転生して10年経ったので街を作ることにしました

笹村

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第二章 街予定地の問題を解決しよう編

3 街予定地に着いたは良いけれど その⑤ 撤退戦本番

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 無数の火球と石弾が、一斉に襲い掛かって来る。
 攻撃の種類が統一されていないのは、恐らくはわざとだ。
 こちらが防御し辛いよう、属性の異なる物を撃って来てる。

 けれど、それを八雲と出雲が防いでくれた。

「出雲! 壁を造る! 補強は任せた!」
「任せるのだ!」

 八雲は自らの魔力を放出。地面へと浸透させると、神与能力チートスキルを使い変成させる。

「即席で万里の長城を造ってやるよ!」

 八雲の気合の入った声と共に、地鳴りが響く。俺達の側面の地面が盛り上がり、一気に分厚く長大な壁へと変わった。
 そこに、追加で出雲の神与能力チートスキルが発動される。

「バリヤー発生装置にするのだ!」

 出雲も魔力を放出し、八雲の造った壁を更に造り替える。
 浸透した魔力が元素レベルで壁の構造を造り替え、新たな機能を与えた。

 壁全体が振動したかと思うと、青白い光を放出。すぐに形を整えるように壁全体を覆うと、そのまま固定される。

 そこに魔物の攻撃が一斉に叩きつけられる。
 盛大な爆音と振動、そして炎が上がるが、僅かたりともこちらに攻撃は届かない。

「……一体、どんな原理で……」

 出雲が八雲の壁を材料に造ったバリヤー発生装置に、カルナは困惑気味に声を上げる。
 パッと見た限りだと何らかの魔術的な作用で造られた感じだけど、構造式が異次元過ぎてさっぱり分からない。

「気にしたら負けだって。そういう神与能力チートスキルなんだから。本人にもどうやって出来てるのか分からないんだし。それより今は、ここから逃げ出すことを考えないと」

 思考の泥沼に堕ちそうになってるカルナを現実に引き戻し、俺は出雲に問い掛ける。

「蒸気機関車は? あとどれぐらいで来れる?」
「ロコが、いま遠隔操作で走らせてるのだ。だからすぐ――」
「新手だ! 気を付けろ!」

 出雲が言い終るよりも早く、俺は皆に警戒するよう叫ぶ。
 壁を跳び越えてこちらに来る魔物に気付いたからだ。

 それは、魔物の群れの中央に居た巨人型の魔物。
 魔物たちの攻撃と同時に走り出し、壁の直前で10m近い高さをものともせずジャンプして越えたのだろう。
 壁を跳んだ体勢で、空からこちらに落ちてくる。

「オオォォオオンンン!」

 呪うような不気味な声を上げ、巨人型の魔物は一抱えはある光球を生み出し、それを放とうとし――

「爆花繚乱!」

 和花に迎撃される。数十の炎の花びらに魔物は包まれ大爆発を起こす。
 爆炎と爆風が周囲に広がり、俺達がそれぞれ魔術結界で防ぐ中、魔物は地面へと墜落した。

 ズズンッ! という地鳴りを響かせながら地面に激突した魔物は、体中に細かなひびを入れながらも、平然と立ち上がり殺意を振りまいた。

 それを断ち切るように、五郎が動く。

「真っ二つ斬り!」

 大包丁、正宗を力強く振り抜く。斬撃の威力を飛ばすのではなく纏い、破壊力を増した一撃で斬り裂こうとした。
 それを、魔物は受け止める。

「ウギイイイィッ!」

 雄たけびを上げながら、五郎の斬撃に自らの右腕を叩き付ける。
 ザクッ! という音と共に、腕の半ばまで五郎の正宗は食い込むが、そこで止まる。
 僅かに動きが停滞する五郎。
 そこへ魔物は、残った左腕で殴りかかろうとし――

「させるか!」

 より早く動いた俺が、五郎の正宗が食い込んだ腕を挟むような形で、村正を叩き込む。
 正宗により半ばまで断ち切られていた腕は、俺の追撃に耐えられず斬り飛ばされ、その衝撃で体勢を崩した魔物は、左腕の攻撃を空振りする。

 そこに連撃を、俺と五郎は叩き込もうとした。
 だがそれより早く、魔物は力強く跳躍する。

 斬り飛ばされた自分の腕を追うように跳ぶと、斬り飛ばされた腕が地面に落ちるより早く手に取った。そして、

「グッルアアアアアッ!」

 恐らくはそれが呪文なのだろう、魔物は叫ぶと、斬り飛ばされた自分の腕を材料に武器を造り出す。
 それは一本の刀。俺の村正に似た、けれど遥かに長大で禍々しい刀だった。
 魔物は造り出した刀を振り上げ、振り下ろそうとした瞬間――

「噛み千切れっす、影鰐!」

 有希の放った影鰐が地を走り、襲い掛かろうとする。
 けれど、魔物の一撃が切り裂いた。

 地面を抉りながら振るわれた魔物の刀は、影鰐すら真っ二つに断ち切る。
 斬り裂かれた影鰐は、魔力に還元され散り散りになると、有希の影へと還っていく。

 影を媒体に創り出された影鰐は、ただの物理攻撃ではダメージを受けない。
 それに傷を与えたという事は、あの魔物の刀は魔力をまとい、攻撃自体が魔術的な効果を持っているんだろう。

 まともに食らえば、ただでは済まない。
 それを魔物は振り上げ、再びこちらを攻撃しようとする。だが――

「爆拳!」

 魔物に臆することなく距離を詰めていたミリィが、魔物の足に爆拳を叩き込む。
 爆発し、衝撃でえぐられながら、それでも平然と魔物は反撃するべく刀を構え――

「雷霆戦槍!」

 カルナが放った雷の槍を斬り散らした。
 斬り散らされた雷の槍は、周囲を帯電させ火花を生む。
 魔物は火花散る中を、後方に跳んだミリィを追うように重心を沈める。

 けれどその時には既に、こちらの準備は整っていた。

 俺達は、大きくその場を離れるように跳び、誰も居ない進路が出来る。そこへ――
 
「ま゛っ!」

 ロコに遠隔操作された蒸気機関車がすさまじい勢いで突っ込み、その先に居る魔物を力強く跳ね飛ばす。
 重さにして1000トン以上。80キロの過剰速度での突進は、魔物に耐えさせる余裕など与えず、遥か彼方にぶっ飛ばす。

 ぶっ飛ばされ、地面を何度かバウンドしながら、魔王戦で出来た池に着水。大きく水柱を上げ沈みこんだ。
 絶好の好機が訪れる。それを逃すことなく、俺は大声を上げた。

「このまま逃げよう! 出雲はロコとデミウルゴスと一緒に操縦に専念して! 残りは屋根に移動! 追手や追撃があれば防ぎつつ逃げる!」

 みんなは即座に、俺の言葉に動いてくれる。
 次々に蒸気機関車の屋根に乗り、出発準備が整った所で、池に落ちた魔物が這いあがってくる。

「しつこ過ぎじゃ!」

 和花が炎の花びらを生み出し迎撃。爆発で魔物が動けない隙に出発する。

「とばせ! 道は本道路まで俺が造るから遠慮すんな!」

 蒸気機関車の一部を造り替え伝令管にした八雲は、操縦室の出雲に言うと、すぐに蒸気機関車の前の道を造り替える。
 舗装された、なだらかな道。そこを勢いよく蒸気機関車は走り出し、俺達はその場から逃げ出した。
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