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第6話
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「ねえルークくん。ウパイザーくんがいなくなったの寂しい? 」
夜の帳が下りて冷たい隙間風に震えて毛布にくるまっていると隣で寝ていたクロエが話しかけてきた。
暗くてよく見えないが心配そうな顔をしているのが伺える。
どうやらクロエはルークがウパイザーがいなくなって寂しがっていると思っているようだ。
「いや全然」
「え!? そうなの!? 」
「当たり前だろ」
むしろなぜクロエがそんなに驚くのか聞きたいくらいだ。今朝のあの会話を見て俺が悲しむ要素がどこにあるというのだろうか。
体を起こして驚愕と顔に貼り付けているクロエに顔を向けた。
「ウパイザーは俺の肉を強奪しようとした挙句、泣けば勝ちみたいなクソ戦法を仕掛けてきたんだ。どこに悲しむ要素がある」
「そうなんだ、ルークくんは強いね。クロエは寂しいよ……」
え、嘘っ!? ウパイザーがいなくなったことをそんなにも……と思ったが処分対象になった3人の中にクロエと仲がよかった子の名前があったことを思い出す。
確かリリーって名前だったはずだ。
よくリリーを合わせた複数名でおままごとしていた気がする。俺は犬役をやらされそうになるので即逃げていたが、そうだったか。
「リリーのことか? 」
「うん……」
問いかけに俯き、風に流されそうな声で答えた。
クロエに取ってリリーはかけがえのない友達だったんだろう。震えているクロエを起き上がり抱きしめると、抱きしめ返してきた。
2人の間には言葉はなく、すすり泣く声だけが部屋を満たしていた。
ルークはクロエの背中をさすりながら頭を撫でていると、目を腫らしたクロエが顔を上げる。
「ルークくん、リリーちゃんがいなくて寂しいよぉ~ 」
「……大丈夫だ。人と人の縁は不思議なものでひょっとした時に会えるものだ、だからいつかきっと会える」
そんなクロエが見ていられなくなったルークは嘘をついた。もう、リリーには2度と会えないことを知っておきながらそれを言うとはとんだ嘘つきだ。
でも嘘つきになるだけでクロエの苦しみが減るなら安い買い物だろう。
「よくわからないけど、そういうものなの? 」
「ああ、そういうものだ。クロエはリリーと会った時に泣き虫のままでいるつもりか? 」
「っ!? 違うもんっ! 泣き虫じゃないもんっ! 」
泣き虫と言われて顔を赤くし怒るクロエは自分と違ってとても純粋な子だと、思わず笑みが出てきてしまう。
そんなルークを見て、自分を笑っていると思ったのかクロエは更に怒りを加速させポコポコと叩く。
「笑うなっ! お姉ちゃんを笑うなんて悪い弟にはお仕置きだ! それっ! 」
「あっ! ちょやめっ! 」
「こちょこちょこちょ」
叩いても笑顔でそれを受けるルークに効かないと判断したクロエはすぐさま攻撃方法を変更し、くすぐりを始めた。
その結果、効果は覿面なようで笑い転げるルーク。
大声で笑っている所を見るとくすぐりには弱いらしい。
2人がそんなことを続けていると扉がバタンと勢いよく開けられた。
「煩いわよ! 静かにしなさいっ! 」
どうやらうるさくし過ぎたようで、職員の女性はご立腹だ。この後正座を命じられた2人がどんな末路を辿ったのか言うまでもない。
ランク分けから数日経ち、いなくなった3名が残した悲しみの傷跡が癒えてきた頃ルーク達は孤児院のとある一室に集められていた。
まだなんでここに集められたのか説明されていないが、ルークには予想がついていたので
かなり落ち着いている。
だからかそわそわしている子供の中で異質で目立っていた。
そんなルークに周りと同じくそわそわしていたクロエが話しかけた。
「ルークくん、なんでここに集まりなさいって言われたんだろうね」
「多分たけど、行く学校を発表するんだと思う」
「そうなの? 」
まさか答えが帰ってくるとは思っていなかったのか、クロエは目を丸くする。
ルークはそんなクロエがおかしかったのかくすりと笑ってから続けた。
「多分な。学校の寮に移動する時期がいつもこのくらいの時期だし、7歳だけを集めているから確実だと思うけど」
それにランク分けも終わったしな、と言葉には出さずそう付け加えた。
前にも言った通りランク別で通う学校は変わってくる。
盗み聞きした話だとSランクからAランクがイージス魔法学校、BランクからCランクがアトス魔法学校、ポルトス魔法学校、アラミス魔法学校、Dランクが沢山ある魔法学校の空いている所にランダムに入るらしい。
イージス魔法学校はこの孤児院から出た者は居ないらしく、出たらいいねなどといったことを話していたのを記憶している。
俺はBランクからCランクが通う3つの学校のうちの1つに通いたいし、実際そうなるだろう。
あのランク分けの時にいた白衣の女性は事あるごとに凄いと言っていた事と、今まで孤児院からイージス魔法学校行きが出てないことを考えれば中間のそこになるのは必然だ。
そして、クロエが凄いって褒められたことを考えるとクロエもこの3つのどれかになるに違いない。
幸いこの3つの学校はかなり近い所にあるらしいし、運が良ければ同じ学校になるかもしれない。
これ1択だ。
「へー やっぱりルークくんって凄いねー。頭いいー」
よしよしと頭を撫でてくるクロエ。幼女にそう言われて褒められるとバカにされてると思うのはきっと俺の心が汚れているからだろう。
クロエの眩しい笑顔で浄化するとしよう。
ルークがそんなバカなことをやっていると、部屋に書類を持った職員が入ってきた。とうとう発表の時らしい。
「はーいみんなこっち見てーこれから4月から通う学校を発表します」
それを聞いて集められていた子供たちがざわつき始めた。職員は手を打って落ち着かせている。しかしなかなか落ち着かないな、まあ楽しみなのは分かるがクロエを見習って大人しく……してなかった。
クロエは目をキラキラ光らせ、せわしなく手を開いたり閉じたりしている。予め教えていたというのに……いやだからか。
早めに知っていた分、ワクワクを貯める時間があったのだろう。
はぁ、まあ可愛いからいいけど。
「静かにしないと発表しませんよ」
一向に落ち着かない子供達にしびれを切らしたのか、職員は最終手段を行使した。するとピタリと静まり帰る。
こういう所の行動の早さは尊敬すべき点だ。
「はい、静かになったので発表します。まずイシリア魔法学校にゲイザーくん、エミリアくん、ティミシアちゃん……」
次々と魔法学校に通う振り分けが発表される中、ルークは頬杖をついて窓から見える外を眺めていた。
今呼ばれているのはDランクの学校で呼ばれるとは思っていなかったのと、もし呼ばれても反応できる自信があったからだ。
憎々しいまでの青空に、そういえば生まれてこのかた外に出たことがないことに気づいた。遊ぶのはいつも壁に囲まれた孤児院の敷地の中で、決められた場所でしか生きていないことになる。
なんだかそれが箱の中に囚われた気分になってとても嫌になる。
新しい環境や新鮮な体験をしていたことで今の今まで気づかなかった自分が恨めしい。
いや、もしかしたらこれに気付かないようにされていたのかもしれない。
職員達は壁の外の世界のことは学校しか教えてこなかった。
極端に情報を遮断、それに加えて外に意識が向かないよう意識誘導、か。
なるほど、これに加えて俺たちが子供ということで完璧になるってことか。
なんのためにこんなことをやっているのか知らないが、流石としか言えないな。
はぁ、とため息を吐きそれにしてもと考える。
それにしても学校に行ったらいつでも外に出ることはできるのだろうか? この世界がどのような所なのかまだ俺は全然知らない。
それがいつか決定的ななにかになる気がしてないらないんだ。
ああ、外に出てみたいな。
そんなことをルークが思っているとクロエが体を揺さぶった。
「ねえルークくん」
「ん? どうした? 」
「全然クロエ呼ばれないよ? ルークくんも」
どうやら呼ばれないことに痺れを切らしたようだ。そりゃあまあ、Dランクの学校は多いからな、長くなるだろう。
不満そうな顔をしているクロエに苦笑いを浮かべながら答える。
「そりゃあ長くもなるさ。因みに今どの学校が呼ばれている? 」
「えーっとアラミス魔法学校が呼ばれ終わったよ」
ほーそれはよかった。つまり俺とクロエはCランク以上確実という訳だな。しかもアラミス魔法学校が呼ばれて終わったという事はイージス魔法学校は確率的にあり得ないことを考えれば二分の一で同じ学校になるという事だ。
うんうん、とても運がいいぞー最高だ。
「次はイージス魔法学校、ルークくん、クロエちゃん」
……は?
よっしゃーと心の中でガッツポーズをかましている所に衝撃的な言葉が耳を掠めた。今なんと仰いました? イージス魔法学校ですと?
ルークが確認のために職員に目を向けるとどこか上気していた。それを見るに本当の事のようだ。
「やったぁ! ルークくんと一緒の学校だー! 」
茫然自失としているとクロエが抱きついてきた。抱きついたまま嬉しそうにピョンピョンと跳ねる姿に周りで見ていた職員たちが頬を緩ませている。
ルーク自身も本来であればそうなっているところだったが、そんな余裕はなかった。
「あ、あのすいません。本当に僕たちはイージス魔法学校なんですか? 」
「そうですよっ! あ……おっほん、そうですあなた達はイージス魔法学校に通う事になりました」
ルークの問いかけに興奮気味で答えた職員は途中でセキ払いで誤魔化した後、淡々とした口調で答えた。まるっきり誤魔化せていないがそれはともかく、やはり本当の事のようだ。
何故だ? という言葉が出かけてランク分けの時の光景が頭をよぎる。「パーフェクト」と呼ばれていたあれは実はそのままの意味でパーフェクトなのではないか?
実際プリンターから出てきた紙を見るたびに凄いやら満点やらを連呼していた気がする。
……そういうことか。そしてクロエも凄いと褒められたと言っていた。軒並み高水準だったのだろう。もう乾いた笑いしか出てこない。
「ハハハ……」
「やったー! ルークくんといっしょー! 」
孤児院にルークの乾いた笑い声とクロエの喜びの声が響き渡る。
こうして2人はイージス魔法学校に通う事になったのだった。
夜の帳が下りて冷たい隙間風に震えて毛布にくるまっていると隣で寝ていたクロエが話しかけてきた。
暗くてよく見えないが心配そうな顔をしているのが伺える。
どうやらクロエはルークがウパイザーがいなくなって寂しがっていると思っているようだ。
「いや全然」
「え!? そうなの!? 」
「当たり前だろ」
むしろなぜクロエがそんなに驚くのか聞きたいくらいだ。今朝のあの会話を見て俺が悲しむ要素がどこにあるというのだろうか。
体を起こして驚愕と顔に貼り付けているクロエに顔を向けた。
「ウパイザーは俺の肉を強奪しようとした挙句、泣けば勝ちみたいなクソ戦法を仕掛けてきたんだ。どこに悲しむ要素がある」
「そうなんだ、ルークくんは強いね。クロエは寂しいよ……」
え、嘘っ!? ウパイザーがいなくなったことをそんなにも……と思ったが処分対象になった3人の中にクロエと仲がよかった子の名前があったことを思い出す。
確かリリーって名前だったはずだ。
よくリリーを合わせた複数名でおままごとしていた気がする。俺は犬役をやらされそうになるので即逃げていたが、そうだったか。
「リリーのことか? 」
「うん……」
問いかけに俯き、風に流されそうな声で答えた。
クロエに取ってリリーはかけがえのない友達だったんだろう。震えているクロエを起き上がり抱きしめると、抱きしめ返してきた。
2人の間には言葉はなく、すすり泣く声だけが部屋を満たしていた。
ルークはクロエの背中をさすりながら頭を撫でていると、目を腫らしたクロエが顔を上げる。
「ルークくん、リリーちゃんがいなくて寂しいよぉ~ 」
「……大丈夫だ。人と人の縁は不思議なものでひょっとした時に会えるものだ、だからいつかきっと会える」
そんなクロエが見ていられなくなったルークは嘘をついた。もう、リリーには2度と会えないことを知っておきながらそれを言うとはとんだ嘘つきだ。
でも嘘つきになるだけでクロエの苦しみが減るなら安い買い物だろう。
「よくわからないけど、そういうものなの? 」
「ああ、そういうものだ。クロエはリリーと会った時に泣き虫のままでいるつもりか? 」
「っ!? 違うもんっ! 泣き虫じゃないもんっ! 」
泣き虫と言われて顔を赤くし怒るクロエは自分と違ってとても純粋な子だと、思わず笑みが出てきてしまう。
そんなルークを見て、自分を笑っていると思ったのかクロエは更に怒りを加速させポコポコと叩く。
「笑うなっ! お姉ちゃんを笑うなんて悪い弟にはお仕置きだ! それっ! 」
「あっ! ちょやめっ! 」
「こちょこちょこちょ」
叩いても笑顔でそれを受けるルークに効かないと判断したクロエはすぐさま攻撃方法を変更し、くすぐりを始めた。
その結果、効果は覿面なようで笑い転げるルーク。
大声で笑っている所を見るとくすぐりには弱いらしい。
2人がそんなことを続けていると扉がバタンと勢いよく開けられた。
「煩いわよ! 静かにしなさいっ! 」
どうやらうるさくし過ぎたようで、職員の女性はご立腹だ。この後正座を命じられた2人がどんな末路を辿ったのか言うまでもない。
ランク分けから数日経ち、いなくなった3名が残した悲しみの傷跡が癒えてきた頃ルーク達は孤児院のとある一室に集められていた。
まだなんでここに集められたのか説明されていないが、ルークには予想がついていたので
かなり落ち着いている。
だからかそわそわしている子供の中で異質で目立っていた。
そんなルークに周りと同じくそわそわしていたクロエが話しかけた。
「ルークくん、なんでここに集まりなさいって言われたんだろうね」
「多分たけど、行く学校を発表するんだと思う」
「そうなの? 」
まさか答えが帰ってくるとは思っていなかったのか、クロエは目を丸くする。
ルークはそんなクロエがおかしかったのかくすりと笑ってから続けた。
「多分な。学校の寮に移動する時期がいつもこのくらいの時期だし、7歳だけを集めているから確実だと思うけど」
それにランク分けも終わったしな、と言葉には出さずそう付け加えた。
前にも言った通りランク別で通う学校は変わってくる。
盗み聞きした話だとSランクからAランクがイージス魔法学校、BランクからCランクがアトス魔法学校、ポルトス魔法学校、アラミス魔法学校、Dランクが沢山ある魔法学校の空いている所にランダムに入るらしい。
イージス魔法学校はこの孤児院から出た者は居ないらしく、出たらいいねなどといったことを話していたのを記憶している。
俺はBランクからCランクが通う3つの学校のうちの1つに通いたいし、実際そうなるだろう。
あのランク分けの時にいた白衣の女性は事あるごとに凄いと言っていた事と、今まで孤児院からイージス魔法学校行きが出てないことを考えれば中間のそこになるのは必然だ。
そして、クロエが凄いって褒められたことを考えるとクロエもこの3つのどれかになるに違いない。
幸いこの3つの学校はかなり近い所にあるらしいし、運が良ければ同じ学校になるかもしれない。
これ1択だ。
「へー やっぱりルークくんって凄いねー。頭いいー」
よしよしと頭を撫でてくるクロエ。幼女にそう言われて褒められるとバカにされてると思うのはきっと俺の心が汚れているからだろう。
クロエの眩しい笑顔で浄化するとしよう。
ルークがそんなバカなことをやっていると、部屋に書類を持った職員が入ってきた。とうとう発表の時らしい。
「はーいみんなこっち見てーこれから4月から通う学校を発表します」
それを聞いて集められていた子供たちがざわつき始めた。職員は手を打って落ち着かせている。しかしなかなか落ち着かないな、まあ楽しみなのは分かるがクロエを見習って大人しく……してなかった。
クロエは目をキラキラ光らせ、せわしなく手を開いたり閉じたりしている。予め教えていたというのに……いやだからか。
早めに知っていた分、ワクワクを貯める時間があったのだろう。
はぁ、まあ可愛いからいいけど。
「静かにしないと発表しませんよ」
一向に落ち着かない子供達にしびれを切らしたのか、職員は最終手段を行使した。するとピタリと静まり帰る。
こういう所の行動の早さは尊敬すべき点だ。
「はい、静かになったので発表します。まずイシリア魔法学校にゲイザーくん、エミリアくん、ティミシアちゃん……」
次々と魔法学校に通う振り分けが発表される中、ルークは頬杖をついて窓から見える外を眺めていた。
今呼ばれているのはDランクの学校で呼ばれるとは思っていなかったのと、もし呼ばれても反応できる自信があったからだ。
憎々しいまでの青空に、そういえば生まれてこのかた外に出たことがないことに気づいた。遊ぶのはいつも壁に囲まれた孤児院の敷地の中で、決められた場所でしか生きていないことになる。
なんだかそれが箱の中に囚われた気分になってとても嫌になる。
新しい環境や新鮮な体験をしていたことで今の今まで気づかなかった自分が恨めしい。
いや、もしかしたらこれに気付かないようにされていたのかもしれない。
職員達は壁の外の世界のことは学校しか教えてこなかった。
極端に情報を遮断、それに加えて外に意識が向かないよう意識誘導、か。
なるほど、これに加えて俺たちが子供ということで完璧になるってことか。
なんのためにこんなことをやっているのか知らないが、流石としか言えないな。
はぁ、とため息を吐きそれにしてもと考える。
それにしても学校に行ったらいつでも外に出ることはできるのだろうか? この世界がどのような所なのかまだ俺は全然知らない。
それがいつか決定的ななにかになる気がしてないらないんだ。
ああ、外に出てみたいな。
そんなことをルークが思っているとクロエが体を揺さぶった。
「ねえルークくん」
「ん? どうした? 」
「全然クロエ呼ばれないよ? ルークくんも」
どうやら呼ばれないことに痺れを切らしたようだ。そりゃあまあ、Dランクの学校は多いからな、長くなるだろう。
不満そうな顔をしているクロエに苦笑いを浮かべながら答える。
「そりゃあ長くもなるさ。因みに今どの学校が呼ばれている? 」
「えーっとアラミス魔法学校が呼ばれ終わったよ」
ほーそれはよかった。つまり俺とクロエはCランク以上確実という訳だな。しかもアラミス魔法学校が呼ばれて終わったという事はイージス魔法学校は確率的にあり得ないことを考えれば二分の一で同じ学校になるという事だ。
うんうん、とても運がいいぞー最高だ。
「次はイージス魔法学校、ルークくん、クロエちゃん」
……は?
よっしゃーと心の中でガッツポーズをかましている所に衝撃的な言葉が耳を掠めた。今なんと仰いました? イージス魔法学校ですと?
ルークが確認のために職員に目を向けるとどこか上気していた。それを見るに本当の事のようだ。
「やったぁ! ルークくんと一緒の学校だー! 」
茫然自失としているとクロエが抱きついてきた。抱きついたまま嬉しそうにピョンピョンと跳ねる姿に周りで見ていた職員たちが頬を緩ませている。
ルーク自身も本来であればそうなっているところだったが、そんな余裕はなかった。
「あ、あのすいません。本当に僕たちはイージス魔法学校なんですか? 」
「そうですよっ! あ……おっほん、そうですあなた達はイージス魔法学校に通う事になりました」
ルークの問いかけに興奮気味で答えた職員は途中でセキ払いで誤魔化した後、淡々とした口調で答えた。まるっきり誤魔化せていないがそれはともかく、やはり本当の事のようだ。
何故だ? という言葉が出かけてランク分けの時の光景が頭をよぎる。「パーフェクト」と呼ばれていたあれは実はそのままの意味でパーフェクトなのではないか?
実際プリンターから出てきた紙を見るたびに凄いやら満点やらを連呼していた気がする。
……そういうことか。そしてクロエも凄いと褒められたと言っていた。軒並み高水準だったのだろう。もう乾いた笑いしか出てこない。
「ハハハ……」
「やったー! ルークくんといっしょー! 」
孤児院にルークの乾いた笑い声とクロエの喜びの声が響き渡る。
こうして2人はイージス魔法学校に通う事になったのだった。
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