転生したら当て馬王子でした~絶対攻略される王太子の俺は、フラグを折って幸せになりたい~

HIROTOYUKI

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マーシュ・スリート 14 殿下の守護者と精霊契約の儀式 

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 ついにやってきた、アーク殿下の精霊契約の儀式。

 これが恙なく終了すれば、殿下をこの離宮に監禁するようにとどめおくことをしなくても済むようになるはずだ。

 殿下の容姿。

 纏っている色。

 10歳の精霊契約の儀式が終わって初めて纏うはずの色を持っていることで、殿下を排除しようとしている者の行動を助長してしまう可能性が少しでもあるならば、と、神経質すぎると思われるほど気を使ってきた。

 誰よりも高貴で、祝福される立場に生まれてきたはずであるのに。

 陛下の学園時代の愚かしい行動の負債を、すべて生まれながらにして負わされてしまった殿下。

 誰よりも大切にしなければならない大人たちが、その後ろめたさから尚更、生まれたばかりの赤子に手を差し出すことができず、悪いことの連鎖に気付きながら、目をつぶってきた10年。

 きっと、今回の儀式が終われば、そのような今までの行いを忘れ、手を翻したような態度をとるものが続出するであろう。

 地位が高ければ高い者ほど。

 また、陛下の劣等感を刺激し、増すことも、想像に難くない。

 殿下は5歳にして精霊契約を果たし、魔法を操るのも、その魔力量も、陛下に比べるまでもないことはその纏う色から誰からも判断ができるものだ。

 精霊契約が10歳の生涯一度のみと考えられていた常識は、殿下が5歳にしてその能力を発現したことからも、既に否定されている。

 今回の精霊契約で、殿下の体に何か変化が現れることがあれば、今まで以上に精霊との親和性が上がっているようなことがあれば、誰よりも殿下を守らなければならない相手から、その命を狙われかねない。

 陛下の劣等感や後ろ暗い思いがこれ以上悪い結果を生まないことを祈るしかできない自分が歯がゆくてならない。

 朝から、儀式のための準備をし、儀式ギリギリの時間を計って裏から殿下を送り込み、今は儀式が終わった殿下をできるだけ人に晒すことなく離宮にお連れするため、先回りして馬車で待っているところである。

 殿下は私に隠しおおせているとお考えのようだが、5歳のあの時からそう時間の立っていない頃、殿下の周りに我々が視認できない何かが居ることはわかっていた。

 殿下のご様子や、周りの状態から、決して殿下に仇なすものではないという確信の元、放置していた。

 そして、殿下が時々私の結界をその何かと共に抜け出していることも把握していた。

 そんな状態でしばらく過ごしていたころ、真夜中に私の部屋にその何者かと良く似た気配が突然現れたことがあった。

 私が気づいていることも、それは気づいていて、何の前触れもなく一瞬で目の前に、殿下によく似たたたずまいの少年が立っていた。

 その気配も、姿も、とてもあいまいなもので、目を離せば消えてしまう、ゴーストによく似た存在に感じられた。

 しかし、ゴーストにある邪悪な負の感情なものは全く感じない、きっとこれには浄化魔法も効かないだろうことはすぐに分かった。

 私がそんな考えを巡らせて、口を利くことなく黙っていたからか、彼?の方から口を開いた。

『既に私の存在に気付いているだろう?主は全く気付かれていないと思っていて、気づかれないように努力しているようだが……あの非常に堅固な結界を張れる者が気付いていない?気付いていて泳がされているなら、こちらから挨拶をしないと』

 今まで出会ったことがない魔力の波動を持った子供であった。いや……子供なのか?いきものなのか?

 冷たい汗が、背中を流れるそれほどに自分が緊張していることがわかった。決して敵ではない、見た目は殿下と変わらない子供を目の前にして……。

 彼は話してくれた、私をこの世界で一番信用できる者として。

『主が信用しているから』と。

 自分は勿論人間ではない、契約獣などでもない、主が生まれながらに持っているスキルが覚醒したようなものであると。

「生まれながらにして持っているスキル……?」

 彼が言うには、貴族であるか平民であるかということは、精霊と契約しやすいかしにくいか生まれた時から決まっていることで、これも一種のスキルのようなものである、ということだ。

 説明を聞いても、今一つわからなかったが……。

 何にせよ、『キール』彼が主にもらった名前であると、誇らしげに名乗りを上げたのでこれからは私もそう呼ばせてもらう、が、殿下の極々近くで殿下を守ることを請け負ってくれていることは、私の心身共に負担が軽減される。

 精霊契約が終わってからは、今まで以上に騒がしくなることがわかりきっていたので、このとても大きな戦力は何よりもありがたかった。

 ただ、殿下自身がキールのことを私に伝えるまでは、彼の存在を私が知らないふりをすることを約束させられたが……。
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