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チュート殿下 15 ごめん、本当のこと全ては話せない……
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そう言えば、この離宮の中を見るのは初めてになるのかな?寝室から、食堂、それからここと、全く廊下を通る事なく移動して来たけど……。
明るいサンルームの中央に置かれたソファーセットは、子供用なのかアークが難なく座る事ができる高さのもの。
まぁこうゆう場所に座った時の定番、なんとなく摘めるお菓子と、紅茶ではなく麦茶のようなものが用意されている。こういう時常時発動型の鑑定を垂れ流しにしているアークは凄いな。知りたいと思った事に限って情報を教えてくれるスキルとのコンビネーション。意識としては17歳の『俺』が舌を捲く賢さ。この事を誰も知らなかったのかと思うと心が痛い。
食事が終わった直後でもあり、お菓子を摘むことなく、ソファーに腰を掛けると、一番気になっていた事をマーシュに尋ねる事にした。って言うか、なんか自然な形で対話ができる雰囲気が醸し出されているんだけど……。こんな風に、侍従達と膝をつい会わせるような形になるのって、アークが生まれてきて初めてだよね?
スキルの是の応えが聞こえた。
目線をアークに合わせるように片膝をついた形でソファーの対面で控える二人の侍従。
主人格?が『俺』になっちゃった時点で今までのアークとは根本的なところが違うわけだから、この世界でこのまま生きていくのならば、彼らに何も言わずに過ごすことは難しいだろう。勿論何もかも包み隠さずというわけにはいかないけどね、そうすれば違う意味で隔離されかねない。
……でもなんとなく何も話さなくてもこのまま流れるように流れる気もする、目の前の二人を見ると……。
アークも変わったけど彼らも変わったの?それともこれが素なの?殿下スキスキオーラが目に見える気がするんだけど……。
アークのどんな態度にも喜びを隠しきれない二人。特にリフルの背後には犬の尻尾のようなものが大きく振られている幻像まで見える気さえする。
席に着いてからこの間数秒、スキルのお陰か『僕』の方のスペックの高さの恩恵か、思考速度も随分早い気がする。
改まって声を掛けるのはなんか緊張するけど、時間は有限だからね。
「……実は今までの記憶が…………と言ってもわざと騙されてはくれるけど、納得はしてくれないだろうね……」
リフルは顔色が赤くなったり青くなったりしているけれど、マーシュはお子様がこんな大人のように気持ち悪い話し方をしているにもかかわらず、笑顔を貼り付けた無表情というか、『僕』の記憶の中のいつもと変わらない姿で、『本当のこと言わないとわかっていますね』とその目で語っている。
でも、ごめん、本当のこと全ては話せない……。
「帯剣の儀の時の強い光を浴びた瞬間に、それまで霧の中のような場所にいた心が、晴れた世界に戻ってこれたような、今はそんな感じ。だから、記憶はきちんと残っているよ。マーシュのこともリフルの事もきちんと覚えている。反応をほとんど返す事がなかった私を今まで見捨てることもなく、面倒を見てくれてありがとう」
おぉーアークになってこんなに話したの初めてだよ。二人とも驚いているけど、自分でも驚いているよ。こんな可愛らしい声で、舌足らずにも関わらず、偉そうなこと言っている5歳児に。
それに……そうだよねこんな自分の事を見捨てないでいてくれるのは、この二人とこの離宮で働いてくれている他数名くらいだけだよね。
この体の親であるオウサマとオウヒサマは、生後半年も経たない時に、反応の薄いアークを見限ったのだ。王の主治医の診察結果と、王家お抱えの占い師のお告げが彼らの求める者にほど遠かったから。
驚く事に『僕』はしっかり覚えていたんだよ、感覚としてはテレビの中のドラマを観ているような感覚であったとしても。『僕』のやけに冷めた感覚が、今直接にアークの感情を揺さぶる痛みは感じさせないけど、その事が『俺』には逆に『僕』が負った心の傷が深かった事を思い知る。
明るいサンルームの中央に置かれたソファーセットは、子供用なのかアークが難なく座る事ができる高さのもの。
まぁこうゆう場所に座った時の定番、なんとなく摘めるお菓子と、紅茶ではなく麦茶のようなものが用意されている。こういう時常時発動型の鑑定を垂れ流しにしているアークは凄いな。知りたいと思った事に限って情報を教えてくれるスキルとのコンビネーション。意識としては17歳の『俺』が舌を捲く賢さ。この事を誰も知らなかったのかと思うと心が痛い。
食事が終わった直後でもあり、お菓子を摘むことなく、ソファーに腰を掛けると、一番気になっていた事をマーシュに尋ねる事にした。って言うか、なんか自然な形で対話ができる雰囲気が醸し出されているんだけど……。こんな風に、侍従達と膝をつい会わせるような形になるのって、アークが生まれてきて初めてだよね?
スキルの是の応えが聞こえた。
目線をアークに合わせるように片膝をついた形でソファーの対面で控える二人の侍従。
主人格?が『俺』になっちゃった時点で今までのアークとは根本的なところが違うわけだから、この世界でこのまま生きていくのならば、彼らに何も言わずに過ごすことは難しいだろう。勿論何もかも包み隠さずというわけにはいかないけどね、そうすれば違う意味で隔離されかねない。
……でもなんとなく何も話さなくてもこのまま流れるように流れる気もする、目の前の二人を見ると……。
アークも変わったけど彼らも変わったの?それともこれが素なの?殿下スキスキオーラが目に見える気がするんだけど……。
アークのどんな態度にも喜びを隠しきれない二人。特にリフルの背後には犬の尻尾のようなものが大きく振られている幻像まで見える気さえする。
席に着いてからこの間数秒、スキルのお陰か『僕』の方のスペックの高さの恩恵か、思考速度も随分早い気がする。
改まって声を掛けるのはなんか緊張するけど、時間は有限だからね。
「……実は今までの記憶が…………と言ってもわざと騙されてはくれるけど、納得はしてくれないだろうね……」
リフルは顔色が赤くなったり青くなったりしているけれど、マーシュはお子様がこんな大人のように気持ち悪い話し方をしているにもかかわらず、笑顔を貼り付けた無表情というか、『僕』の記憶の中のいつもと変わらない姿で、『本当のこと言わないとわかっていますね』とその目で語っている。
でも、ごめん、本当のこと全ては話せない……。
「帯剣の儀の時の強い光を浴びた瞬間に、それまで霧の中のような場所にいた心が、晴れた世界に戻ってこれたような、今はそんな感じ。だから、記憶はきちんと残っているよ。マーシュのこともリフルの事もきちんと覚えている。反応をほとんど返す事がなかった私を今まで見捨てることもなく、面倒を見てくれてありがとう」
おぉーアークになってこんなに話したの初めてだよ。二人とも驚いているけど、自分でも驚いているよ。こんな可愛らしい声で、舌足らずにも関わらず、偉そうなこと言っている5歳児に。
それに……そうだよねこんな自分の事を見捨てないでいてくれるのは、この二人とこの離宮で働いてくれている他数名くらいだけだよね。
この体の親であるオウサマとオウヒサマは、生後半年も経たない時に、反応の薄いアークを見限ったのだ。王の主治医の診察結果と、王家お抱えの占い師のお告げが彼らの求める者にほど遠かったから。
驚く事に『僕』はしっかり覚えていたんだよ、感覚としてはテレビの中のドラマを観ているような感覚であったとしても。『僕』のやけに冷めた感覚が、今直接にアークの感情を揺さぶる痛みは感じさせないけど、その事が『俺』には逆に『僕』が負った心の傷が深かった事を思い知る。
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