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追放宣言されちゃった・その1
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全ての始まりは、バカ王子さんの宣言だった。
「タカミネ・シロウ! 汝を栄えある我がパーティより追放する!」
よく通るバカ王子さんの声が冒険者酒場に響くと、波が引くように喧騒が消えていく。
滅多に無いことだ。
いつもなら多少の騒動は酒の肴とばかりに囃し立て、エールのジョッキを片手に盛り上げるぐらいのことをする冒険者達が、皆一様に事態の推移を見守るように見つめている。
その視線は大きく分けて二種類。
追放宣言をしたバカ王子さんこと、人類主権国家のひとつであるライト王国第二王子であるアラン・ホワイトの真意を見極めようとしている用心深い者と、その他大勢だ。
ちなみに、その他大勢の向けている視線は大体同じ。それは、
「おいおいおい」
「あいつ死んだわ」
これである。
けれどそんな視線を向けられているアランは、意気揚々と言葉を続けた。
「タカミネ・シロウ、汝が追放される理由が分かるか」
「え?」
間の抜けた声が返ってくる。
それは追放宣言されたシロウが零したものだ。
シロウは強張った表情で応える言葉を探しているが、中々出てこない。
追放宣言されたのがショックだったから、というわけじゃない。
この場を巧く取り繕って、アランをフォローするにはどうすれば良いか思考を巡らせていたからだ。
けれどアランは考えなしに、致命的に口を滑らせた。
「汝が役立たずだからだ!」
「アラン殿下!? ちょっとお待ち――」
必死にシロウは止めようとしたが、アランの言葉の方が早かった。
「地図屋など、何の役に立つ!」
二度目の沈黙が広がる。
それは血の気が引くような冷め醒めとした物だった。
(……拙い)
シロウは血の気が引くような感覚を覚えながら、冒険者酒場のカウンターに視線を向ける。
そこに居たのは酒場の店主であり、冒険者ギルドの重鎮の一人であるギィ・スロートだ。
齢五十を超える彼は無言でグラスを磨いている。
一見すると我関せずといった様子だが、シロウには処刑道具を磨いている執行人のように見えた。
「アラン殿下、どうか考えなおしていただけませんか。地図屋は無くてはならない重要な職業です」
シロウは懸命に、アランに思い直して貰えるようアピールするが、バカ王子さんは残念ながら気づけなかった。
「笑止! 無くてはならないだと? 地図屋など、こそこそ見て回るだけではないか!」
「それは斥候としての意味もありますし。それに地図屋は物資を用立てる役割も持ってます」
「言い訳をするな! 汝が言っていることは、ネズミのように臆病に嗅ぎまわる荷物持ちという事ではないか!」
「……」
思わず言葉に詰まるシロウ。
反論できないから、というわけじゃない。
言っても無駄だと、否応なしに理解したからだ。
それでもどうにかしようと、必死に考えていた時だった。
「シロウさん、どうかしたんですか?」
一人の偉丈夫、アランのパーティのタンク役であるジル・コードが近づいてきて声を掛けて来た。
「……アラン殿下も、どうされたんです?」
先に声を掛けたのがシロウな時点で、どちらを信頼しているか伝わってくる。
「……なんか、随分と静かですし」
気のせいか、冷汗をかいているように見える。
中々見れない様子だ。
戦闘となれば、いかなる攻撃も鉄壁の如く弾き、あるいは受け止める守護者の彼が、嫌な予感に不安を滲ませている。
そしてその予感が正しいことを、アランが教えてくれた。
「ジルよ、聞くがよい。つい先ほど、シロウを我がパーティから追放したのだ!」
アランの言葉を耳にした途端、
「終わった……」
竜の息吹すら受け止めたジルは足元から崩れ落ちた。
「もうダメだ……おしまいだぁ……」
「ジルくん!?」
思わず駆け寄るシロウ。
「ちょ、しっかりして。どうしたの」
「うぅ……だって、これもう詰んでるじゃないですか」
慰められるジルに、どうにかして励まそうとするシロウ。
そこに残りのパーティメンバーもやって来た。
「どうした?」
「え? なに?」
「あらあら」
一人は、冒険者ギルドから勇者認定をされた男性、アッシュ・バロン。
残りの二人の女性は、特級魔女の認定をされたレイラ・スカーレットと、聖女認定をされたキティ・レゾだ。
そんな三人にも、アランは状況を教えてあげた。
「汝らも聞くがよい。つい先ほど、シロウを我がパーティから追放したぞ!」
「……は?」
「????」
話を聞いて、レイラは漠然と言葉をもらし、キティは意味が分からないと言わんばかりに固まっている。
あまりのことに二人はすぐに反応できなかったが、勇者の二つ名を持つアッシュは違った。シロウに体を向けると
「すみません。勘弁してください」
流れるような所作で土下座した。
「ちょ、止めてください! 勇者の土下座とか見たくないです!」
すぐに止めに入るシロウであった。
「タカミネ・シロウ! 汝を栄えある我がパーティより追放する!」
よく通るバカ王子さんの声が冒険者酒場に響くと、波が引くように喧騒が消えていく。
滅多に無いことだ。
いつもなら多少の騒動は酒の肴とばかりに囃し立て、エールのジョッキを片手に盛り上げるぐらいのことをする冒険者達が、皆一様に事態の推移を見守るように見つめている。
その視線は大きく分けて二種類。
追放宣言をしたバカ王子さんこと、人類主権国家のひとつであるライト王国第二王子であるアラン・ホワイトの真意を見極めようとしている用心深い者と、その他大勢だ。
ちなみに、その他大勢の向けている視線は大体同じ。それは、
「おいおいおい」
「あいつ死んだわ」
これである。
けれどそんな視線を向けられているアランは、意気揚々と言葉を続けた。
「タカミネ・シロウ、汝が追放される理由が分かるか」
「え?」
間の抜けた声が返ってくる。
それは追放宣言されたシロウが零したものだ。
シロウは強張った表情で応える言葉を探しているが、中々出てこない。
追放宣言されたのがショックだったから、というわけじゃない。
この場を巧く取り繕って、アランをフォローするにはどうすれば良いか思考を巡らせていたからだ。
けれどアランは考えなしに、致命的に口を滑らせた。
「汝が役立たずだからだ!」
「アラン殿下!? ちょっとお待ち――」
必死にシロウは止めようとしたが、アランの言葉の方が早かった。
「地図屋など、何の役に立つ!」
二度目の沈黙が広がる。
それは血の気が引くような冷め醒めとした物だった。
(……拙い)
シロウは血の気が引くような感覚を覚えながら、冒険者酒場のカウンターに視線を向ける。
そこに居たのは酒場の店主であり、冒険者ギルドの重鎮の一人であるギィ・スロートだ。
齢五十を超える彼は無言でグラスを磨いている。
一見すると我関せずといった様子だが、シロウには処刑道具を磨いている執行人のように見えた。
「アラン殿下、どうか考えなおしていただけませんか。地図屋は無くてはならない重要な職業です」
シロウは懸命に、アランに思い直して貰えるようアピールするが、バカ王子さんは残念ながら気づけなかった。
「笑止! 無くてはならないだと? 地図屋など、こそこそ見て回るだけではないか!」
「それは斥候としての意味もありますし。それに地図屋は物資を用立てる役割も持ってます」
「言い訳をするな! 汝が言っていることは、ネズミのように臆病に嗅ぎまわる荷物持ちという事ではないか!」
「……」
思わず言葉に詰まるシロウ。
反論できないから、というわけじゃない。
言っても無駄だと、否応なしに理解したからだ。
それでもどうにかしようと、必死に考えていた時だった。
「シロウさん、どうかしたんですか?」
一人の偉丈夫、アランのパーティのタンク役であるジル・コードが近づいてきて声を掛けて来た。
「……アラン殿下も、どうされたんです?」
先に声を掛けたのがシロウな時点で、どちらを信頼しているか伝わってくる。
「……なんか、随分と静かですし」
気のせいか、冷汗をかいているように見える。
中々見れない様子だ。
戦闘となれば、いかなる攻撃も鉄壁の如く弾き、あるいは受け止める守護者の彼が、嫌な予感に不安を滲ませている。
そしてその予感が正しいことを、アランが教えてくれた。
「ジルよ、聞くがよい。つい先ほど、シロウを我がパーティから追放したのだ!」
アランの言葉を耳にした途端、
「終わった……」
竜の息吹すら受け止めたジルは足元から崩れ落ちた。
「もうダメだ……おしまいだぁ……」
「ジルくん!?」
思わず駆け寄るシロウ。
「ちょ、しっかりして。どうしたの」
「うぅ……だって、これもう詰んでるじゃないですか」
慰められるジルに、どうにかして励まそうとするシロウ。
そこに残りのパーティメンバーもやって来た。
「どうした?」
「え? なに?」
「あらあら」
一人は、冒険者ギルドから勇者認定をされた男性、アッシュ・バロン。
残りの二人の女性は、特級魔女の認定をされたレイラ・スカーレットと、聖女認定をされたキティ・レゾだ。
そんな三人にも、アランは状況を教えてあげた。
「汝らも聞くがよい。つい先ほど、シロウを我がパーティから追放したぞ!」
「……は?」
「????」
話を聞いて、レイラは漠然と言葉をもらし、キティは意味が分からないと言わんばかりに固まっている。
あまりのことに二人はすぐに反応できなかったが、勇者の二つ名を持つアッシュは違った。シロウに体を向けると
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