転生したら当て馬王子でした～絶対攻略される王太子の俺は、フラグを折って幸せになりたい～

チュート殿下 ５０ 金ぴかデビューはいただけない

　精霊との契約の儀式が終わって、これから俺の命が脅かされる可能性が高まったことの対策を、大人たちが考えてくれている間も、俺の表立ってできることは無く、協力できることはこの離宮から出ないこと。表向きはね……。

　俺とキールは初級学校が年度替わりの長期休暇に入る前まで、何度も学校に侵入し、大人の、ましてや外の大人の知ることのできない内情を知ることができた。

　10歳から12歳までの子供の世界といえども、ここに来ているのは殆どが貴族の子供。生まれた時から親の姿を身近で見て育ってきた者たちだ。

　初級学校といえども、小さな社交界、社交界の縮図と言っても過言でないのだから……。

　記憶力お化けのキールと共に、小さな社交界の相関図を作る。

　これには、子供たちだけでない、教育者たちの教育者らしからぬ思惑も浮かび上がってくることもあったりして……。

　面と向かう前から、信じることができる大人と、信じることができない大人の選別もできたことは、これからの学校生活に大きなアドバンテージになる。

　ただこの人々の思惑や関係を、誰にも教えることができないことだけがネックだ。

　学校の中にまで教師以外の大人は誰も入り込むことができないから、その点は俺がうまくやればいいこと。

　教師の中にも少なからず紐付きが、いやほとんどの教師に強いか弱いかの差はあるが、どの紐が付いているか分かったことは非常に大きな収穫だ。



　学校が長期休暇に入ると、未成年の子供を含めた社交界が活発になる。

　子供といっても社交をすることが許されるのも、10歳の精霊の選別を受けた子供で、精霊と契約できたものに限り参加することが許される、という風潮があるらしい。

　この世界では精霊と契約できたかそうでないかは、一目瞭然だから、契約できなかった子供に対しての貴族社会での風当たりの強さは、身分が上がるほど半端ないものとなるようだ。

　前世であったら、髪の色や瞳の色なんて、似合う似合わないを考えなければ、どんな色にでもできたのに、この世界では、その根幹に関わるものだからか、身体のどのような色に関しても、人間の力で変えることは不可能になっている。


　俺自身の身に掛かってくるものとしては、初級学校が始まる前に大々的に行われる、まだ成人前の子供のプレと名の付く舞踏会が行われる。

　言うなれば、公式なお披露目会。

　プレが付く舞踏会は、夕方から子供が寝る時間の前までで終了、お酒も出ない、とリフルが教えてくれた。

　舞踏会と銘打っているが、子供たちが踊ることもほぼ無いらしい。

　中には既に婚約しているとか何とかで、これ見よがしに踊る者もいるらしいが……。

「オ……ボ、僕無理ですよ」

　思わず敬語で、リフルに返答してしまったよ……。

「殿下、大丈夫ですよ。殿下には誰も近づけさせませんから」

　黒い笑顔を浮かべてリフルがお茶を入れてくれる。

　そう言う意味で言ったわけじゃないけど、ただワルツとか踊れないってことだけだけど。

　まだ、暗殺者の黒幕が誰かわからないから、誰も近づけられないのもわかるけど。

「そもそも、僕その舞踏会に出席できるの？」

　その質問にはリフルは凄い渋い顔をする。

　そう、出ないわけにはいかないからね、それこそ大きい病を得ていると思われるか、精霊契約ができていないと思われるか、出席しなくていいことはないのだ。

　今日も離宮の外を飛び回っているマーシュも、今までの暗殺未遂の件を調べることと共に、俺の社交界デビューの準備も進めているために、尚更忙しいらしい。

　どうにも、男子でもきちんとしたルールにのっとった、夜会服を着てデビューするらしい。

　本格的な大人の社交界デビューの時は、真っ白を基調にした衣装。すっごく乙女ゲームらしいの……。

　子供の社交界は、契約できた精霊の色を使ったり、その家のイメージカラーを用いたりするらしい。

　そしたら、俺って金ぴかってこと？……絶対いやだな……。

　キールは俺の金ぴか衣装を想像したのだろう、無表情で大笑いしてるよ。