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第1章 牛肉勝負
7 実食 カリーナのハンバーグ
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「おう、任せてくれよ」
楽しそうな笑顔で応えた五郎に、ギネヴァは返す。
「アンタから、食べさせてくれるのかい?」
「いや、出来上がりは俺が一番遅かったからな。最後まで、待ってくれ」
「そうかい。それじゃ、どっちが先なんだい?」
これに元気良く返したのは、料理人ではなく助手のレティシアだった。
「はいはーいっ! うちが一番早かったです!」
「れ、レティ……」
どこか恥ずかしそうにするカリーナに、レティシアは指で頬をふにっと突いて返す。
「リナ、恥ずかしがってちゃダメでしょ。折角の絶好の機会なんだから売り込まないと」
「でも……」
「そんな不安そうな表情しないでも大丈夫! リナの作った物は美味しいんだから。これから食べて貰うのに、作った料理人が自信なさ気にしちゃダメ。お客さんは、料理人が美味しいって自信のある物を食べに来るんだから」
「そうですわね。そういう物も、食事の楽しみの1つですわ」
微笑ましげにカリーナ達を見ながら、クリスは言った。
「料理は味だけではありませんのよ。匂いに見た目、それに期待感。そうそう、雰囲気の好い場所で、気持ちの好い接客をして貰うことだって入りますわ。だから、胸を張って堂々と。自分が美味しいと思った物を、食べさせてくださいまし」
これにカリーナは、気持ちを引き締めるような間を置いた後、
「はい。美味しく出来てます。期待して下さい」
そう言うと、ワゴンに乗せた料理を並べていく。
熱々の鉄板に乗せられたハンバーグは、出来てから幾らか時間が経ってはいるが、それでもまだ冷めてはいない。
付け合わせは小鉢に入れたられた、リーツと呼ばれる果物。
硬い皮で覆われた2センチほどの球状のそれは、一つ一つ丁寧に皮を剥かれ、中の白い果肉が表に出ている。
それを半透明な果汁に、浮かべるようにして入れられていた。
主役のハンバーグを見れば、ソースは未だ掛かっていない。
小さな小鉢に2種類入れられて、好みで掛けられるようになっていた。
「手前にあるソースは、甘味のある物を。その先にあるソースは、辛めのソースになっています。お好みで、試されて下さい」
「へぇ、好みで味を変えられるのかい。それは嬉しいねぇ。でもまぁ、最初は折角だから、何も付けずに食べさせて貰おうかね」
ギネヴァがそう言うと、他の3人も味を確かめるように、、最初は何も付けずに食べる。
ナイフとフォークを手に取って、すっと切り分ける。
表面はしっかりと焼かれ、旨味をたっぷりと閉じ込め膨れたハンバーグに、ナイフをふつっと刺し込めば、肉汁がたっぷり溢れ出る。
ソースが無くともそれだけで、肉の旨味を盛り上げてくれる予感がふつふつと。
一口サイズに切り分けて、おもむろにぱくりと。
口に入れた途端、旨味たっぷりの肉汁と脂が舌に乗り、それだけで心が躍る。
けれど美味しさは、噛み締めてからが本番。
やわらかく、けれど噛み締める心地好さを味わえる、ほど良い弾力。
味だけでなく、食感も美味しい。
その上に、肉の旨味がしっかりと加わって。
美味しさに、言葉もなく頬が緩む。
「美味いねぇ」
ギネヴァは一言、そう言うと、更にひと口、笑顔を浮かべながら食べる。
「本当に、美味しいですわね。肉の味がしっかり味わえますわ」
クリスは3分の1ほど一気に食べて、一息つくように言葉をもらす。
「臭みもないですし、肉の味を楽しむのに邪魔な物がありませんわ。これは繋ぎの野菜と、香辛料のバランスが良いんですのね」
「バランスもそうだが、火の通しも良いのだろう。肉に加える物を、それぞれ最適の温度で火を通した上で配合せねばならん。ただ、それぞれを雑に加えただけではこの味は出ん」
見聞するように、切り分けたハンバーグを見詰めているのはグエン。
「ソーセージのような物で、肉を潰した料理は見るが、牛肉では初めて見るな。どこで習ったのかな?」
この問い掛けに、カリーナは緊張したように返す。
「前に、小さな村に香辛料の買い付けに行った事があるんです。そこで、たまたま牛を解体する所に出くわした事があって。村のみんなで食べようとしてたんですけど、お年寄りの人達が硬くてあまり食べられないって困ってたから、どうにかできないかと思って。普通に包丁で肉を切り潰してたら難しいんですけど、私は魔術が使えましたから。それで、やわらかく食べれるぐらい潰してみたら良いかなって思って、やってみたんです」
「……ほぅ、自分で考えてみた料理、ということかね?」
「はい。そうなります」
カリーナの答えに、グエンは目を細めると、再び無言でハンバーグを食べていく。
味を楽しむというより、調べるような丁寧さで食べていた。
そんなグエンの様子に、カリーナは緊張するかのように強張る。
それをほぐすような気楽な声を上げたのはガストロフ。
「いやぁ、美味いですなぁ。そのままでも美味いですが、ソースもまた好い」
幾つかに切り分けたハンバーグに、ソースを掛けながらガストロフは言う。
「こちらの甘味のあるソースは、年若いワインが大元ですな。それに幾つかの香辛料と野菜。肉汁と合わさると、絶品になりますなぁ」
笑顔でパクパクと食べていく。
「辛めのソースも、これまた好い。ピリッと舌を刺す刺激的な辛さが、決して後は引かず、肉の旨味を引き立ててくれます。それに――」
付け合せのリーツを一つ取ると、口に入れる。
噛み締めれば、さっぱりとしたさわやかな甘みが広がり、それまで食べ続けた肉の味を忘れさせてくれる。
それでいて甘味は残らないので、またハンバーグの肉の味を新鮮な気持ちで味わえる。
「――実に、飽きが来ない味ですな。最後まで、美味く食べられます」
ガストロフの言葉に偽りは無く、最初から最後まで笑顔を浮かべ、ハンバーグを食べ切った。
それは、他の3人も同じ。
満足げな表情で、完食していた。
「美味しかったよ。ありがとね」
ギネヴァの言葉に、何よりも嬉しそうな笑顔を浮かべるカリーナだった。
こうして五郎たち3人の内、カリーナの実食が終わる。
その次料理を出したのは、アルベルトだった。
楽しそうな笑顔で応えた五郎に、ギネヴァは返す。
「アンタから、食べさせてくれるのかい?」
「いや、出来上がりは俺が一番遅かったからな。最後まで、待ってくれ」
「そうかい。それじゃ、どっちが先なんだい?」
これに元気良く返したのは、料理人ではなく助手のレティシアだった。
「はいはーいっ! うちが一番早かったです!」
「れ、レティ……」
どこか恥ずかしそうにするカリーナに、レティシアは指で頬をふにっと突いて返す。
「リナ、恥ずかしがってちゃダメでしょ。折角の絶好の機会なんだから売り込まないと」
「でも……」
「そんな不安そうな表情しないでも大丈夫! リナの作った物は美味しいんだから。これから食べて貰うのに、作った料理人が自信なさ気にしちゃダメ。お客さんは、料理人が美味しいって自信のある物を食べに来るんだから」
「そうですわね。そういう物も、食事の楽しみの1つですわ」
微笑ましげにカリーナ達を見ながら、クリスは言った。
「料理は味だけではありませんのよ。匂いに見た目、それに期待感。そうそう、雰囲気の好い場所で、気持ちの好い接客をして貰うことだって入りますわ。だから、胸を張って堂々と。自分が美味しいと思った物を、食べさせてくださいまし」
これにカリーナは、気持ちを引き締めるような間を置いた後、
「はい。美味しく出来てます。期待して下さい」
そう言うと、ワゴンに乗せた料理を並べていく。
熱々の鉄板に乗せられたハンバーグは、出来てから幾らか時間が経ってはいるが、それでもまだ冷めてはいない。
付け合わせは小鉢に入れたられた、リーツと呼ばれる果物。
硬い皮で覆われた2センチほどの球状のそれは、一つ一つ丁寧に皮を剥かれ、中の白い果肉が表に出ている。
それを半透明な果汁に、浮かべるようにして入れられていた。
主役のハンバーグを見れば、ソースは未だ掛かっていない。
小さな小鉢に2種類入れられて、好みで掛けられるようになっていた。
「手前にあるソースは、甘味のある物を。その先にあるソースは、辛めのソースになっています。お好みで、試されて下さい」
「へぇ、好みで味を変えられるのかい。それは嬉しいねぇ。でもまぁ、最初は折角だから、何も付けずに食べさせて貰おうかね」
ギネヴァがそう言うと、他の3人も味を確かめるように、、最初は何も付けずに食べる。
ナイフとフォークを手に取って、すっと切り分ける。
表面はしっかりと焼かれ、旨味をたっぷりと閉じ込め膨れたハンバーグに、ナイフをふつっと刺し込めば、肉汁がたっぷり溢れ出る。
ソースが無くともそれだけで、肉の旨味を盛り上げてくれる予感がふつふつと。
一口サイズに切り分けて、おもむろにぱくりと。
口に入れた途端、旨味たっぷりの肉汁と脂が舌に乗り、それだけで心が躍る。
けれど美味しさは、噛み締めてからが本番。
やわらかく、けれど噛み締める心地好さを味わえる、ほど良い弾力。
味だけでなく、食感も美味しい。
その上に、肉の旨味がしっかりと加わって。
美味しさに、言葉もなく頬が緩む。
「美味いねぇ」
ギネヴァは一言、そう言うと、更にひと口、笑顔を浮かべながら食べる。
「本当に、美味しいですわね。肉の味がしっかり味わえますわ」
クリスは3分の1ほど一気に食べて、一息つくように言葉をもらす。
「臭みもないですし、肉の味を楽しむのに邪魔な物がありませんわ。これは繋ぎの野菜と、香辛料のバランスが良いんですのね」
「バランスもそうだが、火の通しも良いのだろう。肉に加える物を、それぞれ最適の温度で火を通した上で配合せねばならん。ただ、それぞれを雑に加えただけではこの味は出ん」
見聞するように、切り分けたハンバーグを見詰めているのはグエン。
「ソーセージのような物で、肉を潰した料理は見るが、牛肉では初めて見るな。どこで習ったのかな?」
この問い掛けに、カリーナは緊張したように返す。
「前に、小さな村に香辛料の買い付けに行った事があるんです。そこで、たまたま牛を解体する所に出くわした事があって。村のみんなで食べようとしてたんですけど、お年寄りの人達が硬くてあまり食べられないって困ってたから、どうにかできないかと思って。普通に包丁で肉を切り潰してたら難しいんですけど、私は魔術が使えましたから。それで、やわらかく食べれるぐらい潰してみたら良いかなって思って、やってみたんです」
「……ほぅ、自分で考えてみた料理、ということかね?」
「はい。そうなります」
カリーナの答えに、グエンは目を細めると、再び無言でハンバーグを食べていく。
味を楽しむというより、調べるような丁寧さで食べていた。
そんなグエンの様子に、カリーナは緊張するかのように強張る。
それをほぐすような気楽な声を上げたのはガストロフ。
「いやぁ、美味いですなぁ。そのままでも美味いですが、ソースもまた好い」
幾つかに切り分けたハンバーグに、ソースを掛けながらガストロフは言う。
「こちらの甘味のあるソースは、年若いワインが大元ですな。それに幾つかの香辛料と野菜。肉汁と合わさると、絶品になりますなぁ」
笑顔でパクパクと食べていく。
「辛めのソースも、これまた好い。ピリッと舌を刺す刺激的な辛さが、決して後は引かず、肉の旨味を引き立ててくれます。それに――」
付け合せのリーツを一つ取ると、口に入れる。
噛み締めれば、さっぱりとしたさわやかな甘みが広がり、それまで食べ続けた肉の味を忘れさせてくれる。
それでいて甘味は残らないので、またハンバーグの肉の味を新鮮な気持ちで味わえる。
「――実に、飽きが来ない味ですな。最後まで、美味く食べられます」
ガストロフの言葉に偽りは無く、最初から最後まで笑顔を浮かべ、ハンバーグを食べ切った。
それは、他の3人も同じ。
満足げな表情で、完食していた。
「美味しかったよ。ありがとね」
ギネヴァの言葉に、何よりも嬉しそうな笑顔を浮かべるカリーナだった。
こうして五郎たち3人の内、カリーナの実食が終わる。
その次料理を出したのは、アルベルトだった。
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