78 / 115
第二章 街予定地の問題を解決しよう編
3 街予定地に着いたは良いけれど その④ 撤退戦開始
しおりを挟む
(なんだ、アレ)
襲い掛かってきた魔物の一体を切り捨てながら、俺は数百mほど離れた場所に現れた、新手の魔物の群れに意識を割く。
パッと見で確認できただけでも100体を超える。
小高い丘に横並びになるようにして、整然と並んでいた。
しかも、全てが遠距離攻撃を想定した形状になっている。
上半身は人型を取りながら、両腕が砲のようになり、下半身は蜘蛛のような多脚。それを次々に、地面に刺している。
(固定してるのか? 砲撃の反動で狙いがぶれないように? 戦術でもあるみたいじゃないか。いや、それ以前に、デミウルゴスに感知されずに今までどこに居た?)
神であるデミウルゴスの探知を魔物が逃れる術など、そう多くは無い。まず間違いなく――
(ついさっきまで、完全に活動を停止させて休眠状態に入ってたな。それならただの物質と同じだから、探知しようがない。すぐにバレないよう、身体は今居る小高い丘の向こうに隠していた筈だ。でも、そこまで行くと、確実に戦術を使ってるってことになる)
ぞっとする。基本的に魔物は、本能的に動くことはあっても、戦うための工夫をする事は少ない。
中級以上の魔物で、自分の肉体以外の物から武器を作ることを覚え、上級以上で、それをより効率的に動かすための工夫をする程度だ。
あくまでも、個体としての性能を上げることはあっても、集団で有利になるような戦闘法を運用するなんてことは無い。
それが出来たのは、人間から魔物になった魔王とその眷属だけだ。
あくまでも今までは、の話だけれど。
(新種、ってことか)
魔物の群れの中央。こちらを見渡せるような位置に、巨人のような魔物が一体居るのに俺は気付く。
それは人とは違うけれど、均整の取れたある種の美しさを持っている。
そして何よりも特徴的なのは、こちらをうかがう眼差しだ。
どう見ても、こちらの動きを把握し対応しようとしている。知性の輝きを、持っているようにしか見えない。
(魔王の眷属の生き残り……なら、まだ良かったな……そんな物が生き残ってる訳がない。菊野さんの神与能力も使って、徹底的に確認した。だから、あれはただの魔物だ。ただの魔物なのに、集団戦の指揮が出来る能力を持っている)
今の状況から考えれば、そうとしか思えない。だからこそ、俺は即座に判断した。
「カルナ! ミリィ! 全力防御!」
事前の打ち合わせ通り、カルナとミリィは俺の言葉に反応する。
魔物を殴り飛ばしたミリィは、カルナの傍に寄り、カルナは即座に、防御系魔法陣を起動する。
それを確認し、俺は大技を使う。
「毒に酔いしれ。地の杯に、酒の如く満ちよ。溢れ溺れよ、神変鬼毒酒!」
強化呪文を詠唱し、俺は手にした妖刀、村正に過剰魔力を注ぎ込む。
過剰魔力に反応し、暴走一歩手前まで活性化された村正は、刃を巨大化。
目で見て分かるほど大量かつ高濃度の魔術毒を、滴るような勢いで作り出す。
それを、俺は地面に深々と突き刺した。
その瞬間、地面を伝い、周囲一帯に居た魔物に魔術毒が浸食する。
次々に地面に倒れ伏す魔物たち。まるで泥酔したかのように、まともに動くことさえ出来なくなる。
これが、俺の集団戦での奥の手の1つ『神変鬼毒酒』だ。
通常なら斬りつけなければ効果を及ぼせない魔術毒を地面に流し、その上に居る対象に魔術毒を与える魔術。
魔力を大量に喰う上に、ある程度の守りで防がれるので使い所が難しいけど、初見の相手ならば大抵は嵌め殺しに出来る。
殺すことよりも動きを封じることを目的としているので、喰らったからといって死んだり破壊されたりすることは無いが、これで周囲に居た魔物の全ては動きを封じられている。
安全を確保した状況で、俺はカルナとミリィに視線を送る。
2人は即座に反応し、後衛である出雲達の元に走り出す。
俺もすぐに、地面に突き刺した村正を引き抜き、2人の後に続いた。
全ては、事前の打ち合わせ通りだ。
何らかの不測の事態があった時には、俺の判断で即時撤退をするよう、みんなとは話し合っている。
その合図が、さっき使った神変鬼毒酒だ。
下手に戦う事に拘って、犠牲を出す気なんて欠片も無い。
36計逃げるが勝ちってヤツである。
他のみんなも、すでに動いて、後衛の出雲達の元に向かっていた。
俺も走りながら、新手の魔物が居る離れた小高い丘に視線を向ける。
その途端、寒気が走った。
(クソっ、反応が速い!)
整然と横に並ぶ魔物達が、自身の魔力を活性化させる。
それは両腕の砲に集中し、遠距離型の攻撃魔術を解き放とうとしていた。
そこまで俺が読み取る中で、魔物達の中央に居る、巨人型の魔物が腕を振り上げる。
そして振り下ろすと同時に、一斉に攻撃が放たれた。
襲い掛かってきた魔物の一体を切り捨てながら、俺は数百mほど離れた場所に現れた、新手の魔物の群れに意識を割く。
パッと見で確認できただけでも100体を超える。
小高い丘に横並びになるようにして、整然と並んでいた。
しかも、全てが遠距離攻撃を想定した形状になっている。
上半身は人型を取りながら、両腕が砲のようになり、下半身は蜘蛛のような多脚。それを次々に、地面に刺している。
(固定してるのか? 砲撃の反動で狙いがぶれないように? 戦術でもあるみたいじゃないか。いや、それ以前に、デミウルゴスに感知されずに今までどこに居た?)
神であるデミウルゴスの探知を魔物が逃れる術など、そう多くは無い。まず間違いなく――
(ついさっきまで、完全に活動を停止させて休眠状態に入ってたな。それならただの物質と同じだから、探知しようがない。すぐにバレないよう、身体は今居る小高い丘の向こうに隠していた筈だ。でも、そこまで行くと、確実に戦術を使ってるってことになる)
ぞっとする。基本的に魔物は、本能的に動くことはあっても、戦うための工夫をする事は少ない。
中級以上の魔物で、自分の肉体以外の物から武器を作ることを覚え、上級以上で、それをより効率的に動かすための工夫をする程度だ。
あくまでも、個体としての性能を上げることはあっても、集団で有利になるような戦闘法を運用するなんてことは無い。
それが出来たのは、人間から魔物になった魔王とその眷属だけだ。
あくまでも今までは、の話だけれど。
(新種、ってことか)
魔物の群れの中央。こちらを見渡せるような位置に、巨人のような魔物が一体居るのに俺は気付く。
それは人とは違うけれど、均整の取れたある種の美しさを持っている。
そして何よりも特徴的なのは、こちらをうかがう眼差しだ。
どう見ても、こちらの動きを把握し対応しようとしている。知性の輝きを、持っているようにしか見えない。
(魔王の眷属の生き残り……なら、まだ良かったな……そんな物が生き残ってる訳がない。菊野さんの神与能力も使って、徹底的に確認した。だから、あれはただの魔物だ。ただの魔物なのに、集団戦の指揮が出来る能力を持っている)
今の状況から考えれば、そうとしか思えない。だからこそ、俺は即座に判断した。
「カルナ! ミリィ! 全力防御!」
事前の打ち合わせ通り、カルナとミリィは俺の言葉に反応する。
魔物を殴り飛ばしたミリィは、カルナの傍に寄り、カルナは即座に、防御系魔法陣を起動する。
それを確認し、俺は大技を使う。
「毒に酔いしれ。地の杯に、酒の如く満ちよ。溢れ溺れよ、神変鬼毒酒!」
強化呪文を詠唱し、俺は手にした妖刀、村正に過剰魔力を注ぎ込む。
過剰魔力に反応し、暴走一歩手前まで活性化された村正は、刃を巨大化。
目で見て分かるほど大量かつ高濃度の魔術毒を、滴るような勢いで作り出す。
それを、俺は地面に深々と突き刺した。
その瞬間、地面を伝い、周囲一帯に居た魔物に魔術毒が浸食する。
次々に地面に倒れ伏す魔物たち。まるで泥酔したかのように、まともに動くことさえ出来なくなる。
これが、俺の集団戦での奥の手の1つ『神変鬼毒酒』だ。
通常なら斬りつけなければ効果を及ぼせない魔術毒を地面に流し、その上に居る対象に魔術毒を与える魔術。
魔力を大量に喰う上に、ある程度の守りで防がれるので使い所が難しいけど、初見の相手ならば大抵は嵌め殺しに出来る。
殺すことよりも動きを封じることを目的としているので、喰らったからといって死んだり破壊されたりすることは無いが、これで周囲に居た魔物の全ては動きを封じられている。
安全を確保した状況で、俺はカルナとミリィに視線を送る。
2人は即座に反応し、後衛である出雲達の元に走り出す。
俺もすぐに、地面に突き刺した村正を引き抜き、2人の後に続いた。
全ては、事前の打ち合わせ通りだ。
何らかの不測の事態があった時には、俺の判断で即時撤退をするよう、みんなとは話し合っている。
その合図が、さっき使った神変鬼毒酒だ。
下手に戦う事に拘って、犠牲を出す気なんて欠片も無い。
36計逃げるが勝ちってヤツである。
他のみんなも、すでに動いて、後衛の出雲達の元に向かっていた。
俺も走りながら、新手の魔物が居る離れた小高い丘に視線を向ける。
その途端、寒気が走った。
(クソっ、反応が速い!)
整然と横に並ぶ魔物達が、自身の魔力を活性化させる。
それは両腕の砲に集中し、遠距離型の攻撃魔術を解き放とうとしていた。
そこまで俺が読み取る中で、魔物達の中央に居る、巨人型の魔物が腕を振り上げる。
そして振り下ろすと同時に、一斉に攻撃が放たれた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる