何も悪いことしてないのに、いろんな奴が俺に付き纏ってくるんだが!?

こばやん2号

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第一章 冒険者から始まる二度目の人生

4話「森を抜けて街に向かっていたら、テンプレに出くわしたんだが!?」

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「よし、これでレベル5になった」


 しばらく森を散策しつつモンスターとの戦闘に勤しんだ結果、俺のレベルは5にまで上がった。この辺りのモンスターは俺があの女神に希望した通り、レベル1や2といった低レベル帯のモンスターばかりで、レッサーゴブリンやぽよぽよスライム、テンタクルプラントといった種類が生息していた。


 ぽよぽよスライムは名前通り“ぽよぽよ”しているスライムで、自身の体を使った体当たり攻撃をしてきた。テンタクルプラントは触手の生えた植物系モンスターで、触手を鞭のようにして攻撃をするモンスターだ。


 初めて見た時は多少驚きはしたが、二度三度と戦いを重ねていくうちにその動きにも慣れ、今では鎧袖一触のもとに一撃で撃破できるようになった。道中で拾ったちょうどいい太さと長さの木の棒で攻撃したことも一撃で撃破できた理由の一つかもしれない。


 モンスターとの戦闘で様々なドロップアイテムを獲得しており、街に着いた時に買い取ってもらうのが今から楽しみだ。尤も、最弱モンスターが生息している場所から手に入るアイテムが高額で取引されるとは考えにくいので、子供の小遣い程度と考えておいた方ががっかりしなくて済むかもしれない。


 それと言い忘れていたことがあったのだが、今の俺の服装は上下とも麻で作られた地味な服を着ている。……これを言っとかないと、俺が今まで全裸だったと勘違いする奴がいるからな……いないか。


 あともう一つ、現在の時刻は午前九時を回ったところで、俺がこの世界にやってきて一時間半程度が経過していた。あのおっぱい女神に出した希望では、近くの街まで歩いて一時間程度の場所と言っていたが、これは俺がモンスターと戦いながら進んできたのが原因でそのまま真っすぐに街へと向かえば一時間で着く距離のはずだ……たぶん。


 当てもなくただなんとなく一方向に森を進んでいると、木々の密度が徐々に低くなっていき開けた場所に出た。そこには馬車の通った形跡のあるあぜ道のようなものがあり、俺から見て左右に分かれていた。


「まあ、左と右どちらを選んでも最終的には街には着くだろうけど……」


 現状この辺り一帯の地形を把握していないため、どちらが街まで近いかは見当がつかないが、左方向の道を目で辿っていくと数百メートル先に峠のような場所がある。おそらくはあの峠を越えていかなければならないのだろうということはなんとなく予想がつく。一方右方向は緩やかなカーブ状に道が続いており、その先は上り坂になっているため坂を登った先は今は窺い知ることはできない。端的に言えば、峠を越えるか坂を上り道を進むかのどちらか二択だ。


 しばらくその場で考え込んだあと、アイテムボックスから皮の袋に入った水を取り出し一口飲む。あれからアイテムボックスの中身を確認したが、中身はたった二つしかなく皮の袋に入った水と奥歯で噛まないと食べられない煎餅みたいな黒パンだけだった。おそらく、飢え死にしないための必要最低限の水と食料を用意してくれていたのだろう。ただ、欲を言えばパンよりもリンゴとかの果物系がよかったと付け加えておく。


「よし、やっぱ坂道の方向だな」


 心許ない水と食料で峠越えはさすがにできないと結論付け、坂道がある右方向へと進むことにした。勾配の緩やかな坂を登りきると、その先には巨大な岩肌が目に飛び込んでくる。遠目から見ると、切れ目ような場所があり道もそこへと続いていた。それからモンスターに出くわし、適当に相手をしつつしばらく歩き続けていると、切れ目へとたどり着いた。切れ目と言っても、大きさは十メートルという巨大なもので、大型トラックが二台並んでも大丈夫なほどだ。警戒しながら切れ目の先を覗いてみると、そこは開けた場所になっているようでさらにあぜ道が続いていた。


「ここらで一旦休憩するか」


 ここまで二時間モンスターと戦いながら歩いて来たため、それなりに疲れていた。近場にあった手ごろな岩に腰を下ろすとアイテムボックスから水と黒パンを取り出し、喉の渇きを潤しつつ空腹を凌ぐ。とりあえず、ここまでの成果を確認するため俺は自分のステータスを確認することにした。



【名前】:矢崎市之丞

【種族】:人間

【年齢】:十五歳

【性別】:男

【職業】:なし

【犯罪歴】:なし


《ステータス》
レベル6

HP 250

MP 200

攻撃力 110
 
防御力 100

素早さ 105

精神力 100

かしこさ 90

幸運 100


【スキル】:成長Lv1、治癒魔法Lv1、アイテムボックスLv1、鑑定Lv1、異世界言語Lv1


 どうやら、森を抜けたところからここまでの道中でさらにレベルが1上がっていたようだ。それから、スキルの詳細を確認していなかったことを思い出した俺は、各スキルの詳細を見るためウインドウの項目をタッチする。


【成長】:レベルアップ時のステータスの上昇率やスキルの修得率といった成長可能なものすべてに補正が掛かる。

【治癒魔法】:回復に特化した魔法を行使することができる。 修得魔法:ヒール

【アイテムボックス】:生き物以外(※ただし、死んでいる生き物や植物は収納可能)のどんなものでも収納することができ、収納している間は時間経過による劣化が起こらない。レベルが上がるにつれて収納できる数と重さが増えていく。

【鑑定】:ありとあらゆるものの詳細を知ることができる。レベルが上がることで鑑定できるものの種類と鑑定対象が隠匿能力を使っていた場合における看破能力が向上する。

【異世界言語】:異世界の言語と文字が理解できるようになる。レベルが上がるほど、理解できる言語の種類が増えていく。


「まあ、大体こんなところか」


 粗方自分のステータスを確認できたので、しばらくそこでボーっとして過ごす。十五分ほどしてそれなりに休憩できたので、ゆっくりと立ち上がりさらに先へと進んで行く。そこからしばらく道なりに歩くこと十分が経過したその時、前方に馬車が停まっているのが見えた。


 さらによく観察してみると、その馬車を数人の男が取り囲んでおりなにやら大声で怒鳴っているようだ。……この状況は、間違いなくあれだな。


「やれやれ、まさかの盗賊かよ。テンプレにもほどがあるぞ」


 異世界物の小説で必ずあるシチュエーションの一つ“街に向かっていたら盗賊に出くわす”をこうも早く体験することになるとは……。こういうのは、もっとあとにして欲しかったぜ。兎にも角にも、どんな状況かを確認するため、俺は盗賊たちに気付かれないよう近づいてみることにした。
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