転生したら当て馬王子でした~絶対攻略される王太子の俺は、フラグを折って幸せになりたい~

HIROTOYUKI

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チュート殿下 126 タリスマン帝国の旅 2

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「取り敢えず離宮の中に異常はないみたいです。皆元気にやってますよ」

   俺が感知能力に意識を全振りしている間に、キールはアミュレット王国まで感知能力を飛ばしたみたいだ。

「リフルもいつ殿下が帰ってきても良い様に、庭のアスレチックの増設に余念がない様ですし……帰った時のサプライズって事で、今の庭がどうなっているかは帰った時のお楽しみという事で」

   同調すれば、キールの感じているものも手にできるのだが、キールにその気がなければ見る事はもちろん、知る事もできない。どっちが主なのかわからない現実よ……。

   あの国では俺は離宮に閉じこもっていることになっている。

   俺が居ない方がいいと思う者が多いから、閉じ込めているうちに何か良い処理方法殺し方でも考えているのかもしれないな。

   その筆頭が王様王妃様両親と「だ女神様」かな。あぁ王妃様母親の方は、何だか俺に利用価値があるように振る舞い始めたみたいだが。

「一応伯爵王子をアークの後釜役につけたいみたいだが、そうすると伯爵王子をやる役者が居なくなる。アークは当て馬だからいなくならなくてはいけない、そうすると伯爵王子もいなくならないといけなくなる、ジレンマだよね」

   伯爵王子役、つまり王家の血を引くもう一人の王子?あの王家は色々やらかしていて、子供の数が異常に少ない。

   一応正式な後継はアースクエイクだけだし、陛下親父の時も他にいなかったようだ。

   だからあんなのでも王様できたのか、とも思わなくはないが、

「王太子の頃はそんなでもなかったらしいぞ」

   とは、色々知ってるキールの弁だ。

   まともじゃなかったらマーシュが忠誠を誓って尽くす訳がない。

   それが、先代の陛下爺さんを追いやって即位した途端如何にもこうにも、婚約破棄をぶちかまして、すったもんだがあって今に続くらしいし……。
  
「王立学園に上がってから、『婚約破棄ざまぁ』の典型的な恋愛小説みたいな感じになって、悪役令嬢役の自死で終わる最悪の話であったようで……ここにもアミュレット王国あの国女神が作った国だと思う一因だよ」

   あそこを離れてから、時々匂わせで俺の前の世代の『おはなし』をしてくれるようになったキール。

   当事者のマーシュに聞くのは憚れるほどの話である事は、もともと想像ができているから、マーシュの方からきちんと話してくれることを待っているんだが、俺ももう一応成人年齢でお子様ではないので、それを加味してキールも話してくれているのだろう。

    以前は、体の年齢に少し心も引き摺られているところもあったからな。

   王妃様おふくろさん?が、死んじゃった前の婚約者悪役令嬢の実の妹であると聞いた時には、

「何やってくれちゃってるの王様おやじ!」と、思ったものだ……。

  ただ、そもそも両親から愛されない理由がアースクエイク自身の責任ではなかったと知れて、少し心が軽くなったことを覚えている。

   と言って虐待超ネグレクトは許せないけどな。

   5歳になって意識が戻った俺になった時から、その前の意識が薄かった時から、両陛下に対しての愛情は無かったし、愛情それを求める事もなかったから、心が痛む事もなかったけど、嫌われる、それ以上の無関心には、少しだけ、ほんの少しだけきついところもあったから……。

   もしも、それまで立派な王子様として成長してきた親達彼等が、王立学園に入った途端に愚かになる。

   これが、この世界を創った『神』のプログラムされたもの、乙女ゲームのストーリーに則った行動だとしたら。

   今上陛下先代祖父の悪政を憂い、中等部成人になる前から準備し、高等部つまり王立学園に入った時には、足固めまで済んでいるような状態だったという。

   そこまでできていたから、学園内での如何なものか、というような乙ゲー状態のカオスな話とは別に、政治の方は粛々と進んで、表向きには学園卒業とともに先代の病気という事を理由として即位したそうだ。

   その時同時に婚姻を済ませているが、それは俺の産みの母親と。すでにヴォーテックスは生まれていた。

    学園の外、殆どの貴族と国民達は、悪政を行なっていた前王を、血を流さずに政権交代させた超優秀な王子様という顔と。

   学園の中、天真爛漫平民出身ヒロインに落とされ、生まれた時から後ろ盾になるべく決められていた公爵令嬢を貶めて、自死に追い込み、その事を外に知らせないために、対外的に同じ様に認識される同じ名字であるその妹の公爵令嬢を正妃に据えるという、暴挙を行った王の顔。

   確かに先代は余り褒められた様な政治は行なっていなかったのだろう。

   いくら次代の王子が優れていたとしても、成人から間もない王子がまだ矍鑠としている働き盛りの王様を、血を流す事なく退位に追い込むことができたのだから。

   まぁこの血を流すことなくは、内乱とか革命とかその様な大袈裟な騒動を起こすことなくという意味で、きっと頂点の周囲ではまぁまぁの血が流れたことだろうけど……
 
   ちょっと違う場面(ゲーム的には)ではあるが、本当の元々の婚約者であった公爵令嬢も死んじゃってる訳だし……こっちも病気で亡くなったことにされているし。

   先代じいさんも、ほどなくして表向きは病状が悪化したという理由で、俺が生まれる前に殺されたみたい。


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