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チュート殿下 41 神殿から帰還。一瞬の金髪デビュー⁉
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神官長や、それに応えていただろう宰相あたりの声を無視して、俺たちは次の間からの脱出を果たす。
次の間の外には、中の様子を見ていたであろう、案内役の若い神官がオロオロしながら待っていた。
彼とすれば、自分の上司である神官長の声を無視することは難しいのかもしれないが、そもそも俺の身分などある程度聞かされてこの仕事を割り振られたのだろうし、今忖度するのは神官長でないことくらいは判断できる奴、であるだろう。
案内役よりも先に歩くのは、マナー的にもどうかと思うが、ここは俺が先に行かないと彼は動くことができない。
少し冷たいだろうが、彼の様子を全く無視して、迷いそうのない所まで歩く速度を落とさず進む。
長めの廊下の突き当りを、正面に進む方ではない方向へ曲がると、息を切らしながら案内役の彼がついてきた。
この短時間で気持ちを切り替えたのだろう、何か吹っ切れたような顔をして、曲がった先、知らなければ気づけない柱の後ろの凹みに手を入れると、ポッカリとかがんで大人がやっと入れるくらいの穴が現れた。
「こちらから、今朝入られたのと同じ裏扉に」
使用人たちや若い神官が使う隠し廊下。貴人や上位の神官たちに見られることなく、下々の取次等するためのものであるらしい。
「神官長や貴族出身の若い神官たちもこの廊下のことは知りません。使うことのないものに興味も関心もございませんでしょう……」
おれが、この廊下に対して少し不思議そうな顔でもしていたのだろう、声量を落としたささやき声で、彼が教えてくれた。
あくまでもこの廊下は脱出用の隠し通路とは違うので、偉い人たちが覚える必要のないものとして扱われていて、移動時間を短くするショートカットのためだけにあるものとのことだ。
そのためか、時々この狭い通路から、壁をいじり先ほどのように屈むくらいの穴を出現させると、普通の廊下を横切り、また穴の先の裏廊下へ。を三度ほど繰り返して、今日この神殿についたときに歩いた、絨毯の敷かれていない廊下にたどり着いた。
思い起こせば、この裏扉をくぐってから一時間も経っていない。
案内役の彼が、慎重に扉の向こうの気配に気を付けながら扉を開ける。
俺もキールもこの先に待っているのは俺を運んできた馬車だけで、その馬車には既にマーシュも乗り込んでいることは確認済みだが、彼の行為を無駄にするほど無粋ではない。
それよりも背後。儀式の間周辺当たりの人の動きが活発になっていることの方が気がかりだ。
こんなことをさせてしまった若い神官の彼のことが気にかかる。
扉が開いたことにかが付いたのだろう、物陰に隠れるようにしていた馬車が扉のすぐ脇に停まるように動き出した。
「貴方の名前は?」
建物から外に出るようにと,いざなう様に身体を引いた彼に問いかける。
「……それは……お互い知らない方がよろしいでしょう」
俺の顔を少し目を細めて眩しそうに一瞥した彼は、俺が馬車に乗り込むのを確かめると、深く深く頭を下げて、そのまま、馬車が動き出しても頭をあげることはなかった。
馬車が神殿の敷地から出て橋を渡ったところで一息ついた。先に馬車で待っていたマーシュの顔色も、俺が乗り込んだ時に見たものよりも幾分かマシになっている。
馬車に乗り込むと早速着替えさせられた。このフード付き神官の聖服モドキから、マーシュと似たような恰好をした。髪色を隠すために馬車から降りて離宮の結界の中に入るまでは、ほっかむりをするらしい……。カッコ悪い……。
そう言えばキールが俺の儀式の終わった時の姿を見て、微妙な表情を浮かべていたことを思い出した。
髪の色のキラキラ感が増したように見えたのはあの後室が鏡張りだったからかな?
この暗い馬車の中では儀式によって俺に変化があったのかなかったのかの外見の変化をたしかめることができない。
前世のゲームの記憶を思い出すと、アーク王子は金髪碧眼という鉄板のテンプレ王子の外見だったと……。
髪が王家の特徴の金色で、目の色は王妃の家の色である水属性の水色。魔力量が多いってことで濃い青の碧眼。
どっちが先と言えば、金色碧眼が最初で、それに設定をこじつけたんだろうけど。
なんてことを考えていたら、王城内の離宮の裏門に着きました。
本当、この離宮に掛けられている結界魔法、ガッチガチ。外から見るとよくわかる。
いつもこの堅固な城塞から全く出てこない王子が、今日は必ず出てくるということで、様子見なのかがちで命を狙っているのか、隠密し切れていない隠密が、結構な数見受けられます……。
結界内に入る所を狙っているんだろうけど、土属性上級精霊の加護持ちのマーシュの結界。超近距離でも破れませんぜ‼そのために態々ついてきてくれているのだから。
次の間の外には、中の様子を見ていたであろう、案内役の若い神官がオロオロしながら待っていた。
彼とすれば、自分の上司である神官長の声を無視することは難しいのかもしれないが、そもそも俺の身分などある程度聞かされてこの仕事を割り振られたのだろうし、今忖度するのは神官長でないことくらいは判断できる奴、であるだろう。
案内役よりも先に歩くのは、マナー的にもどうかと思うが、ここは俺が先に行かないと彼は動くことができない。
少し冷たいだろうが、彼の様子を全く無視して、迷いそうのない所まで歩く速度を落とさず進む。
長めの廊下の突き当りを、正面に進む方ではない方向へ曲がると、息を切らしながら案内役の彼がついてきた。
この短時間で気持ちを切り替えたのだろう、何か吹っ切れたような顔をして、曲がった先、知らなければ気づけない柱の後ろの凹みに手を入れると、ポッカリとかがんで大人がやっと入れるくらいの穴が現れた。
「こちらから、今朝入られたのと同じ裏扉に」
使用人たちや若い神官が使う隠し廊下。貴人や上位の神官たちに見られることなく、下々の取次等するためのものであるらしい。
「神官長や貴族出身の若い神官たちもこの廊下のことは知りません。使うことのないものに興味も関心もございませんでしょう……」
おれが、この廊下に対して少し不思議そうな顔でもしていたのだろう、声量を落としたささやき声で、彼が教えてくれた。
あくまでもこの廊下は脱出用の隠し通路とは違うので、偉い人たちが覚える必要のないものとして扱われていて、移動時間を短くするショートカットのためだけにあるものとのことだ。
そのためか、時々この狭い通路から、壁をいじり先ほどのように屈むくらいの穴を出現させると、普通の廊下を横切り、また穴の先の裏廊下へ。を三度ほど繰り返して、今日この神殿についたときに歩いた、絨毯の敷かれていない廊下にたどり着いた。
思い起こせば、この裏扉をくぐってから一時間も経っていない。
案内役の彼が、慎重に扉の向こうの気配に気を付けながら扉を開ける。
俺もキールもこの先に待っているのは俺を運んできた馬車だけで、その馬車には既にマーシュも乗り込んでいることは確認済みだが、彼の行為を無駄にするほど無粋ではない。
それよりも背後。儀式の間周辺当たりの人の動きが活発になっていることの方が気がかりだ。
こんなことをさせてしまった若い神官の彼のことが気にかかる。
扉が開いたことにかが付いたのだろう、物陰に隠れるようにしていた馬車が扉のすぐ脇に停まるように動き出した。
「貴方の名前は?」
建物から外に出るようにと,いざなう様に身体を引いた彼に問いかける。
「……それは……お互い知らない方がよろしいでしょう」
俺の顔を少し目を細めて眩しそうに一瞥した彼は、俺が馬車に乗り込むのを確かめると、深く深く頭を下げて、そのまま、馬車が動き出しても頭をあげることはなかった。
馬車が神殿の敷地から出て橋を渡ったところで一息ついた。先に馬車で待っていたマーシュの顔色も、俺が乗り込んだ時に見たものよりも幾分かマシになっている。
馬車に乗り込むと早速着替えさせられた。このフード付き神官の聖服モドキから、マーシュと似たような恰好をした。髪色を隠すために馬車から降りて離宮の結界の中に入るまでは、ほっかむりをするらしい……。カッコ悪い……。
そう言えばキールが俺の儀式の終わった時の姿を見て、微妙な表情を浮かべていたことを思い出した。
髪の色のキラキラ感が増したように見えたのはあの後室が鏡張りだったからかな?
この暗い馬車の中では儀式によって俺に変化があったのかなかったのかの外見の変化をたしかめることができない。
前世のゲームの記憶を思い出すと、アーク王子は金髪碧眼という鉄板のテンプレ王子の外見だったと……。
髪が王家の特徴の金色で、目の色は王妃の家の色である水属性の水色。魔力量が多いってことで濃い青の碧眼。
どっちが先と言えば、金色碧眼が最初で、それに設定をこじつけたんだろうけど。
なんてことを考えていたら、王城内の離宮の裏門に着きました。
本当、この離宮に掛けられている結界魔法、ガッチガチ。外から見るとよくわかる。
いつもこの堅固な城塞から全く出てこない王子が、今日は必ず出てくるということで、様子見なのかがちで命を狙っているのか、隠密し切れていない隠密が、結構な数見受けられます……。
結界内に入る所を狙っているんだろうけど、土属性上級精霊の加護持ちのマーシュの結界。超近距離でも破れませんぜ‼そのために態々ついてきてくれているのだから。
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