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24 ブレーズ森の中で精霊?妖精?とにかく人外?と出会う

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 パーティーメンバーが辺境の村に向かって走り出したちょうどそのころ、魔の森の奥まで飛ばされた男、ロメロ公爵家長男ブレーズは「ここはもしかして、神のおわす庭?」などと、トンチンカンなことを思いながら、意識を取り戻していた。

   状況判断がすぐ出来なければ上級の冒険者にはなれない。彼は確かその潤沢な資金や公爵家の後ろ盾があれど、それだけに甘んずる事なく、努力もまた積み重ねていた。

   そんな彼をしても今の状況を把握することは難しい。

   気を失った振りをしつつ、現状の把握に努めるが、第1にあの痛かった半分ちぎれかけていたような大怪我をしていた足が、すっかり治っている。確かに今回の冒険の目的の一つに、辺境の村で作られているというエリクサーにも匹敵するかもしれないポーションを手に入れる、もしくはその情報を得る。というのがあったが、今の自分はそのエリクサーを飲んだかのように体の痛みがどこにもないのだ。それは、足だけでなく胸の奥にできたしこりすらなくなってしまったように、呼吸がすんなりとできることからも、あながち嘘とも思えない。

   しかしこの場にいるのは、10歳にも満たない子供だけ。その子供が誰かに話しかけているような様子から、ほかに誰かいるかもしれないがブルーズから確認することは出来ない。

「ここにこのまま置いておく訳には行かないよね……」

「でも、僕こんなに大きいもの運べないよ?」
 
「うん、まだやったことないけど……お花はは大丈夫だけど、動物は死んだものしか入れたことないし……大丈夫かなぁ……」

   なんだかこのまま話を聞いていたら、せっかく拾った命がなくなってしまうような気がしたので、狸寝入りを解除するタイミングをはかることにした。

「外に出したまま運ぶより中に入れた方が楽だけど……飛ぶんでしょ?」

「飛ぶってなんだ?」

 思わずガバリと起き上がってしまったブレーズ。

 そこにはやはり少年一人しか姿が見えず、ブレーズは話していた相手を探して周りを見回してしまった。

  気を失っているとばかり思っていた男がいきなり起き上がったので、その事に非常に驚いたルフェルは,その場に その知らない男を残して、自分だけで飛んでしまった。

 心の底から、「自分の家に帰りたい!」と思ってしまったからだ。

 ハッと気づいたときには、家が目の前に見える魔の森の端に立っていた。

「どうしようテリオ……あの人置いてきちゃったよ!」

「うーん。あの人きっと強い冒険者だから、あそこからなら大丈夫じゃないかなぁ(強い冒険者があんなにひどい怪我なんてしないかもしれないけどね……)」

「何?テリオ最後の方聞こえなかったけど……」

「ルフェルはあいつのケガを治してあげたんだから十分だよ。ケガしたのもあそこにいたのも、自分からあの森に入ったから。それよりもせっかく摘んだ薬草カーラに渡そう」

 テリオは、基本的にルフェルに関係していない人・事には全く関心がない。

 ルフェルは背後の森の奥を見つめながら、心の中でさっきの男の人にあやまった。いきなりいなくなってしまったことと、中途半端に放置してしまったことを。それから、彼の所に戻りたくても、テリオが連れて行ってくれなければあの場所には飛べないなぁと思ったからだ。

 

 その場に残された男・ブレーズは、目の前で起こったことがまだ理解できずにいた。確かに目の前に自分の傷を治してくれただろう人物が居たのに、一瞬で消えてしまったのだ。

 それに自分がイノシシのお化けに吹っ飛ばされたその場所は、こんなに山肌から離れた場所ではなかった。

 飛ばされた弾みで魔の森の何かが発動したものなのだろう、と、この場にいることはそのように理解するが、あの子供が自分のけがを治したのはどのように理解すればいいのか?

 すぐ目の前からいなくなってしまったから確信は漏れないが、荷物など何も持っていなかったようだったし。

 求めてきたエリクサーを使ってくれたりするわけはないだろう、見ず知らずの人間に。

 そして一番納得できていないのは、あの子供が目の前からいなくなった理由。

 この森の特性で飛ばされてしまったのならば大問題である。

 しかし、なんとなくそれで消えてしまったとは思えなかった。

「あの子は自分で飛ぶと言っていたし」

 だから、きっとあの子自身に危険なことは無いだろう。それより自分だ。

「ここどこだよ……」

 大声で叫びたいところだが、周りの状況がわからないところで大声は出さない、それは冒険者としての常識だから。

 そのブレーズ自身の常識としては、あの子供が何なのかを判断することができない。

「精霊?妖精?良い魔獣?なんだよ良い魔獣って……」

 周囲を警戒しながらも、緊張感を和らげるための独り言が続く。

「何も持ってなかったよな?俺を治してくれたのがポーションでなかったら、魔法?あのような子供が使えるものなのか?あぁやっぱりあの子は人間ではないのだな……」

 魔獣の気配はするが近づいてこないことに疑問を感じながらも、深くは考えずに進む。ブレーズは出自のことは別にしても、大貴族の当主になるのは無理なのかもしれない、脳筋よりなので……。

 実は、ルフェルが母のポーションを使いたくなくて、治癒魔法を使ったことでルフェルの魔力がブレーズに残っていたため魔獣たちが近づかなかったことは、テリオ以外誰も知らない。
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