オンラインゲームしてたらいつの間にやら勇者になってました(笑)

こばやん2号

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2部【アース大陸横断編】 第1章 「目指せドグロブニク 漫遊編」

71話:「一騎打ちの決着」

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ベルゼの【フレイム・ビッグバン】を二重の障壁で防いだ大和は
反撃とばかりにとある呪文を詠唱する。

「最上級魔法 (マキシム・マジック) ラーヴァ・ザ・アルテマ!」

超絶級と言われた魔法のさらに高次元に位置する最上級魔法
火系魔法最強最大の呪文それがラーヴァ・ザ・アルテマ。
それを行使できる存在など最早勇者どころの話ではなく
下手をすればそれこそ神か魔王くらいのものだろう。

だが大和はそのどちらでもない。
どちらでもないが最上級の領域に足を踏み入れてしまっていた。
溶岩を纏った巨大な球体が大和の詠唱に呼応し現実に顕現する。
直径30メートル以上はあろうかという大きな火の玉がのろく回転している。

「ばっ馬鹿な!! マキシム級だとっ!?
 あり得ない! あり得ないわ!! 魔王様ですらマキシム級に至るまで
数百年を要したというのに、それをたかだか数十年しか生きていない人間ごときが
こうもあっさりと・・・・・・」

今目の前に起こっている現実を認めることができずに
焦燥の表情を浮かべ譫言うわごとのような叫びを上げるベルゼ。
その姿は普段冷静な表情など見る影もない様子だ。

一方の大和は少々困っていた。
(どうしよ・・・・ノリで使っちゃたけど、攻撃したら
あの子確実に死ぬよね?)

神や魔王と同等の存在しか扱えない魔法をノリで出さないで欲しいものだ。
と文句を言ったところで出してしまったのは仕方のない事なので
これはこれで今の状況を利用するまでだと大和は判断する。

幸いなことにマキシム級の魔法とはいえ大和は
顕現した状態の魔法を無効にすることができるため
唱えた魔法で顕現した魔法を使わなければならないということはないのだ。
今からでも右手に掲げる発現した太陽のような球体をなかったことにできる。
だがこのまま「やっぱり今のなしっ!」などと格好の悪いことなどできない。
少々考えたみた結果今思いつくのはこの手しかなかったので早速実行に移すことにした。

「この俺と戦えたことを誇りに死ぬがいい!
 食らえーーーーーー!!」

少々棒読みな言葉遣いではあるがこの際演技力はどうでもいい。
狙いはただ一つなのだから。

大和の掛け声を聞いて咄嗟に顔を庇うように両腕を出し
迫りくる魔法にささやかながらの抵抗をする。
そして隙だらけになった彼女に向かって瞬時に間合いを詰める。
右手にあった球体は瞬時に無効化し今は何もない状態だ。

そしてベルゼが目を開けるのをじっと待つ。
しばらくして彼女がゆっくりと目を開けると同時に彼女に向かって。

「えいっ!」

彼女の頭に軽めにチョップを食らわせる。
突然の出来事に呆気にとられたベルゼに淡々と喋りかける。

「なーんてなっ、てなわけで一騎打ちは俺の勝ちだ!」

そう言いながら肩を竦めて彼女に言い放つ。
どういう状況か理解できないベルゼを無視してリナたちの所に戻ろうとするが
こんな事態をそのまま呑み込めるほど彼女の適応能力は高くないわけで。

「ちょっちょっと待ちなさい! どういうことか説明して頂戴!!」

「ですよねー」と心の中で思ってみたものの
あまり腹芸が得意ではない大和はありのまま正直に話すことにした。

「だから君がさっき使った魔法は俺が防いだし
俺がさっき使った魔法を君は防げないでしょ? だから俺の勝ち!」

その何とも子供じみた発言に一瞬耳を疑ったが
冷静さを取り戻しすぐに反論する。

「ふざけないで! 戦いを何だと思ってるの!?
 私たちは殺し合いをしていたのよっ!
 だったら勝敗は生きるか死ぬかのどちらかしかないの!!」

その一言からでも彼女の人となりが伝わってくる。
一見するとクールな性格をした見た目をしてはいるものの
生真面目で自分が正しいと思っていることはとことん貫くといった
熱い一面も持ち合わせている印象を抱いた。

だからこそ俺は真面目に正直に答えた。

「それは君のルールだ。 そのルールを守る義務もなければ責任も俺にはない。
 それとも俺に勝てる奥の手でも持ってるのかい?」

「いいえ、今のわたくしではあなたに勝つことはできないわ。
 でも負けた以上生きて帰るなど戦士としては恥、ここで私を殺しなさい!!」

そう言って真剣な目で俺を見てくるベルゼ。
どうやら本気らしい、さてさて面倒なことになったぞ。
俺はそんなどこぞの戦闘民族のような戦士としての美学など持ってないし
彼女の言ってることなど理解できなくはないがだからと言って人殺しは断固却下だ。

「嫌だね、断る!」

「なっ!?」

彼女にとって大和の言葉は意外だったのだろう。
大きくつぶらな目をさらに見開いて大和を見据える。

「ここで殺さないとまたあなたに襲い掛かるわよ!
 そうならないようにここで殺しておいたほうがいいんじゃなくて!?」

「君が負けを認めてくれるのならもうそれ以上俺が望むことはないよ
 それに俺の勝ちって言うのなら君を生かすか殺すかも選択権は俺にあると思うけど?」

「うっ・・・・」

大和の言葉は筋が通っていた。
この世は弱肉強食なんて言葉もあるように勝った奴が正義なのだ。
負けた奴が文句を言える立場では断じてない。
それこそ弱い奴は何をされても文句は言えないのだから。

「それに・・・・」

一旦言葉を切りベルゼの頭にポンと手を乗せると
朗らかなやさしい笑顔で答えた。

「君みたいな綺麗な子を殺すなんて俺にはとてもできないよ!」

「なっなにを馬鹿なっ・・・・!」

大和はこの世界に来て自分の見た目が美形であることを自覚した。
だがそれはあくまでもこの世界の美的感覚から見た場合の美形であった。
何度も説明しているが大和の見た目は元の世界ではごくごく普通の平均的な顔なのだ。
決してカッコいい顔ではないがこの世界では大和の顔は美形のそれだった。

そのことを自覚したため少々女の子に対して積極的にアプローチすることにも挑戦すべきと思い
先ほどの行動に出たのだが、効果は抜群だった。

「ききき貴様は何を言っているのだっ! わたくしが綺麗な訳がなかろう!!」

照れているのか頬を赤く染め言葉もしどろもどろになっている。
そんな彼女に大和が止めの一言を言い放つ。

「赤くなっちゃて、可愛いっ!」

自分でも少しチャラ男感が否めないが嘘は言っていないので勘弁してほしい。
そして、大和のこの一言で完全にベルゼがパニックを起こす。

「わたくしが可愛いわけないじゃないかーーーーーー!!」

と顔を先ほど以上に真っ赤に染め上げ
リナたちのいる方角に猛スピードで飛んで行ってしまった。

「やれやれ、少しやりすぎたかな?」

そう呟くと大和もベルゼを追いかけるようにリナたちのいる場所まで飛んでいくのであった。
かくして、ベルゼと大和の戦いは大和の圧勝という形で幕が閉じられた。
だがそれとは別の戦いの幕が開けたことを今の大和が知る由もなかった・・・・
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