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第15話
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「雫か、いや目が覚めちゃってな 」
「そう 」
雫はただそう一言返して、ザッザッと才華の隣の歩み寄り、夜空を見上げた。
無言だ。2人とも何もしゃべらずに、空を見上げている。
才華たちはご飯を食べよう! となってから動物を狩って、ご飯を食べた後睡魔が襲ってきたことと日が沈んできたこともあり、順番に寝て野営することのなったのだ。そして、今の順番は才華と美鈴が寝て、雫が起きているというものだったのだが、才華は夢で昔を見て起きてしまった。
そこに雫がどこかから帰ってきたことになる。どこに行っていたのかは考えなくても分かることだが、才華は無神経さと面白そうという考えでやはりというかやってしまう。
「なあ、もしかしてトイレ行ってたか? 」
「は、はぁ!? それを聞くの!? 」
「お花摘みにいてたのか? 」
「言い換えてもダメだからね! 意味同じだからね! 」
暗い中でもハッキリとわかるくらいに顔を赤くした雫は拳を才華に放つ。
その拳はアッパーカットを繰り出したときと同じくらいの速さを誇っているが、才華はそれをひょいっと避けた。
「一度見た攻撃は俺には通用しない 」
キリッとした顔で、才華はそう言う。
無駄に腹立つその行動だが、どうやらそうらしい。目を瞑っているにも関わらず、次々繰り出される雫の攻撃を避けているのだ。
雫は余裕綽々だぜと言わんだかりの才華を見て、無駄だと思ったのか手を止めた。
「やめやめ! はぁ、あんたを相手しているとこっちが疲れてくるわ」
手をヒラヒラと振ってため息を吐いた雫は再び空に視線を戻す。
「えー 面白くなってきたとこなのにつまんねぇーなー 」
「……ねえ才華。 私たち本当に異世界に来たんだね 」
雫は頭の後ろに手を組んでいた才華に話しかけた。その声はとても震えたもので、恐怖を孕んでいるように感じさせる。
「そうだな。来たな異世界に 」
「あんたは怖くは…… ないわね。ここはあんたにとって天国でしょ? 」
「そりゃあそうだろ。 ファンタジーを詰め込んだような世界に心が踊らないはずかがないしな 」
才華の弾んだ声を聞いて、雫は下を向く。顔に影ができてどんな表情を浮かべているのかわからないが、決していい顔ではないことは想像に難くない。
才華はそれを視界の端に入れて、なにを思ったのか、呟いた。「もしかして怖いのか? 」と。それは雫に向けて言ったものではないのだが、雫はビクンっ! と震えた。
「そうよ…… 怖いわよ。私たちのことなんて誰も知らない世界にいきなり放り出されて、空から落ちて、初めて生き物を殺してーー1人でいると震えが止まらなくなるの 私も誰にも知られずにあんな風に死んじゃうのかなって 」
「……」
才華は体を腕で抱いている雫を見て、目を泳がせていた。
なにをしたらいいのか、どんな言葉をかけたらいいのかわからないのだ。才華は怖いというものを感じたことは本当の意味でない。だから怖いと恐怖を感じている人にかける言葉を知らない。
それでもなんとなくこんな言葉をかければいいだろうというものがあるにはあるが、才華はそんな薄っぺらい言葉をかけるくらいならなにもしゃべらない方がマシだと思っているので、結果的に目を泳がせるしかないのだ。
「うう、どうしてこうなっちゃったのよ」
才華がそんな事をしているうちに雫の声が涙声になってきた。
だが才華はなにもできない。ただ、チラチラと視線を向けるだけだ。
キラキラと輝く、夜空の元すすり泣く雫の声とどこからか聞こえてくる虫の音だけが、あたりを支配していた。
---
「ねえ、才華……」
しばらく泣いていた雫は顔を上げて、才華に話しかけた。目は真っ赤に腫れていて、顔が酷いことになっている。それに雫は気づいていないようで、続ける。
「少しだけでいいから、胸を貸して 」
「は? っておい! 」
雫は才華の返事を聞く前に、抱きついた。才華は反射的に離そうとするが、雫はそれに対抗するように抱きつ力を強めて、ぴったりとくっつく。
やがて才華はひきはがす事を諦めたのか、雫の肩から手を離した。
「まあいいけどさ。 顔が酷いことになってるんだから、俺の服で拭くなよ 」
「うるさい 」
雫は顔を才華の胸に、グイグイと擦りつける。
「あ、おい! 服で涙を拭くなーー! 」
才華は雫から逃れようともがくが、雫は逃がさないと才華にしがみついた。
「きたねぇ! おい! 服持ってないんだから汚すんじゃねぇ! 」
「ふふふ」
「おまっ! 笑ってやがる このアマァァ……」
「服を女の子の涙で汚すなんて、男の勲章じゃない ありがたく受け取りなさい 」
「離れろぉぉ! 」
才華のその叫び声は静かな夜の草原によく響いた。
「そう 」
雫はただそう一言返して、ザッザッと才華の隣の歩み寄り、夜空を見上げた。
無言だ。2人とも何もしゃべらずに、空を見上げている。
才華たちはご飯を食べよう! となってから動物を狩って、ご飯を食べた後睡魔が襲ってきたことと日が沈んできたこともあり、順番に寝て野営することのなったのだ。そして、今の順番は才華と美鈴が寝て、雫が起きているというものだったのだが、才華は夢で昔を見て起きてしまった。
そこに雫がどこかから帰ってきたことになる。どこに行っていたのかは考えなくても分かることだが、才華は無神経さと面白そうという考えでやはりというかやってしまう。
「なあ、もしかしてトイレ行ってたか? 」
「は、はぁ!? それを聞くの!? 」
「お花摘みにいてたのか? 」
「言い換えてもダメだからね! 意味同じだからね! 」
暗い中でもハッキリとわかるくらいに顔を赤くした雫は拳を才華に放つ。
その拳はアッパーカットを繰り出したときと同じくらいの速さを誇っているが、才華はそれをひょいっと避けた。
「一度見た攻撃は俺には通用しない 」
キリッとした顔で、才華はそう言う。
無駄に腹立つその行動だが、どうやらそうらしい。目を瞑っているにも関わらず、次々繰り出される雫の攻撃を避けているのだ。
雫は余裕綽々だぜと言わんだかりの才華を見て、無駄だと思ったのか手を止めた。
「やめやめ! はぁ、あんたを相手しているとこっちが疲れてくるわ」
手をヒラヒラと振ってため息を吐いた雫は再び空に視線を戻す。
「えー 面白くなってきたとこなのにつまんねぇーなー 」
「……ねえ才華。 私たち本当に異世界に来たんだね 」
雫は頭の後ろに手を組んでいた才華に話しかけた。その声はとても震えたもので、恐怖を孕んでいるように感じさせる。
「そうだな。来たな異世界に 」
「あんたは怖くは…… ないわね。ここはあんたにとって天国でしょ? 」
「そりゃあそうだろ。 ファンタジーを詰め込んだような世界に心が踊らないはずかがないしな 」
才華の弾んだ声を聞いて、雫は下を向く。顔に影ができてどんな表情を浮かべているのかわからないが、決していい顔ではないことは想像に難くない。
才華はそれを視界の端に入れて、なにを思ったのか、呟いた。「もしかして怖いのか? 」と。それは雫に向けて言ったものではないのだが、雫はビクンっ! と震えた。
「そうよ…… 怖いわよ。私たちのことなんて誰も知らない世界にいきなり放り出されて、空から落ちて、初めて生き物を殺してーー1人でいると震えが止まらなくなるの 私も誰にも知られずにあんな風に死んじゃうのかなって 」
「……」
才華は体を腕で抱いている雫を見て、目を泳がせていた。
なにをしたらいいのか、どんな言葉をかけたらいいのかわからないのだ。才華は怖いというものを感じたことは本当の意味でない。だから怖いと恐怖を感じている人にかける言葉を知らない。
それでもなんとなくこんな言葉をかければいいだろうというものがあるにはあるが、才華はそんな薄っぺらい言葉をかけるくらいならなにもしゃべらない方がマシだと思っているので、結果的に目を泳がせるしかないのだ。
「うう、どうしてこうなっちゃったのよ」
才華がそんな事をしているうちに雫の声が涙声になってきた。
だが才華はなにもできない。ただ、チラチラと視線を向けるだけだ。
キラキラと輝く、夜空の元すすり泣く雫の声とどこからか聞こえてくる虫の音だけが、あたりを支配していた。
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「ねえ、才華……」
しばらく泣いていた雫は顔を上げて、才華に話しかけた。目は真っ赤に腫れていて、顔が酷いことになっている。それに雫は気づいていないようで、続ける。
「少しだけでいいから、胸を貸して 」
「は? っておい! 」
雫は才華の返事を聞く前に、抱きついた。才華は反射的に離そうとするが、雫はそれに対抗するように抱きつ力を強めて、ぴったりとくっつく。
やがて才華はひきはがす事を諦めたのか、雫の肩から手を離した。
「まあいいけどさ。 顔が酷いことになってるんだから、俺の服で拭くなよ 」
「うるさい 」
雫は顔を才華の胸に、グイグイと擦りつける。
「あ、おい! 服で涙を拭くなーー! 」
才華は雫から逃れようともがくが、雫は逃がさないと才華にしがみついた。
「きたねぇ! おい! 服持ってないんだから汚すんじゃねぇ! 」
「ふふふ」
「おまっ! 笑ってやがる このアマァァ……」
「服を女の子の涙で汚すなんて、男の勲章じゃない ありがたく受け取りなさい 」
「離れろぉぉ! 」
才華のその叫び声は静かな夜の草原によく響いた。
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