転生したら当て馬王子でした~絶対攻略される王太子の俺は、フラグを折って幸せになりたい~

HIROTOYUKI

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チュート殿下 43 目が変?……あっ!変わった?

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 ストールで顔も頭もぐるぐる巻きにされて、ほぼ誰だかわからないような状態にされて、使用人たちの間を通って離宮の中へ。

 声をかける雰囲気でもなかったので、マーシュに促されるまま、いつも使っている居間に入る。

 室内に入るとすぐに、昼食の準備を澄ませるようについてきた侍女に指示を出してから、おれに巻き付けたストールを外した。

 ストールを巻き付けられたことを不思議に思っているのがわかったのか、こちらから問う前にマーシュが説明をしてくれた。

「情報は知っている者が少ないほど守られることはわかっていますね」

 確かに、それは情報管理の基本であるから、知っている。

「しかし、俺の髪色が金色であることは既にこの離宮に勤めるものならば知っていることだろう?」

 俺は、この離宮の中に入る時になぜ態々髪色を隠すようなことをしたのかが疑問なのだ。

「今までは、殿下の髪色について質問されるようなこと自体がなかったのですから、知っていてもかまわなかったのです」

 今までは、誰も10歳になっていない俺の髪色が、代わっているなど想像もつかないことだから聞かれるということがないというわけだ。

 しかし、契約の儀式が終わった今この時からは、俺の能力を知るために、どのようなところが変化したのか、探りに来る者が後を絶たないとマーシュは言う。

 俺の髪が金色になったことは、今日の儀式に参加した者ならば目にしたのだから、そのことはすぐに広がるだろう。だから、金色であることをここで隠すことが不思議だったのだが……。

「殿下は儀式の後に、じっくりとご自分のことを確認されましたか?」

 俺の疑問の核に答えることなく、マーシュが逆に聞いてくる。

「いや……。鏡張りの後室も人がいっぱいで、しっかりと確かめることはできなかったな」

 俺のその返答に、マーシュはじっくりと俺の瞳を見つめながら、ため息をついた。

「やはり……そのような気がしていましたが……」

 マーシュは失礼しますと言葉を置いてから、部屋の飾りダンスの引き出しから、まぁまぁの大きさの手鏡を持ち出して、俺の手に握らせた。

「ご覧ください」

 俺の後ろから一緒に鏡をのぞき込むような位置に立ったマーシュは、俺に自分の顔を見るように促した。

 今だに違和感はぬぐえないが、見慣れた今世の自分の顔が映っている。

「……?」

 あれ?見慣れているはずの自分の顔に違和感が……。

 髪のキラキラが増しているのは気が付いていたけど……。

「目が変?」

 自分の顔を直視するのは何となく恥ずかしいのだけど、鏡に映ってる自分とにらめっこする、と、なんだが今まで見ていた目の色と今の目の色が違うような……。

「あっ!変った?」

 覗く瞳の色が潤んでいるわけではないのに、ゆらゆらと陽炎のように揺れているように見える。

 そして、揺れるたびに色見が何となく変わるのだ。

 パット見たくらいでは、今までと同じ碧眼といえるかもしれないが、少しのぞき込めばその普通の瞳のようには見えない違和感に気付くかもしれない。

「瞳の色も、契約された精霊の加護の賜物。今日の儀式でも確実に殿下は精霊との契約をなされている、ということです」

 髪の色と目の色。精霊契約は多くても二種類の精霊との契約が最大であると考えられている。ごくごくたまに、三種類の魔法が使えて、きっと三種類の精霊と契約を結べているのだろうと考えられる人物がいたが、外見の色は二色しか持っていなかったとされている。

「殿下も、二色の色持ちであると見ることができますが……」

 このこともあって、ストールをかけたのか?あの暗い馬車の中で俺の瞳の色まで把握していたのだろうか?マーシュ、凄すぎる?

「殿下の極々近くで仕事をする数人は仕方がありませんが、殿下の瞳をのぞき込めるような者以外にはこの事実は知らせないに越したことは無いのです。知らないことは聞かれても答えられないのですから」

 つまり、マーシュが言うには、今までは誰も俺に興味がなかったこともあるが、精霊契約が済んだ今、どのような情報でも得ようとする輩に、情報を与えないためにも、知る者を少なくすることが必要であること。であるから、あの時誰にもきちんとした姿を見せないことは、俺のことを守ることは勿論、知らないことで使用人も守るころができるということだ。

 考えたくはないが、使用人たちが何かの手段で脅されたりしたときに、知っていることを隠すのは非常に難しいことな上、この世界には自白を促す魔法も簡単に使われている。知らなければ、魔法を使われようが、つらい思いをすることがないのだから。

「知らせないことが、知らないことが、下のモノを守ることにつながるのです」

 そう言うマーシュは、この精霊契約が終わりさえすれば、この離宮に籠っていなくても良くなるところだったのが、そうもいかなくなったことに、頭を痛めているようだった。
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