オンラインゲームしてたらいつの間にやら勇者になってました(笑)

こばやん2号

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第2章 「ドグロブニク攻防戦」

90話:「大和、誘惑される」

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どうしてこうなった? 今の大和の頭の中を巡らせている言葉はそれだ。
目の前にいるのは一糸まとわぬ姿で佇む20代の女性。
緊張で汗ばんでいるのか窓から差し込んできた太陽光に反射するようにキラキラと光沢を放つ。
彼女の口から感嘆とも喘ぎとも取れる吐息が漏れ出す中大和はこの状況を冷静に分析する。

事の発端はマチルダさんが大和の宿泊先である宿に訪ねてきたところから始まる。
ノックされた扉を開けると先ほどアイゼンさんの屋敷にいた給仕姿の女性が立っていた。
彼女は一礼すると「よろしいでしょうか?」という言葉を投げかけてくる。
どうやら何か話があるようで部屋に入れてもらいたいということらしく
その言葉を口にした後俺の次の言葉を待っていた。

ここに来た理由もわからないまま彼女を部屋へ招き入れた。
今思えばこの時彼女を部屋に入れる前に用向きを聞いておけば
今回の騒動は防げたかもしれない。
だがそれはあくまでも結果論に過ぎないし、この時の俺はその可能性をかんがみなかった。

彼女がいそいそと部屋の中に入る。
そして、入ってきたドアを閉めるとなぜか鍵をカチャリと掛けた。
そのことに気付かない俺はベッドがある位置まで歩を進めると彼女を背にした状態で質問した。

「それで一体なんの御用ですか、何かありましたでしょうか?」

彼女が俺に本気で襲い掛かってきた事件からまだ1時間程度しか経過していないこの状況で
警戒心を解くのは無理という話だった。
俺は彼女が先ほどの戦いの続きをしに来たのかと予想しながらもそうでないことを期待して彼女の返答を待つ。
すると彼女は何も答えることなく給仕服を脱ぎ始めた。
その服は所謂メイド服というもので地味めのドレスというイメージがしっくりきた。

ドレスを脱いだ彼女は黒の上下お揃いの下着姿に伝家の宝刀である【ガーターベルト】を着用していた。
そして、彼女はその姿のままで俺の質問に答える。

「先ほどの勇者様に対する無礼の数々お許しくださいませ」

背中から聞こえてくる声音は最初であった印象よりも柔らかいものになっていた。
それだけで彼女が本当に反省していることが伝わってくる。
俺は彼女が人としての常識を持ち合わせていたことに安堵すると振り返って話そうとしたが
彼女が常識人だというのはただの勘違いだったと俺は痛感する。

振り向くとそこには抽象的なものではなく現実的な意味でピンク色の世界が広がっていた。
目の前には大人の色香を漂わせる女性が佇みもじもじと体をくねらせながら羞恥に耐えている。
彼女の引き締まった身体とリナやエルノアほどではないが男の欲求を満足させるのに足りる大きな乳房
それが漆黒色に染まる神秘のベールで包まれた様はまさに黒き衣を纏いし女神のそれだった。

「何をやっているのですか?」

俺はあくまでも、そうあくまでも彼女をどうにかしたいという欲望を理性という鎖で抑え込みながら
平静を装って淡々とした口調で問いかけた。

「私には先ほどの無礼に対してお支払いできる金銭はございません。
 ですから私が支払えるものと言えばこの身体だけでございます・・・・」

そう言いながら上目遣いでこちらを見つめてくる。
熱を帯びた頬は羞恥なのか照れなのか桜色に染まりそれが彼女の魅力を引き立てる。
これは言い訳になってしまうが俺とて男だ。
目の前にこれだけの美女が裸同然の姿で迫ってくれば何もしないという保証は出来兼ねる。
増してや女性経験が皆無の俺にとっては益々欲望に身を委ねてしまう衝動に駆られてしまう。

「マチルダさんがそのようなことをする必要はありません。
 あれは業務上必要なことだと思いますし、もう謝罪の言葉はもらってますから・・・・」

欲望と理性の狭間で葛藤するもギリギリの所で理性に軍配が上がり彼女の申し出を丁重に断る。
だがここまで来てマチルダさんも引くに引けない女の矜持きょうじというものがあったのか俺の申し出を突っぱねる。

「それでは私の気が済まないのです!!
 それに・・・・ヤマト様でしたら・・・・その・・・・この身を捧げても構いません」

首を傾けながら俺に視線を合わせないようにし手を前でもじもじと動かす。
そのたび彼女の双丘が柔らかさを物語るようにぐにゃりと形を変えてゆく。
俺はマチルダさんに向かって歩き出した。
彼女の横をすり抜け椅子に掛けてあった彼女が脱いだメイド服を
手に取ると両手で持ちながら彼女に突き出す。

「そのお気持ちは嬉しいですが、マチルダさんにはあなたを本気で愛してくれる人と
そういうことをすべきだと俺はそう思います。 美しいあなたにはそうなって欲しい・・・・」

その言葉を聞いた瞬間彼女の瞳が揺れる。
そして、確信したかのようにぽつりとつぶやいた。

「やはり私の目に狂いはありませんでした」

そう呟いた後彼女は最後の砦と呼ぶべき神秘のベールを脱ぎ払い、生まれたばかりの赤子のように肌を晒す。
再び俺の中で欲望と理性が戦いを開始する。
マチルダさんは俺が突き出していたメイド服を受け取るとそれを自分の後ろに投げ捨てた。

「ヤマト様は私のことお嫌いでしょうか?」

瞳を潤わせ桜色に上気した身体を俺に見せつけながら今この状況で反則というべき問いを投げてくる。
そんな質問をされたらこう答えるしかない。

「いやそんなことはないですが・・・・」
「ヤマト様っ!!」

俺の返答を聞くや否やマチルダさんは俺を床に押し倒した。
そして仰向けに倒れた俺の腹に馬乗りになってこの後するであろう行為のイニシアチブ主導権を取りに来た。
離れていて伝わってこなかった彼女の温もりそして柔らかさが今目の前にある。
それは俺の理性をいとも簡単に吹き飛ばす勢いのものだったが寸でのところで踏みとどまった。

「マチルダさん・・・・こんなこと止めましょう?」

それは俺ができる最後の抵抗だったが彼女がそこで止めと呼ぶべき一言を発した。

「わたくしの【初めて】をあなたに捧げます・・・・」

その言葉で俺の牙城は脆くも崩れ去り、あとは欲望に身を任せて彼女の身体を蹂躙するだけかと思われた刹那
突如部屋に何かかが爆発したような音が響き渡る。

そして、その爆発の後すぐ俺の腹の上にいたはずの彼女が消えていた。
いや正確にはこの部屋に入ってきた3人の獣によって文字通り一蹴されてしまった。

「「「なーにやっとんじゃあああああああ!!!」」」

侵入してきたいつものメンバー。
リナは蹴り、エルノアはパンチ、そしていつも真面目なマーリンですら己の杖を使い
俺の腹の上にいたマチルダさんを吹っ飛ばしたのだ。

ここで俺は疑問に思った。
実際マチルダさんと戦ってみた感想、それは彼女は相当な実力を持っている。
今部屋に突入してきたリナたちよりも実力は確実に上のはずなのにも関わらず
不意を突かれたとはいえリナたちの攻撃を避けることができなかった。

いやそればかりか今もこうしてリナたち3人にボコボコにされている始末。
この時俺は彼女たちが持っている潜在能力の高さを垣間見た気がした。
そして、こうも思った。

『女の子は本気で怒らせるもんじゃない』と・・・・
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