バカ王子さんが勝手に追放宣言しちゃったので一旦パーティから離脱することにしました

笹村

文字の大きさ
2 / 3

追放宣言されちゃった・その2

しおりを挟む
「アッシュさんが悪いわけじゃないんですから。どうか頭を上げて――」
「じゃあ、連いて来てくれますか」

 土下座していたアッシュは顔を上げると、捨てられた子犬を思わせる縋るような視線で言った。

「見捨てないでください」
「何を言っているのだ! アッシュよ!」

 シロウが応えるより早く、アランが余計なことを言う。

「戦えない役立たずに媚びるなど、それでも我がパーティの勇者か!」
「…………」

 アランの言葉にアッシュは無言で真顔になると、どこからともなくペンと紙を取り出した。

「アッシュさん、なにを」
「辞表、辞表書きます」
「アッシュさん!?」

 慌てて止めるシロウ。

「ちょ、思い留まって! 一度受けた依頼を勝手に辞めたらギルドからの罰則が!」
「シロウさん抜きで魔王迷宮に挑戦すること考えたら罰則受ける方がマシです」
「いやでも待ってください! まだ猶予はありますけどこのままだと敵性魔王が迷宮から孵化する可能性もありますし! そうなったらどれだけ危険か――」
「私も辞めます」
「キティさん!?」

 パーティの回復役であるキティまで辞めると言い出し、シロウはさらに焦る。

「キティさん、貴女が居なくなったら命の危機に直結しちゃいます」
「それはシロウさんが居なくなっても同じじゃないですか」

 半泣きになるキティ。

「ごはんもお風呂も、それに……トイレも無しとか死んじゃいますぅぅぅ」
「それは、皆さんもアイテムボックスありますからある程度はどうにか……トイレは、その、現地でその辺でどうにかするしかないですけども」
「やだぁぁぁぁぁ」

 想像したのか、本気で泣き出すキティ。
 まだ十五才の少女には色々とキツいようだ。
 普段は聖女としての格を保とうとするあまり言葉遣いが高飛車な所があったりするが、完全に今は剝げ落ちている。そんなキティに、

「軟弱なことを言うな!」

 アランが火に油をぶちまける勢いでのたまう。

「魔王討伐という偉業を前に何たる情けなさか! 王国の危機を未然に防ぐ栄誉を得る機会だというのに些末事にこだわるとは、恥を知れ!」
「……殿下、高き志しは感服いたします」

 シロウは言葉を選びながらツッコミを入れる。

「尊き血の方々にとって、栄誉が何よりも価値があることだというのは、私のような俗物でも聞き及んでおります。されど我らの如き俗物は、それでは足らぬのです。尊き血よりも、俗な肉を必要とするのです」

 慎重に、そして懸命にシロウはアランに呼び掛ける。
 それは保身のためではなく、ひと時とはいえ仲間となった皆を護るためだった。
 けれどアランは気付けない。

「はっ、正体を現しおったな」

 アランは見下げ果てるような、あるいは拒絶するような表情の中に、一抹の苦悩を滲ませながら言った。

「自ら俗物などと言い切る浅ましさ、所詮は卑賤な輩よ。そのような者を魔王討伐の栄誉に加えることなど許されぬ。やはり汝を追放することは正しいのだな」

(……やはり?)

 シロウはアランの言葉に違和感を覚える。

(やはりってことは、前々から考えていた? いや、そんなそぶりは無かった。とすると……誰かに吹き込まれた?)

 シロウは十四才になったばかりの少年アランに、気付かれないよう視線を向けながら考える。

(拙い……これ俺じゃなくて、アラン殿下を嵌めるための流れだ)

 嫌な予感が明確な形となって浮き上がる。
 陰謀とすら言えない稚拙な悪意だが、それに巻き込まれるのはシロウの仲間だ。

(……どうにかしないと)

 焦りながら打開策を考えていたが、それをアランが潰してしまう。

「これは決定だ、タカミネ・シロウ。汝のように戦うことも出来ぬ地図屋如きを、魔王討伐の栄誉に加えることはできぬ。我がパーティより追放する!」

 アランが言い切った、その時だった。

「寝言は寝て言いなさいよ」

 昏睡の魔術を魔女であるレイラがアランに放ち、アランは崩れ落ちると眠ってしまう。

「よし」
「いやダメでしょ!」

 レイラにツッコミを入れるシロウ。

「今話し合いをしてる最中だったんだから」
「……そんなこと言ったって」

 レイラは拗ねたように言った。

「こいつ話し合う気なんてないし。そんなことするより、全部無かったことにしちゃった方が良いと思う」
「……レイラさん、それは」
「通らない話です」

 断言するように、酒場のマスターであり冒険者ギルドの重鎮であるギィが言った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

帝国の王子は無能だからと追放されたので僕はチートスキル【建築】で勝手に最強の国を作る!

雪奈 水無月
ファンタジー
帝国の第二王子として生まれたノルは15才を迎えた時、この世界では必ず『ギフト授与式』を教会で受けなくてはいけない。 ギフトは神からの祝福で様々な能力を与えてくれる。 観衆や皇帝の父、母、兄が見守る中… ノルは祝福を受けるのだが…手にしたのはハズレと言われているギフト…【建築】だった。 それを見た皇帝は激怒してノルを国外追放処分してしまう。 帝国から南西の最果ての森林地帯をノルは仲間と共に開拓していく… さぁ〜て今日も一日、街作りの始まりだ!!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

Sランクパーティーを追放された鑑定士の俺、実は『神の眼』を持ってました〜最神神獣と最強になったので、今さら戻ってこいと言われてももう遅い〜

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティーで地味な【鑑定】スキルを使い、仲間を支えてきたカイン。しかしある日、リーダーの勇者から「お前はもういらない」と理不尽に追放されてしまう。 絶望の淵で流れ着いた辺境の街。そこで偶然発見した古代ダンジョンが、彼の運命を変える。絶体絶命の危機に陥ったその時、彼のスキルは万物を見通す【神の眼】へと覚醒。さらに、ダンジョンの奥で伝説のもふもふ神獣「フェン」と出会い、最強の相棒を得る。 一方、カインを失った元パーティーは鑑定ミスを連発し、崩壊の一途を辿っていた。「今さら戻ってこい」と懇願されても、もう遅い。 無能と蔑まれた鑑定士の、痛快な成り上がり冒険譚が今、始まる!

処理中です...