転生したら当て馬王子でした~絶対攻略される王太子の俺は、フラグを折って幸せになりたい~

HIROTOYUKI

文字の大きさ
74 / 196

チュート殿下 56 大名……じゃなくて王子様行列か!

しおりを挟む
 第二大隊は王都以外の秩序を守る騎士団で、貴族出身であっても中級以下の出身の者が多く、大半は平民出身の者らしい。

 この俺の護衛部隊である近衛の騎士さんは一応は貴族出身らしいけど、今回のこの騒動で移動になってきたようで、マーシュも全く把握していない貴族らしい。

 今度の人事は宰相あたりが絡んでいるだろうから、露骨に俺のことを殺そうとしている集団に関係する人物を俺の護衛騎士にするはずがないのだが、マーシュも把握していない人物であるので、警戒する必要があるのだろう。

 今のこの彼の態度を見れば、いい人に感じられるけど。

 とりあえず、今日の通学から行き帰り、この近衛第三部隊が護衛として就くことになるのは決定。

 しかし、事前通知もなしで、所属隊員の身元確認もこちらとしてはまだしていない状態で、もちろん信じられるわけがない。内部から襲撃ではシャレにならないので、こちらからのきちんとした確認が取れるまでは、護衛だけど敵扱いで行きます。
 
 まだ通学する時間までには間があるので、彼には外に居てもらう。名前とかその他はマーシュが聞いておくことにして、制服に着替え時間まで優雅にお茶でも飲むかな。


 
 離宮の正面玄関の車寄せから馬車に乗り込み、後宮の前の主要道路を通って王城の中央近くを抜けて、学校が建ち並ぶ王城の南西地区へ進む。

 今までは俺の乗る馬車一両で移動することがほとんどだった。馬車自体目立たない何も修飾のついていない物。性能はいいものだけど。

 なのにこれからは、いらない護衛を引き連れたハデハデな馬車で学校まで通わなければならない。

 今日は何時ものようにこの馬車だけにマーシュがガチガチに結界を張って出発するようだ。

 王城内では速度制限でもあるのか特に馬車の速度は遅い。人の歩く速度よりは確かに早いけど、前世で見ていたマラソンランナーよりは遅いかもしれない。

 石畳の道なので、馬の足音もパカパカと高い音で響いている。

 外を見るのは禁止。大きくない扉についた窓には内側から薄い鉄でできた鎧戸のようなものが下りている。

 馬車中は魔石でできたライトがほんのりと照らしている。

『やっぱ、マジックミラーになるような物作ろうかなぁ……シールのようなもので屈折率を変えればいいんだよね、この窓小さいし。スプリングも付けたいな、この馬車に毎日乗らないといけないんだろう……腰痛くなりそう……』

 なんてことをつらつら考えながら、脳内でキールと会話しながら、体感では30分、実際その半分ぐらいで初級学校の門をくぐったようだ。

 他の生徒の馬車は、徒歩の者もいるけど、学校の門を抜けると直ぐに右手に回り、校舎の横に作られている車寄せに生徒を下ろして、そのまま校舎の裏に回り入ってきたのとは違う門から校外に出ていくのだそうだ。

 俺の馬車は、来賓と同じように校舎正面の車寄せに止まる。

 もちろん、直ぐには扉を開けない。俺には外にたくさん人が立っていることが索敵魔法サーチでわかるが、
知らない人物の特定まではできない。何人かは情報収集していた時に一方的に会ったことある人達だけどね。

 一応俺の護衛責任者である近衛第三部隊長……長い!とにかくそいつが、外からノックをして外に出る合図をする。

 マーシュも仕方なくおれを結界で包んでから馬車の扉を開ける。外の明るさに一瞬目を焼かれる。

 マーシュの影がはっきり見えてから、周りの模様もはっきり見えるようになった。

 馬車から下りるためのステップの先には真っ直ぐ赤いジュータンがエントランスの中に続いている。

 絨毯の両側にはズラリと大人たちが並んでいる。絨毯の上に立ち一番近くに居てこちらを見てにこにこしているのは、今回の騒動で何もしなかったことが功を奏して、校長に横滑りで就くことになった前副校長だ。

 マーシュの調べによると、実家の地位の高さから楽なポジションおいしいところを渡り歩きながら、気の小ささと能力の低さから悪い奴に相手にされず、今回生き残った人らしい。

 彼の手を取るのは、もう少し様子を見てからです。とマーシュが言っていた。

 こういう風に苦労せず高い地位を得たものは、そのまま何事もなく月日の流れに身を任せ生き残る者と、自分の能力をはき違えて道から転げ落ちる者が居て、この新校長の場合、俺という誰もが欲しがるカードを手に入れたと勘違いしたら、痛い目を見る事になるタイプかもしれないから、特に注意が必要ということだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

処理中です...