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チュート殿下 10 青天の霹靂って、こっちにもあるの?
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すぐ近くに雷が落ちたのか、物凄い音と光が閉じられたカーテンから部屋の中を照らし出す中、これまでの『僕』の記憶の中にまるでない酷く慌てた様子で、雷に負けない程の音を立てながらマーシュがドアを蹴破る勢いで入ってきた。
いつ伝家の宝刀『記憶喪失』発動しようかと、少し緊張しながらドアを見つめていた『俺』は、そんなことはどうでもいいような侍従たちの様子にただ呑まれるだけだった。
あれ?
いつの間にか部屋の明かりが消えている。
さっきの雷でブレイカーが落ちたのか?
いやいや、この世界に電気はないはずだ。電化製品に似た動きをするものは、すべて魔力で動いているはず。じゃあ何で部屋の明かりはおちたんだ?
あれ?
『俺』の体は何で小刻みに震えているんだ?
それに、明かりの事なんてどうでもいい事に思考を巡らせているんだ?
視線もいつの間にか正面から外れているぞ、本能が正面を見るなと訴えかけてくる!
ドアから視線をそらすが如くその対面である窓の外を何となく見ていたらしい『俺』。
それはほんの1秒にも満たない時間。
ガシッと両肩を掴まれた衝撃で、意識とともに視界が現実世界に引き戻された。
『俺』にとっては一瞬、きっと現実世界でも一瞬でドアから『俺』のいる広い寝室の一番奥にあるベットの横まで移動してきたマーシュの、普段ならば考えられない『俺』の肩に乗せられた腕の力の強さと、暗い部屋の中背後に轟と稲妻を纏った、墨で潰されたように黒い顔面の中目だけ光っている姿に、『俺』の体は今度は大きく震えた。
闇の中光る目は、そう、『俺』の言葉を期待する、ただそれだけ……。
(さっきリフルに言った良い天気だね、は流石にねぇ……)
外はこの城の頭上に雷雲が居座っているんじゃないか?ってくらい、ドバンドバンと雷を落としている。
厚いカーテンが下ろされているはずなのに目を焼くような光と、鼓膜大丈夫ってほどの轟が響きわたる中、避雷針の心配より我が身が心配。酸素が薄く感じるのは気のせいか?
『俺』にももちろん『僕』にも全く記憶がないマーシュの様子に……。
「……青天の霹靂?」
まさに、今の『俺』の心と野外の状況を的確に表した言葉だと思うけど、口からこぼれた後に、これを今言う?とこころのなかで思わず自分に突っ込んだよ!
轟音の中でそう大きくない『俺』の声聞こえたのかな?そんな心配は一瞬、『俺』の肩を掴む力がギュッと強められたことから、マーシュの耳に届いていたことはわかったけど……。
『どひゃ~‼︎』
目の前30センチで繰り広げられた『俺』の時ももちろん『僕』の時も全く見たことがない、紳士の目から滂沱の涙!
気づけば部屋中の明かりはその役目を取り戻し仕事をしていた。
だから見えたよ、マーシュの後ろで同じく声もなく目が大崩壊のリフルが、口元に両手の握り拳を当てながら真っ赤な顔でこっちを見つめている姿が……。
『俺』が視線を自分の背後のリフルに移したのがわかったのか、意識を自分に戻そうとしてか、肩に置かれたマーシュの腕にまた少し力が入ったのがわかって、意識も視線も目の前30センチに……。
まだまだ言葉を期待している目ですよね。まぁあれじゃあねぇ……。そもそも青天の霹靂ってこっちにも同じ言葉あるの?
「えーっと……そのぉ……雷はここに落ちてきたりしないの?」
オーぉ!テンパって気にはなっていることだけど、どうでもいいことを、マーシュに対しての第一声?で浴びせてしまったよ!
そんな『俺』の葛藤は無駄だと言わんばかりに、『俺』の声を聞いたマーシュは内容はどうでも良かったようで、『俺』の肩に置いた手を前後に揺らしながら、つまり『俺』の肩をガクガク言わせながら、首を大きく後ろに回して、彼の背後にいるリフルに視線を向けて、何度も何度も頷いている。
リフルもそんなマーシュに頷き返していたが、ガクガクいわされて目を回しそうになっている『俺』にも気づいたのか、慌てて興奮状態のマーシュに縋り付いてくれた。
「侍従長!まって!止まって!その腕を離して!殿下が!殿下の!あぁ~‼︎」
そこで、『俺』の意識もブラックアウト、その後どうなったかは……知らないって……。
いつ伝家の宝刀『記憶喪失』発動しようかと、少し緊張しながらドアを見つめていた『俺』は、そんなことはどうでもいいような侍従たちの様子にただ呑まれるだけだった。
あれ?
いつの間にか部屋の明かりが消えている。
さっきの雷でブレイカーが落ちたのか?
いやいや、この世界に電気はないはずだ。電化製品に似た動きをするものは、すべて魔力で動いているはず。じゃあ何で部屋の明かりはおちたんだ?
あれ?
『俺』の体は何で小刻みに震えているんだ?
それに、明かりの事なんてどうでもいい事に思考を巡らせているんだ?
視線もいつの間にか正面から外れているぞ、本能が正面を見るなと訴えかけてくる!
ドアから視線をそらすが如くその対面である窓の外を何となく見ていたらしい『俺』。
それはほんの1秒にも満たない時間。
ガシッと両肩を掴まれた衝撃で、意識とともに視界が現実世界に引き戻された。
『俺』にとっては一瞬、きっと現実世界でも一瞬でドアから『俺』のいる広い寝室の一番奥にあるベットの横まで移動してきたマーシュの、普段ならば考えられない『俺』の肩に乗せられた腕の力の強さと、暗い部屋の中背後に轟と稲妻を纏った、墨で潰されたように黒い顔面の中目だけ光っている姿に、『俺』の体は今度は大きく震えた。
闇の中光る目は、そう、『俺』の言葉を期待する、ただそれだけ……。
(さっきリフルに言った良い天気だね、は流石にねぇ……)
外はこの城の頭上に雷雲が居座っているんじゃないか?ってくらい、ドバンドバンと雷を落としている。
厚いカーテンが下ろされているはずなのに目を焼くような光と、鼓膜大丈夫ってほどの轟が響きわたる中、避雷針の心配より我が身が心配。酸素が薄く感じるのは気のせいか?
『俺』にももちろん『僕』にも全く記憶がないマーシュの様子に……。
「……青天の霹靂?」
まさに、今の『俺』の心と野外の状況を的確に表した言葉だと思うけど、口からこぼれた後に、これを今言う?とこころのなかで思わず自分に突っ込んだよ!
轟音の中でそう大きくない『俺』の声聞こえたのかな?そんな心配は一瞬、『俺』の肩を掴む力がギュッと強められたことから、マーシュの耳に届いていたことはわかったけど……。
『どひゃ~‼︎』
目の前30センチで繰り広げられた『俺』の時ももちろん『僕』の時も全く見たことがない、紳士の目から滂沱の涙!
気づけば部屋中の明かりはその役目を取り戻し仕事をしていた。
だから見えたよ、マーシュの後ろで同じく声もなく目が大崩壊のリフルが、口元に両手の握り拳を当てながら真っ赤な顔でこっちを見つめている姿が……。
『俺』が視線を自分の背後のリフルに移したのがわかったのか、意識を自分に戻そうとしてか、肩に置かれたマーシュの腕にまた少し力が入ったのがわかって、意識も視線も目の前30センチに……。
まだまだ言葉を期待している目ですよね。まぁあれじゃあねぇ……。そもそも青天の霹靂ってこっちにも同じ言葉あるの?
「えーっと……そのぉ……雷はここに落ちてきたりしないの?」
オーぉ!テンパって気にはなっていることだけど、どうでもいいことを、マーシュに対しての第一声?で浴びせてしまったよ!
そんな『俺』の葛藤は無駄だと言わんばかりに、『俺』の声を聞いたマーシュは内容はどうでも良かったようで、『俺』の肩に置いた手を前後に揺らしながら、つまり『俺』の肩をガクガク言わせながら、首を大きく後ろに回して、彼の背後にいるリフルに視線を向けて、何度も何度も頷いている。
リフルもそんなマーシュに頷き返していたが、ガクガクいわされて目を回しそうになっている『俺』にも気づいたのか、慌てて興奮状態のマーシュに縋り付いてくれた。
「侍従長!まって!止まって!その腕を離して!殿下が!殿下の!あぁ~‼︎」
そこで、『俺』の意識もブラックアウト、その後どうなったかは……知らないって……。
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