転生したら当て馬王子でした~絶対攻略される王太子の俺は、フラグを折って幸せになりたい~

HIROTOYUKI

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チュート殿下 17 そりゃあ、前世を覚えてるんだから、産まれた時も覚えてるよ

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 マーシュにどこまで説明すればいいか考えているうちに、『僕』の心の源泉近くの記憶まで掘り起こしちゃったよ。

 生まれたてのところから、もっと瞑想状態まで行ったら、生まれる前のことまで思い出せそう……。

 って、前世までしっかり覚えてるんだった、俺……。

 マーシュもリフルもアークの味方である前提で話を進めていく気であるけど、あくまでも二人の雇い主は現王陛下であるし、特にマーシュは陛下の同級生であるし、鑑定君でも【王の忠臣】て出てくるくらいだから。『僕』が抱いていた両親に対する感情は、伝えない方がいいよな。いい気しないもん、きっと……。

 とりあえず一番身近に起こった、今回の『暗殺未遂』事件について、聞いてみたいと思う。この離宮に来た理由も全く聞いていないからね。

 このことについて俺が話せることは少ない、閃光がぶち当たる瞬間まで俺は存在していないようなものだからね。

 心の底にアクセス?してみると、『僕』はなんとなく予想していたような気配がある。突き詰めると一気に沈みそうな心持ちがするので、これ以上記憶にダイブするのはやめたほうが良さそう。

 鑑定君?スキル君?(名前つけるのも逆に怖そう、なんかこっちにもテンプレありそうで…)も、まだ今これ以上思考に沈むのはダメよと言っている。

「まだ犯人は判明していないのか?」

 あれから、アークの周りでは引っ越し以外何の変化もなく営みが過ぎていたので、捕まったとかはないかなぁと思いつつも、変に気を遣って、〈子供だから知らせないようにしよう〉とか、全くないとも言えないから、一応聞いてみた。

 マーシュはいつもの無表情に、若干額にしわが寄る程度の色を付けて、直立のまま詫びの言葉を述べた。

「申し訳ございません。総力を上げて当日の状況把握に努めておりますが、儀式に集まった貴族全ての聴取にも手間取っているようでして……何分殿下の初の御目見えということもあり、普段城に上がることのない遠方の領主も登城しておりまして、名簿との照合すら終わっていないという、ていたらくでございまして」

 自分が指揮を執れば、ここまで後手に回らないとその表情が語っている。

 今回『帯剣の儀』を行った5歳になる男子は、勿論アークだけではない。

 貴族世界のご多分に漏れず、次期国王になるであろう王太子が結婚すれば、それに合わせて結婚する貴族も増えるし、また生まれてくるだろう王子・王女の、ご学友、婚約者を目指して生まれてくる子供の数も劇的に上がったりする。

 今回も、アーク誕生の1年前から続くベビーブームで、一桁も子供の数が違ったりするのはどんなものなのだろうか。

 『帯剣の儀』は貴族の男児が5歳になると行う儀式であるが、まぁ要するに初の御目見えの会だったりするわけで、若干5歳にしてその子供の器を測る会なのだから、貴族の世界もそう生きやすいものでもない。

 この世界ではそれよりも10歳での精霊契約の方が、人生において大問題であるが、今回は『帯剣の儀』のことだ。

 『帯剣の儀』は特定の場所で行う必要があるものではない。言ってみればただのお披露目会であるのだから、それぞれの家で行えばいいだけであるのだが、時代を経るにつけて段々と規模を大きくし、その貴族の力を表す一つのバローメータとして使われてきた。

 今回は王族のそれもただ一人の長子のお披露目会である、その神輿にともに乗るべく上級貴族の子息が挙って今回のこの王城での『帯剣の儀』に参加することに名乗りを上げた。

 王城側も、一生に一度の目出度い儀式であることからも、領地の遠近を問わず参加を認めることとして、王城主催の大舞踏会のごとく、城一番の大広間で執り行われたのである。

 そして、しずしずと儀式が執り行われた最後に、アースクエイク・デューク・テンペスト殿下(つまり、オレ)が今回の祭司役の宰相閣下から、剣を受け取り帯刀して一段高いところに登壇したタイミングで、強い光の矢のようなものが飛んできたのである。
 

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