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第一章 街を作る前準備編
10 魔術協会に行こう その② 訳ありカップルがやって来た
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音も無く開く重々しい門扉。
そこから現れたのは、メイドさんを連れた一人の男性だった。
「申し訳ありません、お待たせしました。
元勇者隊、代表のヒイロ・カゲナギさま」
メイドさんを連れた男性が、穏やかな声で俺を迎え入れる。
身に着けているのは、位階持ちの上級魔術師のみが許される導師服。しかも高位である事を表す紫紺の彩り。
まだ若い、下手をすれば10代後半である事を考えれば、相当のエリートである。
なのだけど、着ている導師服がどう見ても学生服、それも上着の丈が長い長ランなので、微妙に微笑ましくなってくる。しかも髪型がオールバックだし。
(昔の不良漫画に出て来そうな子だな、この子)
異世界文化なので笑っちゃダメなんだけど、なんだか懐かしさもあって、毎回高位の魔術師と会う時は笑いをこらえるのに必死になってしまう。
「どうかしましたか?」
「いえなんでもないです」
ギリで笑い出すのを回避し、即座に返す。
とはいえ微妙に表情が強張っちゃったんで、訝しそうな眼差しを向けられちゃったけど。
なので、話を変える意味でも相手の名前を問い掛ける。
「よろしければ、貴方の名前を教えて頂けますか?
そちらの、かわいらしいお嬢さんの名前も出来れば是非」
「…………」
ちょっとだけ、間が開く。ほんの少しだけ、イラつくように眉を寄せた後、彼は返してくれた。
「序列98位、カルナ・ストラドフォードと申します。彼女は……私付きのただのメイドです。名前は、知る必要がありますか?」
「ええもちろん」
「…………」
思いっきり黙ってしまうカルナ。
(これは、もしかすると、ひょっとして)
いかん。ダメなの分かってるけど、ラブの気配にワクワクしてしまう。
20歳にもならない若さで、魔術師としての実力や権力が序列98位であるとか、三大世俗派魔術師の一角であるストラドフォード家に縁のある人物だとか、色々あるけれど、そんなものよりも10代の恋模様の方が心が弾む。
他人の色恋沙汰ほど楽しい娯楽は、そうそうないしね!
などと、心の中を覗かれたら確実にぶん殴られそうなことを、欠片も表情に出さずに思いながら、メイドさんに気付かれないよう視線を向ける。
立ち振る舞いが、綺麗な子だった。ただ立っているだけだというのに、凛として見惚れてしまう。
(強いな、この子)
年の頃はカルナと同じぐらいだと思うけど、この年でこのたたずまいは、相当修練を重ねているのだろう。
そんな彼女だけれど、今は不安を押し隠し、カルナを見詰めていた。
彼氏が何かしでかさないか、不安で不安でたまらない、そんな感じに。
だからなのか、黙ったままのカルナに変わり、彼女は自分で名乗ってくれた。
「ミリィと申します、ヒイロさま。家名は、持っておりません。
ただの、ミリィです」
「好い響きだね、ミリィ。かわいい名前だよ」
「…………」
表情は変わらないまま、親の仇みたいな強さで俺を睨み付けるカルナ。
どう見ても、自分ではそれに気付いていない。
そして、必死に隠そうとしているけれど、心配で心配でたまらない気持ちを抑えて無表情でいようとするミリィ。
(これは、なんだかいろいろ事情がありそうな)
いかん、これはマズい。
魔術師協会と、場合によっては一戦交えることも覚悟して来たのだけれど、目の前の2人に気を取られてしまう。
どうするべきか? 悩んだのは一瞬。
(ま、それはそれでいっか。最悪、魔術師協会と喧嘩しつつ、この子らを応援してあげれば良いだけだし)
両方やりたい事しちゃえば好いんじゃね?
そんな欲望タダ漏れの決意を固める。
これぐらい欲張りじゃないと、今までやってこれるかってなもんだ。
何事もモチベーションは大事である。でないと続かないし。
「さて、名前も教えて貰った事ですし、次はお招きいただきたいものですね、カルナ殿」
見極めも兼ねて、俺はカルナに催促する。
ついでに言えば、パスを投げたつもりではある。
(ここで巧く捌けば、彼女に良い所を見せるチャンスだぞ?)
期待感を胸に待っていると、
「……申し訳ありません。いつまでも、こんな所でお待たせしてしまい、ご無礼をしてしまいました。
お招きさせて頂く準備は整っています。ぜひ、我らが塔においで頂きたい」
自分の気持ちを飲み込んで、礼を見せてくれる。
ミリィを見れば、ほっとしたように表情が柔らかくなっていた。
そんな2人の様子に、思わず微笑ましくなっちゃったけど、それを欠片も出さずに俺は返す。
「急な来訪にも拘らず、お気遣いありがとうございます。ぜひ、お願いしたい」
「分かりました。では、こちらに――」
そう言って、導くように前に出たカルナの後について、俺は魔術師たちの塔へと向かって行った。
そこから現れたのは、メイドさんを連れた一人の男性だった。
「申し訳ありません、お待たせしました。
元勇者隊、代表のヒイロ・カゲナギさま」
メイドさんを連れた男性が、穏やかな声で俺を迎え入れる。
身に着けているのは、位階持ちの上級魔術師のみが許される導師服。しかも高位である事を表す紫紺の彩り。
まだ若い、下手をすれば10代後半である事を考えれば、相当のエリートである。
なのだけど、着ている導師服がどう見ても学生服、それも上着の丈が長い長ランなので、微妙に微笑ましくなってくる。しかも髪型がオールバックだし。
(昔の不良漫画に出て来そうな子だな、この子)
異世界文化なので笑っちゃダメなんだけど、なんだか懐かしさもあって、毎回高位の魔術師と会う時は笑いをこらえるのに必死になってしまう。
「どうかしましたか?」
「いえなんでもないです」
ギリで笑い出すのを回避し、即座に返す。
とはいえ微妙に表情が強張っちゃったんで、訝しそうな眼差しを向けられちゃったけど。
なので、話を変える意味でも相手の名前を問い掛ける。
「よろしければ、貴方の名前を教えて頂けますか?
そちらの、かわいらしいお嬢さんの名前も出来れば是非」
「…………」
ちょっとだけ、間が開く。ほんの少しだけ、イラつくように眉を寄せた後、彼は返してくれた。
「序列98位、カルナ・ストラドフォードと申します。彼女は……私付きのただのメイドです。名前は、知る必要がありますか?」
「ええもちろん」
「…………」
思いっきり黙ってしまうカルナ。
(これは、もしかすると、ひょっとして)
いかん。ダメなの分かってるけど、ラブの気配にワクワクしてしまう。
20歳にもならない若さで、魔術師としての実力や権力が序列98位であるとか、三大世俗派魔術師の一角であるストラドフォード家に縁のある人物だとか、色々あるけれど、そんなものよりも10代の恋模様の方が心が弾む。
他人の色恋沙汰ほど楽しい娯楽は、そうそうないしね!
などと、心の中を覗かれたら確実にぶん殴られそうなことを、欠片も表情に出さずに思いながら、メイドさんに気付かれないよう視線を向ける。
立ち振る舞いが、綺麗な子だった。ただ立っているだけだというのに、凛として見惚れてしまう。
(強いな、この子)
年の頃はカルナと同じぐらいだと思うけど、この年でこのたたずまいは、相当修練を重ねているのだろう。
そんな彼女だけれど、今は不安を押し隠し、カルナを見詰めていた。
彼氏が何かしでかさないか、不安で不安でたまらない、そんな感じに。
だからなのか、黙ったままのカルナに変わり、彼女は自分で名乗ってくれた。
「ミリィと申します、ヒイロさま。家名は、持っておりません。
ただの、ミリィです」
「好い響きだね、ミリィ。かわいい名前だよ」
「…………」
表情は変わらないまま、親の仇みたいな強さで俺を睨み付けるカルナ。
どう見ても、自分ではそれに気付いていない。
そして、必死に隠そうとしているけれど、心配で心配でたまらない気持ちを抑えて無表情でいようとするミリィ。
(これは、なんだかいろいろ事情がありそうな)
いかん、これはマズい。
魔術師協会と、場合によっては一戦交えることも覚悟して来たのだけれど、目の前の2人に気を取られてしまう。
どうするべきか? 悩んだのは一瞬。
(ま、それはそれでいっか。最悪、魔術師協会と喧嘩しつつ、この子らを応援してあげれば良いだけだし)
両方やりたい事しちゃえば好いんじゃね?
そんな欲望タダ漏れの決意を固める。
これぐらい欲張りじゃないと、今までやってこれるかってなもんだ。
何事もモチベーションは大事である。でないと続かないし。
「さて、名前も教えて貰った事ですし、次はお招きいただきたいものですね、カルナ殿」
見極めも兼ねて、俺はカルナに催促する。
ついでに言えば、パスを投げたつもりではある。
(ここで巧く捌けば、彼女に良い所を見せるチャンスだぞ?)
期待感を胸に待っていると、
「……申し訳ありません。いつまでも、こんな所でお待たせしてしまい、ご無礼をしてしまいました。
お招きさせて頂く準備は整っています。ぜひ、我らが塔においで頂きたい」
自分の気持ちを飲み込んで、礼を見せてくれる。
ミリィを見れば、ほっとしたように表情が柔らかくなっていた。
そんな2人の様子に、思わず微笑ましくなっちゃったけど、それを欠片も出さずに俺は返す。
「急な来訪にも拘らず、お気遣いありがとうございます。ぜひ、お願いしたい」
「分かりました。では、こちらに――」
そう言って、導くように前に出たカルナの後について、俺は魔術師たちの塔へと向かって行った。
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