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チュート殿下 40 次の間・脱出!
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あちこちで喜びの声や、悲しみの慟哭が聞こえる中、俺たちは全てを無視して次の間の外を目指す。
次の間の出口付近にやたらとギラギラとしたハデハデしい集団が、出口をふさぐ様に陣取っている。その中には神官長も含まれているようで、何か大声で笑いながら話している音が、ざわついた室内の隅にまで聞こえるような勢いである。
この部屋を出るまでは、見た目は一人である。誰も引き連れることなく、たった一人で王子がすたすたと歩いているようにしか見えないことだろう。
俺に気が付いた諸々は、その場で固まったように話をやめる。
次の間の奥の方から徐々に無言の波が手前の方へやって来るようなものである。
後ろを向きたくなるのを、見えない手で引っ張っているキールが留める。
とにかくこの部屋から出ることが肝心である。
この国のマナーとして、身分の上の者には下の者から声をかけてはいけない、というものがあるので、王族である俺に声をかけることができるものが居なかった。
しかし、この部屋の出口付近には、一応俺のおじいさんの弟が居る。
厳密に言えば、神官になるには身分というものはなくなることが建前だから、神官長も貴族の身分階級的には平民と同じ扱いになるのだが、年齢のこととか、元とは言え王族であったことは事実であるから、それなりに敬わなければならない。
勿論、こちらから声をかけたりすることは無いが、声をかけられたら相手をしなければならない……かもしれない。
『……名前をきちんと呼ばれなかったら,無視という方向で……』
キールと意思の確認をしてから、最難関の方向へ。
徐々に静かになる室内に、大声で話していた神官長たちと、どう見ても上位貴族の一家何組かも気が付いたのか、話をやめて、その違和感を確かめるように背後に視線を向ける。
つまり、俺の方に顔を向けた。
目線は合わさない。理由は後から教えてもらうことになっていて、今はわからないが、キールが理不尽なことを言わないことはわかっているので、面倒くさいことは起こらないに越したことはないからな。
前の集団だけでなく、この部屋にいる者ほとんどが、俺に注目しているのは、気配察知を使わなくてもわかる。
『……あいつら邪魔……』
本当、マナーがなっていないなぁ、出口を塞がんばかりの集団に、キールが悪態をつく。
元は金色今は銀色の神官長。その他はほぼ半分づつ赤と青の髪色の集団だ。それぞれの色の濃さや薄さは様々だが……。
『青い奴らが現宰相家のゲイル侯爵家。赤い奴らが現騎士団長のトルネード伯爵家』
いやそうな声でキールが教えてくれる。
『あぁ、陛下の側近たちの家か』
側近たちは俺や異母兄の年に合わせるように子供をもうけたようだから、ここに居るのはその忠誠心?で生まれた俺と同じ年齢の子供なのだろう。ご苦労なことだ……。
速度を落とすことなく近づいてくる王族の色に、本能的にかその動線上の者が道を開ける。
なんとなくキールが何かしているのかもしれないと思い意識を向けると、悪い顔で笑っている彼がいる。
まぁ、ばれるような魔法を使っているわけでもないだろう。
彼が作ってくれた道を、何事もないように歩いていくだけだ。
「オイ!そこの!誰だ?私に挨拶もなしか!止まりなさい!」
集団の中にできた道を通り抜け、扉の外に足を踏み出そうとしたその時に、予想はできたが場違いな、とても鷹揚な響きを持った年寄りの声が背後から聞こえた。
言うまでもない、神官長だ……。
名前を呼ばれたわけでもなく、必ずしも俺が彼の誰何にこたえる義理もない。俺が誰であるか知らないことは、彼の立場では、それは怠慢であるのだから。
「神官長。あの方は……」
その答を聞くまで待つことなく、俺は次の間を脱出した。
次の間の出口付近にやたらとギラギラとしたハデハデしい集団が、出口をふさぐ様に陣取っている。その中には神官長も含まれているようで、何か大声で笑いながら話している音が、ざわついた室内の隅にまで聞こえるような勢いである。
この部屋を出るまでは、見た目は一人である。誰も引き連れることなく、たった一人で王子がすたすたと歩いているようにしか見えないことだろう。
俺に気が付いた諸々は、その場で固まったように話をやめる。
次の間の奥の方から徐々に無言の波が手前の方へやって来るようなものである。
後ろを向きたくなるのを、見えない手で引っ張っているキールが留める。
とにかくこの部屋から出ることが肝心である。
この国のマナーとして、身分の上の者には下の者から声をかけてはいけない、というものがあるので、王族である俺に声をかけることができるものが居なかった。
しかし、この部屋の出口付近には、一応俺のおじいさんの弟が居る。
厳密に言えば、神官になるには身分というものはなくなることが建前だから、神官長も貴族の身分階級的には平民と同じ扱いになるのだが、年齢のこととか、元とは言え王族であったことは事実であるから、それなりに敬わなければならない。
勿論、こちらから声をかけたりすることは無いが、声をかけられたら相手をしなければならない……かもしれない。
『……名前をきちんと呼ばれなかったら,無視という方向で……』
キールと意思の確認をしてから、最難関の方向へ。
徐々に静かになる室内に、大声で話していた神官長たちと、どう見ても上位貴族の一家何組かも気が付いたのか、話をやめて、その違和感を確かめるように背後に視線を向ける。
つまり、俺の方に顔を向けた。
目線は合わさない。理由は後から教えてもらうことになっていて、今はわからないが、キールが理不尽なことを言わないことはわかっているので、面倒くさいことは起こらないに越したことはないからな。
前の集団だけでなく、この部屋にいる者ほとんどが、俺に注目しているのは、気配察知を使わなくてもわかる。
『……あいつら邪魔……』
本当、マナーがなっていないなぁ、出口を塞がんばかりの集団に、キールが悪態をつく。
元は金色今は銀色の神官長。その他はほぼ半分づつ赤と青の髪色の集団だ。それぞれの色の濃さや薄さは様々だが……。
『青い奴らが現宰相家のゲイル侯爵家。赤い奴らが現騎士団長のトルネード伯爵家』
いやそうな声でキールが教えてくれる。
『あぁ、陛下の側近たちの家か』
側近たちは俺や異母兄の年に合わせるように子供をもうけたようだから、ここに居るのはその忠誠心?で生まれた俺と同じ年齢の子供なのだろう。ご苦労なことだ……。
速度を落とすことなく近づいてくる王族の色に、本能的にかその動線上の者が道を開ける。
なんとなくキールが何かしているのかもしれないと思い意識を向けると、悪い顔で笑っている彼がいる。
まぁ、ばれるような魔法を使っているわけでもないだろう。
彼が作ってくれた道を、何事もないように歩いていくだけだ。
「オイ!そこの!誰だ?私に挨拶もなしか!止まりなさい!」
集団の中にできた道を通り抜け、扉の外に足を踏み出そうとしたその時に、予想はできたが場違いな、とても鷹揚な響きを持った年寄りの声が背後から聞こえた。
言うまでもない、神官長だ……。
名前を呼ばれたわけでもなく、必ずしも俺が彼の誰何にこたえる義理もない。俺が誰であるか知らないことは、彼の立場では、それは怠慢であるのだから。
「神官長。あの方は……」
その答を聞くまで待つことなく、俺は次の間を脱出した。
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