オンラインゲームしてたらいつの間にやら勇者になってました(笑)

こばやん2号

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第2章 「目指せ、ドライゴン帝国!」

129話:「旅の一コマ」

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 現在俺たちはジェノンの町を出発して4日目に突入したところだ。
 最初はフレイヤが元の姿になり背中に乗せて飛行するという提案がなされたが
俺とフレイヤ以外の全員が拒否したため現在はアイテムボックスに収納した荷馬車を使っている。
 ちなみに他の四人が拒否した理由は様々だが、共通の理由としてはどうやらフレイヤだけに
いい顔をされたくないというちっぽけなプライドのようなものらしかった。
 まあ気持ちは分からなくはないがお前ら急ぎの旅ではないとはいえ早く着けるなら別にいいじゃねえかよ。

 現在俺たちがいる位置はざっとだがジェノンの町から西に数十キロ進んだ場所で
大雑把に整備された街道を目印にして道なりに進んでいた。
 途中馬の休憩がてらこまめに休息を取りながらの旅のため進捗状況はややゆっくりめの足並みといった所だ。
 旅をすればするほど改めて俺の元居た世界の交通の便がどれほど優れたものなのかを思い知らされる。
 今回の旅だって数十キロの距離を踏破するのに四日を要している。
 これが元の世界なら1時間もかからないことだろう。 「全くこれだから異世界は!」と何となくだが悪態を付いてみる 。

 当然のことだが、道中何事もなく進んでいるかと言えばそうではなくもちろんモンスターの襲撃が度々起こっている。
 今のところリナたちで対処できるレベルではあるがほぼ全員がレベルの成長限界を迎えているため新たなレベルアップをした者はいない。
 ちなみにだが現在の彼女たちのレベルは以下のようになっている。

 リナ レベル40
 エルノア レベル40
 マーリン レベル60
 マチルダ レベル60
 フレイヤ レベル108

 フレイヤ以外の四人はこれ以上強くなるためには【クラスアップ】が必要なのでいいが
フレイヤのレベルが異常に高い理由を聞いてみると本人曰く。
 
 「我はドラゴンですので種族的な強さもありますが【龍の加護】という
ドラゴンが生まれながらに持つスキルのお陰かもしれません」

 とのことだ。
 龍の加護なんていうスキルと元々のドラゴンの種族で強いとか羨ましい限りだ。
 「このチート野郎め!」とレベル255カンストの俺が心の中で言ってみる。
 言ってみたところで心の中なので本人には聞こえないのだが何故かフレイヤが俺の心の内を察したように――――――。

 「何か主が羨ましそうなのですがもしかしてズルいとか思っておられるのですか?
 この私を力でねじ伏せられたあなたが」

 そう言いながら半眼の眼差しでこちらに視線を向けてくる。
 その視線から逃げるように目を逸らしながら御者をしているリナに問いかける。

 「リナー、何か見えたかー?」

 「特に何もないですね、それより私とヤマト様の将来の事について話しましょうよ」

 俺とお前の将来の何を話すことがあるというのか理解に苦しむ。
 そんなことを考えているとフレイヤが敵意むき出しの声でリナに食ってかかる。

 「ふん、小娘は黙って御者でもしているがいい。 我が代わりに主との将来について語り合うとしよう」

 いやお前も何言ってんの?
 フレイヤは真面目な性格をしているがたまに妙なところに真面目さを発揮することがある。
 
 「ヤマト様とトカゲの間にこの先の将来などありません!!
 トカゲはトカゲらしくハエでも食べてなさい!!」

 先ほどの言葉が気に障ったのかリナがフレイヤを挑発するような言葉を言い放つ。
 その言葉におでこの隅に怒りマークを出し頬をひくひくさせながらあくまでも平静を保って反論する。
 
 「ほー、ずいぶんと生意気な態度を取るようになったな小娘。
 我が主を飲み込んだときは鼻水をだらだら垂らしながら『よぐもヤマトざまをーーー』とかほざいておったくせにっ!」

 さすがはドラゴンだけあって長く生きている分、他者の触れられたくない過去を見抜けるのだろう。
 過去にあった醜態を悪びれもせずに暴露する。
 まあ事実ではあるがそれは言うてやるなよフレイヤ・・・・・・。

 「きぃーーーーーー!!」

 御者をしていなかったら両手でハンカチを握りしめ噛みしめていたであろう悔しい感情の声を出すリナに対し
してやったりと言った高圧的な態度を見せるフレイヤ。
 俺は二人を宥めると同時に何回目とも知れない休息を取るため他の者に指示を出す。
 みんな俺の指示に従い準備を始める。
 丁度正午を過ぎた頃合いだったので、昼食も取ろうということで料理の準備も始める。
 俺は馬たちの世話をするためアイテムボックスから馬の食事である藁を出してやると、ヒヒンといななき顔をすり寄せてくる。
 つぶらな瞳は純真そのもので動物的な可愛らしさがあり思わずその柔らかそうなたてがみを撫でまわした。
 それが気持ちよかったのか目を細めながら再びヒヒンと嘶く馬ちゃん。
 
 「よーしよーーし、いい子だなーー。 お前たちは手がかからなくてホント助かるよ。
 誰かさんらと違ってな!!」

 そう言い放つと俺は赤髪の妙齢の姿をした女性と水色の髪の神官服の少女を交互に見やる。
 その視線に気づくと二人ともそっぽを向いて気付いていないふりをした。
 俺はさらに木製のタライを取り出すとそこに水を溜め、馬たちの飲む水として置いてやった。
 とりあえず一通り馬の世話は済んだので他にやることはないかと料理担当の四人に目を向ける。
 新たに仲間が加わって俺たちのパーティーで料理ができる人間が一人増えた。
 ちなみに俺も一応は料理ができるのだが男の一人暮らしで作れる料理のレパートリーなどたかが知れているため
もっぱら料理を作るのはリナ、エルノア、マーリン、マチルダの四人だ。

 ドラゴンであるフレイヤは基本的に獲物を丸呑みにしていたため料理という概念自体がない。
 試しに一度料理させてみたが、出来上がったものは魔女が大釜で煮込んだ毒薬のような料理が完成したため
俺はフレイヤに料理禁止の命令を出した。
 余談だがフレイヤが作った料理を襲ってきたモンスターの口に放り込んでみたところ、あっけなくあっちの世界に旅立たれました。
 というわけで俺とフレイヤは四人が料理を完成させるまで、テーブルを設置し料理を盛り付ける皿を用意した後は基本暇になるのだ。
 
 この時間暇になるため俺はメニュー画面を開き、この世界と【タワー・ファイナル】との互換性を確認している。
 例えばこの世界ではポーションなどの魔法薬は高級品ということで滅多なことでは市場に出回らないとマーリンが教えてくれた。
 一度手持ちのポーションを数本取り出し彼女に見せたところ目を見開きながら「ぽ、ポーションがこんなにあるですのん」と呟いていたことから
一本所持しているだけでも相当すごい事なのだろうことは彼女の態度から何となく察することができた。
 
 話を戻すが、そのポーションというものがこの世界でどの程度の効果を発揮するのか検証したりすることで
料理ができるまでの暇つぶしを行っている。
 そしてそのお陰で一つ分かったことがあった。
 それはこの世界【ラマル】だったかな、とにかくこの世界に存在しないタワー・ファイナルのアイテムは文字化けしてうまくメニュー表示されないし、取り出すこともできないらしい。
 
 その辺りは仕様上の問題なので仕方ないことだとは思うが、かつて俺が数日を費やして集めた超超貴重素材が文字化けしていたのを見た時はさすがに堪えた。
 そんなこんなでいつものようにこれはできるこれはできないなどの細かいチェックをしていると、時間が経つのは早いものでリナたちが出来上がった料理をテーブルに並べ終わっていた。
 俺は両手を合わせ「いただきます」と言ってから食べ始めた。 そして、他の五人も俺に倣って同じように合掌する。
 どうやらこの世界には食べる前の挨拶みたいなものはないようで俺が初めていただきますをしたときは全員が首を傾げていた。
 だが今となっては全員が自然にいただきますを実践している。
 
 彼女たち曰く、「将来妻となるからには夫の習慣を自分の習慣とすることは当たり前のことだ」と言っていたが
俺はその言葉を全力で聞かなかったことにした。
 出来上がった料理はこの世界の極々一般的なもので、野菜スープに黒いパンそして旅の道中で狩猟した動物の肉を焼いたものが主であった。
 一般的な料理とはいえ彼女たちの作ったそれは一般的な料理よりも高い水準の美味さを出しているように思えた。
 おそらくだが彼女一人ひとりの独自のレシピがあるのだろう。
 いつか作ってみたいからレシピを教えてくれとリナに聞いたら「私と結婚すれば毎日私が作って――――――」と言い終わる前にチョップをくれてやった。
 とにもかくにも彼女たちの料理を堪能し、使った食器を洗おうとしたのだがマチルダに使った食器を横取りされてしまい手持ち無沙汰になったので
荷馬車の中で仮眠を取ることにした。
 
 王都まであとどれくらいかかるのかと考えているといつの間にか意識を手放してしまった。
 仮眠から起きた時に全員が俺の側で寝ていたことは言うまでもないことだろう。
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