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Ⅲ 偽装結婚どうでしょう? その④
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「貴族かよ!」
思わず俺は声を上げる。
「育ちが良さそうな気の抜けたヤツだから、良いとこのお坊ちゃんだとは思ってたけど……」
気になってウィルのヤツを見れば、涙をぬぐいながら、どこか恥ずかしそうに顔を赤らめてた。
……なんか、全然貴族って感じがしない。
俺達みたいな壁の外の人間からすれば、壁の中の貴族はお化けみたいなもんだ。
居るのか居ないのか分かんないけど、話を聞くだけでおっかない。
みんながみんな魔法が使える、ヤクザな親分だって関わるのを避ける、そんな奴らだ。
「怖い? 気が変わったなら、この話は無かった事にするわよ」
試すような事を言うアーシェに、俺はふてぶてしく返してやる。
「冗談。今さら梯子降ろされるような真似されてたまるかよ。
むしろやる気になって来た。だから、報酬は弾んでくれよ」
「あらあら、強欲ね」
「良いだろ、別に。口止め料も込みなんだからさ」
「ふふっ、良いわよ。それじゃ、事が終わった後に欲しい物を考えておいてね」
「覚悟しとけよ。いっちばん値打ちのあるもん持って行くからな」
女二人で会話を弾ませる。なんだか楽しい。
そこにウィルが水を差すように言って来る。
「欲しい物ならあげるよ。だから、無茶しようとしないで」
「だ~か~ら、そういうのじゃないって言ってるじゃんか」
飼い主に怒られてうなだれてる犬みたいなウィルに、言い聞かせるように返す。
「助けられた恩を返させろってんだ。別に恵んでくれって言ってんじゃねぇよ。
恵まれるぐらいなら、ぶんどっていくっての」
「そんなの、気にしなくても良いよ。
ソフィアのために、何かしてあげたいだけなんだから」
「だったら、俺がお前に何かしてやっても良いじゃんか。
俺だって、お前のために何かしてやりたいんだ」
駆け引きなんて全部ぶん投げて、想いをそのままぶつけてく。
ウィルには、それが一番なんだ。俺にはもう、分かってた。
「ぁ……」
ウィルのヤツは顔を真っ赤にして、俺を見てられない。
恥ずかしそうに顔を俯かせる。
ったく、これぐらいで反応し過ぎなんだよな。
そんなに恥ずかしがるようなこと言ったわけでも……。
「耳が真っ赤よ、子猫ちゃん」
「誰がだよっ!」
アーシェのヤツ、すっげぇ楽しそうな笑顔でからかいやがる。
言われなくても、こっちも体が熱くなるぐらい、恥ずかしくなってるのは自覚してるっての。
「じゃ、そういう事で話はつけましょうか」
アーシェはニッコリ笑顔で、
「子猫ちゃんには、これから頑張って貰うわよ。
挨拶回りだけじゃなく、場合によってはどこかのパーティに行って貰いますからね。
出来るだけ大人数の前で、こっちの意思表明をしておかないと、無かった事にされかねないもの。
だから、最低限の立ち振る舞いも出来るよう、しっかり仕込みますからね」
目だけは全然笑ってない表情で言ってきた。
「……そんなの憶えなきゃダメなのかよ」
「当然でしょ。報酬は弾むんだから、しっかりやって貰うわよ。
そうそう、ダンスの一つも踊れるようになってちょうだいね」
「ダンスか。任せてくれよ。結構好きだし、割と得意だぞ」
たき火を囲んで、みんなと飲み食いしながら踊った時のことを思い出しながら俺が言うと、
「……言っておきますけど、跳んだり跳ねたりするようなダンスじゃありませんからね」
笑顔と目の鋭さが更に深くなった。
「なんか、目が全然笑ってないんだけど……」
「ふふ、大丈夫よ子猫ちゃん。
貴女もすぐに笑ったり泣いたりできないぐらいしごいてあげますからね」
「大丈夫じゃねぇだろ、それ」
完全に本気なアーシェに身震いしてると、ウィルのヤツは懲りずに口を挟んでくる。
俺に言っても無理だと思ったのか、今度はアーシェに言って来る。
「アーシェ、いい加減にしろ。これ以上、勝手なことを言ってソフィアをそそのかすなら、契約主としての権能で強制的に従わせるぞ」
「あら、本気ですのね。でも退かないわよ、ウィル坊や」
アーシェはウィルに触れられるぐらい傍に寄ると、真っ直ぐに視線を合わせ言った。
「これがベストよ、ウィリアム。間違ってるとは、思わないわ」
「ソフィアを巻き込む事がか」
「あの子も壁の外の人間なんだから、無関係じゃないわ」
不穏な事をアーシェは言い続ける。
「いい、ウィル。
王党派の動きが予想よりも速い以上、さっさとこの茶番劇に幕を降ろすべきよ。
そのためにも壁の外の人間と貴方が結婚する事で、ブレイデン家は壁外派だと主張する必要があるの」
「分かってる、そんな事は。だが、彼女じゃなくても――」
「他に居ないでしょ」
「それは……いまカイトが探して――」
「間に合わないでしょ、それじゃ」
喧々諤々。
なんだかよくわからないけど気になることを言ってる2人に、俺が事情を聞こうとした時だった。
「どうした、アーシェ」
急に喋るのを止めて軽く眉を寄せたアーシェにウィルが問い掛けると、
「……来客よ。婚約者のお嬢ちゃんが来たみたいね」
アーシェは静かな声で言ったんだ。
(何の音も聞こえなかったけど、どうやって知ったんだろ? 魔人だって言ってたし、魔法か? いや、それよりも――)
「婚約者って、ウィルのだよな。無理矢理に結婚させられそうになってる……それって、相手の方もそうなのか?」
どうしても聞いておかなきゃならない事を問い掛けると、アーシェは静かな声のまま返した。
「いいえ。相手の方は乗り気よ。それも相当」
「断ってんだよな、確か」
「ええ、今まで何度もはっきりと断ってるわ。
それでも諦めきれずに、何度も家にまでやって来てるの。
今日も朝早くだってのに、懲りもせず来てるわね」
アーシェの言葉に、俺は反射的に窓の外に目を向ける。
色々あって確認する余裕なんてなかったけど、窓から差し込む光は晴れ晴れとしてた。
(うぁ……警護団の奴らから逃げ出したのが真夜中だったから、結構な時間気を失ってたな、俺……なのに足が痛いぐらいですんでるのは……ウィルのヤツ魔法使いみたいだし、魔法でどうにかしてくれたんだろうな……。
うん、やっぱり、ウィルのヤツには恩が出来てるみたいだ。
だったら恩を返すためにも、俺もやる気を出さなきゃダメだよな)
俺は改めて決意すると、アーシェに言った。
「いまから会いに行くのか? その婚約者に」
「ええ、そうなるでしょうね。家の前に放っておく訳にはいかないもの」
「だったら俺も一緒に行くよ。
そうすりゃ、他に結婚する相手が出来たって言い易いだろ」
「……そうね。そうした方が良いかもしれないわ」
「よっし。それじゃ、俺も一緒に――」
「ダメだよ」
今までと同じく拒絶するウィルに、俺は何か返そうとしたけど、それは無理だった。
ぐいっと、ウィルのヤツに抱き寄せられちまったからだ。
(ちょ、な――っ!)
驚く暇も恥ずかしさを感じる暇さえなく、抱き寄せられた俺は更にウィルに抱き抱えられる。
俺の重さなんてないみたいに軽々と、両腕で抱き抱えられた。
(ってこれお姫さま抱っこじゃねぇかーっ)
火がついたみたいに体が熱くなる。恥ずかしさで暴れる事すら出来やしない。
俺は身体をこわばらせ、ウィルの体にしがみつくようにして、じっとしてることぐらいしか出来なかった。
そんな俺を、ウィルは寝台に連れていく。
まるで壊れ物を手にしてるみたいに、そっと運んでるんだって分かるぐらい、やさしかった。
そして寝台までつくと、俺を静かに布団の上に横たえる。そして、
「ここに居て、ソフィア。あとで、もっとちゃんと話し合うから。
でも今はダメ。足の怪我もあるし、動いちゃダメだよ」
やわらかな声で俺に言い聞かせるように言うと、
「アーシェ、行くぞ」
アーシェを連れて部屋を出て行った。
あとには俺一人。ぽつんと部屋に取り残されて、ようやくそこで気が付いた。
「置いてかれた!」
慌てて俺はベットから降りる。
怪我をした足首の痛みに一瞬動きが止まったけど、今はそれどころじゃない。
素足のままなので靴を探し、ベットの下に置いてあった靴を見つけて穿く。
「……また、随分かわいい靴だな、これ」
細かな刺繍が入った靴に、思わず呟く。
「服もそうだけど、これってウィルのヤツの趣味か?」
そこまで考えて、一つ気になってたことを思い出す。
「いま着てる服、誰が着替えさせたんだ……アーシェのヤツ、だよな……」
一瞬ウィルの事が頭に浮かぶ。
「いや、待て待て待てっ。あいつが着替えさせたわけねぇだろ!」
思わず自分で自分に突っ込みを入れる。
なんつー事を思っちまったんだか、俺は。
鏡を見るまでもなく真っ赤になってるのが分かる頬を叩いて気合を入れる。
「そこら辺も、あとで問い詰めてやるからな、ウィル」
心に誓い、俺はドアに向かう。そして開けようとしたけれど、
「開かねぇ」
何度ドアノブを回した所で開く気配は全くない。
(ダメだ。こっからは出られない)
盗賊としての見切りの速さでさっさと諦めると、それ以外の方法を探す。そして、
「――こっから出るしかないか」
窓を見詰め、俺は動いた。
思わず俺は声を上げる。
「育ちが良さそうな気の抜けたヤツだから、良いとこのお坊ちゃんだとは思ってたけど……」
気になってウィルのヤツを見れば、涙をぬぐいながら、どこか恥ずかしそうに顔を赤らめてた。
……なんか、全然貴族って感じがしない。
俺達みたいな壁の外の人間からすれば、壁の中の貴族はお化けみたいなもんだ。
居るのか居ないのか分かんないけど、話を聞くだけでおっかない。
みんながみんな魔法が使える、ヤクザな親分だって関わるのを避ける、そんな奴らだ。
「怖い? 気が変わったなら、この話は無かった事にするわよ」
試すような事を言うアーシェに、俺はふてぶてしく返してやる。
「冗談。今さら梯子降ろされるような真似されてたまるかよ。
むしろやる気になって来た。だから、報酬は弾んでくれよ」
「あらあら、強欲ね」
「良いだろ、別に。口止め料も込みなんだからさ」
「ふふっ、良いわよ。それじゃ、事が終わった後に欲しい物を考えておいてね」
「覚悟しとけよ。いっちばん値打ちのあるもん持って行くからな」
女二人で会話を弾ませる。なんだか楽しい。
そこにウィルが水を差すように言って来る。
「欲しい物ならあげるよ。だから、無茶しようとしないで」
「だ~か~ら、そういうのじゃないって言ってるじゃんか」
飼い主に怒られてうなだれてる犬みたいなウィルに、言い聞かせるように返す。
「助けられた恩を返させろってんだ。別に恵んでくれって言ってんじゃねぇよ。
恵まれるぐらいなら、ぶんどっていくっての」
「そんなの、気にしなくても良いよ。
ソフィアのために、何かしてあげたいだけなんだから」
「だったら、俺がお前に何かしてやっても良いじゃんか。
俺だって、お前のために何かしてやりたいんだ」
駆け引きなんて全部ぶん投げて、想いをそのままぶつけてく。
ウィルには、それが一番なんだ。俺にはもう、分かってた。
「ぁ……」
ウィルのヤツは顔を真っ赤にして、俺を見てられない。
恥ずかしそうに顔を俯かせる。
ったく、これぐらいで反応し過ぎなんだよな。
そんなに恥ずかしがるようなこと言ったわけでも……。
「耳が真っ赤よ、子猫ちゃん」
「誰がだよっ!」
アーシェのヤツ、すっげぇ楽しそうな笑顔でからかいやがる。
言われなくても、こっちも体が熱くなるぐらい、恥ずかしくなってるのは自覚してるっての。
「じゃ、そういう事で話はつけましょうか」
アーシェはニッコリ笑顔で、
「子猫ちゃんには、これから頑張って貰うわよ。
挨拶回りだけじゃなく、場合によってはどこかのパーティに行って貰いますからね。
出来るだけ大人数の前で、こっちの意思表明をしておかないと、無かった事にされかねないもの。
だから、最低限の立ち振る舞いも出来るよう、しっかり仕込みますからね」
目だけは全然笑ってない表情で言ってきた。
「……そんなの憶えなきゃダメなのかよ」
「当然でしょ。報酬は弾むんだから、しっかりやって貰うわよ。
そうそう、ダンスの一つも踊れるようになってちょうだいね」
「ダンスか。任せてくれよ。結構好きだし、割と得意だぞ」
たき火を囲んで、みんなと飲み食いしながら踊った時のことを思い出しながら俺が言うと、
「……言っておきますけど、跳んだり跳ねたりするようなダンスじゃありませんからね」
笑顔と目の鋭さが更に深くなった。
「なんか、目が全然笑ってないんだけど……」
「ふふ、大丈夫よ子猫ちゃん。
貴女もすぐに笑ったり泣いたりできないぐらいしごいてあげますからね」
「大丈夫じゃねぇだろ、それ」
完全に本気なアーシェに身震いしてると、ウィルのヤツは懲りずに口を挟んでくる。
俺に言っても無理だと思ったのか、今度はアーシェに言って来る。
「アーシェ、いい加減にしろ。これ以上、勝手なことを言ってソフィアをそそのかすなら、契約主としての権能で強制的に従わせるぞ」
「あら、本気ですのね。でも退かないわよ、ウィル坊や」
アーシェはウィルに触れられるぐらい傍に寄ると、真っ直ぐに視線を合わせ言った。
「これがベストよ、ウィリアム。間違ってるとは、思わないわ」
「ソフィアを巻き込む事がか」
「あの子も壁の外の人間なんだから、無関係じゃないわ」
不穏な事をアーシェは言い続ける。
「いい、ウィル。
王党派の動きが予想よりも速い以上、さっさとこの茶番劇に幕を降ろすべきよ。
そのためにも壁の外の人間と貴方が結婚する事で、ブレイデン家は壁外派だと主張する必要があるの」
「分かってる、そんな事は。だが、彼女じゃなくても――」
「他に居ないでしょ」
「それは……いまカイトが探して――」
「間に合わないでしょ、それじゃ」
喧々諤々。
なんだかよくわからないけど気になることを言ってる2人に、俺が事情を聞こうとした時だった。
「どうした、アーシェ」
急に喋るのを止めて軽く眉を寄せたアーシェにウィルが問い掛けると、
「……来客よ。婚約者のお嬢ちゃんが来たみたいね」
アーシェは静かな声で言ったんだ。
(何の音も聞こえなかったけど、どうやって知ったんだろ? 魔人だって言ってたし、魔法か? いや、それよりも――)
「婚約者って、ウィルのだよな。無理矢理に結婚させられそうになってる……それって、相手の方もそうなのか?」
どうしても聞いておかなきゃならない事を問い掛けると、アーシェは静かな声のまま返した。
「いいえ。相手の方は乗り気よ。それも相当」
「断ってんだよな、確か」
「ええ、今まで何度もはっきりと断ってるわ。
それでも諦めきれずに、何度も家にまでやって来てるの。
今日も朝早くだってのに、懲りもせず来てるわね」
アーシェの言葉に、俺は反射的に窓の外に目を向ける。
色々あって確認する余裕なんてなかったけど、窓から差し込む光は晴れ晴れとしてた。
(うぁ……警護団の奴らから逃げ出したのが真夜中だったから、結構な時間気を失ってたな、俺……なのに足が痛いぐらいですんでるのは……ウィルのヤツ魔法使いみたいだし、魔法でどうにかしてくれたんだろうな……。
うん、やっぱり、ウィルのヤツには恩が出来てるみたいだ。
だったら恩を返すためにも、俺もやる気を出さなきゃダメだよな)
俺は改めて決意すると、アーシェに言った。
「いまから会いに行くのか? その婚約者に」
「ええ、そうなるでしょうね。家の前に放っておく訳にはいかないもの」
「だったら俺も一緒に行くよ。
そうすりゃ、他に結婚する相手が出来たって言い易いだろ」
「……そうね。そうした方が良いかもしれないわ」
「よっし。それじゃ、俺も一緒に――」
「ダメだよ」
今までと同じく拒絶するウィルに、俺は何か返そうとしたけど、それは無理だった。
ぐいっと、ウィルのヤツに抱き寄せられちまったからだ。
(ちょ、な――っ!)
驚く暇も恥ずかしさを感じる暇さえなく、抱き寄せられた俺は更にウィルに抱き抱えられる。
俺の重さなんてないみたいに軽々と、両腕で抱き抱えられた。
(ってこれお姫さま抱っこじゃねぇかーっ)
火がついたみたいに体が熱くなる。恥ずかしさで暴れる事すら出来やしない。
俺は身体をこわばらせ、ウィルの体にしがみつくようにして、じっとしてることぐらいしか出来なかった。
そんな俺を、ウィルは寝台に連れていく。
まるで壊れ物を手にしてるみたいに、そっと運んでるんだって分かるぐらい、やさしかった。
そして寝台までつくと、俺を静かに布団の上に横たえる。そして、
「ここに居て、ソフィア。あとで、もっとちゃんと話し合うから。
でも今はダメ。足の怪我もあるし、動いちゃダメだよ」
やわらかな声で俺に言い聞かせるように言うと、
「アーシェ、行くぞ」
アーシェを連れて部屋を出て行った。
あとには俺一人。ぽつんと部屋に取り残されて、ようやくそこで気が付いた。
「置いてかれた!」
慌てて俺はベットから降りる。
怪我をした足首の痛みに一瞬動きが止まったけど、今はそれどころじゃない。
素足のままなので靴を探し、ベットの下に置いてあった靴を見つけて穿く。
「……また、随分かわいい靴だな、これ」
細かな刺繍が入った靴に、思わず呟く。
「服もそうだけど、これってウィルのヤツの趣味か?」
そこまで考えて、一つ気になってたことを思い出す。
「いま着てる服、誰が着替えさせたんだ……アーシェのヤツ、だよな……」
一瞬ウィルの事が頭に浮かぶ。
「いや、待て待て待てっ。あいつが着替えさせたわけねぇだろ!」
思わず自分で自分に突っ込みを入れる。
なんつー事を思っちまったんだか、俺は。
鏡を見るまでもなく真っ赤になってるのが分かる頬を叩いて気合を入れる。
「そこら辺も、あとで問い詰めてやるからな、ウィル」
心に誓い、俺はドアに向かう。そして開けようとしたけれど、
「開かねぇ」
何度ドアノブを回した所で開く気配は全くない。
(ダメだ。こっからは出られない)
盗賊としての見切りの速さでさっさと諦めると、それ以外の方法を探す。そして、
「――こっから出るしかないか」
窓を見詰め、俺は動いた。
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