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黒龍帝VS混成部隊③
しおりを挟む「血よ! 血よ! 血よ! 妾は夜の王 ヴァンパイヤ! 血は全て妾の元に集い、糧となる。今宵もまた血の宴を開くとしよう。いでよ! ダーインスレイブ! 」
すると魔法陣が一層光り輝き、その魔法陣から這い出てくる様に真っ赤な粘着質の液体が出てきた。その液体はルオスの体に纏わりつき、その形状を忙しなく変えていく。そして、赤く輝く鎧の様な形状になって止まった。手には幅が広い、鍔に紅宝石のようなものが嵌め込まれている剣を握っている。
その見た目はさながら、紅い戦女神。ブラッディプリンセスという名に相応しい風貌だ。あまりに神々しく、禍々しいそんなルオスに戦闘中だというのにも関わらず、混成部隊の面々は目を奪われる。あれがブラッディプリンセスかと、あれが7魔剣のダーインスレイブかと、流石第第4階位と。
それは恭介も同じだった。恭介は黒炎に包まれながら、ルオスを見て心の中で呟く。
(すごい‥‥。あれが危険な物だと直感が告げているというのに、目が離せない。1秒でも長く見ていたいと思ってしまう。なんなんだこれは。あの吸血鬼を見てると胸が苦しくなってくる。目が合わせられん。顔が熱い。一体どうしたっていうんだ俺は、こんな事人生で一度も起こった事ないぞ。もしやこれは‥‥あいつの攻撃か!? )
恭介は胸を抑えながら、視線を下に逸らした。本人はこの症状が一体なんなのか分かっていない。魅了の魔眼の効果、あるいはあの赤い鎧と剣の効果と推測している。だが、そうではないのだ。魅了の魔眼の効果でも、剣の効果でもないのは明らか。では何か、それは‥‥恋。
そう恋だ。初恋と言って良いだろう。恭介はこれまで彼女欲しいとか思ったり、あの人美人だなと思った事はあっても、特定の人物を好きになった事はない。それが物心つく頃まで遡ってそうなのはちょっとおかしいが、それはともかく、恭介はルオスに恋をした。
ここだけ聞けば、初恋少年の微笑ましい恋話になるのだが、状況が状況だ。戦闘中、しかも相手が殺しに来ている。正気の沙汰ではない。だが、恭介の黒龍としての血がそうさせるのか、強者に惹かれる性質を持っている。そして、目の前には明らかに強いと分かる人物、しかもとびきりの美人。これは恋をしても仕方がない、と言えなくもないかもしれない。
恭介が動ける様になった体で、胸を抑え息を荒らげているとルオスが剣をスーッと撫でながら笑い声をあげる。
「フフフ、フフフッ! そうかお主も黒龍帝の血が吸いたいか。良いじゃろう。今すぐに吸わせてやるっ! 」
ルオスはそう言ってから、恭介へと赤い線を引いて一拍よりも早く詰め寄り、剣を振るった。恭介はそれを体を反らす事で躱す。シュンッ! と目の前を剣が横切って行くのを見送って恭介は声を荒らげる。
「クソッ! 何しやがった! こ、この吸血鬼がっ!! 」
「何を言っているのか分からんのう。ほれ、避けないと死ぬぞ? 」
ルオスは振り切った剣を構え直し、恭介の腹目掛けて振り下ろす。恭介はそれに対して、手で横にそらす事で対応した。そして、体勢を崩したルオスへと尻尾で足払いを掛ける。ブオンッ! という音を響かせ振るわれた尻尾は見事にルオスの足元を掬った。
恭介は拳を握りしめ、体が宙に浮いているルオスへと突き出す。しかし、拳はルオスに当たる事はなく空を切った。ルオスが地面に手を付き、恭介の拳が届く前に飛びのいたのだ。鎧を纏っているとは思えない身軽さだが、それはともかく、恭介はズササーっと地面を擦って着地したルオスに追い打ちを掛ける。
「桐谷流 体術 三の型 龍王跋扈! 」
ドンッ! と強く地面を蹴り、ルオスへと詰め寄る。がしかし、その恭介の攻撃を阻む者が剣を構えているルオスの前に飛び出てきた。ガウェインだ。ガウェインは緑色に輝く大剣を真横に振りかぶり、腰を落とす。
「某を忘れてもらっては困るのである! 」
「邪魔だ、どけ。桐谷流 体術 二の型 幻龍 」
恭介は体に黒炎を纏いながら、ボソッとガウェインに聞こえない様に呟き、拳を振るう。ガウェインはそれを大剣で受け流した。恭介の拳は大剣を滑るように後ろへと受け流され、体勢を少し崩されてしまう。そしてガウェインは体勢を崩した恭介に体当たりをして、体勢を立て直すことが出来ないまでに崩した。
「クッ! マズイッ! 」
「甘いのである! ここで散るがいい黒龍帝! 」
ガウェインは驚愕の表情を浮かべた恭介に少し違和感を感じながらも、大剣を横に強くなぎ払った。しかし大剣が恭介に触れた瞬間、恭介がまるで霧のように消えた。
「なんであるか! 消えたである! 」
「どこに行ったのじゃ。」
「どこに行った! というよりどうやって消えた! 」
「突然霧のように消えたわ! 」
大剣を振り切りったガウェインは正眼に構え直し、周りの戸惑いの声を聞きながら辺りの気配を探る。だがしかし、全くもって気配がない。いや、あるにはあるのだが、辺りに散るように薄く広がって分からないのだ。それでは気配がないも同じ。
「どこに行ったのである。確かに某の剣が当たるまでは、そこにいたのである。」
ガウェインはカチャカチャと音立てて、辺りを見渡すがどこにも恭介の姿はない。ガウェインと同じく恭介の姿を探して、首を回している混成部隊の姿しかないのだ。ジリジリと嫌な予感が、混成部隊の中に立ち込める。その為か自然と一箇所に集まり、防御を固める陣形になった。
だが、それでもシルバー以上で構成されているからなのか、しっかりと中心に攻撃の要、魔法使いを置いているのは流石と言えるだろう。そんな、誰1人たりとも突破すること叶わない陣形の最前列にいたガウェインとルオスの背中を何者かが突いた。
「こっちだよこっちこっち。桐谷流 二の型 幻龍のお味はいかがかな? 吸血鬼さんに首無しさん。」
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