何も悪いことしてないのに、いろんな奴が俺に付き纏ってくるんだが!?

こばやん2号

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第一章 冒険者から始まる二度目の人生

7話「冒険者ギルドの受付嬢に笑い掛けたら、顔を赤くして俯いてしまったんだが!?」

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「次の者、こちらへ」


 街の門に到着した後、俺は街へと入るための人の列の最後尾へと並んだ。ここまで来るのにいろいろとあったお陰なのかせいなのかは別として、俺がこの世界へやってきてから三時間ほどが経過している。


 近くの街から一時間以内にたどり着けるという注文を女神に頼んだが、それはあくまでもどこにも寄り道せずにという注釈が付くため、これくらいの時間が掛かってしまったことを付け加えておく。


 とにかく、紆余曲折とあったものの無事に街にたどり着き、そこそこ長い列に並ぶこと二十分ようやく俺の番が回ってきたのだ。


「何か身分を証明するものは?」

「ないから入市税を払う」

「そうか、なら小銀貨一枚だ」


 門兵の指示に従い、盗賊から巻き上げた金を使って街に入るための入市税を支払う。手荷物検査などの取り調べを受けることなどは一切なく、すんなりと街に入ることができた。どうやら俺の前に並んでいた中に馬車を引いた商人がいたらしく、その荷物の検査で二十分も時間が掛かっていたようだ。


 何はともあれ、これで街に入る手続きも完了したので遠慮なく街へと入る。異世界ファンタジーらしく中世の街並みで石畳と木製の建物が建ち並んでいる。大通りと思しき馬車が三台並んでも余裕のある幅広い道には様々な姿、格好をした人が行き交う。種族も様々で人間、獣人、ドワーフ、エルフといったバラエティに富んでおり、中には全身鱗で覆われたリザードマンらしき種族もいた。


「おっと、ここで人間観察してる場合じゃないな。早く冒険者ギルドで登録しないと」


 俺がこの街にやって来た目的の一つ、それは冒険者になることだ。異世界物の小説で登場する主人公のほとんどがまず取るであろう行動……それは生活基盤の安定化である。地球でもそうだが、生活していくためには多少なりともお金が掛かる。その金銭を確保する最も簡単な方法は労働だ。労働することでその対価として金を貰い、その金で住居や必要な生活物資を調達していく。それは地球でもこの異世界でも同じだと俺はそう考えている。


 そして、この世界で資格もいらず誰でも簡単になれる職業……それは間違いなく【冒険者】だ。素材の採取やモンスターの討伐を専門とした職業で、対人に特化している傭兵とは真逆の存在である。


「これは、まいったな。冒険者ギルドがどこかわからん」


 街に来たという興奮から門兵に冒険者ギルドの場所を聞きそびれてしまったことに今になって気付く。自身の失態に内心でため息を吐きながらも、周りの人間に注意を向ける。そこらへんの人間に聞いてもいいが、それで絡まれたら目も当てられないのでここは俺の観察眼を使うことにする。


 現在俺は大通りを真っすぐ進み少し開けた広場のような場所にいる。そこから道が二股に枝分かれしていて、どちらに行くべきか悩んでいるといった状況だ。簡単に言えば、どちらかが冒険者ギルドでどちらかが別の場所に繋がっている。それを確かめる方法は至ってシンプル……それは通行人の格好を見ればいい。


「……ふむ、どうやらこっちらしいな」


 周囲の人間を観察した結果、どうやら俺から見て右方向が冒険者ギルドがあるようなので、そちらに向かって進んで行く。どうしてそのような結果になったのかといえば、先ほども言った通り周りの人間の格好を見たからだ。


 大抵の冒険者はモンスターとの戦闘を想定しているため、質は違えどある程度の武装をしているのが基本だ。であれば武装した人間がより多く足を運ぶ先に冒険者ギルドがあると考えるのはごく自然ではないだろうか? ……伊達に前世で年は食ってないのさ、ふふふ。


「ここだな」


 そのまま進んで行くとさらに二分に枝分かれした場所に盾と剣の看板を掲げた建物が見えてきた。おそらくだがあれが冒険者ギルドだと当たりを付けその建物に入って行く。中は思っていたよりも掃除が行き届いているのか、綺麗に片付けられており人もあまりいない。入り口から見て左手には受付カウンターが並んでいて、おそらくはあそこで各種手続きをするのだろう。右手には数段の階段を降りたところに十数脚の椅子とテーブルが並べられていて、そこに何人かの冒険者が酒や料理を飲み食いしていた。


(食事処兼酒場ってところか……まあ今はいいや)


 俺が入ってきた時に酒場の何人かが視線を向けてきたが、突っかかってくる様子はないので内心ホッとする。……こういうのってテンプレでは絡まれたりするからな。


 そのまま一番近い受付カウンターに向かうと、眼鏡を掛けた十代と思しき女性が元気な笑顔で対応してくれた。


「いらっしゃいませー、冒険者ギルドへようこそ。本日はどのようなご用件でしょうか?」

「新規で冒険者の登録がしたい」

「かしこまりました。ではこちらに書ける範囲で結構ですのでご記入をお願いします。文字が書けなければ代筆致しますが、大丈夫でしょうか?」


 受付嬢の言葉に「大丈夫だ、問題ない」とだけ答え、渡された紙に記入していく。記入内容は極々簡単なプロフィール情報で名前、年齢、出身地、特技といった内容だ。おそらくだが、冒険者というものは資格などの特定の技能を持たなくてもなれてしまうため、難しい手続きを省いているのだろうと結論付けた。


「これで頼む」

「かしこまりました。少々お待ちください」


 俺は渡された紙に名前と年齢だけを記入した。出身地は地球か日本と書いてもよかったが、突っ込まれたら面倒なのでやめておいた。特技も無難に“特になし”とだけ書いておいた。まあ、所謂当り障りのない内容ということだ。


 入力した内容に不備がなかったようで、特になにも聞かれる事なく受付嬢が作業していく。


「では、イチノジョウ様、こちらのプレートに血を一滴垂らしていただけますか?」

「ん」


 普通の人はここで戸惑うだろうが、ラノベ読者であった俺はこの手のことはよくある事として認識していたため、指示に従い一滴血を垂らす。するとプレートに落ちた血が吸い込まれていき鈍く光り輝いた。しばらくして光が消え元のプレートに戻った。


「では、こちらがあなたの冒険者としての身分を証明するプレートですので、無くさないようお願いします。ちなみに無くしたら大銀貨三枚で再発行となってしまいますのでお気を付けください」

「大銀貨か……なあ、いきなりだがこの辺りの貨幣価値について教えてくれないか?」

「……? いいですけど」


 受付嬢は不思議に思っていたが、それ以上は追及することはせずに教えてくれた。この世界の貨幣は下から順に銅貨、大銅貨、小銀貨、銀貨、大銀貨、小金貨、金貨、大金貨、白金貨の九種類でそれぞれ十枚で一つ上の貨幣になるらしい。例えば銅貨十枚が大銅貨一枚と同じ価値で、大銅貨十枚で小銀貨一枚というような感じだ。ちなみに主に使われる貨幣は大銀貨よりしたの貨幣でそれ以上ともなれば大商人や王侯貴族が扱うものであるとも教えてくれた。


「ありがとう、君のお陰で助かったよ」

「は、はぅ……い、いえお気になさらず」


 俺が彼女に微笑みかけると、なぜか顔を赤くして俯いてしまった。……俺の笑顔で照れたようだな、意外と初心らしい。


 それからギルドの規則について一通り説明を受けた。基本的に規則は三つあり、緊急時の招集に応じること、犯罪を犯してはいけないこと、冒険者同士の私闘は厳禁のこの三つだ。


 次に冒険者にはランクと呼ばれる格が存在し、ランク1から始まり最高ランクは100まであるらしい。……アルファベットとかじゃないんだな。


 ランク10以下は初級冒険者で30から50が中級、50から70が上級冒険者となりそれ以上は最上級冒険者という位置付けになっているらしい。とりあえず、最初はランク10を目指せばいいと言われたので、まずはそこを目指して頑張ろう。


「以上となりますが、何か質問はございますか?」

「そうだな、ちょっといいか」

「はい?」


 俺は彼女に近づきできるだけ小さな声である質問をした。
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