195 / 196
プリュム・シャルール 8
しおりを挟む
今日は待ちに待った生徒総会の日。
朝からソワソワする気持ちが止まらない。
この学園に入った時から、なぜかシナリオの通りに進むことがなくって、少し心が折れかけていたんだけど、思い出したの、この生徒総会は物語のはじめの方のイベントのひとつだったってこと。
きっと今日、総会が始まって役員紹介が始まったら、私の名前が呼ばれて、壇上に上がることになるんだわ。
せっかくの晴れの日なのに、今ひとつおしゃれができないことがちょっと不満なんだけど……
まぁ、私は元が十分かわいいから、その他大勢とおんなじ格好でも、逆に目立って見えるでしょ。
この一週間、授業を大っぴらに受けなくて良いなんて、どこが罰になるのかわからない罰だったけど、狭い寮の部屋から出ることができなかったのは、少し退屈だったわ。
まだ、うちから持ってきた焼き菓子が十分に残っていたから、口寂しいって事はなかったけど。
また、友達に配る分が必要ってことで、うちから送ってもらおうかな。
お父さんも気を利かせて、いつも食べてる庶民の食べるようなヤツではなくて、この国では珍しい隣国からのお菓子でも持ってきてくれたら良いのに。
ほぼ隣国との交易がないらしいこの国では、それでなくてもなんでも珍しくて高値で売れるって、確か言ってたし。
なまものは隣国から持って来るのに時間がかかるから無理かもしれないけど、焼き菓子のような物なら大丈夫じゃないのかなぁ。
今度ただのお菓子では殿下達に喜んでもらえないから、隣国のもの送ってっておねだりしようかな。
今日から私は生徒会役員になって、殿下達ととても近い存在になるのだから、玉の輿に乗るための必要経費ってものでしょ。
隣国から持ち込むものは、『嵩張らなくて金になるもの』って言ってたけど、私の将来のためにはそんなこと言ってられないと思うし……そうだ、スクロールも中級のもの、もちろんできればそれ以上のものを早く手に入れてくれないと、シナリオのような治癒の魔法使うことができないし。
お父様だけが知っている秘密の交易路で、うちの商会は成り上がったのだから、このまま私が王妃様になるまで、十分その役割を果たしてもらわないとね。
「頼りにしていますわ、お父様」
聞いていても全くつまらない授業の最中、ウズウズする気持ちを抑え込むためにも、私はこれから起こることの予行練習と、未来の自分の姿を想像しながら、午後の授業の代わりに行われる生徒総会を待っている。
昼食を食堂で食べた後、生徒会の誰かが呼びに来るのかしら?
もしかしたら、私のクラス、バグで一番下のクラスになっちゃったから、教室までは迎えにきてもらえないかもしれないけど、食堂で待っていればきっと私のこと見つけてくれるわよね。
誰がきてくれるのかしら?
まさか、殿下?
初めからそのような事はないかもね流石に……。
なぜか、出会いのイベントがいまだに起こってくれないから、もしかしたら殿下達私の姿を知らないかもしれないのよね。
でも、私のこの美しいピンクの髪を見れば、一目でこの国では私が『聖女』と言われる存在だと気がつくはずよね。
はずむ心をなんとか抑えて、私は午前の授業が終わってすぐに食堂へ急いだ。
そういえば、食堂の席の場所もなんとなくクラスごとに決まってるとかなんとか聞いたきもするけど……
私には関係のないことだわ。なんと言っても次の王妃なのだから。
食堂も利用をするのが今回初めてだから、とにかく高貴な人たちが座る席を見つけて、その人達の目につく席を確保しないと。
さすがにそこにいきなり座ることができないことぐらいわかってるもの。
授業終了とともに、全力疾走で食堂を目指したわ。
シナリオとは違うことばかり起こるこの学園だけれど、校舎の配置はゲームの時と変わっていないから、隅から隅までわかっているのよ。
なぜか入ることができない場所があることが納得できないんだけど。
途中ですれ違う人、すれ違う人、みんな驚いたような顔をするんだけど……私の走りのフォームがカッコ良すぎるからかしら。
食堂に着いた時にはまだ誰も席に着いている人はいなかった。
一番のりよ。
入り口のあたりに今日のおすすめのメニューの食品サンプルのようなものもなかったし、目に入るところのどこにも紙で書かれたメニューも見当たらない。
どのようにして注文するのかもわからないので、とにかく目指す席を探して誰かが注文するのを待つことにするわ。
思いの外広い食堂。
この学園のほとんどの人が食べるのだから当たり前っていえばそうなんだけど、私は昼食抜きで校内を歩き回って……いえ、探索して……んー、とにかく、そう、健康とスタイルを維持するためのウオーキングをしていてこれまで利用することが無かったけど、これからはここで……ムフフ……。
あらやだ、これからの攻略対象者とのいろいろを想像してしまったわ。
食堂というにはあまりにもキラキラしている空間。
平民が使う食堂とは名前が同じ別の空間。
教室は、ゲームで見た時と変わらない感じだったけど、この食堂は一流ホテルのラウンジとレストランがワンフロアーになっているみたいに見える。
入り口に近い方がキラキラ度が落ち着いている感じ。奥の方。数段高くなっているところは、低めのパーテーションで遮られているみたいで、座ると全くその姿が見えなくなっているよう。
そっちの方の天井のシャンデリアが豪華だから、きっとあちらの方が選ばれし者の使う場所なのよ、きっと。
ということは、私が使っても良いということよね、まだ誰もいないけど。
パーテーションの境目には、給仕係のような使用人の姿が見える。
「失礼ですが、お見かけしたことがないお方。どなたかのご紹介ですか?」
ステップを数段登って、その高くなったフロアーに入ろうとしたら、たちんぼしているだけだと思った使用人が声をかけてきて、私が入るのを遮った。
「この場所は、認証メダルをお持ちでない方は入ることが叶わない場所です。お持ちでなければ、メダルをお持ちの方とご一緒でなければ入ることができません」
「えっ……」
何を言ってるのかしら、なんだかまるで何も知らない子供を見るような視線を向けられているようなイヤな感じ。
私はそんな態度をとる使用人は無視して、奥に進もうとするけど、誰に抑えられている訳でもなく前に進むことができないし、ならば中を見てやろうとしたけど、奥のフロアーはまるでキリが立ち込めたように中を見ることができない。
それでも前へ進もうとすると、私の体は当たった痛みは感じなかったけどゴムボールに弾かれたかのように、ステップの下まで飛ばされ、尻餅をついてしまっていた。
朝からソワソワする気持ちが止まらない。
この学園に入った時から、なぜかシナリオの通りに進むことがなくって、少し心が折れかけていたんだけど、思い出したの、この生徒総会は物語のはじめの方のイベントのひとつだったってこと。
きっと今日、総会が始まって役員紹介が始まったら、私の名前が呼ばれて、壇上に上がることになるんだわ。
せっかくの晴れの日なのに、今ひとつおしゃれができないことがちょっと不満なんだけど……
まぁ、私は元が十分かわいいから、その他大勢とおんなじ格好でも、逆に目立って見えるでしょ。
この一週間、授業を大っぴらに受けなくて良いなんて、どこが罰になるのかわからない罰だったけど、狭い寮の部屋から出ることができなかったのは、少し退屈だったわ。
まだ、うちから持ってきた焼き菓子が十分に残っていたから、口寂しいって事はなかったけど。
また、友達に配る分が必要ってことで、うちから送ってもらおうかな。
お父さんも気を利かせて、いつも食べてる庶民の食べるようなヤツではなくて、この国では珍しい隣国からのお菓子でも持ってきてくれたら良いのに。
ほぼ隣国との交易がないらしいこの国では、それでなくてもなんでも珍しくて高値で売れるって、確か言ってたし。
なまものは隣国から持って来るのに時間がかかるから無理かもしれないけど、焼き菓子のような物なら大丈夫じゃないのかなぁ。
今度ただのお菓子では殿下達に喜んでもらえないから、隣国のもの送ってっておねだりしようかな。
今日から私は生徒会役員になって、殿下達ととても近い存在になるのだから、玉の輿に乗るための必要経費ってものでしょ。
隣国から持ち込むものは、『嵩張らなくて金になるもの』って言ってたけど、私の将来のためにはそんなこと言ってられないと思うし……そうだ、スクロールも中級のもの、もちろんできればそれ以上のものを早く手に入れてくれないと、シナリオのような治癒の魔法使うことができないし。
お父様だけが知っている秘密の交易路で、うちの商会は成り上がったのだから、このまま私が王妃様になるまで、十分その役割を果たしてもらわないとね。
「頼りにしていますわ、お父様」
聞いていても全くつまらない授業の最中、ウズウズする気持ちを抑え込むためにも、私はこれから起こることの予行練習と、未来の自分の姿を想像しながら、午後の授業の代わりに行われる生徒総会を待っている。
昼食を食堂で食べた後、生徒会の誰かが呼びに来るのかしら?
もしかしたら、私のクラス、バグで一番下のクラスになっちゃったから、教室までは迎えにきてもらえないかもしれないけど、食堂で待っていればきっと私のこと見つけてくれるわよね。
誰がきてくれるのかしら?
まさか、殿下?
初めからそのような事はないかもね流石に……。
なぜか、出会いのイベントがいまだに起こってくれないから、もしかしたら殿下達私の姿を知らないかもしれないのよね。
でも、私のこの美しいピンクの髪を見れば、一目でこの国では私が『聖女』と言われる存在だと気がつくはずよね。
はずむ心をなんとか抑えて、私は午前の授業が終わってすぐに食堂へ急いだ。
そういえば、食堂の席の場所もなんとなくクラスごとに決まってるとかなんとか聞いたきもするけど……
私には関係のないことだわ。なんと言っても次の王妃なのだから。
食堂も利用をするのが今回初めてだから、とにかく高貴な人たちが座る席を見つけて、その人達の目につく席を確保しないと。
さすがにそこにいきなり座ることができないことぐらいわかってるもの。
授業終了とともに、全力疾走で食堂を目指したわ。
シナリオとは違うことばかり起こるこの学園だけれど、校舎の配置はゲームの時と変わっていないから、隅から隅までわかっているのよ。
なぜか入ることができない場所があることが納得できないんだけど。
途中ですれ違う人、すれ違う人、みんな驚いたような顔をするんだけど……私の走りのフォームがカッコ良すぎるからかしら。
食堂に着いた時にはまだ誰も席に着いている人はいなかった。
一番のりよ。
入り口のあたりに今日のおすすめのメニューの食品サンプルのようなものもなかったし、目に入るところのどこにも紙で書かれたメニューも見当たらない。
どのようにして注文するのかもわからないので、とにかく目指す席を探して誰かが注文するのを待つことにするわ。
思いの外広い食堂。
この学園のほとんどの人が食べるのだから当たり前っていえばそうなんだけど、私は昼食抜きで校内を歩き回って……いえ、探索して……んー、とにかく、そう、健康とスタイルを維持するためのウオーキングをしていてこれまで利用することが無かったけど、これからはここで……ムフフ……。
あらやだ、これからの攻略対象者とのいろいろを想像してしまったわ。
食堂というにはあまりにもキラキラしている空間。
平民が使う食堂とは名前が同じ別の空間。
教室は、ゲームで見た時と変わらない感じだったけど、この食堂は一流ホテルのラウンジとレストランがワンフロアーになっているみたいに見える。
入り口に近い方がキラキラ度が落ち着いている感じ。奥の方。数段高くなっているところは、低めのパーテーションで遮られているみたいで、座ると全くその姿が見えなくなっているよう。
そっちの方の天井のシャンデリアが豪華だから、きっとあちらの方が選ばれし者の使う場所なのよ、きっと。
ということは、私が使っても良いということよね、まだ誰もいないけど。
パーテーションの境目には、給仕係のような使用人の姿が見える。
「失礼ですが、お見かけしたことがないお方。どなたかのご紹介ですか?」
ステップを数段登って、その高くなったフロアーに入ろうとしたら、たちんぼしているだけだと思った使用人が声をかけてきて、私が入るのを遮った。
「この場所は、認証メダルをお持ちでない方は入ることが叶わない場所です。お持ちでなければ、メダルをお持ちの方とご一緒でなければ入ることができません」
「えっ……」
何を言ってるのかしら、なんだかまるで何も知らない子供を見るような視線を向けられているようなイヤな感じ。
私はそんな態度をとる使用人は無視して、奥に進もうとするけど、誰に抑えられている訳でもなく前に進むことができないし、ならば中を見てやろうとしたけど、奥のフロアーはまるでキリが立ち込めたように中を見ることができない。
それでも前へ進もうとすると、私の体は当たった痛みは感じなかったけどゴムボールに弾かれたかのように、ステップの下まで飛ばされ、尻餅をついてしまっていた。
60
あなたにおすすめの小説
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる