オンラインゲームしてたらいつの間にやら勇者になってました(笑)

こばやん2号

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第2章 「ドグロブニク攻防戦」

108話「ガリウス・ブラウン、酒場に行く2」

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 ガリウスが怒鳴り声のした方を向くとそこには二人の女性が相対していた。
 一人はこの店のウエイトレスの恰好をしていることから店員だということは予想できるのだが
見た目はどこか柄が悪い印象がありヤンキー系の姉ちゃんというのが正しい表現だろうか。
 店が支給した制服も自分が着やすいようにアレンジされており特に胸元がぱっくりと開き
見事なまでの谷間が見え隠れしていた。

 もう一人の女性は露出度の高い軽装の装備を身に纏った戦士風の恰好をした女性で
こちらも店員の女性に負けず劣らずの双丘を持っており日に晒されて焼けた褐色の肌がなんとも蠱惑的な
魅力を醸し出していた。

 「そりゃあこっちのセリフだよ、あの男はあたいの獲物だよ。
 あんたのようなオークみたいな女の出る幕じゃねえんだよ!!」

 手に持ったお盆を一人寂しく飲んでいた男に突きつける。
 男も急に自分がこの騒動の原因だと悟り、おどおどしている。
 さながら二頭の猛獣に狙われたウサギを連想させるようだった。
 女戦士に吐き捨てるとまるで売り言葉に買い言葉と言った風に彼女が反論する。

 「そうかいそうかいそりゃ悪かったねえ~
 あんたのようなゴブリンのメスのような顔をした女を
相手にする奴なんかいないと思ったもんでねえ~」

 両者とも相手の見た目が醜いとばかりに罵り合う。
 だがガリウスはその状況で心の中でぽつりとつぶやく。

 (二人とも美人だと思うけどな・・・・・・)

 そうなのだ。 彼女たちの顔は決して不細工などではなく寧ろ目鼻立ちも整っており
見目麗しいほどに美人なのだ。
 だがこの世界の美的センスで言えば彼女たちは標準的な顔立ちと言える。
 不細工でもなければかといって美人でもない。
 大和がいた世界の美的センスに当てはめれば絶世の美女であるのは間違いないが
なぜか周りの人はそのことに触れる素振りは見せなかった。

 「ほほーういい度胸してんねあんた。 後悔すんじゃないよっ!!」

 店員の女性が手に持っていた木製のお盆を床に叩きつけると女戦士に向かって突進する。
 あたかもそれを予測していたかのような動きで彼女の突進を躱すと体の位置を入れ替えながら
ファイティングポーズを取り戦闘態勢に入る。
 女戦士の腰には剣が下げられていたがどうやら相手が得物を持っていないことを考慮してか
素手で戦うつもりのようだ。

 彼女たちの喧嘩か始まってすぐにまるで統率の取れた軍隊のような動きで
テーブルを動かし、酒場の隅に寄せられ二人の周りに空間が出来上がる。
 それはさながら目に見えないリングのような雰囲気を持っており
二人の選手が男という商品を掛けて勝負をするかのようだった。

 「今度はこっちの番だね!!」

 そう言うと女戦士は左右に身体を揺らしながら女性店員の懐に入り拳を振り上げる。
 それを紙一重で躱すと同時に反撃とばかりに腰を落とし女戦士の足元に水面蹴りを見舞った。

 「がっ!」

 振り上げた拳で攻撃をした直後のため躱すことができずに床に尻もちをつく女戦士。
 そんな中彼女たちの周りに喧嘩を観戦する人の輪ができていたがその全てが女だった。

 「いいぞぉ~もっとやっちゃえ~」
 「そこは右よ右フックよ」
 「どっちが勝つか賭けましょうよ」
 「あたしは女戦士が勝つ方に500ゼリル賭けるわ」

 というように元の世界ならばドスの利いた声で響き渡るはずの声援も
どことなく鈴を転がした音に聞こえ酒場とは思えないほど清らかな雰囲気であった。
 一方他の男たちはというと喧嘩に巻き込まれまいというのが丸わかりなほどに
酒場の隅のテーブルに集まり静かに酒を飲んでいた。

 そんな異様な光景をガリウスは食事も忘れて見ていた。
 その時女性店員の攻撃によって女戦士が吹き飛ばされてしまう。
 運が悪いことに彼女はガリウスの注文した料理が乗ったテーブルに突っ込んでしまう。
 もう想像できるだろう、無残に床にバラまかれた料理だったものが・・・・・・

 「おっ俺の飯が・・・・・・」

 普段の彼であれば飯が床にこぼれた程度で怒ることはないが
今回は違った。 そう、いつもとは状況が違い過ぎていた。
 普段の彼であれば怒ることなく別で注文を取っただろう。
 だがしかし、まともな食事にありつくことができず餓死しかけていた。
 
 「・・・・・・さん」

 彼の中にあった食欲を満たす機会が奪われたことに憤りを感じ
食欲が瞬く間に怒り、憤怒へと変貌していく。

 「許さんぞおおおおおおおお!!」

 彼の怒りが頂点に達した時、彼のリミッターが外れた。
 そして、おもむろに剣を抜刀するとそれを杖代わりに呪文を詠唱する。

 「超級魔法 (ギガント・マジック) オーバー・サイクロン!!」

 彼女たちを中心として酒場に巨大な竜巻が顕現する。
 それは酒場全体を包み込みまるで木の葉のように人が宙を舞う。
 幸いと言うべきなのかわからないが建物が倒壊することはなく
酒場にいた客たちも奇跡的に大した怪我はなかった。

 「はぁ、はぁ・・・・・・」

 怒りが頂点に達し、思わず魔法を使ったことに後悔の念を抱きながらも
それでも怒りを抑えることができなかった自分の未熟さを心の中で喜んだ。
 【自分はまだ強くなる余地がある】と―――

 突然起こった事態に酒場が騒然となるが客の一人がとある人物の名を口にした瞬間
その場が一瞬にして静寂に包まれた。

 「剣の賢者だああああああああ!!」

 彼がなぜそれを知っていたのかそれはガリウスが持っていた剣が理由だ。
 ガリウスの持つ剣は形状が湾曲わんきょくに曲がった片刃の剣、名称を言うなら【刀】だ。
 この世界にはさまざまな武器が存在するが、その中でも刀はごく限られた一部の土地でしか
作られておらず、刀自体がレアな武器であった。
 この世界でそのような珍しい武器を所持し主要武器として使っている人物は一人しかいない。
 つまり男性客が彼を剣の賢者だと言い切るには十分な証拠だったのだ。

 酒場の客が驚愕を畏怖の感情を感じる中、ガリウスは先ほど自分の注文を取った女性店員に話しかける。
 
 「あのー」

 「はっはひぃぃ!」

 突然声を掛けられたため肩をビクリと跳ね上げながら素っ頓狂な声を漏らしてしまう。
 そんな彼女の素振りも気にせずにガリウスは言葉を続けた。

 「さっきと同じ料理を頼む、食べられなくなってしまったからな・・・・・・」

 そういうと床に視線を落とし、寂しそうな目で無残に散らばった料理を見つめる。
 女性店員は「かしこまりました」と告げると全速力で調理場に掛けていった。
 しばらくして酒場の客たちも再度酒や料理を注文し酒盛りが再開されたが
先ほどとは違いその場にいるほぼ全員がガリウスの様子をちらちらと窺っていた。
 
 (・・・・・・早まったことをしてしまったな)

 今さら後悔してももはや後のの祭りであったが、視線が自分に集中しているため
途轍とてつもなく居心地が悪かった。
 しばらくして先ほどと同じ料理を女性店員が運んできた。
 さっきとは違い一つ一つ丁寧に置いていく。
 そして並べ終わると「ごゆっくりどうぞ」と告げ足早に離れていった。

 (とりあえず後のことは抜きにして食事だ食事!!)

 ガリウスは手を合わせるとぽつりと一言呟く。

 「・・・・・・いただきます」

 そして、料理を口に運んでいく。
 口に入れた瞬間料理の旨味が口いっぱいに広がり、枯れた体に水分が行き渡る感覚を覚える。
 それから食事の手は止まることなく進み一人前にしては少し多めだったが久しぶりの食事を堪能した。
 食事を終わるとガリウスは先ほどの女性店員を呼び付けた。

 「何かございましたでしょうか?」

 おずおずと尋ねる彼女に対し、柔らかな笑顔を顔に張り付け話し出す。

 「とてもおいしい料理だった。 ありがとう」

 その笑顔はなんてことないただの笑顔だった。 そうそれがこの世界でなければ。
 この世界の住人にとってその笑顔は凶悪なほどに美しさを持っており
その笑顔をまともに直視してしまった彼女はあまりの美しさにその場に倒れてしまった。

 「えっ? ちょ、ちょっと君大丈夫かい?」

 彼にとってはただの感謝のつもりだったが、理由はわからないが失神されてしまうという事態に陥る。
 周りを見渡すと、こちらを見ていた女性達が頬を赤く染めながら悲鳴を上げていた。
 さっきの魔法で怖がられてしまったと勘違いしたガリウスはカウンター席にいた店員に料理代と
迷惑をかけた謝礼を払いそそくさと酒場を後にした。

 その後、酒場では剣の賢者が美形であったという話でもちきりだったそうな。

 酒場を後にしたガリウスは宿屋の受付で部屋を取ると逃げるように部屋に入った。
 そして、いつもの独り言をつぶやく。

 「やはりこの世界は奇妙な世界でござるな・・・・・・」

 ガリウス・ブラウンこと江戸時代から転移してきたあの二刀流の剣豪宮本武蔵は
いつものようにこの世界の価値観に疑問を持つのであった。
 彼がこの世界にやってきた経緯はまた違う機会に話すこととしよう。
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