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第二章 街予定地の問題を解決しよう編
10 魔物の軍勢 その① 三人称視点
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時は幾らか遡る。
陽色たちとは別行動で、異なる方向に向かって進んでいた名門魔術師の部隊は、魔物の一団と戦っていた。
「薙ぎ払え」
部隊の長であるラングレーの号令に従って、一斉に攻撃魔法が放たれる。
100を超える一斉射撃に、200mほど先で固まっていた魔物たちは吹っ飛ぶ。
体のいたる所が破壊された魔物たちは、しかしそれでも、魔術師たちに向かって欠けた体で向かって来る。
それを淡々と、魔術師たちは連続射撃で潰していった。
「おぞましいことです」
「そうかのう? わしには、健気に見えるがの」
ラングレーの言葉に、手持ち無沙汰な和花は返す。
「健気ですか? 随分と、独特な感性をお持ちで。勇者の皆さまは、全員そうなのですか?」
どこか含みのある問い掛けに、和花は肩をすくめるようにして返した。
「勝てないと分かっていても突き進む。愚かじゃが、素直じゃよ」
「虫の如き性分、というだけだと思いますがね」
「そうかのう? 魔物は、それほど単純ではないぞ。甘く見とると、足元をすくわれる」
「ははっ、ご心配なさらずに。貴方達から得た情報で、我々も学んでいます。なによりも、魔王に敗れて以来、その屈辱をすすぐための研鑚は詰んできたのです。それを形にする機会、無駄にはしません」
「そうか。じゃったら、少しはわしらにも、出番をくれんかのう?」
「大丈夫です。お手を煩わせることはありませんから。なにより勇者とはいえ、貴方がたのような美しい女性を矢面に立たせる訳には参りません」
「ほぅ……」
双方笑顔のまま、漂う空気は険悪だった。
協力する形で、ラングレー率いる名門魔術師の部隊に組み込まれた和花たちだったが、今のところ何も出来てはいない。
全ての決定はラングレーが行い、配下でもある名門魔術師が対処している。
(どうあっても自分の手下以外は、排除するつもりじゃな、こいつ)
苦々しい気持ちで、和花は心の中で呟く。
元より和花としても、魔術師の全てが自分たち勇者の事を快く思っているとは考えていない。
魔術師が倒せなかった魔王を倒した事で権威を奪われ、更にその後に進めた特許制度で権益の一部も奪われたのだ。
最近になって和解の動きを見せたとはいえ、そうそうわだかまりが解けるとは思ってはいない。
だから、それはいい。自分たち勇者を苦々しく思うなら、それで構わない。
けれどいま問題なのは、同じ魔術師同志でありながら、排除しようという動きを見せているからだ。
(なにかあったら、捨て駒にする気じゃな、こいつ)
ラングレーを見ながら、部隊の端に追いやられた魔術師の一団のことを考える。
わざと、魔物を発見しても何もさせていない。
そのせいで、かなりじれている。あの様子では、少々無謀でも功績を上げるためなら突っ込みかねない。
(そうなるように誘導しとるんじゃろうが。いやらしい奴じゃな)
(嫌いなタイプ? アレ)
和花がラングレーのことを苦々しく思っていると、心の中に声が聞こえてくる。
声には出さず思ったことを伝えられる念話の魔術で、瑠璃が呼び掛けてきたのだ。
ため息をつくように、和花は返す。
(嫌いじゃのう。ああいう、自分の為なら他人を使い潰しても良い、と思ってそうな奴はな)
(そうだね。私も、同じ気持ち)
(なんじゃ、お前もそう思っとるなら、わざわざ訊かんでも良かったじゃろうに)
(自分だけの気持ちだと、冷静に見えてないかもしれないから。むーこは、どう思う?)
(おんなじ~)
武子も念話に加わって、段々とかしましくなる。
(タイプじゃな~い。こっちの外見しか見てないし~)
(別に男としてのタイプを訊いとるわけじゃないんじゃが?)
(え~、でもそこ大事じゃな~い? こっちのこと、値踏みするみたいに見てるし~)
(うん、そうそう。特に、和花を見てる目、なんかやらしい)
(自分にとって使えるかどうか見てるんじゃろ)
(別に、自分のモノになる訳じゃないのにね)
(そうそう~。そういうことは、ま~ちゃん越えしてからでないと~)
(なんでそこで、マゲイアのヤツの名前が出て来るんじゃ)
(え~、だって~、ま~ちゃんは~、みんなのま~ちゃんだし~)
(ペットか、アヤツは)
(え~、違うよ~、私たちみんなの彼氏だよ~)
(……なんでそうなるんじゃ)
(さすがに2度目の生も喪女のまま生き続けるのは辛い)
(だよね~。前の人生は、生きて100年だったから、処女で死んでもい~や~とか思ってたけど~、もう私たち、寿命とかじゃ死ねないし~。永遠に処女のままなのはちょっと~)
(なんの話じゃなんのーっ!)
声には出せないので心の中で絶叫して、耳まで赤くしながら和花は話を戻す。
(そんなことよりっ! 今は被害を出さんようにどうするかを話すべきじゃろっ!)
(そうだね。まーくんいつ押し倒すかは、また今度話し合おう)
(そうだね~)
(せんで良い! それよりも、ラングレーの奴から離れとる魔術師の保護の方が大事じゃ。瑠璃が担当じゃが、1人で大丈夫か?)
(大丈夫。えんみくん27号の影響対象は、すでに設定してるから)
瑠璃は、大きなクマのぬいぐるみを抱きしめながら応える。
魔術で造り出したそれは、特殊な効果を発生させる呪具だ。
膨大な魔力を消費するが、いざという時には大きな力になる。
(うむ。いざという時は、それでどうにかなるじゃろうが、それでも少し心許ないのう。武子、お前は瑠璃の傍に居てやれ)
(良いけど~。和花は、1人で良いの~?)
(攻撃と防御、両方のバランスはとれとるつもりじゃからな。そっちは、片方に偏っとるじゃろ)
(うん。守るより~、ぶん殴る方が好き~)
(素手じゃなく、魔術武具も使え。今の内に、生成しとけ)
(は~い。それじゃ~、天の武矛、創っとくね~)
武子は心の中で応えると、自らの魔術武具を召還した。
それは長大な矛だ。2メートル近い。それを慣れた様子で手に持っている。
(わしのレーヴァティンもそうじゃが、わしら全員、魔術武具の魔力消費が半端ないからの。今回は、周囲から魔力を集めたら、他の魔術師に影響が出かねんからのう。場合によっては、使い惜しみせず神与能力を使うぞ)
(は~い。分かったよ~)
(うん。そのつもり)
周囲には気付かれず、和花たちが不測の事態への用意をしてから、少し経った頃。
「新手ですね」
部隊の1人から魔物の発見連絡を受けたラングレーが、静かに言った。
陽色たちとは別行動で、異なる方向に向かって進んでいた名門魔術師の部隊は、魔物の一団と戦っていた。
「薙ぎ払え」
部隊の長であるラングレーの号令に従って、一斉に攻撃魔法が放たれる。
100を超える一斉射撃に、200mほど先で固まっていた魔物たちは吹っ飛ぶ。
体のいたる所が破壊された魔物たちは、しかしそれでも、魔術師たちに向かって欠けた体で向かって来る。
それを淡々と、魔術師たちは連続射撃で潰していった。
「おぞましいことです」
「そうかのう? わしには、健気に見えるがの」
ラングレーの言葉に、手持ち無沙汰な和花は返す。
「健気ですか? 随分と、独特な感性をお持ちで。勇者の皆さまは、全員そうなのですか?」
どこか含みのある問い掛けに、和花は肩をすくめるようにして返した。
「勝てないと分かっていても突き進む。愚かじゃが、素直じゃよ」
「虫の如き性分、というだけだと思いますがね」
「そうかのう? 魔物は、それほど単純ではないぞ。甘く見とると、足元をすくわれる」
「ははっ、ご心配なさらずに。貴方達から得た情報で、我々も学んでいます。なによりも、魔王に敗れて以来、その屈辱をすすぐための研鑚は詰んできたのです。それを形にする機会、無駄にはしません」
「そうか。じゃったら、少しはわしらにも、出番をくれんかのう?」
「大丈夫です。お手を煩わせることはありませんから。なにより勇者とはいえ、貴方がたのような美しい女性を矢面に立たせる訳には参りません」
「ほぅ……」
双方笑顔のまま、漂う空気は険悪だった。
協力する形で、ラングレー率いる名門魔術師の部隊に組み込まれた和花たちだったが、今のところ何も出来てはいない。
全ての決定はラングレーが行い、配下でもある名門魔術師が対処している。
(どうあっても自分の手下以外は、排除するつもりじゃな、こいつ)
苦々しい気持ちで、和花は心の中で呟く。
元より和花としても、魔術師の全てが自分たち勇者の事を快く思っているとは考えていない。
魔術師が倒せなかった魔王を倒した事で権威を奪われ、更にその後に進めた特許制度で権益の一部も奪われたのだ。
最近になって和解の動きを見せたとはいえ、そうそうわだかまりが解けるとは思ってはいない。
だから、それはいい。自分たち勇者を苦々しく思うなら、それで構わない。
けれどいま問題なのは、同じ魔術師同志でありながら、排除しようという動きを見せているからだ。
(なにかあったら、捨て駒にする気じゃな、こいつ)
ラングレーを見ながら、部隊の端に追いやられた魔術師の一団のことを考える。
わざと、魔物を発見しても何もさせていない。
そのせいで、かなりじれている。あの様子では、少々無謀でも功績を上げるためなら突っ込みかねない。
(そうなるように誘導しとるんじゃろうが。いやらしい奴じゃな)
(嫌いなタイプ? アレ)
和花がラングレーのことを苦々しく思っていると、心の中に声が聞こえてくる。
声には出さず思ったことを伝えられる念話の魔術で、瑠璃が呼び掛けてきたのだ。
ため息をつくように、和花は返す。
(嫌いじゃのう。ああいう、自分の為なら他人を使い潰しても良い、と思ってそうな奴はな)
(そうだね。私も、同じ気持ち)
(なんじゃ、お前もそう思っとるなら、わざわざ訊かんでも良かったじゃろうに)
(自分だけの気持ちだと、冷静に見えてないかもしれないから。むーこは、どう思う?)
(おんなじ~)
武子も念話に加わって、段々とかしましくなる。
(タイプじゃな~い。こっちの外見しか見てないし~)
(別に男としてのタイプを訊いとるわけじゃないんじゃが?)
(え~、でもそこ大事じゃな~い? こっちのこと、値踏みするみたいに見てるし~)
(うん、そうそう。特に、和花を見てる目、なんかやらしい)
(自分にとって使えるかどうか見てるんじゃろ)
(別に、自分のモノになる訳じゃないのにね)
(そうそう~。そういうことは、ま~ちゃん越えしてからでないと~)
(なんでそこで、マゲイアのヤツの名前が出て来るんじゃ)
(え~、だって~、ま~ちゃんは~、みんなのま~ちゃんだし~)
(ペットか、アヤツは)
(え~、違うよ~、私たちみんなの彼氏だよ~)
(……なんでそうなるんじゃ)
(さすがに2度目の生も喪女のまま生き続けるのは辛い)
(だよね~。前の人生は、生きて100年だったから、処女で死んでもい~や~とか思ってたけど~、もう私たち、寿命とかじゃ死ねないし~。永遠に処女のままなのはちょっと~)
(なんの話じゃなんのーっ!)
声には出せないので心の中で絶叫して、耳まで赤くしながら和花は話を戻す。
(そんなことよりっ! 今は被害を出さんようにどうするかを話すべきじゃろっ!)
(そうだね。まーくんいつ押し倒すかは、また今度話し合おう)
(そうだね~)
(せんで良い! それよりも、ラングレーの奴から離れとる魔術師の保護の方が大事じゃ。瑠璃が担当じゃが、1人で大丈夫か?)
(大丈夫。えんみくん27号の影響対象は、すでに設定してるから)
瑠璃は、大きなクマのぬいぐるみを抱きしめながら応える。
魔術で造り出したそれは、特殊な効果を発生させる呪具だ。
膨大な魔力を消費するが、いざという時には大きな力になる。
(うむ。いざという時は、それでどうにかなるじゃろうが、それでも少し心許ないのう。武子、お前は瑠璃の傍に居てやれ)
(良いけど~。和花は、1人で良いの~?)
(攻撃と防御、両方のバランスはとれとるつもりじゃからな。そっちは、片方に偏っとるじゃろ)
(うん。守るより~、ぶん殴る方が好き~)
(素手じゃなく、魔術武具も使え。今の内に、生成しとけ)
(は~い。それじゃ~、天の武矛、創っとくね~)
武子は心の中で応えると、自らの魔術武具を召還した。
それは長大な矛だ。2メートル近い。それを慣れた様子で手に持っている。
(わしのレーヴァティンもそうじゃが、わしら全員、魔術武具の魔力消費が半端ないからの。今回は、周囲から魔力を集めたら、他の魔術師に影響が出かねんからのう。場合によっては、使い惜しみせず神与能力を使うぞ)
(は~い。分かったよ~)
(うん。そのつもり)
周囲には気付かれず、和花たちが不測の事態への用意をしてから、少し経った頃。
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(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
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