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チュート殿下 58 初級学校への入学 2
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「殿下始まる直前で講堂に入場していただきます。お席の一番近くの扉から入っていただきます」
講堂のど真ん中の扉をドーンって開けて入場!なんてことにならなくて良かった。
目立つことは仕方がないけれど……今までほぼヒッキーだった俺が、たくさんの人の目にさらされるのは本当に冷や汗ものなんだよね……それを隠さないといけないからなおさら。顔に汗をかきにくい体質で良かった。
俺の所為で、開会が遅れるのも嫌なので、講堂の席に近い扉の外で待つことにしたいのだが、そこはマーシュが許してくれない。時間通りのタイミングで主を連れて行くことが、優秀な執事の心得の一つなんですと。
そこでそう待つことなく連れていかれた俺は、目立つこと最小限で講堂の用意された席にたどり着けたと思う。
入学式はどこの世界でも同じなのか、いや、ここは乙女ゲームの世界だから日本と同じなのか、という思考が何回かループした面白くもない来賓挨拶が何人も続く中、俺はうたた寝することもできず、無駄な話を頭の中でキールとやりとりしていた。
来賓挨拶は全体を見回しながらしろよ。壁側に近い俺を見つめながら話をするな!
正面を見ているふりして、俺の後頭部をガン見してくる視線の多いこと、多いこと……。
そんなに金髪は珍しいか!俺は、人寄せパンダじゃねぇ!
どんどんと言葉遣いがひどくなった来る脳内に、キールが辟易としているのが手に取るようにわかって、それも面白い。
新入生挨拶がないのは助かった。
いくら表向き身分は無しよ、と言っても、入学試験がないこの初級学校は全員が貴族の子女子息であるし、親の身分で区別をつけるのも仕方がない。
新入生も入学から半年ほどで試験によりふるいに掛けられ、春の後期が始まるときにもう一度クラス替えがされるらしいが、それまでのAクラスということか。
いつの間にか長かった来賓あいさつも終わり、今回参加している唯一の先輩たち、生徒会役員が壇上に登っていた。
一年でここまで変わるのか、というくらい子供臭さは抜けていて、しっかりとした口調で入学についての祝辞と共に、この学校のルールや特に生徒会活動についての説明を、壇上に上がったそれぞれが順番に話を進めていく。
事前にマーシュからも、次期王様の側近候補が居ること。それは一つ上の現宰相の息子であることも聞いている。
名前を聞いて、そいつも確か俺が居なくなった後の攻略対象者だったことを思い出した。
陛下の宰相として今ある形を、自分の息子にも同じ形にするために、俺とも異母兄共に、一つ違いの息子を作る執念のようなものを感じて、初めて聞いたときは震えたものだ。
騎士団長の息子も同じ様に、俺と同い年の息子が居るのだから……これもゲームの強制力なのか……。
入学式はと~ても退屈だったけどすんなりと終わり、クラスごとに退出するらしい……が、ここで講堂の真ん中を花道を行くように並んで出ていく?……ないなぁ……。
チラリと扉のそばに気配を消して立っているマーシュに視線を向ける。
マーシュは予定調和のように頷いてくれた。
今だに俺に絡んでくる視線をなんとかしないとなぁ、と考えていたら、それに合わせたように俺が出ようとしている扉のちょうど反対側から、ドンッ!と何か重たいものが爆ぜたような音がした。
皆の意識や視線がその方向にそれた。
その瞬間、俺は気配を消してマーシュのところに素早く移動し、薄く開けられた扉から外に出る。
マーシュは自身が通った学び舎ではあるが、この学校の隠し通路まですべて覚えているかの如く、人と出会わない道を通って、一年A組のホームルームまで先導してくれた。
それもほかのクラスメートが教室に入るのと合わせるように教室の前の廊下に到着した。
『神だね』
『神だ』
キールも関心するくらいマーシュの行動は神がかっている。
Aクラスはこの半年間は確実に上級貴族の子供しかいないクラスだから、侍従を連れている者がほとんどだ。
だから、入学式の時に離れていても、校舎内を移動中は護衛を兼ねている侍従が付き添う形になるので、実質廊下にいる人数は倍になり、他のクラスよりも人口密度が上がる。
Bクラスでは半分ほど、Cクラスでは商売で裕福な貴族の数人が、侍従を連れているだけだ。
だから、それぞれのクラスには侍従たちの控室が設けられていて、授業中は近くに控えることは禁止されているし、学校に通うことになれたと考えられる半年後のクラス替えの後には、授業用の校舎の中には立ち入りを禁止されることとなるようだ。
そして、今侍従が詰めている部屋も、より細分化されたクラス編成で使われる教室となり、無駄なことにはならないらしい。
俺とマーシュはこの校舎の中でも結界を張った中に居るので、消音魔法をかければおしゃべりし放題、他の人たちがおしゃべりする度注意されているのを横目に、俺はマーシュから実地の情報を得るのだった。
講堂のど真ん中の扉をドーンって開けて入場!なんてことにならなくて良かった。
目立つことは仕方がないけれど……今までほぼヒッキーだった俺が、たくさんの人の目にさらされるのは本当に冷や汗ものなんだよね……それを隠さないといけないからなおさら。顔に汗をかきにくい体質で良かった。
俺の所為で、開会が遅れるのも嫌なので、講堂の席に近い扉の外で待つことにしたいのだが、そこはマーシュが許してくれない。時間通りのタイミングで主を連れて行くことが、優秀な執事の心得の一つなんですと。
そこでそう待つことなく連れていかれた俺は、目立つこと最小限で講堂の用意された席にたどり着けたと思う。
入学式はどこの世界でも同じなのか、いや、ここは乙女ゲームの世界だから日本と同じなのか、という思考が何回かループした面白くもない来賓挨拶が何人も続く中、俺はうたた寝することもできず、無駄な話を頭の中でキールとやりとりしていた。
来賓挨拶は全体を見回しながらしろよ。壁側に近い俺を見つめながら話をするな!
正面を見ているふりして、俺の後頭部をガン見してくる視線の多いこと、多いこと……。
そんなに金髪は珍しいか!俺は、人寄せパンダじゃねぇ!
どんどんと言葉遣いがひどくなった来る脳内に、キールが辟易としているのが手に取るようにわかって、それも面白い。
新入生挨拶がないのは助かった。
いくら表向き身分は無しよ、と言っても、入学試験がないこの初級学校は全員が貴族の子女子息であるし、親の身分で区別をつけるのも仕方がない。
新入生も入学から半年ほどで試験によりふるいに掛けられ、春の後期が始まるときにもう一度クラス替えがされるらしいが、それまでのAクラスということか。
いつの間にか長かった来賓あいさつも終わり、今回参加している唯一の先輩たち、生徒会役員が壇上に登っていた。
一年でここまで変わるのか、というくらい子供臭さは抜けていて、しっかりとした口調で入学についての祝辞と共に、この学校のルールや特に生徒会活動についての説明を、壇上に上がったそれぞれが順番に話を進めていく。
事前にマーシュからも、次期王様の側近候補が居ること。それは一つ上の現宰相の息子であることも聞いている。
名前を聞いて、そいつも確か俺が居なくなった後の攻略対象者だったことを思い出した。
陛下の宰相として今ある形を、自分の息子にも同じ形にするために、俺とも異母兄共に、一つ違いの息子を作る執念のようなものを感じて、初めて聞いたときは震えたものだ。
騎士団長の息子も同じ様に、俺と同い年の息子が居るのだから……これもゲームの強制力なのか……。
入学式はと~ても退屈だったけどすんなりと終わり、クラスごとに退出するらしい……が、ここで講堂の真ん中を花道を行くように並んで出ていく?……ないなぁ……。
チラリと扉のそばに気配を消して立っているマーシュに視線を向ける。
マーシュは予定調和のように頷いてくれた。
今だに俺に絡んでくる視線をなんとかしないとなぁ、と考えていたら、それに合わせたように俺が出ようとしている扉のちょうど反対側から、ドンッ!と何か重たいものが爆ぜたような音がした。
皆の意識や視線がその方向にそれた。
その瞬間、俺は気配を消してマーシュのところに素早く移動し、薄く開けられた扉から外に出る。
マーシュは自身が通った学び舎ではあるが、この学校の隠し通路まですべて覚えているかの如く、人と出会わない道を通って、一年A組のホームルームまで先導してくれた。
それもほかのクラスメートが教室に入るのと合わせるように教室の前の廊下に到着した。
『神だね』
『神だ』
キールも関心するくらいマーシュの行動は神がかっている。
Aクラスはこの半年間は確実に上級貴族の子供しかいないクラスだから、侍従を連れている者がほとんどだ。
だから、入学式の時に離れていても、校舎内を移動中は護衛を兼ねている侍従が付き添う形になるので、実質廊下にいる人数は倍になり、他のクラスよりも人口密度が上がる。
Bクラスでは半分ほど、Cクラスでは商売で裕福な貴族の数人が、侍従を連れているだけだ。
だから、それぞれのクラスには侍従たちの控室が設けられていて、授業中は近くに控えることは禁止されているし、学校に通うことになれたと考えられる半年後のクラス替えの後には、授業用の校舎の中には立ち入りを禁止されることとなるようだ。
そして、今侍従が詰めている部屋も、より細分化されたクラス編成で使われる教室となり、無駄なことにはならないらしい。
俺とマーシュはこの校舎の中でも結界を張った中に居るので、消音魔法をかければおしゃべりし放題、他の人たちがおしゃべりする度注意されているのを横目に、俺はマーシュから実地の情報を得るのだった。
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