オンラインゲームしてたらいつの間にやら勇者になってました(笑)

こばやん2号

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第2章 「ドグロブニク攻防戦」

84話:「大和が女性と付き合えなかった真の理由」

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リナの夜這い事件から2日後、当初の予定通り大和たち一行は
ビルド大陸に渡るためアース大陸最西端にある港町、ドグロブニクに到着した。
旧王都フランプールより出立してからおおよそ二月ふたつきという期間の長旅を経て
大和たちはようやく目的地に到着したのであった。

「はあ~」

港町の入り口で感無量と言った風に大和が息を吐き出す。
思えばこの二月、迫りくるリナたちから貞操を守るために奮闘し
未だにその毒牙から逃げおおせている奇跡。

曲がりなりにも女の子との慣れない長旅を何事もなく終わらせたことを
心の底から喜びを感じている彼の心境などお構いなしと言った態度で
【愚か者】という名の少女のような見た目をした人物が語り掛けてくる。

「ヤマト様? 何をボーっとしているのですか?
 早く行きましょうよ?」

旅の間、事あるごとに誘惑をしてきた張本人が悪びれもせずに言い放つ。
大和はリナの頭にチョップしたい衝動に駆られたが
それをするとあまりにも理不尽なためギリギリのところでその衝動を押し止めた。

「あ、ああそうだな。 まずは拠点となる宿を確保しようか」

こちらの心境を悟られまいと努めていつも通りの声音で答える。
そして、馬車を人目のつかないように移動させそれをアイテムボックスにしまうと
ようやく彼らは港町ドグロブニクに足を踏み入れた。

まず最初に目に飛び込んできたのは港町というだけあって活気に満ち溢れている。
大和たちが到着したのはまだ日が昇ってからせいぜい1時間経つかという早朝だったのにもかかわらず
レンガで作られた石畳の大通りには溢れんばかりの人の往来と喧騒けんそうが響き渡っていた。

漁港に新鮮な海産物を仕入れに行くのか大きな荷台を引いている中年の男性や
我々と同じ目的なのか頑丈そうな装備に身を包んだ冒険者風の3人組のパーティーに
地元に住む町人風の恰好をした子供から果てはお年寄りといった老若男女の人々。

そして何より特徴的だったのが他の町と比べ人間以外の亜人デミと呼ばれる種族も多くみられたことだろう。
エルノアと同じエルフもいれば朝っぱらから酒を煽りながら豪快に笑うドワーフと竜人族と呼ばれるリザードマン。
踊り子のような表面積の薄い服を身に纏い、褐色の瑞々しい肌を惜しげもなく晒し妖艶な笑みを顔に浮かべた女戦士アマゾネス
その他にも多種多様な種族が大通りを行き交っている。

目の前を通り過ぎていく女戦士がちらりと横目で見てきた。
この目はさんざんリナたちが大和に向けてきた目でもあるので
明らかに彼女が自分を誘っているというのが理解できた。

黙っているのもなんだし話しかけようかと思った刹那、後ろから殺気に満ちた気配が大和の前に立ちふさがる。
見るとリナ、エルノア、マーリンが般若のような形相を浮かべながら
大和を己の毒牙に掛けようとする不届き者を牽制けんせいする。

三人とも獣が威嚇するかの如く「シャー」だの「ガルルル」と唸っている。
それを見た女戦士はあからさまに顔を歪めながら舌打ちをしてその場を後にした。
それから三人は大和に向き直り猫なで声で話しかけてくる。

「ヤマトさん大丈夫ですのん?」
「全く油断も隙もないです。 まあ、気持ちはわからなくもないですが・・・・」
「ヤマト様、あんな下品な女よりも高貴な神官であるわたしがお相手を・・・・」

リナの暴走によって三人が三つ巴の戦いを始めた頃合いを見計らい
大和は拠点となる宿屋を目指して歩き出した。



しばらく歩くと【宿】と書かれた看板が見えてくる。
この二月の旅でこの世界の言葉の読み書きをマーリンから教わっていた大和は
勉強した成果が如実に表れていることに満足した表情で宿に入る。

中に入ると大和たちと同じ冒険者だろうか、人相の悪い連中が
値踏みするかのようにこちらを無遠慮に見てくる。
大和はその視線を意に介さず、しれっと歩き出すと宿の受付カウンターまで歩を進める。
そこにいたのは眼鏡をかけた大和と同年代くらいの女性だった。
美人というよりかは可愛げ、愛嬌のある顔で見ているだけで心が洗われるような感覚を覚えた。
事務作業中なのか台帳らしきものに目を落として何か書き込んでいる。

「いらっしゃいませ、お泊りですか?」
「ああ、とりあえずは二部屋を一泊分、もしかしたら連泊するかもしれないので
その際は延長という形を取りたいのですが大丈夫ですか?」

そう答えるとこちらの要望が面倒だったのか少し嫌そうな声色で。

「お客様誠に申し訳ありませんがうちの宿はっ・・・・」

その時彼女がぱっと顔を上げた。
そして大和と目が合うと話していた言葉が途中で止まり突然場に沈黙が訪れる。
それを怪訝に思った大和は、お得意の営業スマイルを顔に張り付けながら問いかける。

「あのー、何か?」

そう言うと明らかに彼女の態度が一変し、セミロングの茶色髪を弄りながら答える。

「いっいえ、二部屋ですねっ。 少々お待ちくださいっ!」


先ほどとの対応の違いに大和は心の中で呟いた。

(この人の態度が急変したのは俺の顔を見たからだよなー、俺の顔ってそんなにイケメンなのかね?)

今までの旅である程度は自覚しているのだが彼は未だに自分の顔がカッコいいとは思ってはいない。
だが先ほどの女戦士の対応や日頃のリナたちの態度で客観的には理解しているが
納得はしていないというのが大和の自分の顔に対する自己評価だ。

だが大和は現在進行形で盛大な勘違いをしていた。
確かに彼の顔は元の世界ではどこにでもいる平凡な顔だ。
そして、彼自身今まで女性とまともなお付き合いをしてこなかったことが
自分が【女性にはモテない】という固定観念を抱いてしまう結果に繋がってしまっていた。


結論から言えば小橋大和という男は元の世界でもモテていた。
だが、それならばなぜ今まで女性と付き合ってこなかったのか?
答えは単純明快、彼を好きになる女性が同時期に複数存在していたからだ。

つまり彼を好きになった女性が彼にアプローチをしようとすると
他の女性がそれを阻止すべくことごとく潰しにかかっていた。
そのためお互いを牽制し合い、彼に自分の気持ちを伝えることができずに
最終的にはそのまま卒業を迎えてしまっていたのだ。

そうして幼稚園、小学校、中学、高校、大学と5回分の出会いがあり
彼を好きになった女性が複数存在するという状況が5回連続で起こり。
尚且つ、女性がお互いを牽制し合い、彼に思いを伝えることなく卒業するという状況が
これまた5回連続起こるというもはや天文学的確率をさらに超越した確率の事が起きてしまっていたがために
大和は自分は女性と付き合ったことがない、だからモテないという固定観念を抱いてしまったのだ。

そしてこの奇跡のような出来事を引き起こす要因の一端に
彼の妹、兄を異性として見ていた麗奈の存在も大きかった。

そんなわけで彼は本当に自分がいい男なのかという自問自答に肯定できないでいたのだ。
そんなことを考えていると空き部屋の状況を調べてくれた受付の女性が頬を赤く染めながら
先ほどよりも1トーン高い猫なで声に近い声で話しかけてくる。

「お待たせいたしました。 大丈夫です。 ふた部屋ございます!」

そう答えてきた後すぐ階段から冒険者の男が降りてきて
「おい! 今すぐ出て行けってどういうことっ・・・・」と言い終わる前にその男に
辞典か何かの厚めの本が顔にめり込みバサッと倒れ沈黙した。

それを見た大和は受付の彼女を見ながら。

「やっぱり満室なんじゃっ・・・・」と言い終わる前に

「ございます・・・・ 用意してご覧にいれます!!」

そう言いながら右拳を自分の顔の前でぐっと握ってアピールしてくる。
いや空き部屋は用意するものじゃないんじゃという心のツッコミは置いておいて
せっかくのご厚意を無下にすることもできず、彼女の熱意に押される形で宿を取ることにした。
倒れた男に心の中で「すまない」と謝罪をする大和だった。
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