転生したら当て馬王子でした~絶対攻略される王太子の俺は、フラグを折って幸せになりたい~

HIROTOYUKI

文字の大きさ
115 / 196

チュート殿下 83 遂にやって来るXデイ⁉ 2

しおりを挟む
 チュート殿下の両親つまり国王たちについて、ゲームの中の情報はほとんどない。

 子供に関して無関心というところは今と同じかもしれないが、ゲームの中では王様はとても忙しいので、気にはしているが構う時間がない、そのような扱いだった。とりあえず、愛情はあるよみたいな感じで。

 そんなところに、異母兄。異母兄の母親は今とは違って、きちんと伯爵家のご令嬢とされていた。

 今は、まだはっきりと誰からも説明されていないのであやふやなところがあるが、親世代でも所謂乙女ゲームのようなことが実際起こっていたようだ。

 異母兄の母親は、それこそよくある下級貴族とその家の侍女の間にできた不義の子で、家から追い出され不遇の時代を過ごすが、父親の奥さんが亡くなったことで家に引き取られ、貴族学校に入学。元平民であることからか、普通の貴族令嬢と違う天真爛漫さに上位貴族の子息たちが心惹かれ……。

 を、地で行って、国王陛下の婚約者であった公爵令嬢をハメて追いやり、結果王子を生んで王妃に成れそうだった所……今違うのを見ると、もう一波乱あったみたい。

 俺自身そのことにあまり興味がないので、探っていない。

 マーシュはその時代を生きた人で、ある意味巻き込まれていた立場だったと思うから、実際のところを良く知っていると思うし、もしかしたらキールはもうすべて知っているかもしれないけど、これからの俺の人生に関わりが無いのであれば、それを聞くことは無いと思う。

 ゲームでの王妃様もどこぞの公爵令嬢だったから、もしかしたら今世の母と同じ人物かもしれないが、今の母、王妃様は元の王様の婚約者の妹に当たる人らしい。国外追放された婚約者の実の妹と、結局政略結婚している王様ってなに?

 親子二代で乙女ゲームしたら、国つぶれるよね,本当!

 国王陛下は、結局伯爵家に養子にやらなくてはならなくなった息子を溺愛しているみたいなんだよね。

 伯爵家に養子にやらなくちゃならなかった原因も、俺は良く知らない。ただ、不本意な事だけはわかる。

 本当はきちんと王族としたかったのだろう。

 きっと『坊主憎けりゃ袈裟まで憎い』状態で生まれた今の俺は、両親ともに愛されてはいない。

 ただ、今の俺は前世の記憶があって、尚且つ絶対的に信頼がおけるキールの爆誕と、マーシュやリフルたちがいてくれたおかげで、両親に愛されていないことについて全く、髪の毛ほども気にならない。

 しかし、普通のただの子供としてあったなら、もしかしたらゲームのアースクエイクと大差ない様になっていたかもしれない。

 ぐれるよね普通。

 そのぐれ方で、一番考えられるのがアースクエイクみたいになり、暴君と化すこと。

 
 いろいろな形をシミュレートしながら、俺としてはヒロインと関わらない形で行きたいんだよね。切実。

 そこの希望ははっきり伝えつつ、キールの現状分析能力に支えられながら、一番無難な形で行くことになるのかな。

 どれ程ゲームのストーリーと同じになるのかはわからない。

 これまでは、いってみればゲームとは関わりのない、時々登場するキャラが語る過去話と、ゲームの中のスチルで描かれているイラストのみが現す世界。

 つまり、余白と言える部分がこれからのゲームの中の話とは比べ物にならないほどあったから、比較的自由裁量が多く、今の俺の存在も認めざる負えなかったのではないか。

 逆に言えば、これからの行動に関しては、もしかしたら自分の体を自分では自由に動かせない、などということも起こり得るのではないか?

 と、王立学園に入学式が近づいてくほど、夜の眠りも浅くなってきた。

 ただ入学に当たって、今とゲームとで、もう一つ、客観的事実として大きく違うことがある。

 それは、俺が学園の寮に入ることなく、学園に通学できることだ。

 この学園の寮に入るというのも、乙女ゲームの王道であるが、この国の王立学園は、とても辺鄙なところに独立して存在している、ということもなく、ご存知の通り俺の住まう離宮と同じ王城内にある。

 初級学校や中級学校とお隣同士の立地だ。

 なのに、なぜか原則寮から通うという形になっている。

 このことについても何も合理的な説明がなされているわけではなく、以前からそうだから、伝統だから、で誰も疑問に思うことなくまかり通っているのだ。

 まぁ寮生活でもしてなければ他のクラスとか学年が違う何人もの男と付き合うとか無理だよね。女は一人なんだから。

 「ドキ恋」に関しては、俺を攻略する場合、基本一対一なわけだけど、結局のところ次作の攻略対象者たちともうまく付き合わないと、ほんとの攻略ができない仕様になっているのだから、きっと近くで生活していない限り難しいことがたくさん、という理由なのだろう。

 もしかしたら、ヒロインも俺と同じように瞬間移動が使えるのかもしれないな。

 乙女ゲームにはご都合主義が多いから、一々こだわっていては話が進まないということかな。

 俺についても当初は、誰も何も疑問を持つことなく寮の部屋が準備されていたようだ。

 部屋番号を聞いて、乙女ゲームそのままだった時には、やはり強制力には抗えないのかと少し絶望しかけたが、俺のその時の状態を見て気を利かせたマーシュが、寮に住むことは俺の命にかかわる、俺の命が奪われかねないと、学校の長である学園長ではなく、国の行政の長である宰相に訴えたことで、俺は一番安全な住居と誰もが認めている離宮から、学園に通うことになったのだ。

 もちろん、異論をはさむ者は多かった、学園長も

「今まで王族であろうとも寮生活を送りながら通園することがこの学園の決まりなのです」

 と言って、譲らなかったらしいが。

「では殿下のお命を確実にそちらで守っていただけるのでしょうね?もし何かあれば、とてもあなたの首だけで贖うことはできませんが……それでもよろしいか?」

 と、宰相が詰め寄ったということだ。

 学園長は最初

「この学園では身分の差関係なく学ぶところなのです。生徒に関しても誰もが平等に扱われるべきもので……」

 とか何とか、講釈していたようだが、建前はどうでも、現実問題として一介の平民の学生が学園内で亡くなってしまうのと、一国の王子殿下が学園内で亡くなってしまうのでは、その責任において背負わされる重みは違ってきても致し方ないものなのだ。

 その所を突っ込まれた学園長も、自分の首と命は惜しかったとみえて、最終的には特例として認めたらしい。

 過去にも、持病持ちの者が、寮生活は困難であると判断されて、寮以外から通園したという記録もあったことと、学園の決まり所謂校則をいくら調べても、寮から通わなければならないという決まりが載っていなかったことも、俺が寮に入らないことを後押しした。

 すぐ目の前とは言えないが、同じ敷地内に住んでいるのに通うことが許されないというのも変なものだったので、俺としては寝首を書かれる心配のない離宮から通えることは大きな僥倖であったし、ゲームの頸木から少しでも囚われずに済むことがあるのは、これからの生活においても明るい兆しであると捉えることができた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...