94 / 196
チュート殿下 72 実技試験と監禁
しおりを挟む
いつも魔力操作の時に使う教練場よりも大きい、初級学校では使われない競技場で実技試験が行われることになった。
この場所はゲームの中に出てくる高等学部に当たる学園でよくイベントに出てくる競技場だ。
試験が公開になっていることから、見学を希望する人々の数が例年以上に多かったため、学校施設の中で一番大きい競技場が使われることになったのだ。
例年以上に多くなった理由の一つは、ある意味珍獣扱いである王子をただ単に見たいと思う人が多かったこともあるが、今回の筆記試験が例年と違っていたことが保護者たちの不安をあおり、直接実技試験を見届けようと考えた人々が多く出たことももう一つの理由であると考えられる。
生徒たちはクラスごとに分かれて大部屋のような控室で自分の名前が呼ばれるのを待つ。
出席番号のようなものはないが、今までの慣例なのか、各家の格の低い者から呼ばれて実技披露をするようだ。
その慣例からしても自分は一番最後になるわけだが……、晒し者の気分が抜けないのは如何し難い、俺の心のもちようか?
もちろん俺は今回もはぶられていて、クラスの大部屋に入ることは許されず、特別に用意したという名目の、古のグラディエーターが命がけの試合の前に入れられてそうな監禁部屋のような、暗く狭い窓もない部屋に閉じ込められ一人で待たされている。
10歳の子供にこの部屋はきついっしょ!狭い上に暗い。魔法でもかけられているのか、何の音も聞こえない無音。
こんな環境に一人きり置かれて、誰も訪ねてこない、まるで忘れ去られているように……。
虐待か!
こんな状態知られたらただじゃ置かれないんじゃないの?
つまりそこまで侮られているわけね、俺。
普通の子供だったらこんな状況に置かれたら、実技試験どころではなく泣き叫ぶよね。
俺はこんな状況に置かれたところで、ここから出ることもできれば、この場に居ても外の様子を隅から隅まで知ることができるから問題ないけど……。
学校関係者のだれも、ここに俺が一人置き去りのように閉じ込められていることに疑問を持たないことが問題だと思う。
今のこの状況については、マーシュには知らせている。
学校行事のため近くに居ることのできないリフルは、他の生徒の従僕達と同じ部屋で待たされているようで、俺の今の状態については知る由もなく、俺の登場を待っていたようだ。
出番?が終わった生徒は、競技場の開けられている観覧席の方に移動して、その後の生徒の実技を見ることになるらしい。
つまり俺は誰の実技も見ることができずに、泣き叫んだ状態で競技場の中に連れ出されて、残念な状態を晒すことになる予定なのだろう、校長たちにとっては……。
外の様子をキールの目を借りて、観覧席から見るよりも近い場所から実技試験を見ながら、競技場内すべての様子を探る。
貴賓席に当たる所にも、それなりの家格の保護者が座っているのが見て取れる、王である俺の父などは流石に顔を出していないようだ。
伯爵王子の時には隠れて見に来ていたという噂も流れたようだ。マーシュによるとそれはただの噂ではなく真実であったようだが……。
競技場の中の実技試験に関しては、いつも見学させてもらっている様子と大して変わらないが、普段よりも観客が居ることで緊張しているのだろう、的までの距離も近く放つ魔法の威力も小さい。
時間の経過とともに生徒の魔法連弩も上がるので、時々感心したような小さなどよめきが上がることが増えてきた。
こんな実技試験でも家の力を見せつけることのできる、それなりのお祭りであるので、実技をやっている本人よりも、周りの騒ぎの方が大きい。
家格が上の貴族の方が連れて来る人数も多く、その家のの子息子女が競技場に現れるだけで大騒ぎだ。
まだ魔力操作を始めたばかり、もしくはまだ10歳になったばかりの子供なのだから、海のモノとも山のモノとも言えないと思うのだが、この段階でそれなりの判断を下し、王立の施設などや各上位貴族家などでは、魔力操作の得意なものを早く見つけて青田買いまがいのことをする目的でこの場にきているとも聞いた。
実技を行っている生徒の顔に見覚えがある者が混じり始めた。
控え室に残っている人数も少なくなってきた。
監督する教師たちの中に、俺に対して露骨に嫌味なことをする教師が何人もいるのだが、その中の2人が校長から指示を受けたのか、ニヤつきながら俺を閉じ込めている地下室に降りるための階段に向かうようだ。
このまま泣きわめき疲れ切っていることを想像している奴らに、何ともない顔をして堂々と迎えを待つのも手であるが、なんとなくそれは嫌な気がして、この閉じ込められている部屋から煙のように消えてやることにする。
短い空間移動は得意だが、普段はきちんと目視して飛ぶ場所を決めているが、今回はそれができない。
今回は俺が視るところをキールに見てもらって、そこにジャンプするだけだが……まぁ初めてでもなんとかなるだろう。
とにかく、近づいてきている奴らに捕まるのは嫌なので、その一心でジャンプを始動させる。
目的の場所は競技場に上がる中央入り口のすぐ横、見張りのように立っている教師のすぐ後ろに飛んでやることにする。
この場所はゲームの中に出てくる高等学部に当たる学園でよくイベントに出てくる競技場だ。
試験が公開になっていることから、見学を希望する人々の数が例年以上に多かったため、学校施設の中で一番大きい競技場が使われることになったのだ。
例年以上に多くなった理由の一つは、ある意味珍獣扱いである王子をただ単に見たいと思う人が多かったこともあるが、今回の筆記試験が例年と違っていたことが保護者たちの不安をあおり、直接実技試験を見届けようと考えた人々が多く出たことももう一つの理由であると考えられる。
生徒たちはクラスごとに分かれて大部屋のような控室で自分の名前が呼ばれるのを待つ。
出席番号のようなものはないが、今までの慣例なのか、各家の格の低い者から呼ばれて実技披露をするようだ。
その慣例からしても自分は一番最後になるわけだが……、晒し者の気分が抜けないのは如何し難い、俺の心のもちようか?
もちろん俺は今回もはぶられていて、クラスの大部屋に入ることは許されず、特別に用意したという名目の、古のグラディエーターが命がけの試合の前に入れられてそうな監禁部屋のような、暗く狭い窓もない部屋に閉じ込められ一人で待たされている。
10歳の子供にこの部屋はきついっしょ!狭い上に暗い。魔法でもかけられているのか、何の音も聞こえない無音。
こんな環境に一人きり置かれて、誰も訪ねてこない、まるで忘れ去られているように……。
虐待か!
こんな状態知られたらただじゃ置かれないんじゃないの?
つまりそこまで侮られているわけね、俺。
普通の子供だったらこんな状況に置かれたら、実技試験どころではなく泣き叫ぶよね。
俺はこんな状況に置かれたところで、ここから出ることもできれば、この場に居ても外の様子を隅から隅まで知ることができるから問題ないけど……。
学校関係者のだれも、ここに俺が一人置き去りのように閉じ込められていることに疑問を持たないことが問題だと思う。
今のこの状況については、マーシュには知らせている。
学校行事のため近くに居ることのできないリフルは、他の生徒の従僕達と同じ部屋で待たされているようで、俺の今の状態については知る由もなく、俺の登場を待っていたようだ。
出番?が終わった生徒は、競技場の開けられている観覧席の方に移動して、その後の生徒の実技を見ることになるらしい。
つまり俺は誰の実技も見ることができずに、泣き叫んだ状態で競技場の中に連れ出されて、残念な状態を晒すことになる予定なのだろう、校長たちにとっては……。
外の様子をキールの目を借りて、観覧席から見るよりも近い場所から実技試験を見ながら、競技場内すべての様子を探る。
貴賓席に当たる所にも、それなりの家格の保護者が座っているのが見て取れる、王である俺の父などは流石に顔を出していないようだ。
伯爵王子の時には隠れて見に来ていたという噂も流れたようだ。マーシュによるとそれはただの噂ではなく真実であったようだが……。
競技場の中の実技試験に関しては、いつも見学させてもらっている様子と大して変わらないが、普段よりも観客が居ることで緊張しているのだろう、的までの距離も近く放つ魔法の威力も小さい。
時間の経過とともに生徒の魔法連弩も上がるので、時々感心したような小さなどよめきが上がることが増えてきた。
こんな実技試験でも家の力を見せつけることのできる、それなりのお祭りであるので、実技をやっている本人よりも、周りの騒ぎの方が大きい。
家格が上の貴族の方が連れて来る人数も多く、その家のの子息子女が競技場に現れるだけで大騒ぎだ。
まだ魔力操作を始めたばかり、もしくはまだ10歳になったばかりの子供なのだから、海のモノとも山のモノとも言えないと思うのだが、この段階でそれなりの判断を下し、王立の施設などや各上位貴族家などでは、魔力操作の得意なものを早く見つけて青田買いまがいのことをする目的でこの場にきているとも聞いた。
実技を行っている生徒の顔に見覚えがある者が混じり始めた。
控え室に残っている人数も少なくなってきた。
監督する教師たちの中に、俺に対して露骨に嫌味なことをする教師が何人もいるのだが、その中の2人が校長から指示を受けたのか、ニヤつきながら俺を閉じ込めている地下室に降りるための階段に向かうようだ。
このまま泣きわめき疲れ切っていることを想像している奴らに、何ともない顔をして堂々と迎えを待つのも手であるが、なんとなくそれは嫌な気がして、この閉じ込められている部屋から煙のように消えてやることにする。
短い空間移動は得意だが、普段はきちんと目視して飛ぶ場所を決めているが、今回はそれができない。
今回は俺が視るところをキールに見てもらって、そこにジャンプするだけだが……まぁ初めてでもなんとかなるだろう。
とにかく、近づいてきている奴らに捕まるのは嫌なので、その一心でジャンプを始動させる。
目的の場所は競技場に上がる中央入り口のすぐ横、見張りのように立っている教師のすぐ後ろに飛んでやることにする。
35
あなたにおすすめの小説
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
転生調理令嬢は諦めることを知らない!
eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。
それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。
子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。
最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。
八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。
それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。
また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。
オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。
同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。
それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。
弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…
悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!
えながゆうき
ファンタジー
妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!
剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる