悪役令嬢ですが、ヒロインを愛でたい

唯野ましろ

文字の大きさ
12 / 14
悪役令嬢のシスコンすぎる兄

11 悪役令嬢の私(妹)ですが、兄と可愛い妹の話を聞きたい

しおりを挟む

 「他国との取引ですか??」


 「そうだよ。隣の国エイタリーの王子がお煎餅を気に入ったようでね?
 是非買いたいと言ってきたのだ。あとお煎餅を作ったものにも話が聞きたいとね」

 ——まさか…………そんなにお煎餅が広まっているとは…………

 エイタリー国と私たちの住んでいるセイランブ国は友好な関係を築いている。
 国の特徴としてはエイタリー国は魔法に優れ、セイランブ国は武道に優れている。
 
 異世界といえば魔法。この世界では貴族、それも王族に近い者ほど魔法の力が強い。平民でも稀に適性がある者もいるが多くはない。私はルカの魔法を見て以来、この世界で魔法を拝める機会などなかった。
 行ってみたい…………。でも、王子に会うなど…………。
 エイタリー国の王子といえば第三王子が攻略対象だったはず…………。鉢合わせたくはない…………。
 

 「えー何聞かれるんでしょう…………。根掘り葉掘り聞かれなんてしたら…………」


 「大丈夫だ!兄様が守ってみせる!!」

 やる気満々な兄を流し、ふとマリーが魔法の本を読んでいることを思い出す。
 この年の子供だったら魔法に憧れていてもおかしくはない。
 魔法の国に行くのならマリーも連れて行ってあげたい。

 「マリーは!?マリーももちろん連れて行っていいですわよね!?


 「もちろん!マリーも人数に入っているよ」


 「ですってマリー!」

 私はマリーに向かい明るく呼びかけたが、マリーはボーっと兄の方を見ていた。


 「…………」


 「マリー?」


 「え?あ?どこに行くんですか?」


 「お隣のエイタリー国よ!!魔法の国の!!」



 「えーー私まで連れて行っていただけるんですか??
 魔法の国なんて楽しみです!!早速準備してきます!!
 それと一回村に帰って母に伝えてきます!!」

 
 「お母様にくれぐれもよろしくお伝えくださいね!


 「はい!行ってきます!!失礼いたします!!」


 マリーはそう言うと、部屋から大急ぎで出て行った。
 マリーが出て行った方向から物が落ちる音とマリーの謝罪の言葉が聞こえて来た。
 

 ——マリーあんなに慌てて何かあったのかしら…………?
 ああ、きっと魔法が見れるので舞い上がっているのね…………可愛い。
 
 


 ◇◇◇◇◇◇◇◇

 
 「わーーーー!! 魔法です!! 魔法ですよリリ様!!」

 マリーがキラキラした瞳で私に訴えかけてくる。
 私たちはエイタリー国の王宮に足を運んでいた。

 「すごいわね!!やはり、王宮ということもあって、あらゆるところで魔法が使われているのね!」

 ——風の魔法で布やほうきを操作し掃除をしているのか…………。
 私たちは見慣れない魔法に少し興奮していた。

 「リリ、マリー、静かにね?」

 兄から注意され静かにすると、案内人が口を開いた。

 「こちらです」

 私たちは煌びやかな部屋に入ると、王子とみられる青年の前に行き膝をついた。
 一人一人名前を名乗ると頭を下げる。


 「そなたが煎餅を作ったものたちか?顔をあげよ」

 顔を上げると少しきつめの整った顔立ちをした青年と目があう。
 見たことのない顔立ち。ゲームの攻略者でないことがわかった。

 「私はこの国の第二王子、ベルナルド・ファルネーゼだ。
 単刀直入に聞こう。
 そなたら、という女子おなごは知っているか?」


 「「なっ」」


 という言葉に兄と私は反応した。



  「2人は心当たりがあるようだな。
 マリーとやら、少し下がっておれ」

 マリーが下がると私は居ても立っても居られず言葉を発した。

 「どうして陛下がその名前を…………?」


 「行ってきたからな日本へ。偶然戻ってこれたがな…………。
 そなた…………梨々香か」

 「っ!!前世では…………そういう名前でした。なぜ私の名を?」


 「魔法の研究をしていたら何かの拍子に発動した魔法に巻き込まれてしまったのだ。気がついたらあちらの世界で偶然麻里という女子に会ってしばらく世話になった。その際に麻里から姉が作ったという煎餅をもらったのだが、こっちに戻ってきて麻里の家で食べたものと同じ煎餅を食べてもしやと思ってな」

 あちらの世界…………おそらく日本だろう。
 あれから麻里ちゃんはどうしているだろうか…………。


 「麻里ちゃんは元気でしたか?」


 「ああ、元気だった。麻里は私と同じ年で23歳と言っていた。今は戻って来て一年は立っているから25歳近いか…………。信じられぬがこの世界があちらのゲーム?という世界だということも知っている…………。麻里がよくしていたゲームに弟が出ていた時は驚いた」

 弟…………第三王子か。
 麻里ちゃん大きくなって…………。
 成人式見たかったな…………。


 「麻里がお姉ちゃんとお兄ちゃんがこちらの世界で生きているかもしれないと言っていたぞ」


 「「麻里〔ちゃん〕が…………」」

 「なんでも、二人がゲーム?の悪役令嬢と攻略対象者になっている夢を見るのだそうだ」

 「麻里ちゃん…………会いたいな…………」
 

 「私は時空間魔法を確立してまた必ず、麻里に会いに行く!
 もし、数人の移動が可能なら麻里とお前たちを合わせてやりたいと思っている。
 それが麻里の望みなのだからな…………」


 「お前っまさか麻里に惚れて————」

 「エリック兄様ベルナルド様に向かって無礼ですわよ」

 妹のこととなるとすぐに血が上る兄を止める。
 ——たとえベルナルド様がうちの可愛い麻里ちゃんを好いていたとしても、麻里ちゃんは私がちゃんとゲームにどっぷり浸からせているのだから大丈夫!!

 「構わん。そなたらが知っている麻里はどんな女子だったのだ?」

 「それは!! もう————
 
 ベルナルド様が麻里ちゃんの話をふるものだから、話に花を咲かせ気がついたら帰る時間となっていた。
 
 ——マリーを待たせてしまっていたわ。

 マリーが部屋に入ってくると、皆でベルナルド様に挨拶をする。

 「また、何か開発したら取引してくれ。金は惜しまん」


 「いい鴨ができましたわ…………」


 私はニヤリとすると、これから何を売りつけようか考えていた。

 「またこの国に来たら私を頼るといい」


 「ええ、また来ますわ」


 「そなたもだぞ。マリー」


 「!」

 ベルナルド様がそういいウインクをすると、マリーは驚いたように口が開き、顔を真っ赤にしていた。
 私はマリーの腰に手を回すとベルナルド様に向かって言った。

 「陛下、うちの使用人がいくら可愛いからって渡しませんわよ?」


 「大丈夫だ!私は麻里を好いているからな。それに麻里も私を好いてくれていると言っていた。」


 ・・・・・。



 「「なんだとおおおおーーーーーー!!!!」」

 兄と私の声が重なる。

 ———前世での私たちの努力が…………。私の可愛い麻里ちゃんが…………。



しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

私は彼に選ばれなかった令嬢。なら、自分の思う通りに生きますわ

みゅー
恋愛
私の名前はアレクサンドラ・デュカス。 婚約者の座は得たのに、愛されたのは別の令嬢。社交界の噂に翻弄され、命の危険にさらされ絶望の淵で私は前世の記憶を思い出した。 これは、誰かに決められた物語。ならば私は、自分の手で運命を変える。 愛も権力も裏切りも、すべて巻き込み、私は私の道を生きてみせる。 毎日20時30分に投稿

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

5年経っても軽率に故郷に戻っては駄目!

158
恋愛
伯爵令嬢であるオリビアは、この世界が前世でやった乙女ゲームの世界であることに気づく。このまま学園に入学してしまうと、死亡エンドの可能性があるため学園に入学する前に家出することにした。婚約者もさらっとスルーして、早や5年。結局誰ルートを主人公は選んだのかしらと軽率にも故郷に舞い戻ってしまい・・・ 2話完結を目指してます!

処理中です...