アンチヴレイブ~異世界に降り立った鬼才~

NTIO

文字の大きさ
14 / 15

第14話

しおりを挟む
ーー天才だ

ーー100年に1人の逸材が現れたぞ!

ーーこれで霧ヶ峰家も安泰だ!

 まだ幼い少年を囲んで、喜びを露わにする大人たち。その中心で少年は照れくさそうな顔を浮かべてはにかんでいた。少年の名前は霧ヶ峰 才華。才能が花の様に咲きますようにと名付けられた少年は僅か3歳にして桁外れた頭脳を発揮した。

 誰にも習うことなく、物の体積の求め方を身につけていたのだ。
 才華の両親はそれを気づいてIQテストを行ったところIQ230を記録した。とても人間の領域ではなかった。才華の両親はそのような子供が、お世辞にも優秀とは言えない自分たちから生まれてきたことに歓喜した。

 才華の望む物はなんでも用意し、体を壊せばありとあらゆる手を尽くして看病した。才華はそれにいつも笑顔で『ありがとうお母さん、お父さん』とお礼を言っていた。そのあまりにも可愛らしい笑顔に、自然と2人の顔も笑顔になって行った。

 しかし、そんな幸せな暖かい家庭は、長くは続かなかった。気づいてしまったのだ。才華のその才能がどれほど金を生み出すのかを。

 才華が7歳になった頃、才華は1つの発明をした。常識に囚われないその奇抜な発想は瞬く間に注目を受け、霧ヶ峰家に金が大量に流れ込んできた。
 子供である才華は受け取ることができないので、その金は必然的に両親に渡った。

 そこから壊れ始めた。
 父親は会社を辞め、才華が稼いだ金で毎日遊び周り、1日に5、600万を使うことはざらで、多い日には1000万を超えることがあった。
 母親は外に愛人を何人も作り、その愛人たちを住まわせるために豪邸をいくつも建てた。愛人達の生活費からなにから全て才華のお金で貢ぎ、家に居ることは少なくなって行った。

 もう2人の間に愛などというものは無くなって、夫婦として破綻していた。
 顔を合わせても会話はない。だがそんな2人でも共通の考えがあった。それは才華をただの金製造機と見ていたことだ。
 それを才華は頭の良さが災いして気づいていた。
 才華はゴテゴテのブランドもので固めた2人を1人家の中で眺めながら、暖かい家庭だったあの頃に思いを馳せる。

ーーどうしてこうなったんだろう?

ーーあの2人は本当はお父さんとお母さんの偽物なんじゃないか?

ーー僕を見て欲しい、僕にもう一度だけでいいから、愛しているといって欲しい

 だが、そんな少年の願いは叶えられることはとうとうなかった。両親ともに同時に不慮の事故で、あの世に旅たってしまったのだ。
 突然のその出来事は既にすれ切っていた才華の心をへし折るのに十分なものだった。

 才華の心は冷え切り、まるで砂漠のようになった。しかし、愛情という水を求めながら親戚を転々と回る才華に誰1人として、それを注ぐ者はいなかった。金の成る木それが親戚たちの才華に向ける目だった。

 そんなことが何年も続いているうちに才華はある人生の生き方を考えついた。
 『楽しいことだけをやろう それ以外は目に入れなくても記憶に入れなくてもいい』と。
 そこから才華は自分の記憶を遮断し、ただやりたいことだけを病的なまでにやるようになった。

 見たくないものにふたをするように

 渇きを潤すように

---

「……夢か」

 才華は目を開けてそう言った。目の前にメラメラと燃える炎を見ながら、うーんと伸びをして立ち上がる。空を見上げると星々が輝いて夜空を彩っていた。宝石箱のようなそれは才華の心を潤していく。

「綺麗だな~ これを見ると改めてここが異世界ってことが分かるぜ。」

 見たこともない星座、見たこともない大きな月のようなもの。全てここが異世界だと証明している。
 才華は目をつむり、手を広げて深呼吸をした。
 鼻から入ってくる清々しい風の香りを感じていると、才華に話しかけるものが現れた。

「才華? 起きてたの? 」
 
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

処理中です...