24 / 180
第二章 初めての薬草採集とモンスター討伐
24話
しおりを挟む「上手に焼けましたぁ~、……っていう雰囲気じゃねぇな、こりゃ」
まだ早朝と言っていい午前7時半現在、秋雨の目の前には凄惨な光景が広がっていた。
頭部と胴体が切断されたフォレストファングの死骸が2つに、こんがりと焼きあがったフォレストファングの死骸が1つだ。
生臭い血の匂いとこんがりと焼けた肉の匂いが混ざり合ったものが漂っており、その匂いで吐き気を催しそうになる。
だが秋雨がそうならないのは、その凄惨な光景を作り出したのが他でもない彼だからだ。
そうでなければ、秋雨は疾っくの疾うに朝食べた物をリバースしていたことだろう。
「それにしても、魔法がまさかこれほどの威力とはな」
そう呟きながら、こんがりと焼けたフォレストファングだったものに視線を向ける。
突如として襲ってきた三匹のフォレストファングの内二匹は秋雨の手によって斬首され、残りの一匹は魔法の試し打ちをするために尊い犠牲となっていた。
彼がフォレストファングに放った魔法は、時間を潰すために宿で練習していた火の玉の魔法だ。
当然であるが、秋雨は自身の魔力がとてつもない事はすでに理解しているので、魔法を打つ時もかなり手加減をして使っていた。
だが、結果は今目の前にあるフォレストファングの残骸から見ればわかる通り、オーバーキル甚だしい状態であった。
「まぁ、消し炭にならなかっただけマシと思った方がよさそうだな。全力の半分の半分の半分の半分の半分じゃまだ足りないって事がわかっただけでも良しとしよう」
とりあえず秋雨は三匹のフォレストファングの死骸をアイテムボックスに入れる。
生き物以外であればどんな大きさ、どんな量の物でも収納する事が出来る彼のアイテムボックスはとても便利な機能だと言えた。
しかも時間経過による劣化も無いとくれば、これほど便利な物はないと、秋雨も改めてそう思った。
だが、秋雨の使っているアイテムボックスは、既にこの世界では“ロストテクノロジー”つまり失われた技術として話だけが伝わっており、現在使用できるのは彼だけだ。
類似品や劣化版と呼ばれる物は現代の異世界の技術で再現するに至ってはいるものの、秋雨のアイテムボックスと比べれば、その性能は推して知るべしである。
「これは絶対に人目があるところでは使えねぇな。使ったが最後、貴族どころかこの世界全ての国から指名手配される可能性だってある」
秋雨はこのアイテムボックスの利便性と同時に、危険性もよくよく理解していた。
便利な魔法や道具というのは、人々の生活を豊かにしてくれるものであり、一見すると特に危険な事は無いと普通の人間なら考える。
だが、それが汎用性の高い物でなく、世界でたった一つしか存在していない物となれば話が変わってくるのだ。
分かり易く言えば、宝くじに当選した時と似ているだろうか。
高額の宝くじに当選すれば労せずして大金が手に入り、生活もグッと楽になる。
だがそれと同時に遠縁の親戚と名乗る者が金の無心に来たり、訳の分からない宗教に入信させられそうになったり、金遣いが荒くなり元の生活水準に戻れなくなったりといった不幸も運んでくるのだ。
そう言った不幸を呼び込まないためには、宝くじに当選したことを可能ならば家族にも誰にも知らせず、生活水準も今のまま保ち続けることが最終的には最善の選択になる。
そして、今回のアイテムボックスの一件もこれと同じで誰にも知られてはいけないものであった。
その存在を知られれば、まず目ざとい冒険者やその手の分野の研究者が襲って来るだろう。
事態が悪化すれば、位の高い貴族が動き出し、さらに事が大きくなれば王族すら動くことになる。
便利な物であるが故に、その能力に魅入られる者は少なくなく、そういった人間に見つかれば最悪一生籠の中の鳥になる可能性もあるのだ。
「近いうちに【転移魔法】も覚えておいた方がいいだろうな、あとは俺と同じ【鑑定】持ちもいるだろうから鑑定を誤魔化すための能力も欲しいところだな」
アイテムボックスの存在によって、今後起こり得る可能性を視野に入れつつ、修得すべき能力について考えていると、再び草むらがかさかさと音を立てた。
「また犬……いや狼か?」
元の世界の感覚がまだ残っているのか、狼=犬のイメージを払拭できない秋雨だったが、迫ってくるモンスターに備えるため再び木剣を構えなおす。
そして、飛び出してきたものに対し、秋雨は「はぁぁぁあああ」という気合の声と共に首を刈り取るべく剣を真横に薙ぎ払おうとしたその時――。
「ストップ、ストップ、ストップー! 人間だから人間!!」
「……」
飛び出してきたのはなんと一人の男だった。
164
あなたにおすすめの小説
初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!
霜月雹花
ファンタジー
神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。
神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。
書籍8巻11月24日発売します。
漫画版2巻まで発売中。
辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい
ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆
気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。
チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。
第一章 テンプレの異世界転生
第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!?
第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ!
第四章 魔族襲来!?王国を守れ
第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!?
第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~
第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~
第八章 クリフ一家と領地改革!?
第九章 魔国へ〜魔族大決戦!?
第十章 自分探しと家族サービス
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる