14 / 180
第一章 冒険者に俺はなる
14話
しおりを挟む――ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ、ピピピ……。
白銀の風車亭という宿屋のとある一室でその場に似つかわしくない音が響き渡る。
と言っても、その音が聞こえるのは今ベッドで眠っている少年だけなのだが。
「う、うーん、……朝か?」
……いいえ、ケフィ……ゲフン、失礼、話が脱線しかけたので元に戻そう。
現在の時刻は午前三時ちょうどを回ったところで、世間一般的に言えば【真夜中】である。
あれから昼食を平らげた秋雨は、創造魔法を駆使し、【時空魔法】を開発していた。
さらにその時空魔法によって使う事ができる【アイテムボックス】という魔法も習得することに成功したのだ。
アイテムボックスは異世界転生物の物語によく登場する持ち運びに便利な収納機能であり、場合によっては魔道具などのアイテムとして扱われたりすることもあるのだが、総じて言える事はアイテムボックスというものが激レアな滅多にお目に掛かれない希少な物だという事だ。
そして、この世界もどうやら例に漏れず、アイテムボックスという存在は認知されているものの、すでに失ってしまった技術であることが鑑定先生の情報によってもたらされた。
さらに補足情報として、近年アイテムボックスの機能を再現しようと錬金術による魔道具の開発に成功しており、従来のアイテムボックスよりも劣るが、類似品の開発に成功したらしい。
つまり秋雨は、便利な能力を得るのと同時に、その能力を他人に知られれば悪意ある人間から利用されるという厄介な能力を得てしまったのだ。
得てしまったと言ったが、それは秋雨自身が望んだことなので自業自得としか言いようがないのだが、当の秋雨は極めて楽観的な考えでこう口にした。
「まあ、バレなきゃ大丈夫でしょ?」
言っている事は単純なことだが、同時に的を射てもいる。
そう、“バレなければ何をしてもいい”それは同時に異世界転生者が異世界で活動する時の基本ルールのようなものでもあった。
自分が有能な人間だと周りに知られなければ、面倒事に巻き込まれる心配もなく、自分のやりたいことに専念できるのだから。
逆にその能力を利用しようとする人間に見つかってしまえば、面倒事を押し付けられ、ただただいいように利用されるだけだ。
だからこそ、秋雨は改めて強く思った。
この世界では自分の実力は絶対にバレてはいけないのだと。
話を戻すが、秋雨が目を覚ますときに彼だけに聞こえていた音の正体は、彼が時空魔法で新たに作った【アラーム】という魔法だ。
試しにケイトが夕食を持ってくる時間帯に合わせて使用してみたところ、問題なかったので、夕食を食べお湯のタライを貰い身体を拭いた後、仮眠として冒険者ギルドに行く予定の時間まで、眠っていたのだ。
ちなみにケイトが夕食を持ってくる時間まで炎属性の魔法の研究をしていたところ、バレーボールほどの大きさの火の玉を出すことに成功していた。
この世界の魔法は決まった呪文をただ唱えるだけで、魔法を発動するのではなく、術者である本人のイメージ力によって魔力を消費して魔法的事象を引き起こすというのが、この世界の魔法だ。
例を挙げるのであれば、火の玉を敵に向かって打ち出す魔法というものがあったとして、それを見た地球に住む人間は大概の場合その魔法を【ファイヤーボール】と思うだろう。
もちろん呪文を唱える術者によっては想像どおり【ファイヤーボール】と唱える者もいるだろうし、【フレイムボール】と唱える者もいる。
つまり魔法を行使する術者次第で、同じ火の玉を敵に打ち出す魔法でも固定の呪文を唱えなくても、同じかあるいは似た効果を生み出すことは可能という事だ。
なぜこのような事になっているのかと言うと、それは魔法を行使するうえで重要になってくる要素が、術者のイメージ力に起因するからだ。
ある魔法使いは火の玉を【ファイヤーの玉】とイメージしているだろうし、他の魔法使いは同じ火の玉でも【フレイムの玉】としてイメージすることがあるという事だ。
だからこそ、同じ効果を生み出す魔法でも、術者が違えば唱える呪文の名前も異なってくるというのが、この世界の魔法の概念であった。
またまた脱線してしまったが、話を戻すと、先の秋雨が使っていた【アラーム】という魔法はその名の通り、特定の時間になったらその時間になった事を教えてくれるという、言わば目覚まし時計のような機能を持つ魔法だ。
だが、この魔法は元々地球に住んでいた秋雨であるからこそ思いついた魔法であり、この世界の住人が同じように思いつくかと言えばその限りではない。
それにそもそもの話だが、時空魔法を使える魔法使いが滅多にいないため、仮に秋雨と同じことを思いついたとしても、実際に実行することができないというのが、この世界の常識だ。
「とりあえず、冒険者ギルドに向かうか」
そう呟いた秋雨は、部屋のドアから廊下に出ると、しっかりとドアに鍵を掛け受付へと向かった。
「うん、何か声が聞こえるな……」
そう呟くと声のする方に耳を傾ける
すると聞こえてきたのは、女の喘ぐ甘い声だった。
「あんっ、あんっ、ジョージ、もう休ませてっ、わたし、イキ過ぎて身体が持たないわ」
「何を言ってるんだアンジェラ、俺たちの夜はこれからじゃない……かっ!」
「あぁんっ、もう、ジョージのバカぁぁああん!!」
それは秋雨が昼間に聞いていたバカップ……もといカップルの情事だった。
それが昼間のカップルだと気付いた秋雨は、心の中で悪態をつく。
(あいつら、昼間も盛ってたのに夜もハッスルしてんのかよ! どんだけヤリまくってるんだ?)
これから冒険者登録をしに行こうという所用があるにもかかわらず、こんなところで妙な気分になるわけにはいかないと考えた秋雨は、まだまだ余力十分という二人の盛り声から逃げるようにその場を後にした。
この時もやはり「纏まった金ができたら、絶対に【娼館】で綺麗なねーちゃんと合体するんだ」と、強く心に誓う秋雨であった。
182
あなたにおすすめの小説
辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい
ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆
気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。
チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。
第一章 テンプレの異世界転生
第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!?
第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ!
第四章 魔族襲来!?王国を守れ
第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!?
第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~
第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~
第八章 クリフ一家と領地改革!?
第九章 魔国へ〜魔族大決戦!?
第十章 自分探しと家族サービス
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!
霜月雹花
ファンタジー
神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。
神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。
書籍8巻11月24日発売します。
漫画版2巻まで発売中。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜
舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」
突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、
手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、
だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎
神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“
瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・
転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?
だが、死亡する原因には不可解な点が…
数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、
神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?
様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、
目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“
そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪
*神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw)
*投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい
*この作品は“小説家になろう“にも掲載しています
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
《作者からのお知らせ!》
※2025/11月中旬、 辺境領主の3巻が刊行となります。
今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。
【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん!
※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる