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第二章 街予定地の問題を解決しよう編
3 街予定地に着いたは良いけれど その③ 現れる軍勢
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「あらあら、薄情ねぇ」
「そもそも、魔物に仲間意識なんぞなかろうよ」
左翼から逃げ出そうとする十数体の魔物に、薫と和花はのんびりとした口調で言う。
「でも、勝てない相手に逃げるのは、間違ってないわよねぇ」
「確かにの。とはいえ、逃がす気はないがな」
和花は逃げ出す魔物達を見ながら、無詠唱で魔杖を生み出す。
幼子の今の姿では大き過ぎるその杖、魔杖レーヴァティンで地面を軽く突く。
その途端、無数の蕾の形をした炎の塊が生まれた。
「神与能力は使うの?」
「いや、そこまでする事は無かろう。お前はどうするんじゃ?」
「もう、使ってるわよ。ほら」
薫の視線の先を追えば、そこにはジグザグに移動しながら和花たちに近付く魔物たちが。
逃げ出そうとしている筈の魔物たちは、まるで見えない壁を避けて進路を変えているかのように動いていた。
少しずつ近づいて来る魔物たち。それを滅ぼすべく、和花は詠唱を開始する。
「害成す悪意の杖よ、汝が創り手が命じる。世界の魔力を食らい、我が力と化せ」
和花の言葉と共に目覚めたレーヴァティンは、周囲の魔力を貪欲に取り込み、創り手にして使い手たる和花に膨大な魔力を供給する。
供給された魔力を使い、和花は周囲に浮かぶ無数の炎の蕾に魔力を注ぎ込む。
その途端、次々に蕾は開花し咲き誇る。
咲き乱れる劫火の花を開放するべく、和花は更なる詠唱を開始した。
「火薬の園を今ここに。咲き誇る煉獄、永久の熱の国。暴虐の戦花よ、我が声と共に散り爆ぜよ。爆花繚乱」
詠唱の終わりと共に、炎の花は数百の花びらへと散る。けれど消えることなく、全てが一斉に魔物達へと向かって行った。
疾風の如き勢いで到達し、魔物に触れた途端、爆発を起こす。
触れた相手の魔力を巻き込んで爆発力に変える爆花繚乱は、相手が強ければ強いほど威力を増す。
逆に言えば、いま戦っているような低級な魔物では、破壊力はそれほど大した事にはならない。
けれど、それでも花びら一枚が触れただけで握り拳ほどの部分がごっそりと吹き飛ぶだけの威力はある。
それが数百連続して襲い掛かり、瞬く間に左翼に逃げようとしていた魔物たちは全てが魔力結晶へと変わっていった。
だが、逃げ出した魔物は右翼側にも居る。
それを打ち倒したのは、五郎と有希だった。
「料理以外に使うのは、趣味じゃねぇんだけどな」
乗り気なさげに言いながら、五郎は右手を空に掲げる。
そして気持ちを切り替えるように叫んだ。
「来い! 大包丁、正宗!」
空に掲げた右手に、人間大の巨大包丁が現れる。
それを手に、五郎は魔物の群れに突撃した。
100m以上離れていた距離を、数歩で一気に縮め、数メートルの距離から巨大包丁を振り下ろす。
「大微塵切り斬!」
振り抜きと共に、格子状の斬撃が魔物の一体に襲い掛かる。
耐えることなど出来ず、サイコロのように切り分けられ、魔力結晶を残し崩れ去った。
それが五郎が魔術で創り出した大包丁正宗の能力だ。
振り抜きと共に、最大で50メートル先に斬撃の威力を飛ばす。
元々は、料理の手間を楽にするために創り出した魔術だが、戦闘力としても十二分にある。
五郎は縦横無尽に動き回りながら、次々に魔物を料理していった。
だが、五郎の技は単体専用なので、どうしても取りこぼしは出る。
それを補うように、有希が動いた。
「起きるっすよ、影鰐」
有希が地面を足で叩くと、有希の影が形を変える。
ゆらりと蠢いたかと思うと鮫の形に変わり、影の面積自体も増える。
「取りこぼしを片付けて来いっす。残さず食べるっすよ」
有希が創り出した疑似魔物、影鰐は応えるように地面の上を跳ねると、真っ直ぐに敵の魔物へと地面の上を泳ぎ進む。
瞬く間に辿り着くと、魔物の影に噛み付き食い千切る。
その途端、食い千切られた影と同じ場所が破壊された。
それこそが影鰐の能力だ。
影を媒体に創り出された概念体である影鰐は、対象となる影に干渉する事で影響を及ぼせる。
物理的な破壊を行うことのみならず、生命体であれば精神を傷つけることさえ可能だ。
それを同時に5体生み出し、次々に魔物を倒していった。
瞬く間に、皆の活躍で魔物の数は減っていく。圧倒的な優勢だ。
そのせいで、手持無沙汰な一団も。
「なんか、出番無さそうだな」
「ま゛」
後衛で詰めていた八雲とロコが、暇そうに言う。
「別に良いのだ」
2人に返したのは出雲。安堵するように、続けて言う。
「こっちが優勢な方が、けが人も出なくて良いのだ。魔王との戦いの時みたいなのは、2度とごめんなのだ」
「……そうだな。確かに、何も無いのが一番――どうした、デミウルゴス?」
厳しい表情で、ここからは離れた場所を見詰めるデミウルゴスに、八雲は声を硬くして問い掛ける。
それにデミウルゴスは、顔を向ける余裕もなく言った。
「なんだ、アレは……なんであんなモノが存在している……」
悪夢を見るようなその声に、八雲はデミウルゴスの見ている方向に視線を向け、
「気を付けろ! 新手だ!」
周囲を振るわせるほどの大声で皆に警戒を促す。
それに皆が意識を向けると、そこに居たのは魔物の軍勢だった。
「そもそも、魔物に仲間意識なんぞなかろうよ」
左翼から逃げ出そうとする十数体の魔物に、薫と和花はのんびりとした口調で言う。
「でも、勝てない相手に逃げるのは、間違ってないわよねぇ」
「確かにの。とはいえ、逃がす気はないがな」
和花は逃げ出す魔物達を見ながら、無詠唱で魔杖を生み出す。
幼子の今の姿では大き過ぎるその杖、魔杖レーヴァティンで地面を軽く突く。
その途端、無数の蕾の形をした炎の塊が生まれた。
「神与能力は使うの?」
「いや、そこまでする事は無かろう。お前はどうするんじゃ?」
「もう、使ってるわよ。ほら」
薫の視線の先を追えば、そこにはジグザグに移動しながら和花たちに近付く魔物たちが。
逃げ出そうとしている筈の魔物たちは、まるで見えない壁を避けて進路を変えているかのように動いていた。
少しずつ近づいて来る魔物たち。それを滅ぼすべく、和花は詠唱を開始する。
「害成す悪意の杖よ、汝が創り手が命じる。世界の魔力を食らい、我が力と化せ」
和花の言葉と共に目覚めたレーヴァティンは、周囲の魔力を貪欲に取り込み、創り手にして使い手たる和花に膨大な魔力を供給する。
供給された魔力を使い、和花は周囲に浮かぶ無数の炎の蕾に魔力を注ぎ込む。
その途端、次々に蕾は開花し咲き誇る。
咲き乱れる劫火の花を開放するべく、和花は更なる詠唱を開始した。
「火薬の園を今ここに。咲き誇る煉獄、永久の熱の国。暴虐の戦花よ、我が声と共に散り爆ぜよ。爆花繚乱」
詠唱の終わりと共に、炎の花は数百の花びらへと散る。けれど消えることなく、全てが一斉に魔物達へと向かって行った。
疾風の如き勢いで到達し、魔物に触れた途端、爆発を起こす。
触れた相手の魔力を巻き込んで爆発力に変える爆花繚乱は、相手が強ければ強いほど威力を増す。
逆に言えば、いま戦っているような低級な魔物では、破壊力はそれほど大した事にはならない。
けれど、それでも花びら一枚が触れただけで握り拳ほどの部分がごっそりと吹き飛ぶだけの威力はある。
それが数百連続して襲い掛かり、瞬く間に左翼に逃げようとしていた魔物たちは全てが魔力結晶へと変わっていった。
だが、逃げ出した魔物は右翼側にも居る。
それを打ち倒したのは、五郎と有希だった。
「料理以外に使うのは、趣味じゃねぇんだけどな」
乗り気なさげに言いながら、五郎は右手を空に掲げる。
そして気持ちを切り替えるように叫んだ。
「来い! 大包丁、正宗!」
空に掲げた右手に、人間大の巨大包丁が現れる。
それを手に、五郎は魔物の群れに突撃した。
100m以上離れていた距離を、数歩で一気に縮め、数メートルの距離から巨大包丁を振り下ろす。
「大微塵切り斬!」
振り抜きと共に、格子状の斬撃が魔物の一体に襲い掛かる。
耐えることなど出来ず、サイコロのように切り分けられ、魔力結晶を残し崩れ去った。
それが五郎が魔術で創り出した大包丁正宗の能力だ。
振り抜きと共に、最大で50メートル先に斬撃の威力を飛ばす。
元々は、料理の手間を楽にするために創り出した魔術だが、戦闘力としても十二分にある。
五郎は縦横無尽に動き回りながら、次々に魔物を料理していった。
だが、五郎の技は単体専用なので、どうしても取りこぼしは出る。
それを補うように、有希が動いた。
「起きるっすよ、影鰐」
有希が地面を足で叩くと、有希の影が形を変える。
ゆらりと蠢いたかと思うと鮫の形に変わり、影の面積自体も増える。
「取りこぼしを片付けて来いっす。残さず食べるっすよ」
有希が創り出した疑似魔物、影鰐は応えるように地面の上を跳ねると、真っ直ぐに敵の魔物へと地面の上を泳ぎ進む。
瞬く間に辿り着くと、魔物の影に噛み付き食い千切る。
その途端、食い千切られた影と同じ場所が破壊された。
それこそが影鰐の能力だ。
影を媒体に創り出された概念体である影鰐は、対象となる影に干渉する事で影響を及ぼせる。
物理的な破壊を行うことのみならず、生命体であれば精神を傷つけることさえ可能だ。
それを同時に5体生み出し、次々に魔物を倒していった。
瞬く間に、皆の活躍で魔物の数は減っていく。圧倒的な優勢だ。
そのせいで、手持無沙汰な一団も。
「なんか、出番無さそうだな」
「ま゛」
後衛で詰めていた八雲とロコが、暇そうに言う。
「別に良いのだ」
2人に返したのは出雲。安堵するように、続けて言う。
「こっちが優勢な方が、けが人も出なくて良いのだ。魔王との戦いの時みたいなのは、2度とごめんなのだ」
「……そうだな。確かに、何も無いのが一番――どうした、デミウルゴス?」
厳しい表情で、ここからは離れた場所を見詰めるデミウルゴスに、八雲は声を硬くして問い掛ける。
それにデミウルゴスは、顔を向ける余裕もなく言った。
「なんだ、アレは……なんであんなモノが存在している……」
悪夢を見るようなその声に、八雲はデミウルゴスの見ている方向に視線を向け、
「気を付けろ! 新手だ!」
周囲を振るわせるほどの大声で皆に警戒を促す。
それに皆が意識を向けると、そこに居たのは魔物の軍勢だった。
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