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クリフ・マークィス・ゲイル 1
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アースクエイク殿下が学園に全く顔を出さなくなった。
このことは、学園の生徒会室の中で驚きを伴った話題となっていたが、私からすれば、まずこの学園に生徒として所属したことの方が驚きであったからだ。
この学園の生徒会室の中に集っている者の中で、直接殿下と関わりを持ったことがある人物は私以外いない。
5年前、10歳の殿下と言葉を交わしたあの時に、私は自分と彼……いや、彼とそれ以外の人間の『格』の違いのようなものに気づいてしまった……。
それなりに自分は賢い人間であると自負していたし、その気持ちは今目の前に集っている、この国において次代を背負っていくだろう同世代の人間の中においても、間違いがないと言い切るだけの努力もしてきた。
父は侯爵で宰相だ。
現王陛下の幼少の時からご学友という立場で過ごし、陛下が即位されるとともに宰相職についたという。
私も陛下のご子息と学友という立場で過ごさせていただいている。
「陛下のご子息……」
以前……少なくとも私の認識している陛下のお子様は一人だけであった……。
陛下のお子様であれば、普通ならば殿下とお呼びする、そんな存在であるはずであるのに、なぜか陛下のお子様と紹介された人物は、一歳年上の伯爵家の子息として目の前に存在していた。
私がその伯爵子息であり、かつ陛下のお子様というとても不可思議な立場にある男児と顔合せをさせられてのは、五歳で行った帯剣の儀の翌年、私が六歳、相手は七歳になってすぐのころである。
私は、自分でいうのもなんだが、物心ついたころよりの記憶がきっちりとある。もしかすれば、物心というのも一般的なものよりもいくぶんか早いかもしれない。目がきちんと見えるようになってからのものはその場の映像と共に、それ以前の者は音声のみであるが、思い出そうと思えば思い出せるほどに……。
そしてその記憶に関しては、非常に自信を持ってもいる。
だから、まだ六歳になったばかりであっても、自分が覚えていたことに関しては、そのことが事実であるという自信を持っていた。
私が記憶していたこと、それは、陛下のお子様は一人きりであることと、それが男児であること、そしてその殿下は私よりも一歳年下であるということだった。
目の前にいる自分よりも一歳年上の陛下のお子様、でも殿下ではない伯爵家の子息とは……?
自分の記憶と知識に自信を持っていた六歳の子供である私は、流石にその場で問いただすようなことはせずに、知識と記憶から最適な答えを導き出していた。
『……目の前の子供が陛下のお子様といわれるならば、王妃様のお子様の殿下の兄?で、伯爵令嬢との庶子?不義の子?……陛下のお子様はお二人いらっしゃるのだな』
そのように理解したのだったが、侯爵邸に帰って改めて父に問いただすと、とても不思議な顔をされた。
「陛下のご子息はお一人だぞ」と……。
私は六歳になるまでこの王都の侯爵邸で過ごすことなく、王都から馬車で三日ほどかかる侯爵領の方で過ごしていた。
父は侯爵であるとともに宰相でもあったので、殆ど自領に帰ることなくここ王都で仕事をしており、領地は専ら叔父に任せていた。
私は嫡男であったから、王都で過ごすことが正解であったのかもしれないが、父の仕事の忙しさもさることながら、母の体がさして強くなかったことと、それにもまして一歳下の妹がとても弱く生まれてきてしまったこともあって、領地から三日の馬車移動も難しくなったからだ。
五歳の時の帯剣の儀も侯爵領で行い、六歳になって今年の帯剣の儀が終わった後に初めて王都にやって来たところであったのだ。
しかし、さすがに王子殿下を王妃殿下がお産みになられたことは、どのような田舎に居ても国からの告知で知れ渡っていたし、一歳になってすぐのことであったが、私はしっかりと覚えていた。
だから、もしも父が言う通り、陛下にご子息が一人しかいないとするならば、王妃殿下がお産みになった殿下が儚くなったということではないのか?
慶事もそうであるが、弔辞こそしっかりと国内にお触れがあるものだ。
私の知る限り、そのような「殿下が亡くなった」というような触れを聞いた覚えは全くなかったのだ。
このことは、学園の生徒会室の中で驚きを伴った話題となっていたが、私からすれば、まずこの学園に生徒として所属したことの方が驚きであったからだ。
この学園の生徒会室の中に集っている者の中で、直接殿下と関わりを持ったことがある人物は私以外いない。
5年前、10歳の殿下と言葉を交わしたあの時に、私は自分と彼……いや、彼とそれ以外の人間の『格』の違いのようなものに気づいてしまった……。
それなりに自分は賢い人間であると自負していたし、その気持ちは今目の前に集っている、この国において次代を背負っていくだろう同世代の人間の中においても、間違いがないと言い切るだけの努力もしてきた。
父は侯爵で宰相だ。
現王陛下の幼少の時からご学友という立場で過ごし、陛下が即位されるとともに宰相職についたという。
私も陛下のご子息と学友という立場で過ごさせていただいている。
「陛下のご子息……」
以前……少なくとも私の認識している陛下のお子様は一人だけであった……。
陛下のお子様であれば、普通ならば殿下とお呼びする、そんな存在であるはずであるのに、なぜか陛下のお子様と紹介された人物は、一歳年上の伯爵家の子息として目の前に存在していた。
私がその伯爵子息であり、かつ陛下のお子様というとても不可思議な立場にある男児と顔合せをさせられてのは、五歳で行った帯剣の儀の翌年、私が六歳、相手は七歳になってすぐのころである。
私は、自分でいうのもなんだが、物心ついたころよりの記憶がきっちりとある。もしかすれば、物心というのも一般的なものよりもいくぶんか早いかもしれない。目がきちんと見えるようになってからのものはその場の映像と共に、それ以前の者は音声のみであるが、思い出そうと思えば思い出せるほどに……。
そしてその記憶に関しては、非常に自信を持ってもいる。
だから、まだ六歳になったばかりであっても、自分が覚えていたことに関しては、そのことが事実であるという自信を持っていた。
私が記憶していたこと、それは、陛下のお子様は一人きりであることと、それが男児であること、そしてその殿下は私よりも一歳年下であるということだった。
目の前にいる自分よりも一歳年上の陛下のお子様、でも殿下ではない伯爵家の子息とは……?
自分の記憶と知識に自信を持っていた六歳の子供である私は、流石にその場で問いただすようなことはせずに、知識と記憶から最適な答えを導き出していた。
『……目の前の子供が陛下のお子様といわれるならば、王妃様のお子様の殿下の兄?で、伯爵令嬢との庶子?不義の子?……陛下のお子様はお二人いらっしゃるのだな』
そのように理解したのだったが、侯爵邸に帰って改めて父に問いただすと、とても不思議な顔をされた。
「陛下のご子息はお一人だぞ」と……。
私は六歳になるまでこの王都の侯爵邸で過ごすことなく、王都から馬車で三日ほどかかる侯爵領の方で過ごしていた。
父は侯爵であるとともに宰相でもあったので、殆ど自領に帰ることなくここ王都で仕事をしており、領地は専ら叔父に任せていた。
私は嫡男であったから、王都で過ごすことが正解であったのかもしれないが、父の仕事の忙しさもさることながら、母の体がさして強くなかったことと、それにもまして一歳下の妹がとても弱く生まれてきてしまったこともあって、領地から三日の馬車移動も難しくなったからだ。
五歳の時の帯剣の儀も侯爵領で行い、六歳になって今年の帯剣の儀が終わった後に初めて王都にやって来たところであったのだ。
しかし、さすがに王子殿下を王妃殿下がお産みになられたことは、どのような田舎に居ても国からの告知で知れ渡っていたし、一歳になってすぐのことであったが、私はしっかりと覚えていた。
だから、もしも父が言う通り、陛下にご子息が一人しかいないとするならば、王妃殿下がお産みになった殿下が儚くなったということではないのか?
慶事もそうであるが、弔辞こそしっかりと国内にお触れがあるものだ。
私の知る限り、そのような「殿下が亡くなった」というような触れを聞いた覚えは全くなかったのだ。
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