転生して10年経ったので街を作ることにしました

笹村

文字の大きさ
73 / 115
第二章 街予定地の問題を解決しよう編

2 街予定地に到着するまで車内販売試食会 その⑦ チーズたっぷりベーコンピザとシーフードピザ

しおりを挟む
(半分ぐらい、進んだかな?)

 窓の景色を見ながら、俺は予想を付ける。

(出発してから1時間半ぐらいだし、大体予定通りか)

 王都の外れから、いま向かっている街の予定地までは120キロほど。多少曲がりくねった道もあるけれど、距離に直せばそのぐらいだ。
 その気になれば、いま乗っている蒸気機関車の性能なら2時間を切るぐらいの速さで着けるんだけど、安全第一で速度は落として運行している。

(盗賊は事前の調べで居ないのは分かってるけど、場合によっては魔物が出るからなぁ)

 蒸気機関車を線路式に出来なかった一番の理由が、それだ。
 枕木や線路を破壊されたら大惨事になりかねない。
 あとついでに言えば、高品質の鉄が貴重な今のこの世界で、線路に使えるような鉄を置いておいたら、確実に盗もうとするのが出る。
 だから小回りが自由に利く、タイヤ式にせざるを得なかったんだ。

(それも、これだけ質の良い道路を作ってくれたから出来たんだよなぁ。協力してくれたみんなには感謝だよ)
 
 片側3車線の、蒸気機関車が楽に走れる平坦な道路。
 それを短期間で作ってくれたんだから頭が下がる。大地の女神ガイアの勇者たちが中心になって作ってくれたんだけど、でこぼこも少なくて、走っていて揺れを感じない理由の一つになっている。

(街を作る時にも苦労して貰わないといけないから、報酬は弾みたいな。となると、必要な資金を引っ張って来る先は――)

 移り変わる外の景色を見ながら仕事のことを考えていると、ふわりと香しい匂いが。
 さっき、ご飯を食べたばかりだけれど、それでも食欲が湧いてくる。

(そいえば、ピザとか焼くって言ってたな) 

 五郎のリクエストで設置した石窯だけど、これだけ美味しそうな匂いをさせてくれるなら、ちょっと無理してでも置いて良かったって思える。
 気付けば、みんなも匂いにつられてるのか、五郎が消えた台所に視線が向いている。

(まだかな~)

 待ち遠しく待っていると、

「おう、出来たぞ~。出来立てを食べてくれ」

 五郎が出来立てのピザを持って来てくれる。

「片方はベーコンとチーズをたっぷり乗せたヤツで、もう一つはシーフードな。他にも豚サンドとプリンがあるから、用意できるまでこっちを食べといてくれ」

 みんなにピザを一切れずつ配り終え、五郎は言ながら台所に返っていく。

「それじゃ、折角だし、先に食べちゃおっか。せっかくの出来立てなんだし、一番美味しい内に食べちゃわないとね」

 俺の提案にみんなも賛同し、ピザに手を伸ばす。

(まずは、チーズたっぷりの奴から貰おうかな)

 まんべんなくチーズが乗せられて、熱でとろりと融け、綺麗なきつね色になっているピザを手に取る。
 出来立てあつあつなので、はふはふ言いながら一口ぱくり。
 噛み締めると、表面はカリッと、中はもっちり生地の歯ごたえが。
 舌に乗る生地からは、ほんのり甘味と香ばしさが味わえた。

 そこからもぐもぐ噛んでいけば、濃厚なチーズの味が。
 熱を加えられ、とろけているから、余計に旨味が強く感じられる。

 そこにガツンと、旨味たっぷりの厚切りベーコンの味が加わって、美味しさに頬が緩む。
 濃厚なチーズの味と喧嘩せず、けれど決して負けることなく自己主張するベーコンは、実に肉々しい。
 噛み締めれば、美味い肉汁が溢れ出し、噛めば噛むほど肉の旨味が広がっていく。

 たぶん、これは低温燻製で作ったベーコンだ。前に食べさせて貰ったので、なんとなく分かる。
 普通の燻製より時間も手間もかかるけど、その分、肉の美味しさをぎゅっと閉じ込めてくれるんだ。

 そうした生地と具材をまとめるように、トマトソースが良い味を出している。
 具材の味が濃厚なので、丸みのある甘味のソースが全ての味を包み込んでくれていた。

(美味しい。チーズも美味いし生地も良いなぁ。それにトマトソースも合ってるし……でも、この肉、なんの肉だろう?)

 豚肉なんだけど、旨味が濃い。
 油も甘味があって、幾らでも食べれそうな気がする。
 焼肉にして、ちょっと甘味のあるタレに付けて食べると美味しそうだ。

(釜飯で魔獣の肉を使ってたし、ひょっとしてこれも、かな? それはそれで、美味しいから別に良いけど)

 美味しさの前には、多少細かい事はどうでも良いのだ。
 というわけで、更なる美味しさを求め、今度はシーフードピザに。

 こちらに乗せられているチーズは白味が強い。
 多分、脂肪分を減らされた、さっぱりとしたチーズだ。
 具材は、さっき食べたパエリヤ風釜飯と同じ。海老とイカに、トマト。
 ただ、こちらの方がイカの量が多い。チーズと同じぐらいの量が乗せられている。

 どんな味なのか期待して、一口食べる。

(うん、美味しい)

 こちらの生地は少し薄めで、さっくりしてる。
 小麦の甘味よりも、旨味が強い感じだ。
 より、具材の美味しさを引き立てる生地、という感じがする。

 だから具材の旨味がくっきりと味わえた。

 海産物の、さっぱりとした旨味溢れる美味しさが、噛み締める毎に味わえる。
 海老は噛み締める毎に、甘みのある旨味に塩味が利いて味わい深い。

 そしてイカは、ほどよい噛み応えが楽しいし、旨味の詰まった塩味が噛む毎に広がっていく。

 濃いと思えるほどの味わいなのに、くどさがなくてクセになる味わいだ。
 唯一物足りないと思えるコクも、さっぱりとしたチーズが補い美味しさを高めてくれた。

(美味しい……でもこのイカ、さっき食べたのとちょっと違うかな?)

 さっきパエリヤ風釜飯で食べたイカは、甘味のある旨味の方が強かった気がする。
 いま食べてるのは、旨味のある塩味が強い感じだ。
 でも、噛めば噛むほど味わい深さが出るのはこっちの方だ。

(これ、なんのイカだろ? これだけ焼いてあるのに身がぷりぷりしてて、噛んだ感触も良いんだよな)

 もぐもぐと食べながら悩んでいると、五郎がお茶を配りにやって来るのに気付く。

「もう少ししたら、プリンも冷えるからな。それまでもうちょっと待ってくれ」

 みんなが美味しそうに食べてくれてるのが嬉しいのか、見ていて分かるほど上機嫌な五郎に声を掛ける。

「お疲れさま。ねぇ、五郎。ちょっと訊きたいんだけど、このイカって、どんな種類のイカなの? 美味しかったから、気になって」

 すると五郎は、平然と返してくれた。

「ああ、そりゃクラーケンだ」

 思わず食べてた手が止まる。

「クラーケンって、ちっちゃい島ぐらいある海の魔獣だよね」
「おう、それだな。浮島とか言われてたぞ。近付いたら、イカみたいな手を伸ばして船を丸ごと沈めるんだとさ」
「そんなの良く手に入ったね」
「それも貰いもんでな。ロック鳥と同じで、料理勝負した子に貰った」
「……その子、なんでそんな魔獣の料理ばっか作ったの?」
「料理勝負のお題が、今まで食べた事のない料理、だったからな。食材で攻めるか、作り方で攻めるかするしかなかったんだよ」
「なるほど……五郎は、元居た世界の料理の知識があるからいいけど、相手の子は違うもんね。そりゃ、食材で攻めるしかなかったわけだ」
「そういうこった。でもちゃんと、料理の腕は良かったぞ。おまけに良い子でな。気前よく、勝負が終わった後に食材を分けてくれたからな」
「そっか……それなら後で、お礼しとかないとね。なにか要る物があったら言って。こっちで用意するから」
「おう、サンキュー。そんときゃ、頼むわ」

 五郎は嬉しそうに手を上げてひらひらさせると、また台所に戻っていく。
 それを見詰めながら、俺は五郎が持って来てくれたお茶を飲んで一息つく。

 街予定地に着くまで、残りは1時間。俺は外の流れる景色を楽しみながら、五郎が用意してくれた最後の料理を待っていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

処理中です...