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悪役令嬢の可愛い婚約者
3 悪役令嬢ですが、婚約者母(美人)とは戯れたい
しおりを挟むガタンゴトンガタンゴトン
小石を踏むたびに座席が揺れる。
外をぼーっと眺めながら数日前のことを思い出す。
——どうしてこうなってしまったのか………
確かに嫌ではないと言ったが、トントン拍子に話が進み、お互いの両親の合意のもと婚約が決まった。
せっかく婚約を回避するチャンスだったのに、情けなくも幼い為か中性的な容姿のルカの可愛さに負け
折れてしまった自分を恨めしく思う。
——ルカの幼い頃ってあんなに可愛かったなんて……
銀色の少し長めのサラサラした髪に青紫色の大きな瞳。少しプニプニした柔らかそうな白い肌。
ゲームでは学園に入学した時からゲームが始まる為、エリック同様12歳からのルカしか私は知らなかった。
——あんなに可愛いのにゆくゆくは男らしくなっていくのね~
まあ、学園に入学して、
あの!あの!可愛いヒロインと結ばれれば婚約破棄になるわけだし、今は気楽にいきますか!
「リリアンヌ…
リリアンヌが嫌ならお父様が断ってもいいんだぞ」
兄様といいお父様といい………
甘すぎる……
世の中の貴族の令嬢の親は、自分の爵位より高い爵位の家に嫁がせたくないのか?
「しんぱいしすぎですおとうさま。
わたしはだいじょうぶです」
お父様が若干しょんぼりする。
という訳で、
今日はルカのご両親にご挨拶のため、お父様とノルマンディー家に向かっている途中だった。
ノルマンディー領はアルマニャック領に隣接しており、自然豊かで人口もかなり多く、中心部に向かうほど賑やかになっていった。交通網も整備され、簡易的な屋台がいくつも並び買い物をしている領民の顔は明るく生き生きとしていた。
ノルマンディー領は素晴らしい領主が統治しているのだと、最近私についた家庭教師の先生から教えてもらった。
ヒヒーンと馬が鳴いたかと思うと馬車は停止した。
「着いたぞ、リリアンヌ」
馬車のドアが開く。
「わぁ~きれーい」
私は思わず口から言葉がもれていた。
そこには、色とりどりの花が咲き、蝶が舞っている庭におとぎ話に出てくるような立派なお屋敷が立っていた。
「リリィ!」
と声がしたかと思うと、ルカが小走りで駆け寄ってきた。
ルカに続きノルマンディー夫妻がお屋敷から出てきた。
「ルカ、あまり急いでは危なくてよ……ごほっごほっ」
「アニエス、お前は休んでいた方がいい」
「大丈夫よ、あなた。今日はいつもより調子がいいもの
あら、あなたがリリアンヌちゃんね。初めまして。
私はルカの母のアニエスです。
今日は遠いところ、ようこそおいでくださいました」
アニエス様は線がとても細く、まるで透けるような白い肌にふんわりと横に結ばれた長い髪、優しげな眼差し。
そして、儚い雰囲気を纏ったとても美しい女性だった。
——風邪気味なのかな?
と思いつつも美しい女性を前に少し高揚した。
「ほんじつはおまねきいただきありがとうございます。
わたくしはリリアンヌ・アルマニャックともうします」
あざとくも失礼のないようにご挨拶をした。
「まあ、可愛いわ。
ルカが、婚約を申し込んだと聞いたけれどこんなに可愛い子を連れてくるなんて———。
お会いできて私とても嬉し————
「わたくしもアニエスさまのようなとてもうつくしいかたにおあいできてこうえいです!!!!!」
食い気味に言葉が発せられる。
「まあ、ありがとう。
どうぞ、中にお入りになっ……ごほっ」
「アニエス、もう休んだ方がいい。
すまないが、中に入って休んでいてくれるかい?」
公爵様が屋敷の中に招いてくれ、アニエス様を支えながら奥の部屋に向かって行った。
——アニエス様、大丈夫かな……
それにしても、ルカにあんなに素敵なお母様がいたとは……
ゲームでは出てこなかっ…………あっ
確かルカのお母様はゲームが始まる頃には亡くなっていた。
私はゲームでのルカの設定を思い出す。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ルカ・ノルマンディー
ノルマンディー公爵家の嫡子であり、容姿端麗、頭脳明晰、
運動神経抜群で乙女ゲームの攻略対象の一人。
幼い頃に幼馴染みのリリアンヌの顔に傷を負わせてしまい、
罪悪感と責任感からリリアンヌと婚約することを決意。
また、5歳の誕生日の直後に母が風邪をこじらせ亡くなってしまう。
この事件と母の死を引きずり女性は儚く脆いと思い込み、
リリアンヌ以外の女性を近づけず突き放し続けていたが
主人公のヒロインと出会い、ルカの心の傷が癒えていくうちに主人公に恋心が芽生える。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
——5歳って後2年もない……
「ルカさま、アニエスさまはごびょうきですの?」
「お母さまはもともと体がよわいんだ。ぼくを産んでからさらに悪くなってるみたいで……ぼくが、いけないんだ……」
「そんなことありませんわ!!
アニエスさまはルカさまがうまれてきてくれてとてもうれしいにきまってます!!
さきほどもあたたかい目でみまもってましたもの!」
「そうかな……そうだといいな。」
しゅんとしてしまったルカを慰さめる。
「それにもしかしたらこれからよくなっていくかもしれませんし!」
「お医者さまもなぜお母さまがずっとたいちょうをくずしているかもわからないみたいだし……魔法もきかないんだ」
——うーーーーーん。あの様子だと……
「アニエスさまはどのようなおしょくじをされていますの?
それとふだんからおさんぽなどはしてますか?」
「お母さまは少食で好ききらいもあるからパンとスープくらいしか食べないんだ……。
それにいつもおへやにいてあみ物をしたり本を読んだりしているから
おさんぽとかはしてないかな……今日はリリィが来るから張り切っていたけど……」
——アニエス様体の線が細くて筋肉はなさそうだったし、少食で偏った食生活ってことはやっぱり、これって栄養不足と体力不足だよね……
だとしたら今から食事療法や体力作りをすれば風邪で命を亡くすなんてことはなくなるかもしれない!
——アニエス様を死なせたり絶対しないんだから!!
「ルカさま!!アニエスさまをげんきにしましょう!!」
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