転生したら当て馬王子でした~絶対攻略される王太子の俺は、フラグを折って幸せになりたい~

HIROTOYUKI

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プリュム・シャルール 8

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 今日は待ちに待った生徒総会の日。

 朝からソワソワする気持ちが止まらない。

 この学園に入った時から、なぜかシナリオの通りに進むことがなくって、少し心が折れかけていたんだけど、思い出したの、この生徒総会は物語のはじめの方のイベントのひとつだったってこと。

 きっと今日、総会が始まって役員紹介が始まったら、私の名前が呼ばれて、壇上に上がることになるんだわ。

 せっかくの晴れの日なのに、今ひとつおしゃれができないことがちょっと不満なんだけど……

 まぁ、私は元が十分かわいいから、その他大勢とおんなじ格好でも、逆に目立って見えるでしょ。

 この一週間、授業を大っぴらに受けなくて良いなんて、どこが罰になるのかわからない罰だったけど、狭い寮の部屋から出ることができなかったのは、少し退屈だったわ。

 まだ、うちから持ってきた焼き菓子が十分に残っていたから、口寂しいって事はなかったけど。

 また、友達に配る分が必要ってことで、うちから送ってもらおうかな。

 お父さんも気を利かせて、いつも食べてる庶民の食べるようなヤツではなくて、この国では珍しい隣国からのお菓子でも持ってきてくれたら良いのに。

 ほぼ隣国との交易がないらしいこの国では、それでなくてもなんでも珍しくて高値で売れるって、確か言ってたし。

 なまものは隣国から持って来るのに時間がかかるから無理かもしれないけど、焼き菓子のような物なら大丈夫じゃないのかなぁ。

 今度ただのお菓子では殿下達に喜んでもらえないから、隣国のもの送ってっておねだりしようかな。

 今日から私は生徒会役員になって、殿下達ととても近い存在になるのだから、玉の輿に乗るための必要経費ってものでしょ。

 隣国から持ち込むものは、『嵩張らなくて金になるもの』って言ってたけど、私の将来のためにはそんなこと言ってられないと思うし……そうだ、スクロールも中級のもの、もちろんできればそれ以上のものを早く手に入れてくれないと、シナリオのような治癒の魔法使うことができないし。

 お父様だけが知っている秘密の交易路で、うちの商会は成り上がったのだから、このまま私が王妃様になるまで、十分その役割を果たしてもらわないとね。

「頼りにしていますわ、お父様」

 聞いていても全くつまらない授業の最中、ウズウズする気持ちを抑え込むためにも、私はこれから起こることの予行練習と、未来の自分の姿を想像しながら、午後の授業の代わりに行われる生徒総会を待っている。

 昼食を食堂で食べた後、生徒会の誰かが呼びに来るのかしら?

 もしかしたら、私のクラス、バグで一番下のクラスになっちゃったから、教室までは迎えにきてもらえないかもしれないけど、食堂で待っていればきっと私のこと見つけてくれるわよね。

 誰がきてくれるのかしら?

 まさか、殿下?

 初めからそのような事はないかもね流石に……。

 なぜか、出会いのイベントがいまだに起こってくれないから、もしかしたら殿下達私の姿を知らないかもしれないのよね。

 でも、私のこの美しいピンクの髪を見れば、一目でこの国では私が『聖女』と言われる存在だと気がつくはずよね。

 はずむ心をなんとか抑えて、私は午前の授業が終わってすぐに食堂へ急いだ。

 そういえば、食堂の席の場所もなんとなくクラスごとに決まってるとかなんとか聞いたきもするけど……

 私には関係のないことだわ。なんと言っても次の王妃なのだから。

 食堂も利用をするのが今回初めてだから、とにかく高貴な人たちが座る席を見つけて、その人達の目につく席を確保しないと。

 さすがにそこにいきなり座ることができないことぐらいわかってるもの。
 
 授業終了とともに、全力疾走で食堂を目指したわ。

 シナリオとは違うことばかり起こるこの学園だけれど、校舎の配置はゲームの時と変わっていないから、隅から隅までわかっているのよ。

 なぜか入ることができない場所があることが納得できないんだけど。

 途中ですれ違う人、すれ違う人、みんな驚いたような顔をするんだけど……私の走りのフォームがカッコ良すぎるからかしら。

 食堂に着いた時にはまだ誰も席に着いている人はいなかった。

 一番のりよ。

 入り口のあたりに今日のおすすめのメニューの食品サンプルのようなものもなかったし、目に入るところのどこにも紙で書かれたメニューも見当たらない。

 どのようにして注文するのかもわからないので、とにかく目指す席を探して誰かが注文するのを待つことにするわ。

 思いの外広い食堂。

 この学園のほとんどの人が食べるのだから当たり前っていえばそうなんだけど、私は昼食抜きで校内を歩き回って……いえ、探索して……んー、とにかく、そう、健康とスタイルを維持するためのウオーキングをしていてこれまで利用することが無かったけど、これからはここで……ムフフ……。

 あらやだ、これからの攻略対象者イケメン達とのいろいろを想像してしまったわ。

 食堂というにはあまりにもキラキラしている空間。

 平民が使う食堂とは名前が同じ別の空間。

 教室は、ゲームで見た時と変わらない感じだったけど、この食堂は一流ホテルのラウンジとレストランがワンフロアーになっているみたいに見える。

 入り口に近い方がキラキラ度が落ち着いている感じ。奥の方。数段高くなっているところは、低めのパーテーションで遮られているみたいで、座ると全くその姿が見えなくなっているよう。

 そっちの方の天井のシャンデリアが豪華だから、きっとあちらの方が選ばれし者の使う場所なのよ、きっと。

 ということは、私が使っても良いということよね、まだ誰もいないけど。

 パーテーションの境目には、給仕係のような使用人の姿が見える。

「失礼ですが、お見かけしたことがないお方。どなたかのご紹介ですか?」

 ステップを数段登って、その高くなったフロアーに入ろうとしたら、たちんぼしているだけだと思った使用人が声をかけてきて、私が入るのを遮った。

「この場所は、認証メダルをお持ちでない方は入ることが叶わない場所です。お持ちでなければ、メダルをお持ちの方とご一緒でなければ入ることができません」

「えっ……」

 何を言ってるのかしら、なんだかまるで何も知らない子供を見るような視線を向けられているようなイヤな感じ。

 私はそんな態度をとる使用人は無視して、奥に進もうとするけど、誰に抑えられている訳でもなく前に進むことができないし、ならば中を見てやろうとしたけど、奥のフロアーはまるでキリが立ち込めたように中を見ることができない。

 それでも前へ進もうとすると、私の体は当たった痛みは感じなかったけどゴムボールに弾かれたかのように、ステップの下まで飛ばされ、尻餅をついてしまっていた。

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