転生して10年経ったので街を作ることにしました

笹村

文字の大きさ
15 / 115
第一章 街を作る前準備編

6 神さん会議 その② 三人称視点

しおりを挟む
「それは無理じゃない?」

 リリスの言葉に、バステトは否定で返す。

「貴女は、貴女の勇者が得られる筈だった神与能力チートスキルの大半を代償としてくれたお蔭で、現世に実体を持って顕現できる。だからこそ、貴女は私達と違って、自分自身の力をより明確に現世で使うことが出来るわ。
 でもね、私達は無理よ。神座ここに囚われている私達は、現世の人間のおぼろげな祈りに応え、僅かばかりの奇跡の力を贈ることが出来るだけ。
 街ひとつを守護するような、限定された場所を継続して加護し続けるような奇跡を行うのは無理よ」
「分かっているわ。だから、私はみんなに、私の勇者に与えて貰った権能を貸与しようと思うの」

 ざわりと、神々の気配がゆらぐ。

「現世に顕現できる権能を、我らに貸し出すというのか、リリスよ」
「ええ、そうよ。デミウルゴス」

 笑顔で返すリリスに、デミウルゴスは眉をひそめ黙る。
 神々の間に満ちるのは期待。そして後ろめたさだった。

「それで良いのか、お前は」

 思慮するように黙る神々の中で、唯一ピュラーが問い掛ける。

「お前は、お前の勇者と離れることを嫌っている筈だろう。それなのに我らに現世に顕現できる権能を貸し与えてどうするつもりだ」
「ありがとう、ピュラー。やさしいのね」

 やわらかく笑みを浮かべるリリスにピュラーは、

「別に、そんなつもりはない。お前が後で泣き喚いても、うっとうしいだけだ」
「あら、その時は慰めてくれないの?」
「なぐ……さめて欲しいなら、それぐらいはしてやる。だがな、そんな面倒なことをするくらいなら、お前はお前の勇者と一緒に居れば良い。そのことで文句を言うものなど、ここには誰も居らん」

 ピュラーの言葉に、否定の言葉は上がらない。むしろ同意するような優しい気配が満ちている。
 言葉無くとも伝わってくる皆の気持ちに、リリスは心地好さげに微笑みながら、

「ありがとう、みんな。私も、陽色と離れるのは嫌よ。でも、今の私なら我慢できる。だって、陽色は私のことを愛してくれてるって、知ってるもの」

 穏やかに、確かな気持ちをリリスは口にする。

「どれだけ離れていても、これから何があっても、私は陽色を愛しているし、陽色は私を愛してくれる。それが、私が陽色と10年間一緒に生きて、信じることが出るようになった想いなの。
 だから大丈夫。一時、陽色と逢えなくなったとしても、私は我慢できるわ」

 リリスの言葉に、ピュラーは怯んだようにすぐには返せない。だが、それでもピュラーはリリスに言葉をかける。大事な友が、苦しむ姿を見たくないから。

「それほど想いが強いなら、なおのこと余計な考えは持つな。お前が今ここで何を言った所で、絶対に後悔することになるぞ……やめておけ、リリス」

 ピュラーの言葉に、リリスは嬉しそうに目を細める。そして、心から湧き立つ想いを表すように言葉を返した。

「ありがとう、ピュラー。嬉しい」
「……なにを言ってる。ばかもの……」
「ふふ、やさしいね、ピュラーは」
「別に、優しくなどない。勘違いするな……そんな勘違いをするぐらいなら、自分のことだけ考えていろ」
「それは嫌よ。だって、私はみんなにも、幸せになって欲しいんだもの」

 息を飲むように黙る皆に、リリスは想いをそのまま言葉に乗せる。

「私は、いまとても幸せなの。それは全部、私の大切な勇者ひいろが、私を神座ここから連れ出してくれたから。現世で一緒に、陽色と生きることが出来たから。
 もし、今までの全てが失われたら、私は壊れてしまうって分かるぐらい、幸せなの。
 だから、私はみんなにも幸せになって欲しい。こんな神座ばしょなんかに縛られないで、みんなも、自分の勇者と一緒に現世で生きて欲しい。
 これから陽色たちが作る街を、みんなの力を借りて良い場所にしていきたいのも本音だけれど、それ以上に、みんなを幸せにしたい。
 それが、私の願いなの」

 自分達を想うリリスの言葉に、皆はなにも返せない。リリスの想いを受け取るべきか、皆が迷う中、それでも返すことが出来たのはピュラーだった。

「その気持ちだけは、受け取ってやる」

 震える心が言葉に出てしまわないよう、声を硬くしながらピュラーは続ける。

「だが、その気持ちを聞いた以上、余計に受け入れる気などない。お前は我らを幸せにしたいと言ったが、それなら我らとて同じだ。お前だけが、皆の幸せを願っていると思うな。我らとて、お前の幸せを望んでいるんだぞ」
「ありがとう、嬉しい。でも、ダメよ」

 リリスは、決して退かず続けた。

「みんなだって、自分の勇者に逢いたいはずよ。一緒に、生きて生きたい筈だもの。ピュラー、貴女だって、そうでしょう。逢いたい筈よ、貴女の勇者に」

 僅かに耐えるような間を空けて、ピュラーは返す。

「いらぬ心配だ。そもそも、確かに我らは現世で自分の勇者と会うことは出来ないが、僅かな一時、夢の中で言葉を交わす事なら出来るのだ。それだけでも、私は私の勇者を感じ取ることが出来る。大切に、想う事は出来るのだ。だから、お前が自分を犠牲にする必要などない、リリス」

 精一杯の強がりで返すピュラーに、リリスは心から迷うような間を空けて、伝えるべきかどうかを迷っていた事を告げた。

「それは知ってるわ、ピュラー。私は現世で、みんなの勇者に会ってるし、みんなのことも聞いてるわ。みんな、みんなの事を、大事に大切に、想っているわ」
「そ、そそ、そうなのか……そ、そうか、そうなんだな……そうかぁ……そうなんだぁ……壮真ってば……」

 それまでの硬い口調から、とろけるような甘さを滲ませる声で、本神ほんにんはバレてないつもりで嬉しそうに呟くピュラーに、リリスは居たたまれなさを隠すような笑みを浮かべながら、

「大切に想ってるのは、絶対に、そうよ。でも……でもね、ピュラー」

 思い切ってリリスは言った。

「このままだと、他の子に獲られるわよ、貴女の勇者」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
【毎週火木土更新】 自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。 その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ! 約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。 ――― 当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。 なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

処理中です...