
ホントこの世界の男って、ちょっと脚を見ただけで真っ赤になっちゃって、チョロいったらありゃしない……
スカートを直して、横座りのような形になったけど、誰も手を貸して立ち上がらせようとはしてはくれない。
茶金はもしかしなくても伯爵王子!
ガタイのいい赤髪は、確か騎士を目指してるんじゃなかったっけ、だったら騎士見習いらしく姫を助けるべきではないの?
その後ろでには青い髪色の頭が2つ。
確か宰相の息子と娘。
兄妹。
妹は王子の婚約者の悪役令嬢!
その2人の様子を伺うと、2人とも私に全く関心がないのかお互いを見合って何かアイコンタクトでも送っているように見える。
誰も口を開かない、フリーズしたような空気の中、結局私に手を差し出してくれたのは、鼻血を出した使用人で、私は拘束されるようにその場からの退場を余儀なくされた。
だって、使用人でも魔法が使えるのかわかんないけど、腕に何か冷たいものがふれたと感じた瞬間、体の自由が効かなくなってしまったんですもの。
勝手に体は動いてしまうし、口は開くこともできなかったのよ!
少し離れたところまで連れて行かれて、そこで解放された、随分と入り口に近いところで、結構時間が経っていたのか、このあたりのテーブルは半分以上埋まっている。
私と目が合いそうになると皆目を背ける。見知った顔もいくつかあるような気がするわ。
「ご令嬢。あの辺りは先ほどご説明させて頂きましたように、認証メダルをお持ちの方、もしくは高位貴族の方専用の場所となっております。それとこれから、生徒会の方々が御使いになりますので、立ち入りが禁止となります。ご了承下さい。では失礼いたします」
言うだけ言うと軽く礼をして、スタスタと持ち場に戻って行ってしまった。
周りからはあからさまな好奇の目と、クスクスと笑い声も聞こえてくる。
笑い声の聞こえた方向に顔を向けると、ぴたりとその笑い声は聞こえなくなる。
面と向かって何も言えない軟弱者ばかり。
周りをひと睨みして、あの使用人が戻った方向に目をやると、その場には青色の頭が二つ。
どんな表情を浮かべているかまではわからないけど、こちらに顔を向けていることはわかった。
結構な距離を持っての睨み合いは、何か囁き合った2人が、踵を返して高級ゾーンに入って行くことで終わった、
まぁ、これまで攻略対象は垣間見る事はできても、言葉を交わしあうところまでできたのは今日が初めてだったし。
ゲームの中で、こんな出会いのイベントはなかったけど、なんていってもチュート殿下との何もかもを全く体験していないから、いきなり2週目かもしれない今どんなことが起きるかわかったもんじゃないのよね。
今からチュート殿下を攻略できたら、私がコンプした2週目になるのかしら?
さっきの生徒会の皆様?のなかに金髪はいなかったわよね……。
チュート殿下はあんなんでもれっきとした王族だから生徒会の役員になっているはず。
さっきの茶金が伯爵王子のヴォーテックスだと思うけど、先頭を歩いていただろうあの感じは、やっぱり年上の方が会長って事なのかしらね。
この私が主人公であるこの世界のチュート殿下は、出来の悪い寄りの不良殿下って事なのかしら?
でもたしかゲームあるあるだけど、この世界でもこの王立学園を卒業?卒園?しないと貴族として認められないとかなんとか?
この乙女ゲーのテンプレが『ドキ恋』にはてんこ盛りだから!
チュート殿下にあえてないという最大級のバグも、このテンプレ踏襲にはかないっこないはず!
さっきのは全然ロマンチックじゃないけど、出会いって言えば出会いイベ。
きっとこれから、私のことをあの生徒会の誰かが呼びにきて、これからある生徒総会で役員の1人として紹介するはずなのよ。
だって、ゲームでは私は生徒会役員の1人で、高位貴族である役員達をみんなメロメロにする。
そういう未来が約束されているんだから!
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