転生したら当て馬王子でした~絶対攻略される王太子の俺は、フラグを折って幸せになりたい~

HIROTOYUKI

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チュート殿下 39 儀式の間・キラキラ感増しているような気がする。

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 キールも俺の中に存在し始めてから初めて俺との繋がりを断たれた形になってとても不安になったのだろう、いつもと違って彼の方から俺に抱き着いてきた。

 キールはギュッと俺を一回抱きしめた後体を離して、真剣な表情で俺の頭の先からつま先まで確認するように視線を走らせる。

 フードはいつの間にか外されている。一応の確認が済んだのか、今度は俺の瞳の色を確認するためか、じっと俺の瞳を見つめるキール。

 そのキールの瞳に映っている俺の髪は、なぜだかさっきまでよりもキラキラ感が増しているような気がする。

 さすがに、キールの瞳の中の俺の瞳の色までは確認できない、キールの瞳は漆黒だから……。

 なんとなく恥ずかしくなって、視線をキールの後ろに移すと、やはり鏡に映っている俺の頭の輝きは増しているような気がする。

 鏡の一部がまるでライトの光を反射しているように光っているのだ。

 自分のことだけに一生懸命だった数人も、突如現れた光の塊に目を奪われるように、鏡から光源のもとに視線を移して、こちらを見ている。

 鏡にキールは映っていない。そのことに安心しつつも、他人の視線が気になり始めて落ち着かなくなる。

『キール。どうする?このまま次の間に向かうのか?』

 見られることは織り込み済みで,蔑ろにされていたこの状況を覆すためにも、この精霊契約が終わったタイミングで真の姿を現すことは決めていたことであるが、なんだか悪い予感がしてこのままフードを被りなおして、作戦の変更をした方がいいような気がしてならないのだ。

『キール?』

 いつもならば問うまでもなく俺の疑問に答えを返してくれるキールの念話での返事がない。

 視線を周りからキールに戻すと、キールは今だに俺の瞳の中を食い入るように見つめている。

『キール?』

 何かあったのか不安になって、キールを見つめると、不安げな表情の俺がキールの瞳に映っているのがわかる。

 そんな俺の表情に気が付いたのか、キールは一度ゆっくりと瞬いてから、少し逡巡するように口をパクパクとさせた後、いつものような感情をあまり載せない声で、直接頭の中に念話で話しかけてきた。

『マーシュ殿も話していたが、この世界の常識として精霊契約は人生において一度のみ。ほぼ10歳のこの日に行われるものとして捉えられてきた。10歳だけでないことは有史において在ったらしいし、目の前にもいることから例外も存在することは理解できていたことだ』

 一回言葉を切ってキールも周りの状態を探るように首を巡らせてから、俺がこの部屋中の多数に注目されている事に気付いて、眉間にしわを寄せた。

『予期していないことが起きた。ただこの場が精霊契約の場であったことは良しとすべきことか……この場の誰もが以前のことを知らないのであれば、予想外のことが起こったとわかる者もいまい……』

 ほぼ、キールの独り言のようなそれは、この現状の説明に全くなっていないので、おれは焦れる。

『キール!俺にわかるように話して!それに時間がかかるなら説明は後でもいいから、今これからどのような行動をすればいいのか一緒に考えてよ!』

 すぐに行動を始めないと、これ以上の悪目立ちは避けなければいけない。存在を否定されているような扱いの王子としては……。

『……フードを今から被るのは悪手だ。決めていたようにフードは外して次の間に入ろう。隣もまだ混乱しているから、髪の色だけ晒してできるだけ早く離宮に戻ろう。次の間を出たらここに案内してくれた神官が待って……いる、今確認した。ただ……瞳の色は見られないように目は伏せて移動しろ。俺も導くし、お前ならば簡単に人をすり抜けて歩けるだろう?……説明は後でする、行くぞ!』

 キールは傍から見てもおかしく見られないように、あまり引っ張らない格好で俺の腕を取り、次の間への扉に向かう。

 扉までの最短距離を取る。気配に気づいてこちらに振り返るものは、俺の髪色に気付いて大げさに飛びのいて道を開ける。そのできた隙間を俺は走ったようには見えないぎりぎりの歩みですり抜けていく。

 次の間につながる扉の向こう側には、若い神官が立って名簿のようなものに書き込みをしている。

 次の間に出て来た子供の親を見ることで、子供の確認と何の加護を受けたのかを早速調べているのだろう。

 そんな彼の横をすり抜ける。俺の頭の高さは彼が書類に目を落としとそのちょうど横を動いていくような高さになる。

 否応なく王族の色である金色が目に飛び込んできて、不意打ちに驚いたのだろう彼は、持っていた書類の塊をバラバラと落としてしまったようだ。ある面機密文書に当たるそれを慌ててかき集めようと、しゃがみ込んで、ハッとしたように床から頭を上げた。

 そんな彼を横目に、混沌とした次の間を抜けていく。


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