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チュート殿下 100 生徒総会 1
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講堂は入園式の時よりも大勢の生徒で埋まっていた。
あの時は、在校生は生徒会の人間だけで、そのほかの席は保護者が座っていたからか。
今日は初めから生徒会のメンバーは壇上に上がっているようだ。
今回も俺は、俺と認識することがギリギリできないくらいの認識阻害の魔法を使っている。全く認識できないほどの魔法を使うと、誰も席についていないように見えて、逆に目立ってしまうかもしれないからだ。
Sクラスの教室では、俺がボケッとしているところを隠すためなのかどうなのか、キールが幻影を出してしゃっきりした王子様の像を見せているようなので、俺の本当の姿を認識しているかどうかはわからないが、取りあえず、俺の姿を朧気に知ってはいる事だろう。
廊下を移動するときは斥候役張りに気配を消しているので、この学園内で俺の姿を知るものはまだほとんど居ないと考えている。
俺がたわいもないことを考えている間に、生徒の入場が終わったようで、壇上で並べられた椅子に座っていた生徒会の役員と思われる者の1人が中央まで出てきて声を上げた。
声はマイクのようなものを通すこともなく、大きく拡散されて講堂内に響く。
「あぁ、えぇ……生徒の入場も終了したようですので……ただいまから今年度一回目の生徒総会を始めます。会長挨拶」
役員たちの真ん中に座っていた1人がおもむろに立ち上がり中央に。
今まで話していたその人は、頭を下げながら一歩下がって中央の立ち位置から退く。
気づけば、壇上に居る人間すべて、会長と思われる人物以外、直立したまま頭を下げていた。
そして、俺の周りも含めて、この講堂に居る全員が立ち上がり、壇上の役員と同じように皆頭を下げていた。
『……なにこれ……⁉』
キールと俺の心の声が重なる。
壁際に座っていた教師たちも、深々とではないが、皆視線は床を見ているような角度を保っている。
『……どこかの独裁者?……なにかの宗教?』
キールもドン引き。むろん俺も。
俺は席から立ち上がることなくこの状況を見つめるのみ。
壇上では、しばらくこの状態を睥睨していた生徒会長が一つ大きくうなずいてから、右手をスッと上にあげてから降ろす。
まるで決められていた舞踊のように、皆一斉に頭を挙げ席につく。
その一糸乱れぬ姿は、前世で見たことがあったドキュメンタリー映像の中の独裁者を讃える祝典の姿と重なって見えて、思わず身震いしてしまった。
壇上の独裁者?は、表情を全く変えることなく、しかし視線だけはせわしなく動かして、このあたりを気にしているのがわかった。
『……もしかしたら、何か俺に関係するようなことでも企んでいるのではないのか……』
一度小さく首を振って、今心の中に浮かんだ思いを打ち消す。
伯爵王子に関する思考が、どうもこちらに対して何か仕掛けてくるのではないかという、ネガティブな思考に流れてしまってしょうがない。
彼のことについては、特に最近の彼については何も知らないのだから、悪く悪く判断するものでは無い、と戒めるのだが……。
そんな考えが浮かんで消える間もなく、何でも鑑定できてしまうキールが彼の心の表層の一部から、俺に対する悪意を見つけてしまうのだ。
『……自分よりも優れているモノはどんなモノでも許せない……』
ゲームの中のチュート殿下が根底に抱えていた真っ黒な心の源の一つともいえる、そんな考え……。
チュート殿下は身分だけはピカイチ。そのことに胡坐をかいて努力というものを全くしなかった。
周りも、国王陛下に跡取りになる王子が(表向き)ただ一人しかいなかったために、何もできないことを感じさせることなく、初級学校、中級学校と歳を重ね、誰もが手に負えない自尊人ばかり強い天狗になったところで、この学園に入園する所から、乙女ゲームが始まることになるのだ。
何もできないのに身分的なものから、その学校で成績が良いく人望の厚い者が就任するはずの生徒会の会長になり、その世代で身分が高く、一番賢い令嬢と言われていたフォスキーア・マルケーゼ・ゲイル侯爵令嬢、つまり、クリフ・マークィス・ゲイル侯爵子息の妹と婚約を結ぶ。
そして、その兄を含めた当代一といわれる側近候補たちを従えて、鳴り物入りで送る学園生活。
婚約者に関しては、今の俺にも婚約者が居ないように、伯爵王子にも誰か決まった人が居るということは報告に上がっていない。
さすがに、いくら彼が表立って国王陛下のご落胤であるという扱いを受けていても、現実的な身分は伯爵家の子息というものであるから、なかなかそれよりも上の身分で在り宰相のご令嬢であるフォスキーアと婚約を結ぶことは難しいのだろう。
一応俺も居るしね……。
あの時は、在校生は生徒会の人間だけで、そのほかの席は保護者が座っていたからか。
今日は初めから生徒会のメンバーは壇上に上がっているようだ。
今回も俺は、俺と認識することがギリギリできないくらいの認識阻害の魔法を使っている。全く認識できないほどの魔法を使うと、誰も席についていないように見えて、逆に目立ってしまうかもしれないからだ。
Sクラスの教室では、俺がボケッとしているところを隠すためなのかどうなのか、キールが幻影を出してしゃっきりした王子様の像を見せているようなので、俺の本当の姿を認識しているかどうかはわからないが、取りあえず、俺の姿を朧気に知ってはいる事だろう。
廊下を移動するときは斥候役張りに気配を消しているので、この学園内で俺の姿を知るものはまだほとんど居ないと考えている。
俺がたわいもないことを考えている間に、生徒の入場が終わったようで、壇上で並べられた椅子に座っていた生徒会の役員と思われる者の1人が中央まで出てきて声を上げた。
声はマイクのようなものを通すこともなく、大きく拡散されて講堂内に響く。
「あぁ、えぇ……生徒の入場も終了したようですので……ただいまから今年度一回目の生徒総会を始めます。会長挨拶」
役員たちの真ん中に座っていた1人がおもむろに立ち上がり中央に。
今まで話していたその人は、頭を下げながら一歩下がって中央の立ち位置から退く。
気づけば、壇上に居る人間すべて、会長と思われる人物以外、直立したまま頭を下げていた。
そして、俺の周りも含めて、この講堂に居る全員が立ち上がり、壇上の役員と同じように皆頭を下げていた。
『……なにこれ……⁉』
キールと俺の心の声が重なる。
壁際に座っていた教師たちも、深々とではないが、皆視線は床を見ているような角度を保っている。
『……どこかの独裁者?……なにかの宗教?』
キールもドン引き。むろん俺も。
俺は席から立ち上がることなくこの状況を見つめるのみ。
壇上では、しばらくこの状態を睥睨していた生徒会長が一つ大きくうなずいてから、右手をスッと上にあげてから降ろす。
まるで決められていた舞踊のように、皆一斉に頭を挙げ席につく。
その一糸乱れぬ姿は、前世で見たことがあったドキュメンタリー映像の中の独裁者を讃える祝典の姿と重なって見えて、思わず身震いしてしまった。
壇上の独裁者?は、表情を全く変えることなく、しかし視線だけはせわしなく動かして、このあたりを気にしているのがわかった。
『……もしかしたら、何か俺に関係するようなことでも企んでいるのではないのか……』
一度小さく首を振って、今心の中に浮かんだ思いを打ち消す。
伯爵王子に関する思考が、どうもこちらに対して何か仕掛けてくるのではないかという、ネガティブな思考に流れてしまってしょうがない。
彼のことについては、特に最近の彼については何も知らないのだから、悪く悪く判断するものでは無い、と戒めるのだが……。
そんな考えが浮かんで消える間もなく、何でも鑑定できてしまうキールが彼の心の表層の一部から、俺に対する悪意を見つけてしまうのだ。
『……自分よりも優れているモノはどんなモノでも許せない……』
ゲームの中のチュート殿下が根底に抱えていた真っ黒な心の源の一つともいえる、そんな考え……。
チュート殿下は身分だけはピカイチ。そのことに胡坐をかいて努力というものを全くしなかった。
周りも、国王陛下に跡取りになる王子が(表向き)ただ一人しかいなかったために、何もできないことを感じさせることなく、初級学校、中級学校と歳を重ね、誰もが手に負えない自尊人ばかり強い天狗になったところで、この学園に入園する所から、乙女ゲームが始まることになるのだ。
何もできないのに身分的なものから、その学校で成績が良いく人望の厚い者が就任するはずの生徒会の会長になり、その世代で身分が高く、一番賢い令嬢と言われていたフォスキーア・マルケーゼ・ゲイル侯爵令嬢、つまり、クリフ・マークィス・ゲイル侯爵子息の妹と婚約を結ぶ。
そして、その兄を含めた当代一といわれる側近候補たちを従えて、鳴り物入りで送る学園生活。
婚約者に関しては、今の俺にも婚約者が居ないように、伯爵王子にも誰か決まった人が居るということは報告に上がっていない。
さすがに、いくら彼が表立って国王陛下のご落胤であるという扱いを受けていても、現実的な身分は伯爵家の子息というものであるから、なかなかそれよりも上の身分で在り宰相のご令嬢であるフォスキーアと婚約を結ぶことは難しいのだろう。
一応俺も居るしね……。
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