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チュート殿下 122 この世界の理に 10
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確かに昨日の夕方この街に漂っていた雰囲気と感じる空気が違っている。
『何かあったのかな……?』
半歩先を歩くキールの横顔を見ながらいつもの様に念話で会話をする。
『この街は観光業で自立していると屋台の親父も話していただろう。その観光の目玉とも言える魔獣の討伐が昨日失敗したらしい』
魔の森に面した城壁の上に作られている見張り台から観光客に見せる魔獣討伐が、昨日の夕方、丁度俺達がこの街に着いた辺りで行われる予定であったのが、何時もとは違うアクシデントで失敗。その原因の究明と行われなかったことの後始末で朝からこの街の中央がバタバタしているらしく、それがこの街自体の雰囲気に影響を与えているようだ。
そんな時に一番忙しそうな冒険者ギルドに顔を出すのも如何なものか。
『そんな時だからこそ丁度いいんですよ』
アミュレット王国の一番近くにあるこの街で、冒険者ギルドに顔を出すかどうかは、あの膜を通り抜けて冒険者の物語に入った時に話し合った。
後を追われるなどと言う事ほぼ考えられないが、一般的な冒険者であれば、アミュレット王国とタリスマン帝国を行き来する場合、この街の冒険者ギルドに顔を出す、と言うかこの街を素通りすることが難しい。
いくら冒険者と言われるものであっても、野営する回数は増やしたくないものだ。特に魔の森の中での野営などできればしたくはないだろう。
この街はタリスマン帝国の最南端、サウスエンドと呼ばれている。以前はこの街を治めている貴族の名前だったらしいが、タリスマン帝国に併合された時にその名前を使う事が禁止され、以降サウスエンドと呼ばれるようになった。
以上キール談……。
頭の中で会話を交わしているうちに、冒険者ギルドのある広場前に到着した。
ギルドの朝はとにかく早いから、今、目の前に屯している人数が多い事もおかしくはないが、 その冒険者然とした者達の中に、やけに服装が派手派手しい、つまり上流階級然とした格好の者がそれなりの数含まれている所が不自然に感じる。
確かにこの街の収入に見世物の失敗は直結している事だから、この街の上の方の方々も原因の追求のためここに来ているのだろう。
「とにかく、ここに来た目的を果たして直ぐにでも次の街に向かう事にしよう」
このサウスエンドからはタリスマン帝国の中に向かう道がいくつかあるらしいから、野営は無しで行けるところに行こう。
冒険者はどの国に入る事も自由だが一応新しい国に入国した時には、新たな国の冒険者ギルドに顔を出す事が慣例となっているとの事だ、その国で働く事なく通過するだけであればそれには及ばないらしいが、俺達は一応何があるかわからないので、冒険者の物語に習って行動する事にしたのだ。
数人ずつの塊になって深刻な顔をしている大人達の間を縫ってサウスエンドの冒険者ギルドの扉をくぐる。
中も外以上にピリピリとそしてバタバタしているが、そのお陰か我々に意識を向ける者は全く存在しない。
ギルドは国が変わっても変わらないようで、長いカウンターと大きな掲示板が目につくところは同じだ。
バタバタしている割にカウンターの手前に列は出来ておらず、カウンターの中に座っている受付嬢達の何人かは暇そうに座っている。
きっとまだあまり複雑な仕事は任せられていない受付嬢達なのだろう。
何時もであれば、あれくらいの年齢の女性に比較的ジロジロと見られるキールも、周りに雰囲気に飲まれている心ここに在らずの受付嬢達には絡まれる事なく、この国に来たことの証明と言うか、挨拶のような登録確認は流れ仕事の中で終わった。もちろん俺の方もサラッと終わった。
用事が済めばこのような所に長居は無用。気配を出来るだけ薄くしてギルドのある広場から素早く退散した。
「結局の所、どの様な理由でいつも成功していた見世物が失敗したのか……と言うか、そもそもこの街ではどの様にして魔獣討伐を観光客に見せていたのかな……」
この街に入ってきた門とは逆の位置にある門に向かって歩きながら、キールに問い質した。
「フフフ……、どうも原因を作ったのは私達だった様ですよ」
あぁ……なんというかあまり直視したくない黒い笑いを口の端に浮かべるキールがそこにいた。
『何かあったのかな……?』
半歩先を歩くキールの横顔を見ながらいつもの様に念話で会話をする。
『この街は観光業で自立していると屋台の親父も話していただろう。その観光の目玉とも言える魔獣の討伐が昨日失敗したらしい』
魔の森に面した城壁の上に作られている見張り台から観光客に見せる魔獣討伐が、昨日の夕方、丁度俺達がこの街に着いた辺りで行われる予定であったのが、何時もとは違うアクシデントで失敗。その原因の究明と行われなかったことの後始末で朝からこの街の中央がバタバタしているらしく、それがこの街自体の雰囲気に影響を与えているようだ。
そんな時に一番忙しそうな冒険者ギルドに顔を出すのも如何なものか。
『そんな時だからこそ丁度いいんですよ』
アミュレット王国の一番近くにあるこの街で、冒険者ギルドに顔を出すかどうかは、あの膜を通り抜けて冒険者の物語に入った時に話し合った。
後を追われるなどと言う事ほぼ考えられないが、一般的な冒険者であれば、アミュレット王国とタリスマン帝国を行き来する場合、この街の冒険者ギルドに顔を出す、と言うかこの街を素通りすることが難しい。
いくら冒険者と言われるものであっても、野営する回数は増やしたくないものだ。特に魔の森の中での野営などできればしたくはないだろう。
この街はタリスマン帝国の最南端、サウスエンドと呼ばれている。以前はこの街を治めている貴族の名前だったらしいが、タリスマン帝国に併合された時にその名前を使う事が禁止され、以降サウスエンドと呼ばれるようになった。
以上キール談……。
頭の中で会話を交わしているうちに、冒険者ギルドのある広場前に到着した。
ギルドの朝はとにかく早いから、今、目の前に屯している人数が多い事もおかしくはないが、 その冒険者然とした者達の中に、やけに服装が派手派手しい、つまり上流階級然とした格好の者がそれなりの数含まれている所が不自然に感じる。
確かにこの街の収入に見世物の失敗は直結している事だから、この街の上の方の方々も原因の追求のためここに来ているのだろう。
「とにかく、ここに来た目的を果たして直ぐにでも次の街に向かう事にしよう」
このサウスエンドからはタリスマン帝国の中に向かう道がいくつかあるらしいから、野営は無しで行けるところに行こう。
冒険者はどの国に入る事も自由だが一応新しい国に入国した時には、新たな国の冒険者ギルドに顔を出す事が慣例となっているとの事だ、その国で働く事なく通過するだけであればそれには及ばないらしいが、俺達は一応何があるかわからないので、冒険者の物語に習って行動する事にしたのだ。
数人ずつの塊になって深刻な顔をしている大人達の間を縫ってサウスエンドの冒険者ギルドの扉をくぐる。
中も外以上にピリピリとそしてバタバタしているが、そのお陰か我々に意識を向ける者は全く存在しない。
ギルドは国が変わっても変わらないようで、長いカウンターと大きな掲示板が目につくところは同じだ。
バタバタしている割にカウンターの手前に列は出来ておらず、カウンターの中に座っている受付嬢達の何人かは暇そうに座っている。
きっとまだあまり複雑な仕事は任せられていない受付嬢達なのだろう。
何時もであれば、あれくらいの年齢の女性に比較的ジロジロと見られるキールも、周りに雰囲気に飲まれている心ここに在らずの受付嬢達には絡まれる事なく、この国に来たことの証明と言うか、挨拶のような登録確認は流れ仕事の中で終わった。もちろん俺の方もサラッと終わった。
用事が済めばこのような所に長居は無用。気配を出来るだけ薄くしてギルドのある広場から素早く退散した。
「結局の所、どの様な理由でいつも成功していた見世物が失敗したのか……と言うか、そもそもこの街ではどの様にして魔獣討伐を観光客に見せていたのかな……」
この街に入ってきた門とは逆の位置にある門に向かって歩きながら、キールに問い質した。
「フフフ……、どうも原因を作ったのは私達だった様ですよ」
あぁ……なんというかあまり直視したくない黒い笑いを口の端に浮かべるキールがそこにいた。
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