157 / 196
チュート殿下 115 この世界の理に 3
しおりを挟む
「その姿でよろしいのですか」
俺が大きくうなずくと。
「それでは」と一言発したキールは、俺に向けて何かを放った。
「えぇぇ……⁉」
まさかキールが……身内から裏切られたのか、そう思った瞬間、あの帯剣の儀の時にも味わったような頭の中をかき回されるような不快感と共に、知りもしない映像が頭の中に流れ込んできた。
もしかしたら一瞬気を失っていたのかもしれない、その場に立っていたままであったのは一応この世界で大人と認められる15歳になった意地。気がついてキールの膝枕だとかだったら恥ずか死ねるかもしれない。
その場に立っていたことに安堵して、目の前でニヤ付いていたキールを睨んだ。
「今の何?」
つっけんどんに問いかけてもここは許されると思う。
「この世界における、冒険者としての私たちの物語かな」
胡散臭い笑みを浮かべてキールが答える。
「いわゆるモブキャラ。今のところこのあたりの国々では冒険者が主役の物語は採用されていないようだから、冒険者であればほぼモブ。まぁ、何があるかわからないから、慎重に探りながら行くけどね」
キールはアミュレット王国を包み込んでいる結界のような何かを睨みつけるように一度視線をやると、これから向かうだろう魔の森の奥の方に顔を向けた。
一瞬で入って来た映像による記録によれば、俺はアースという名の冒険者で、それなりの家出身であるが精霊と契約ができなかったことで魔法が使えないことが決定し、虐げられた5年間を経て唯一の味方であった遠い親戚のキールと共に15歳になったことをきっかけとして、冒険者として身を立てるために祖国を後にする。
というところが今らしい。
『キールは俺の親戚のお兄さんてこと?』
ゆっくりとこの場を後にしながら、肩を並べてこれから進む道の方に視線を向けた。道なんてどこにもないけど……。
「親戚といっても平民扱いになっているという設定みたいですよ。ただ私は精霊契約に成功したみたいで、それなりのいい扱いを受けていた、ってことみたいですけど」
自分の設定が面白かったからか、肩を揺らしながら一応この辺りに探査をかけているようだ。
そういえばキールは俺の成長した後の姿なのかも、と思いながらもやたらイケメンだった。
今の姿とは違う標準装備?のキールは、ほとんど実態を持つことがなかったからほぼ俺だけが目にすることになるキールであったわけだが、どちらかといえば色見は前世寄り、見慣れている黒目に黒い髪だったが、考えてみれば最近姿を見ることになった離宮の者たちからすれば、マーシュの親戚に見えたかもしれない、色的に……。
今の冒険者ギルドに登録したときから成長した姿を取っているキールは、あの時少しは魔法が使えることが自然である方が良いだろうという考えの元、攻撃には「火」ということで、少し赤みが買った茶色の髪色にしたのだった。真っ赤すぎるとこれも面倒を起こさないとも限らないということで……。
俺はとにかく目立たないということをモットーに、この国で一番多い色見の茶色にしたのだ。目立って俺に魔法を使わせる気も全くなかったようだから一層使えないということにした方がいいだろうという考えだったみたい。
「魔法も使えて形もいいと、子供ほど狙われる可能性が高いですからね。もちろん誰にも触らせもしない自信は十分にありますが、わざわざ面倒を呼び込むこともありますまい」
とは、キールの談であったが、この前まで殆ど認識阻害を外すことは無かったのだから、考えてみれば全くこのような姿を取ることは関係がなかったのかもしれない。と今ごろ思ったりしている。
「話は追々。暗くなる前に隣の国の街に入ってしまいましょう。いきなり野宿は私も嫌ですよ」
折角誰にでも認識されるしっかりとした実態を持ったのですから、という心の声がはっきりと聞こえてきた。
ここからわざわざ魔の森の中のけもの道を通ることもない。短距離か又は長距離のジャンプでもいいが、ジャンプした先の状況を探るのも手がかかるから、とりあえず空を飛んでいくことにした。
空間魔法に関しては、精霊魔法ではその存在事態怪しいということらしいが、この国タリスマン帝国における魔法、スクロールを用いて手に入れることができるスキルを持って行う魔法では、全くその存在がないとも言えないものらしい。
「ダンジョンで手に入れることができるレアスキルの中に空間魔法もあるようです。今のところはマジックバックに使われている以上のものは秘匿されているためなのか、その存在を確認されてはいないようですが」
もう既にこちらの国のどこかの情報にアクセスしたのか、俺よりもこの世界の理に近いところまで行くことができる一種のバグであるキールは、簡単にそんなことを言ってくる。
「そもそもこの世界のバグは、アースの方ですよ。アースが居なければ私の存在なんてないのですからね」
森の木の上を飛行しながら、時々高く飛んでこのあたりのマッピングも行う。
冒険者の行き来が全くないこともないという程度の忌み嫌われている土地だ。もちろんきっちりとした地図などない。需要もない。
この世界にはない移動速度でタリスマン帝国の魔の森の端に向かう。
一番はじめにタリスマン帝国に向かったのは、そこがすぐ隣の国ということはもちろんだが、あのお花畑ヒロインが関係している国であることは疑いのないところであるから、とりあえず探ってみることにした、という理由もあったりする。
俺が大きくうなずくと。
「それでは」と一言発したキールは、俺に向けて何かを放った。
「えぇぇ……⁉」
まさかキールが……身内から裏切られたのか、そう思った瞬間、あの帯剣の儀の時にも味わったような頭の中をかき回されるような不快感と共に、知りもしない映像が頭の中に流れ込んできた。
もしかしたら一瞬気を失っていたのかもしれない、その場に立っていたままであったのは一応この世界で大人と認められる15歳になった意地。気がついてキールの膝枕だとかだったら恥ずか死ねるかもしれない。
その場に立っていたことに安堵して、目の前でニヤ付いていたキールを睨んだ。
「今の何?」
つっけんどんに問いかけてもここは許されると思う。
「この世界における、冒険者としての私たちの物語かな」
胡散臭い笑みを浮かべてキールが答える。
「いわゆるモブキャラ。今のところこのあたりの国々では冒険者が主役の物語は採用されていないようだから、冒険者であればほぼモブ。まぁ、何があるかわからないから、慎重に探りながら行くけどね」
キールはアミュレット王国を包み込んでいる結界のような何かを睨みつけるように一度視線をやると、これから向かうだろう魔の森の奥の方に顔を向けた。
一瞬で入って来た映像による記録によれば、俺はアースという名の冒険者で、それなりの家出身であるが精霊と契約ができなかったことで魔法が使えないことが決定し、虐げられた5年間を経て唯一の味方であった遠い親戚のキールと共に15歳になったことをきっかけとして、冒険者として身を立てるために祖国を後にする。
というところが今らしい。
『キールは俺の親戚のお兄さんてこと?』
ゆっくりとこの場を後にしながら、肩を並べてこれから進む道の方に視線を向けた。道なんてどこにもないけど……。
「親戚といっても平民扱いになっているという設定みたいですよ。ただ私は精霊契約に成功したみたいで、それなりのいい扱いを受けていた、ってことみたいですけど」
自分の設定が面白かったからか、肩を揺らしながら一応この辺りに探査をかけているようだ。
そういえばキールは俺の成長した後の姿なのかも、と思いながらもやたらイケメンだった。
今の姿とは違う標準装備?のキールは、ほとんど実態を持つことがなかったからほぼ俺だけが目にすることになるキールであったわけだが、どちらかといえば色見は前世寄り、見慣れている黒目に黒い髪だったが、考えてみれば最近姿を見ることになった離宮の者たちからすれば、マーシュの親戚に見えたかもしれない、色的に……。
今の冒険者ギルドに登録したときから成長した姿を取っているキールは、あの時少しは魔法が使えることが自然である方が良いだろうという考えの元、攻撃には「火」ということで、少し赤みが買った茶色の髪色にしたのだった。真っ赤すぎるとこれも面倒を起こさないとも限らないということで……。
俺はとにかく目立たないということをモットーに、この国で一番多い色見の茶色にしたのだ。目立って俺に魔法を使わせる気も全くなかったようだから一層使えないということにした方がいいだろうという考えだったみたい。
「魔法も使えて形もいいと、子供ほど狙われる可能性が高いですからね。もちろん誰にも触らせもしない自信は十分にありますが、わざわざ面倒を呼び込むこともありますまい」
とは、キールの談であったが、この前まで殆ど認識阻害を外すことは無かったのだから、考えてみれば全くこのような姿を取ることは関係がなかったのかもしれない。と今ごろ思ったりしている。
「話は追々。暗くなる前に隣の国の街に入ってしまいましょう。いきなり野宿は私も嫌ですよ」
折角誰にでも認識されるしっかりとした実態を持ったのですから、という心の声がはっきりと聞こえてきた。
ここからわざわざ魔の森の中のけもの道を通ることもない。短距離か又は長距離のジャンプでもいいが、ジャンプした先の状況を探るのも手がかかるから、とりあえず空を飛んでいくことにした。
空間魔法に関しては、精霊魔法ではその存在事態怪しいということらしいが、この国タリスマン帝国における魔法、スクロールを用いて手に入れることができるスキルを持って行う魔法では、全くその存在がないとも言えないものらしい。
「ダンジョンで手に入れることができるレアスキルの中に空間魔法もあるようです。今のところはマジックバックに使われている以上のものは秘匿されているためなのか、その存在を確認されてはいないようですが」
もう既にこちらの国のどこかの情報にアクセスしたのか、俺よりもこの世界の理に近いところまで行くことができる一種のバグであるキールは、簡単にそんなことを言ってくる。
「そもそもこの世界のバグは、アースの方ですよ。アースが居なければ私の存在なんてないのですからね」
森の木の上を飛行しながら、時々高く飛んでこのあたりのマッピングも行う。
冒険者の行き来が全くないこともないという程度の忌み嫌われている土地だ。もちろんきっちりとした地図などない。需要もない。
この世界にはない移動速度でタリスマン帝国の魔の森の端に向かう。
一番はじめにタリスマン帝国に向かったのは、そこがすぐ隣の国ということはもちろんだが、あのお花畑ヒロインが関係している国であることは疑いのないところであるから、とりあえず探ってみることにした、という理由もあったりする。
44
あなたにおすすめの小説
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…
悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!
えながゆうき
ファンタジー
妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!
剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる