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追放宣言されちゃった・その3
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「ギィさん……」
「シロウさんも分かっているでしょう。すでに手遅れだと」
いつの間にかカウンターから近くまで来ていたギィは、裁定を下すように言った。
「追放宣言は、それほど重い。なおかつ地図屋に対する差別発言をこの場でされた以上、ギルドとしては見過ごせません」
「それは俺が」
「あなた一人が許せば良いというものではありません」
シロウの言葉をギィは、ぴしゃりと止める。
「あなたも知っているでしょう。冒険者時代初期にあった職業差別の酷さを。それをギルドは長い時間を掛けて今の形に持って来た」
「それは、そうなんですけど……」
当時を知っているシロウは反論できない。だが、
「だからといって、それで不利益を被る人が出るのは問題だと思うんです。どうにかなりませんか?」
アッシュやジル、そしてキティやレイラだけでなく、アランのことを思って頼み込む。
けれどギィの応えは素っ気なかった。
「駄目です。追放宣言がなされた以上、シロウさんがアラン殿下のパーティに戻ることはできません。そして、地図屋に対する差別的発言に対するペナルティは科します」
ギィは、昏睡の魔術で眠ったままのアランを一瞥した後、残りの四人、アッシュとジル、そしてキティとレイラに向け言った。
「今回の魔王迷宮攻略に当たり、貴方達のパーティにギルドは地図屋を派遣しません。地図屋なしで敵性魔王を討伐してください」
無情なギィの言葉に、四人は大いにへこんだ。
「終わった……完全に、終わった……」
「辞めたい……」
「シロウさん抜きなのやだぁぁぁぁ、お家帰るぅぅぅぅ」
「噓でしょ……だったら」
ジルとアッシュとキティがへこむ中、残ったレイラが交渉しようとする。
「罰則受けても良いから辞めます。みんなもそれでいいでしょ」
「認められません」
ギィの応えは無慈悲だった。
「今回のクエストは王命勅令。それを一度引き受けた以上、辞めることをギルドは認めません。それでも辞めるというなら、人生が終わると覚悟してください」
「……そんなに?」
表情をひきつらせながら尋ねるレイラに、ギィは具体的に答えた。
「辞めるならばギルドからの支援は今後一切なくなると思ってください。実質、冒険者としては終わります。その上で、貴方達が辞めることで発生する全ての損害を背負うことになりますし、何より王命勅令です。貴方達は一国から大罪人として今後扱われると思ってください」
「……そんな」
へたりと、床に崩れ落ちるレイラ。
「それじゃ、シロウさん抜きで行くしかないじゃない……」
他の三人、アッシュとジルとキティも悲嘆に暮れていた。
けれどギィは話は終わったと言わんばかりに、元居た酒場のカウンターに戻る。
それと同時に、酒場の喧騒が戻っていく。
命がけの仕事をすることも多い冒険者達としては、先ほどまでのやり取りも多少珍しい程度のこと。
自分に原因が無くとも落とし穴に引きずり込まれるなんてことは、稀によくあることだ。
そんなことを気に掛けるより、飲んで騒いで楽しんで、明日の仕事を頑張る気力を蓄える方がいい。
世の中、そんなものである。けれど、
「ギィさん」
シロウのように、割り切れない者もいた。
「ギルドとしての判断は正しいと思います。ですが、どうにかなりませんか」
カウンターでグラスを磨くギィに、シロウは食い下がるように話をしに行った。
「俺がパーティに残るのが無理なのは分かっています。ですから、どうか他の地図屋の手配をして貰えませんか」
「懐かしいですね」
ギィは、昔を思い出したかのように笑みを浮かべる。
「貴方が自分の事を『俺』と言うのは。貴方に師事していた頃を思い出します」
「……そうだね、ギィくん」
五十を幾らか過ぎたギィに、せいぜいが二十代後半に見えるシロウは応えた。
「懐かしいよ。でも今は昔のことより、あの子達のことを話そう」
未だ悲嘆に暮れている四人を視線で示した後、シロウは続ける。
「あの四人は強いよ。でも、支援が要らないわけじゃない。それにアラン殿下は、まだ子供だ。色々と言っちゃいけないことも言ったかもしれないけど、それなら周りの大人が教えなきゃいけない。でも」
シロウは眉をひそめながら言葉を区切ると、ギィにだけ聞こえる声で言った。
「あれは周りの大人が悪い。たぶん――」
「何か注文しませんか?」
シロウの言葉を遮るようにギィが言った。
「ここは酒場ですから。酒があった方が、口は良く回るかもしれませんよ」
「……なら、いつものを」
「カルアミルクですね? 相変わらず甘いのが好きですね」
小さく笑みを浮かべながら、ギィは手早くグラスに注ぐ。
「どうぞ」
差し出されたグラスを掴み、シロウが一気に飲み干すと、
「それがラストショットです。どうぞ、お帰りを」
ギィは酒場の入り口を手で示した。
「……」
シロウは無言のまま、顔を伏してその場を離れた。
そのまま酒場の外に出て、しばらく歩く。
歩いて歩いて歩いて、地図屋の技能の一つ、周辺感知で誰もいないのを確認してから、口から折りたたまれた紙を取り出した。
それは先ほど飲んだ酒に入っていたものだ。
(今夜二時に、か……やっぱり何かあるのかな)
シロウは、ギィからの伝言を確認すると、さらにその場を離れるのだった。
「シロウさんも分かっているでしょう。すでに手遅れだと」
いつの間にかカウンターから近くまで来ていたギィは、裁定を下すように言った。
「追放宣言は、それほど重い。なおかつ地図屋に対する差別発言をこの場でされた以上、ギルドとしては見過ごせません」
「それは俺が」
「あなた一人が許せば良いというものではありません」
シロウの言葉をギィは、ぴしゃりと止める。
「あなたも知っているでしょう。冒険者時代初期にあった職業差別の酷さを。それをギルドは長い時間を掛けて今の形に持って来た」
「それは、そうなんですけど……」
当時を知っているシロウは反論できない。だが、
「だからといって、それで不利益を被る人が出るのは問題だと思うんです。どうにかなりませんか?」
アッシュやジル、そしてキティやレイラだけでなく、アランのことを思って頼み込む。
けれどギィの応えは素っ気なかった。
「駄目です。追放宣言がなされた以上、シロウさんがアラン殿下のパーティに戻ることはできません。そして、地図屋に対する差別的発言に対するペナルティは科します」
ギィは、昏睡の魔術で眠ったままのアランを一瞥した後、残りの四人、アッシュとジル、そしてキティとレイラに向け言った。
「今回の魔王迷宮攻略に当たり、貴方達のパーティにギルドは地図屋を派遣しません。地図屋なしで敵性魔王を討伐してください」
無情なギィの言葉に、四人は大いにへこんだ。
「終わった……完全に、終わった……」
「辞めたい……」
「シロウさん抜きなのやだぁぁぁぁ、お家帰るぅぅぅぅ」
「噓でしょ……だったら」
ジルとアッシュとキティがへこむ中、残ったレイラが交渉しようとする。
「罰則受けても良いから辞めます。みんなもそれでいいでしょ」
「認められません」
ギィの応えは無慈悲だった。
「今回のクエストは王命勅令。それを一度引き受けた以上、辞めることをギルドは認めません。それでも辞めるというなら、人生が終わると覚悟してください」
「……そんなに?」
表情をひきつらせながら尋ねるレイラに、ギィは具体的に答えた。
「辞めるならばギルドからの支援は今後一切なくなると思ってください。実質、冒険者としては終わります。その上で、貴方達が辞めることで発生する全ての損害を背負うことになりますし、何より王命勅令です。貴方達は一国から大罪人として今後扱われると思ってください」
「……そんな」
へたりと、床に崩れ落ちるレイラ。
「それじゃ、シロウさん抜きで行くしかないじゃない……」
他の三人、アッシュとジルとキティも悲嘆に暮れていた。
けれどギィは話は終わったと言わんばかりに、元居た酒場のカウンターに戻る。
それと同時に、酒場の喧騒が戻っていく。
命がけの仕事をすることも多い冒険者達としては、先ほどまでのやり取りも多少珍しい程度のこと。
自分に原因が無くとも落とし穴に引きずり込まれるなんてことは、稀によくあることだ。
そんなことを気に掛けるより、飲んで騒いで楽しんで、明日の仕事を頑張る気力を蓄える方がいい。
世の中、そんなものである。けれど、
「ギィさん」
シロウのように、割り切れない者もいた。
「ギルドとしての判断は正しいと思います。ですが、どうにかなりませんか」
カウンターでグラスを磨くギィに、シロウは食い下がるように話をしに行った。
「俺がパーティに残るのが無理なのは分かっています。ですから、どうか他の地図屋の手配をして貰えませんか」
「懐かしいですね」
ギィは、昔を思い出したかのように笑みを浮かべる。
「貴方が自分の事を『俺』と言うのは。貴方に師事していた頃を思い出します」
「……そうだね、ギィくん」
五十を幾らか過ぎたギィに、せいぜいが二十代後半に見えるシロウは応えた。
「懐かしいよ。でも今は昔のことより、あの子達のことを話そう」
未だ悲嘆に暮れている四人を視線で示した後、シロウは続ける。
「あの四人は強いよ。でも、支援が要らないわけじゃない。それにアラン殿下は、まだ子供だ。色々と言っちゃいけないことも言ったかもしれないけど、それなら周りの大人が教えなきゃいけない。でも」
シロウは眉をひそめながら言葉を区切ると、ギィにだけ聞こえる声で言った。
「あれは周りの大人が悪い。たぶん――」
「何か注文しませんか?」
シロウの言葉を遮るようにギィが言った。
「ここは酒場ですから。酒があった方が、口は良く回るかもしれませんよ」
「……なら、いつものを」
「カルアミルクですね? 相変わらず甘いのが好きですね」
小さく笑みを浮かべながら、ギィは手早くグラスに注ぐ。
「どうぞ」
差し出されたグラスを掴み、シロウが一気に飲み干すと、
「それがラストショットです。どうぞ、お帰りを」
ギィは酒場の入り口を手で示した。
「……」
シロウは無言のまま、顔を伏してその場を離れた。
そのまま酒場の外に出て、しばらく歩く。
歩いて歩いて歩いて、地図屋の技能の一つ、周辺感知で誰もいないのを確認してから、口から折りたたまれた紙を取り出した。
それは先ほど飲んだ酒に入っていたものだ。
(今夜二時に、か……やっぱり何かあるのかな)
シロウは、ギィからの伝言を確認すると、さらにその場を離れるのだった。
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