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チュート殿下 55 初級学校入学までのあれこれ
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初級学校の入学式が10日程遅れることになった。
何でも、教師に複数の欠員ができたため、少なからず採用をしなければならなくなり、その手続くなどのため入学式や新学期が10日間ずれ込むことになったそうだ。
教師になるものは、もともとその道を目指している者。これはあまり人数もいないし、出世する者もほぼいない。
次に、貴族家の三男や四男やそれ以下の子供。次男はスペアとして家においてもらえるが、それ以外の子供は家から独立して、騎士か教師になるものが多い。騎士になれれば少なくとも準騎士爵位として貴族としていられるが、それ以外の場合は、婚姻を結び新たな家を構えた段階で、貴族ではいられなくなる。
だから、騎士になることもできず、かと言って魔法で戦うことができるほど自信も力もないが、実家が身分と力をそれなりに持っている者は、教師になるものが多い。
今回の欠員の殆どが、この学校に実家の力でごり押しで入った教師たちであった。
「殺ったね、キール……」
もちろんキールが直接命を取ったものはいないことはわかっていたが、物理的に何かしないとなと思っていたのも事実だから、俺の知らぬ間に何かしたのだろう。
「そんなひどいことしてないよね」
キールの説明を聞くと、俺に良からぬことをしようとしていた者や、邪なことを考えていた者は、以前からの行いで叩けば埃が出るような奴らだったから、悪事の証拠もすぐ集まるような杜撰さで、それを晒しただけだと答えた。
『悪夢にうなされるってことはあったかもしれないが、まぁそのくらいさ』
10人以上の不始末者を出したことで、学校長や管理職も責任を取ることとなり、誰の紐づきでもない者をリーダーとして立て直しを図っているらしい。
「10日で大丈夫なのかな?」
流石にそれ以上伸ばすことには詳しい説明とかいるらしい。何せ今回辞職させられた人々は、一身上の都合で辞めたことになっているからね。
初級学校内だけでなく、王国の中心部も巻き込んでこの10日間は笑えるほど忙しそうだった、と相変わらず情報収集に励んでいるキールが言っていた。
俺は、マーシュにもう一度おさらいということで、マナーを中心として、苦手な王国史や、関係なくねと思わなくもない帝王学のようなものの教授を受けて、入学までの伸びた10日間を過ごした。
自主練の魔力操作でストレスを開放しながら……。
天気は快晴!ではない曇天。
日が差していないと涼しい季節になったものだな。この世界に温暖化はないからね。
本当は小ワープした方が早いけど、そんなこと公にできないので、これからの通学は馬車になります。
この10日間で、初級学校だけではなく各方面で若干の人事異動のようなものがあったらしいが……。
「本日の初級学校の通学より、警護をさせて頂きます。近衛第三部隊であります」
入学式、はあるかどうかわからないけど、その日の朝。出発準備をしている忙しくしている時間にそいつらはやって来た。
マーシュも聞いていなかった様子で、非常に渋い顔をしている。
離宮の中、エントランスまで入ってきているのは、一人だけ。この部隊の隊長なのかな?
残りの何人かは離宮の敷地の外に待機しているらしい。
「コノエダイサンブタイって何?」
俺は直立不動で立っている、30歳手前位のガタイのいいお兄さん?にちらりと視線を向けた後、マーシュの方を見て聞いた。
「殿下のための護衛部隊です」
マーシュは、自分は認めてませんがね、という雰囲気駄々洩れの声音で教えてくれた。
「へぇ~そんなものがあったんだぁ……」
俺は、今まで近衛部隊に護衛されている感全くなかったんですけど!
この離宮攻撃されちゃってるんですけど!
俺の眉間にもしわが寄る。意識してないが、威圧の魔法が部隊長?に向かってしまったみたいで、顔色がいきなり悪くなった。
威圧を切って、聞いてみる。
「隊長さん?はこれまでどこでお仕事していたの?」
隊長?は直立不動のまま、顔だけマーシュに向けて口を開いた。
「殿下に直答をさせていただいてもよろしいでしょうか?」
普通は王族にそれ以外の者が直接話しかけるのはダメらしい。
問いかけられたマーシュが、いつもはしない重々しい雰囲気を醸し出しながら答える。
「殿下が質問の答えをお待ちである」
俺もそれに合わせて
「直答を許す」
なんて言ってみる。
「はっ!ありがとうございます。私は、誉ある近衛第三部隊に所属する前は、アミュレット王国騎士団第二大隊に所属しておりました!」
王国騎士団の部隊構造については、マーシュから学んでいるけど……騎士団の第二って、地方配置の騎士団だったよね。
第一が王都担当。
第二がそれ以外。
第三は魔法騎士団。
近衛は第一の上位部隊。
それぞれの大隊の中の中隊や小隊で、貴族出身だけとか、平民出身だけとかあると学んだけど……。
彼の前所属部隊のことを聞いて、なおさらマーシュの眉間のしわが深くなった。
何でも、教師に複数の欠員ができたため、少なからず採用をしなければならなくなり、その手続くなどのため入学式や新学期が10日間ずれ込むことになったそうだ。
教師になるものは、もともとその道を目指している者。これはあまり人数もいないし、出世する者もほぼいない。
次に、貴族家の三男や四男やそれ以下の子供。次男はスペアとして家においてもらえるが、それ以外の子供は家から独立して、騎士か教師になるものが多い。騎士になれれば少なくとも準騎士爵位として貴族としていられるが、それ以外の場合は、婚姻を結び新たな家を構えた段階で、貴族ではいられなくなる。
だから、騎士になることもできず、かと言って魔法で戦うことができるほど自信も力もないが、実家が身分と力をそれなりに持っている者は、教師になるものが多い。
今回の欠員の殆どが、この学校に実家の力でごり押しで入った教師たちであった。
「殺ったね、キール……」
もちろんキールが直接命を取ったものはいないことはわかっていたが、物理的に何かしないとなと思っていたのも事実だから、俺の知らぬ間に何かしたのだろう。
「そんなひどいことしてないよね」
キールの説明を聞くと、俺に良からぬことをしようとしていた者や、邪なことを考えていた者は、以前からの行いで叩けば埃が出るような奴らだったから、悪事の証拠もすぐ集まるような杜撰さで、それを晒しただけだと答えた。
『悪夢にうなされるってことはあったかもしれないが、まぁそのくらいさ』
10人以上の不始末者を出したことで、学校長や管理職も責任を取ることとなり、誰の紐づきでもない者をリーダーとして立て直しを図っているらしい。
「10日で大丈夫なのかな?」
流石にそれ以上伸ばすことには詳しい説明とかいるらしい。何せ今回辞職させられた人々は、一身上の都合で辞めたことになっているからね。
初級学校内だけでなく、王国の中心部も巻き込んでこの10日間は笑えるほど忙しそうだった、と相変わらず情報収集に励んでいるキールが言っていた。
俺は、マーシュにもう一度おさらいということで、マナーを中心として、苦手な王国史や、関係なくねと思わなくもない帝王学のようなものの教授を受けて、入学までの伸びた10日間を過ごした。
自主練の魔力操作でストレスを開放しながら……。
天気は快晴!ではない曇天。
日が差していないと涼しい季節になったものだな。この世界に温暖化はないからね。
本当は小ワープした方が早いけど、そんなこと公にできないので、これからの通学は馬車になります。
この10日間で、初級学校だけではなく各方面で若干の人事異動のようなものがあったらしいが……。
「本日の初級学校の通学より、警護をさせて頂きます。近衛第三部隊であります」
入学式、はあるかどうかわからないけど、その日の朝。出発準備をしている忙しくしている時間にそいつらはやって来た。
マーシュも聞いていなかった様子で、非常に渋い顔をしている。
離宮の中、エントランスまで入ってきているのは、一人だけ。この部隊の隊長なのかな?
残りの何人かは離宮の敷地の外に待機しているらしい。
「コノエダイサンブタイって何?」
俺は直立不動で立っている、30歳手前位のガタイのいいお兄さん?にちらりと視線を向けた後、マーシュの方を見て聞いた。
「殿下のための護衛部隊です」
マーシュは、自分は認めてませんがね、という雰囲気駄々洩れの声音で教えてくれた。
「へぇ~そんなものがあったんだぁ……」
俺は、今まで近衛部隊に護衛されている感全くなかったんですけど!
この離宮攻撃されちゃってるんですけど!
俺の眉間にもしわが寄る。意識してないが、威圧の魔法が部隊長?に向かってしまったみたいで、顔色がいきなり悪くなった。
威圧を切って、聞いてみる。
「隊長さん?はこれまでどこでお仕事していたの?」
隊長?は直立不動のまま、顔だけマーシュに向けて口を開いた。
「殿下に直答をさせていただいてもよろしいでしょうか?」
普通は王族にそれ以外の者が直接話しかけるのはダメらしい。
問いかけられたマーシュが、いつもはしない重々しい雰囲気を醸し出しながら答える。
「殿下が質問の答えをお待ちである」
俺もそれに合わせて
「直答を許す」
なんて言ってみる。
「はっ!ありがとうございます。私は、誉ある近衛第三部隊に所属する前は、アミュレット王国騎士団第二大隊に所属しておりました!」
王国騎士団の部隊構造については、マーシュから学んでいるけど……騎士団の第二って、地方配置の騎士団だったよね。
第一が王都担当。
第二がそれ以外。
第三は魔法騎士団。
近衛は第一の上位部隊。
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