転生したら当て馬王子でした~絶対攻略される王太子の俺は、フラグを折って幸せになりたい~

HIROTOYUKI

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チュート殿下 108 ピンクの動向 1

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 邪な心を持って俺に接触を図ろうとしている者は、何もクラスメイトを通じて何かしようと考えている者ばかりではない。

 そう、あのピンクの「ヒロイン」がこのSクラスの教室の近くにしょっちゅう出没しているようなのだ。

 基本的にこのSクラスととなりのAクラスしかこのフロアには教室はないため、それぞれのクラスの生徒及びその従者女性の場合は侍女以外、教師以外の誰も入ることは許されていない。

 特に今年は王族が居るためそれはきちんと守られている、と学園側は言っている。

 しかしその、俺のことを勧誘するという目的で、生徒会役員やそれ以外の有象無象が教室までやってきていたことは紛れもない事実で、そのせいもあって俺というかキールというか……が特殊な結界を重ね掛けまでしたのだ。

 そんな笊ような学園のセキュリティのおかげで、違うクラス最底辺でこの建物からも一番遠いところにその教室のあるクラスから、わざわざ遠征してやって来る「ヒロイン」

 俺と絡まない限りこの乙女ゲームのイベントが全く発生することがないことから、きっとこの世界がゲームであることを知っている「ヒロイン」が、焦りもあってここまでやってきているんだろうことは、簡単に想像できることだ。

 キールも俺も、あのダメダメ「ヒロイン」が何か俺たちに手を出せるとも思っていないし、このクラスに入ることができなかった時点で、「ヒロイン」本人も乙女ゲームのシナリオから逸脱しているのだから、無視していて差支えないと考えていた。

 少しはこの世界の強制力で何かがあるかもしれないことを頭の隅に置きつつ、毎日のようにやって来ては、結局この教室に近づくこともできず、痛い目を見ては自分の授業も満足に受けることもできていないのではないかと思われる「ヒロイン」の行動を、観察日記のごとく嬉々として報告してくるキール。

 彼の報告に全く誇張がないとするならば、「ヒロイン」のその乙女ゲームに掛ける根性は俺の想像の上をいくものだ。

 これ程根性があるのだったら、何故このSクラスに入れるほどの、勉強や魔力操作を入学前に積んでこなかったのだろうか?

 まぁ得てして、こような前世でこの世界のことを知っている気になっている系の「ヒロイン」は、そのゲームと現実を混同して、何もしなくてもゲーム通りになると思い込んでいる者が多いから、きっと彼女も何もしなくてもSクラスに入れると信じて何もしなかったのだろう。

 彼女に関しては、髪の色とか使う属性などに若干疑問があるので、その点を知りたいとも思っているが、とにかくこの世界の理にいい加減なところがいっぱいあることは、キールの鑑定を使って既に知っている。

 今のところは俺たちの力の方がこの世界の中では強く、いろいろなちょっかいを防いでいるが、この世界の根幹ともいえる乙女ゲームの時間軸に到達しているこれからは、今までのようにうまくいくかどうかわからない。

 俺の記憶しているアースクエイクと俺は、姿かたちやその魔法属性は同じものかもしれないが、それ以外では全くといって同じものはないと思う。

 どちらかと言えば、ゲームでの俺のポジションには、俺の異母兄が置かれているように感じる。


 そのように俺が感じているくらいだ、しばらくここに特攻をかまそうとしていた「ヒロイン」が、どのようにしてもこのクラスに近づけもしないことからあきらめたのかと思ってしばらくたったころ、今度はあのピンクの頭が最高学年の教室棟に特攻をかましているという噂を聞いた。

 基本的に下位クラスの者が上位クラスに入ることは許されていない。ほとんどの生徒が貴族階級であるこの学園では、セキュリティの関係から、とにかく所属するクラスメイトなど関係者以外が学園の者であっても教室に近づくことは良しとされていない。

 どうしても用事があるときには、上位貴族であれば連れている従者を使って連絡を取るか、さもなければ教室棟ではなく学年関係なく使用する食堂など開かれた場所で相手を待つ。身分の下の者が上の者に用事があるときには知り合いであればそれなりの連絡方法はあるがそうでなければ待って出会うしかないのだが……。

 もちろんキールは、ピンクの動向については随分と前から知っていたようだ。

「アークに害がないことは基本的に報告しないしな」

 俺に害があると思えることは、俺に影響が起こる前に処理をしてくれているようだが、害がないと思えば俺には何も伝えてくることがない、小さな嫌がらせのようなことはキールが気付いてもあえて俺に対処させていることもわかっている。

 キールだけではなく俺自身としてもそれなりに身体剣術魔法も鍛えてきたので、この学園の中で起こることについての対処は、まぁ眠っていても大丈夫と言っても大口をたたいているとは言われないだろう。

 


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